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guerriere
珈琲をいれたの。あなたもどお?と、声をかけた。
彼は少しだけはにかむように笑ったけれど、その口の形はNOを現しているように見える。

クッキーを焼いたの。と、私の後ろから明るい声。
スティーナ(=クリスティーナ)が彼に駆け寄っていき、彼の腕に自分の腕を絡めて引っ張った。

彼は同じようにはにかんだ笑顔をスティーナに向けた。
その口の形はYESだった。



私が誘ったのと、スティーナが誘ったのと、同じ内容なのに。



珈琲を私が入れて、スティーナがクッキーを焼いた。
けれど、彼は私の誘いはNOで、スティーナの誘いはYES。






---嬉しそうね、・・009





「フランソワーズ、どこへいくの?お茶の時間だろ?」


ピュンマが声をかけてくる。
ドルフィン号の中、ミーティングルームは戦いがなければ”リビングルーム”と化す。
そこは、キッチンと繋がった部屋であるために。


ミーティングルームから出てきた私は、ミーティングルームへと向かうピュンマと廊下ですれ違った。


「そうよ、お茶の用意はできてるわ」
「君はいいの?」
「用意し終わったからいいの」










ドルフィン号内に持つ各個人のコンパートメント。
私の部屋は一番非常用脱出ゲートに近い。


そのせいで、一番ミーティングルームから遠い。



丸く刳り貫かれた特殊強化ガラスの窓は、開けることができない。
と、言っても、開けられたとしても開けたら大問題。


今は地中から数千メートルも離れた空の上だから。

だから、どこにも逃げる場所なんてない。
ドルフィン号の中で過ごす以外の道はない。


「なんなのよ・・・も!」


どすん。と、備え付けのシングルベッドに飛び乗って、ばたん。と上向けに倒れた。
見上げる天井は、ミーティングルームと同じ作り。

面白くもなんともない、天井。
面白くもなんともない、壁に、廊下に、部屋。


全てが”戦闘用”として作られ、統一された世界。
戦いに、”お洒落”や”可愛い”や”素敵”なものが不必要なのは解っている。





私は長い黄色のマフラーを掴んで腕をあげて、それを見上げた。
赤い防護服に包まれた腕も一緒に視界に入る。


戦闘に適した服。


「当たり前でしょ、・・・ミッション中なんだから」


スティーナは、ドルフィン号に乗り込んで以来、毎日水彩パレットのように色々な服を着こなしていた。
彼女はとっても可愛い。


くるくるとした天然カールの髪が内巻きになって肩にのって、ふわふわと揺れている。
髪色も明るくて、きらきらして、ふわふわして、くるん。

006よりは背が高いけれど、私よりは低い。
スティーナを包む雰囲気にあった優しい香りが殺伐とした何も面白くないドルフィン号の中を漂い、ぽっちゃりとした柔らかい二の腕が、ふるん。と、揺れると、鼻の下を伸ばす人が居て、鼻の下が伸びてるぞ。と、注意する人が居る。


何もかもが統一されて見飽きてしまった中にぽん!っとやってきたスティーナは、まるで初めて飼うことが許された子猫のよう。


彼女の行動すべてが気になって、可愛くて、見飽きない。
声をかけられれば、嬉しくて。
そばにいたら楽しくて。


ついつい一緒にいたくて、時間を忘れてしまうような感じ。



もう十分に彼女は彼女として可愛いのに。
毎日スティーナは雑誌から抜け出したような、可愛い服を着て、お化粧をして、おはよう。と、キッチンに立つ。


女の子はこうでなくちゃなあ。と、鼻の下が床についてびろーんと伸ばした人が言う。
花がある、明るくなる、癒される、可愛いね、素敵だね、エトセトラ、エトセトラ。


彼らがそんな言葉を言える口を持っていたなんて知らなかった。



「・・・私じゃなくて、スティーナだったら良かったのに」



じん。と、鼻奥が痺れた。


服とか、お化粧とか、お洒落ができなかったしても、スティーナはスティーナのままで、かわらないから、きっとスティーナが003だったとしても、みんな、同じことを言って、同じように接していると思う。



