RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
イチゴジャムは甘すぎて。


「・・・ああ、これ?・・・・リズにもらったんだ、誕生日プレゼントにって・・」



反BG運動の1人であるギルモア博士の友人、タフツ博士の姪のリズ(エリザベス)が、行方不明になった。その影にははやり、BGの動きがあったため、リズの救出とともに、発見したBGの軍事施設を1つこの世から消す事に成功した。

根無し草のように、ドルフィン号以外に居住地を定めていない00メンバーたちに、タフツ博士は、戦いの疲れを少しでも癒してくれと、屋敷に留まることを勧めてくれた。

いつ、何が起きても行動でき、BGから襲撃があっても誰にも被害を与えないようにと、定住地を持たない00メンバーたちにとって、タフツ博士の申し出はとても嬉しいことと同時に、”もしも”を考えると、やはりすぐにでも、その場を離れることが良いと言う結論を出した。

けれど、礼をしたいと言うタフツ博士の言葉と、そうして欲しいと言うリズ、そして彼女の両親も勧めてくれる上に、ギルモア博士が土地の学者たちとの情報交換に加え、影ながら00メンバーたちを支援してくれている反BG運動メンバーたちと腰を据えて今後のことを話し合いたいと望んだため、しばらくの間、タフツ博士の屋敷に世話になることになった。





「た、・・・んじょう・・日?」
「うん、・・・・先週の土曜日だったんだ」
「お、おめでとう・・・・」
「ありがとう、003」


009は見慣れないものを、首にかけていた。

タフツ博士の屋敷で世話になっている間も、交代制でいつでも出撃(出発)できる用意をする00メンバーたちは、日替わり当番制でドルフィン号に待機する。


今日は、003と009が当番の日だった。


「リズが2日間ほど郊外へ林間学習に行っただろう?お土産も兼ねてもらったんだよ」


彼がアクセサリーをつけている姿をみたことがなかったので、すぐに、それに気がついた。
昨日はつけていなかった。・・・と、思う、フランソワーズ。


「そう・・なの、よかったわね・・・・」


009は首もとにある細い鎖に、人差し指をひっかけて、小さな十字架のモチーフを見せてくれた。
きら。と、光ったシルバーが、安っぽいテラテラとした鈍い輝きではなく、ドルフィン号のコックピット正面の強化グラスを抜けて射し込んで来る陽光を鋭く弾く、輝きだった。


---先週の土曜日・・・は、16日・・・・・。



リズは林間学習がおこなわれた地域で有名なお菓子屋に立ち寄り、店で一番大きな焼き菓子の詰め合わせを持ち帰ってきた。おやつとしてにいただいた、それらの中でもブルーベリー・ジャムをはさんだクッキーを、フランソワーズは好んだ。




---5月16日。



今日の日付から逆にこころの中で指を折って数えた。












***


ブルーベリージャムをはさんだクッキーは、本当にとても美味しかった。
ほかにも彩り豊に、美味しそうな焼き菓子たちが、大きな箱の中にたくさん詰まっていたけれど、フランソワーズはいくつか口に運んだそれらの中で、やっぱりブルーベリージャムをはさんだクッキーが一番好きだった。
アプリコットジャムを挟んだ形が違うクッキーもあったけれども、断然、ブルーベリーがいい。と、思った。





「ブルーベリーが好きなんじゃなかったの?」


ドルフィン号から戻ったその足でむかったダイニングルームで朝食を取る、ジョーとフランソワーズ。
リズは向かい側に座るフランソワーズが手に取ったジャムの瓶を目にして首を捻った。
フランソワーズの手にあるのは、ジャムの王様と言っていいイチゴジャム。