---003がスティーナだったら、よかったのに。そうしたらきっと、みんなは・・・・







009は・・・。









***


スティーナの祖父である、科学者ノヴァーリス博士の研究の全てを納めたコンピュータが、BGの手に渡った。
そのコンピュータには何重ものセキュリティロックがかけられており、解除・廃棄方法はただ1つ。孫である、スティーナ自身でなければならなかった。ノヴァーリス博士の研究を奪還することが出来なかった場合、破棄して欲しいとの、博士の遺言を守りたい。それが、00ナンバーサイボーグ全員の、ギルモア博士の願い。
そのために、狙われたスティーナを私たちが守り、保護し、BGからノヴァーリス博士の研究をBGの手から奪還することが、今回のミッション。



ミーティングを重ね、危険なBG研究施設内にスティーナを連れて行かないことに決めた結果、必然的に、ノヴァーリス博士の研究を納めたコンピュータを破棄する方向で考えるしかなかった。



「祖父の研究を守りたい気持ちはあります・・・。けど、今後また、同じように”悪用”されるくらいなら、いっそのこと・・・。私は祖父が何を研究していたのか、まったく知りませんし・・・また今回のように誰かに狙われたとき、それを守りきれるかと考えたら・・・残念ですけど・・・」


研究施設に乗り込む前日、最後のミーティングの席でスティーナは、涙を浮かべたスモーキー・グリーンの瞳を瞬かせながら言った。


「せめて、父が生きていれば・・・祖父の研究も守れたのですが・・・」


スティーナの父も祖父と同じ研究者だったけれど、研究に没頭して自分の健康を顧みず、躯を壊して数年前にすでにこの世を去っていた。

ミーティングはスティーナの気持ちの確認と、当初に立てた計画の再確認をして終わる。
ミッション中、イワン、ギルモア博士、そして008、006が護衛兼連絡係としてドルフィン号に残ることになった。


「あの・・・・、本当にあなたも行くの?」
「ええ、もちろん。009がそう言ったから」
「でも、・・・・・・」


ミーティング中に使った珈琲カップをキッチンで洗っていた、私にスティーナは話しかけてきた。


「私も彼らと同じだもの」
「でもね、危ないわ・・危険なのでしょう?」
「だからって、行かないなんて言えないもの」
「どうして?」


私は、スポンジを固く、固く、握りしめた。


「だって、私は・・・003だもの」
「怖くないの?」
「・・・・怖くない、って言ったらウソになるかしら?」
「それでも行くの?」


スティーナはゆっくりと私のそばに近づいてくると、隣にたって、水切りカゴの中にあったカップを食器拭きようのハンドタオルで、拭き始めた。


「ええ、行かなくちゃいけないから」
「どうして?」
「どうしてって・・それが、ミッションだから・・・」
「女の子なのに、そういう危ないことをするなんて、あまりよくないと思うわ」
「・・・・」


私は流し台の中にあった最後のカップを手にとってさっと洗い、それを水切りカゴに置いた。


「そんな戦闘服を着て、戦って、・・・イヤじゃないの?」
「・・・私はサイボーグだもの」
「もしも、私がサイボーグにされたら、・・・・嫌だけど、仕方ないかもしれないけど、それで”戦え”って言われたら、私は戦いたくなんてないわ」


スティーナが、私が水切りカゴに置いたカップを手にとって、それを拭き始めた。


「必要なときがくれば、男の子とか、女の子とか関係なく、戦わないといけないことがあるわ。それは・・・別に”戦闘”とは限らなくて・・・色々なことに関して共通していることだと思うわ、偶然、私のいる立場がこういう”戦い”の場であっただけで・・・」
「でも、怪我をしたり、人を銃で撃ったり、そんなことをする必要があるなんて、信じられないわ」
「・・・でも、実際、そうだから」


ふう。っと、ため息をついて、スティーナは私を見上げた。


「女の子なのに、そんな風に戦わないといけないのなんて、可哀相・・・。だから、なの?」
「?」
「だから、女の子だっていうことを忘れて、みなさんと同じなのね?そうしないと辛いものね・・・。私には耐えられないわ、きっと・・・。女であることを捨ててまで、男の人と同じようにするなんて、すごく、怖いもの・・」










私たちは予定していた通りに、BG研究施設へと乗り込み、その全てを破壊し、無に帰す事に成功する。
けれど、無傷の帰還とはならなかった。

BG研究施設にセットした一番協力な時限爆弾爆破ギリギリにドルフィン号に救出された。
ミッションの半ばでグレートに護衛されて先にドルフィン号へと戻って来ていたスティーナが私たちを出迎え、その彼女から驚きと困惑の視線を浴びる。


施設内の強化された警備に、苦戦を強いられた戦いの結果。


「悪いな、スティーナ。汚れてるからよ、また後でな」


みんな疲れきっていたけれども、スティーナを気遣い、元気なふりをして自室としてあてがわれている、コンパートメント、メディカルルームへと分かれて行くが、5分後にはまた、ドルフィン号コックピットに集合しなければならない。
それぞれが歩き出したことで、スティーナが、みんなの後方にいた私に気づいた。


「キャッァ!!」








ノヴァーリス博士のコンピュータを廃棄したスティーナがドルフィン号へ帰還したことを確認後、私たちはBG施設破壊のためのミッションへと移り、その中で私は、セットした順に始まった爆発を視ていた。

進行経路の確認、後方からの爆破。

その両方の経過を随時、仲間たちに知らせるのが、役目。BG研究施設の破壊には、侵入した時点で、施設内の移動とともにせっとした時限爆弾を仕様。けれども、予想以上に強化されていたサイボーグ兵士に手間取った私たちは、計画内で使用することが決まっていた脱出経路を封鎖され、新たな脱出口を見つけなければならくなった。

私は自分に備えられた能力をフルに使い、脱出口を探す。

意識をそれらにむけたために、守りがおろそかになり、警備兵、サイボーグ兵士との戦いと、後方から迫って来る爆発が起こす爆煙に身をさらされた、姿だった。


「メディカルルームへ行け、003」


004が振り返って私に言った。
右眼を爆発に生じた熱風で痛めてしまったことを指している。
左眼も煙の影響で視界が濁り、歩くのが困難な状況だった。


「スティーナ、003をメディカルルームに連れて行ってくれる?」


008と話していた009が言った。
スティーナは009の声に頷き、005にかわって私を支えようと腕を伸ばすけれど、途中、その手が止まった。



眼を痛めていてよかった。と、思った。
彼女が今、どんな目で、私を見ているか、見えなくてよかったと・・・。









女の子なのに。












でも、私はサイボーグで、戦わなくてはいけなくて。




”どうして?”

そんなの、考えても仕方がないこと。
生きるために、選択の余地なんてなかったから。





動かないスティーナの様子に、005が私の躯を支えていた腕にもう一度力をいれた。


「いい、僕が連れて行く。008、005に今のことを頼んでくれ。005、悪いけど、僕が戻るまで008を助けてほしい」


009が私の正面に立つのがわかった。


「スティーナ、僕たちは今も、戦っているんだ。追っ手が来ないとは限らないし、まだ戦闘状態を解除することはできない・・・、一緒に戦えないのなら部屋に戻って」


腕を引いて連れて行ってくれるのかと思っていた私の予想は裏切られる。
脚がドルフィン号の床を離れて、躯が二本の腕によって宙に浮いた。そのまま009の腕に抱かれて、メディカルルームへと連れられる。