朝の食卓の席に、今朝早くタフツ博士とでかけたギルモア博士と006。すでに仕事へと向かったリズの父親、夜の時間の001と、ドルフィン号待機組として009、003と交代した004、005をのぞいたメンバーとリズに、朝食を用意してくれたリズの母、リディアが揃っていた。
タフツ邸の常時ダイニングルームにある大きめの6人用のテーブルでは間に合わず、年に数回おこわなわれる祝いの行事に使われる、円形の大テーブルが付け足されていたが、朝はあまり役に立たない。
形の違うテーブルを寄せ合い、テーブルクロスをかけたとき、前方後円墳みたい。と、呟いて、リズにそれは何かと訊ねられていた人が、フランソワーズの隣に座っている。


「別に、特別ブルーベリーが好きなわけじゃ、ないのよ・・」


ジョーはいつの間にか、フランソワーズが見つけたものをはずしていた。
ダイニングテーブルに着いたジョーが、それを身に付けていない事に気づいたフランソワーズは、自分が指摘してしまったために、彼が気分を害して身につける事をやめてしまったのかと、気分が落ち込んでいく。


「そうなの?」


ダイニングテーブルに並べられる、イチゴ、ブルーベリー、マーマレードのジャムと、バター、ピーナッツ・バター・クリームに、ヘーゼルナッツ・チョコレートクリーム。それらの中で、彼女が焼いたトーストにのせるのは専らブルーベリージャム。

リズはミックス派で、ピーナッツ・バター・クリームとその日の気分で選んだものをトーストにのせる。


「そういう気分だっただけで・・今日はイチゴが食べたいなって・・・・思ったの」


イチゴジャムをのせて、一口齧った焼きたてのトースト。
フランソワーズはマーマレードにすればよかった。と、フルーツ独特な苦みのない、ただ甘いだけのイチゴジャムに後悔した。
ブルーベリージャムが嫌いになったわけではないけれど、それを手に取るのが理由もなく、ただ今朝はイヤだっただけ。


「ね、こっちのヘーゼルナッツ・チョコレートクリームも試してみて!美味しいからっ!!」


リズの首にはシルバーの細い鎖がフランソワーズの視線を固定させるかのように、きら。っと魅力的に光った。
トーストを持った手を止めてしまったフランソワーズの、まっすぐな視線は、リズが指差したヘーゼルナッツ・チョコレートクリームのジャーではなく、自分の首もとにむけられた。


「あ、これ・・?」


首にかけているシルバーのそれの、小さな十字架のペンダントトップ部分を指につまんで持ち上げた。
フランソワーズは不躾に彼女の首にあるものを見ていたことに気づき、慌ててあやまった。


「ごめんなさい・・・あの」
「素敵でしょ?」


視線をトーストに戻したとき、フランソワーズの視界に、同じものを身につけている人が、珈琲が半分ほど入ったマグを手に持ち上がるのが見えた。


「え?・・ええ・・・とっても素敵ね」
「この間の林間学習で言った街に友達のお兄さんが、シルバーアクセサリーの店を持っていてね、そこで買ったのよ」


フランソワーズは微笑んで首を縦に1度振り、微笑みながらリズの言葉を受け止めた。


「アシュレーってば、あんなに素敵なお兄さんを隠していたなんて!すっごく、すっごくひどいと思わない?」


”すっごく”の部分をかなり力んで言ったリズにジェットが反応する。


「リズ、ソイツはそんなに格好良かったのか?オレよりもか?」
「もちろん!ジェットなんかに太刀打ちできないくらい、格好良かったわ!」
「我が輩よりも?」


リズが屈託なく笑う。


「ええ!グレートさんよりもすごく紳士的でユーモア溢れる人だったの!」
「じゃ、僕は?」
「んー・・ピュンマかあ。悩むなあ・・・・、でも、やっぱりアシュレーのお兄さんかな!」


珈琲のお代わりはいかが?と、キッチンに立っていたリズの母、リディアがコーヒーポットを手にダイニングテーブルにやってくる。
どれほどアシュレーの兄が格好良いかを話し始めた娘に、特定のボーイフレンドを持ってもおかしくない年齢になった娘を持つ母親になってしまったのね。と、思いつつも、食卓の上で、夢中になったアイドルについて語るときとさほどの差のない表現に、安心したと同時に別の意味の心配を胸に抱いてしまい、自分勝手な娘の成長の願いに苦笑する。そんな思いを隠すように、フランソワーズの隣に座っている、口数少ない娘と変わらない年頃の青年のマグに珈琲を注ぎ足した。


賑やかな会話が朝の食卓の上に次々に飛び交った。
それぞれの皿とカップの中身が消えた頃合いに、それぞれがその日の食事に礼を言いながらテーブルを離れて行く。


フランソワーズは後片付けを手伝うために、テーブルを立つ。すると、同じタイミングでリズも立ち上がった。
リズは学校までスクールバスで通う。

全てのミッションは終えてはいるが、滞在中は姿を換えた007がリズにつきそう。
林間学習の2日間の間も、007が”もしも”に’備えてつきそっていたので、本当のところ、彼はリズの友人のアシュレーの兄が、自分よりもジェットよりも、そしてピュンマ以上にどれだけ素敵な人だったか目にしている。


「リズ、バスに遅れなようにしなさい」
「はいはい!もう出るわ」


キッチンから飛ぶリディアの声は、毎日同じ時間に、同じ台詞。
答えるリズも同じで、彼女はダイニングルームのドア近くの飾りイスに置いたデイバックを手に屋敷を出て行く。


「リズ、いってらっしゃい」


その背にむかって3杯目の珈琲を終わらせながら声をかけた、彼と。


「また後でね!ジョー」


笑顔で答えるリズの、ちょうど真ん中にいたフランソワーズ。自分を超えて、かわされた会話から逃げるように、忙しなくテーブルの上を片付けはじめた。


「あ、そうだ!」


ぱたぱた。っと、スリッパを鳴らしてかけよってきたリズが、フランソワーズの前で両手を首の後ろの留め金部分へとまわした。


「・・・リズ?」
「あげるわ!」
「え?」
「2つ買ったら、30%オマケしてくれるって言われたの。来週末にアシュレーと一緒にお兄さんのお店へ行く約束をしてるから。これはフランソワーズにあげるわ!」


外した、それを、フランソワーズの手の平の上にしゃらり。と、置いた。


「私とお揃いよりも、フランソワーズとお揃いの方がジョーも嬉しいだろうから!」


リズは大げさなほど躯を傾けて、フランソワーズの後ろにいる、同じものを持っている人を覗き込むようにして視線をあわせると、ウィンクを一つ飛ばした。


「リズ!バスに遅れてしまいますよ」


娘に急ぐように。と、声をかけながらリディアがキッチンから出て来る。
リズは元気よく、行ってくるわ!と、母親の首に飛びついて、その頬にキスを贈ると、ダイニングルームを飛び出して行った。


「まったく・・・。あの子もちゃんとした恋の1つもすれば、少しは落ち着くのかしら?ねえ、どう思う?」


ダイニングルームに取り残された2人に話しかけると、ジャムにするには少し早い、フルーツの青みが清々しく感じられる香りが、ダイニングルームを包んでいる。

まだ恋らしい恋をしていない娘が、ちゃんと”そういうこと”に気づいたことにたいして、少しだけ誇らしさを感じたリディアは、再びキッチンへと姿を消した。










end.





*結局つけられなくって、大切に大切に2人とも保管してるとおもわれます。
 





===

「・・もらっても、いいのかしら・・・・・」
「・・・・・いいんじゃ、ないかな・・その」
「?」
「僕とお揃いでも、よかったら・・・だけど・・・・」
「あの、でも・・ジョーは、・・・・イヤじゃない?」
「いや、僕よりもフランソワーズの方が、なんていうか、・・・イヤじゃないかな・・?」
「そんな・・こと・・・でもジョーは」
「いや、フランソワーズが・・気にしないのなら・・・」
「私だって、ジョーが・・その、いいのだったら・・」






===



もーじもじもじもじ、もーじ、もじもじもじもじ・・・・。
なんて言うやりとりが、延々と続いたと思われます(笑)
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。