「・・・ありがとう」
「?」


009が廊下を歩くことで作り出される風と一緒に、私の耳をなでた。


「・・・・・・・・今日まで、僕たちが無事に生きられたのは、003のお陰」
「・・・009?」


メディカルルームの前に立つと、2人分の重さに反応して、左右に滑り、ドアが開いた。


「おお!やっと来たな!009、003をそこのベッドに寝かせなさい!!」


ギルモア博士の声に、009は『はい』と、答えた後に、私をゆっくりと診察台の上に座らせてくれて、彼は言葉を続けた。


「フランソワーズが003で、ちゃんと僕たちと一緒に戦える、女の子でよかったと思ったんだ。そうじゃないと、きっと僕たちは、ここにはいなかったから・・・。フランソワーズ、ありがと」


喉がきゅうきゅうと締め付けられて、痛い。
鼻奥が痺れて、痛めた眼が熱くなる。

心臓が、どくん。どくん。と、強く鼓動を打つ。




009の手が、煤けて汚れた頬の汚れを、優しいとは言いがたい力加減で拭ってくれた。
なぜ眼を痛めてしまったのだろう。今、009がどんな表情(かお)をしているのか、はっきりと見えないことが、すごく残念でならなかった。



「003をお願いします、博士・・・」
「言われんでも解っとる!009」



メディカルルームの通信回路は常にどこかしらと交信する。


「お腹すいてないアルか?飲み物は?」
「よお!なんかいるもんあるか?」
「003、もう大丈夫だよ、追っ手は来ない。上手く逃げ切れたようだから、安心して」
「部屋に移るなら、運ぶ、言ってくれ。」
「容態はどうだ?もう痛まないか?」
「見えない間、我が輩の自慢の喉でリラックスー♪」



うるさい!と、ギルモア博士が無線のスイッチを切ると、今度は入れ替わり立ち代わり、メディアカルルームのドアが開いたり、閉まったりを繰り返し、ギルモア博士が呆れ返る。


「まーったく。これじゃあ003がちいっとも休めじゃろお・・・」







眼の完治に2日かかった。

スティーナを彼女の住む国へ連れて行く間、同じ日々が続く。
彼女の声に、笑顔に、仕草、その可愛くてお洒落な服に、鼻の下を伸ばし、それをからかう人が居る。
戦闘用として作られたドルフィン号の味気ない殺伐とした、内装と空気を、スティーナは、女の子らしく、女の子の香りで、柔らかく色をつけていく。


紅茶を入れたのだけど、いる?と、ミーティングルームにタイミングよくやってきた009に訊ねた。
彼は少しはにかんだ微笑みを浮かべるけれど、その口元はNOと言っているように思えた。
私の背後からにいた、スティーナが009に気づいて嬉しそうに、彼のそばまで歩み寄り、その腕に、自分の腕を絡めて、言った。


「アジアのデザートの”杏仁豆腐”っていうプティングの作り方を、006に教わってつくったの。初めてよ。ぜひ味見してちょうだい、009♪」


009ははにかんだ微笑みを同じようにスティーナにむけて、口元はYESと言いたげにゆるんでいた。
私は相変わらず、2色だけで統一された防護服に身を包んでいる。
今日のスティーナは、肩を出すデザインのサマーニットに、薄いピンク色のアコーディオン・スカート。彼女が動くたびに、それは優雅に揺れて、広がる。


「003」
「?」


私は2人をその場に残して、キッチンへと足を向けたけれど、呼び止められて、振り返る。


「・・・レーダーに少し気になる反応があって、キミに確かめてほしいんだ。だから、紅茶は2人分」


”紅茶は2人分”と言って、ピースサインを作った009の手が、可愛いな。と、思った。


「すぐに用意していくわ、今は何も聞こえないけれど・・・」


私は耳のスイッチを入れた。


「コクピットで待ってる」
「了解、009」











end.





*・・・ラブ度うすっ!

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