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朝の報告
注意)ここの93は新婚です・・”朝の食卓”をベース(続き?)で
書いてます。


人里離れて静かな海沿い近くの雑木林に、まるで浮き世の世界から その存在を隠すように建てられた洋館がある。 鬱蒼と茂る木々に囲まれて、波音がざざざと砂を引く音が爽快な 青空の下、少し不気味な雰囲気を醸し出している。が、住人たちは 夏の太陽に負けないほどのエネルギ-を持って、今日も慌ただしい 朝を迎えていた。 ちん♪と甲高いベルの音がなる。 今日もフル稼働で働くオーブントースタ-は日本ではあまり見かけ ない3段式。 毎朝のメニューはだいたい決まっている。 芸がないなどと言う者がいれば、二度とダイニングルームの席に 着く事を許されないだろう。 Lサイズの卵パック2つを使いきったのにもか変わらず、新しい パックを、ばり とあけて、底の深い銀色のボールに割る準備。 かん!と銀色のボールのふちに卵を当てて1つ1つ丁寧に両手を 使って割る彼の姿を見た張大人。 彼の丸っこい手が伸びて卵を掴むと、ひょうい、かん!ぽてん。ひょい、 かん!ぽてん。と、リズムよく片手でするするあっと言う間にすべてを 割り終えてしまった。 「・・・僕が・・・・」 割り終えた1パック分の卵を菜箸を使い、持ち上げた銀のボールの 中で見とれてしまうほどの見事な、混ぜ技術を披露する。 「パンが焼けたアルから、ダイニングルームに持ってくネ!」 食パンよりもロールパンが特売売りをしていたために、今日はふっ くらあつあつ焼き立てバターロールがカゴに載せられて朝の食卓に 並ぶ。 「パン焼けたよ」 大家族の朝食はすでに始まっていた。 睡眠不足な眠たい頭と躯にむち打ち、いつもより1時間も早起きし たジョーは、フランソワーズの代りに、張大人の朝食の準備を手伝い 整えた、家族の朝食はあっと言う間になくなり、足りない!と、次から 次に色々と要求された。 「ジョー!遅いぜっ」 寝坊したジェットは、始めに出されたパンにありつけなかったた め、次に焼き上がるのを待っていた。 ジョーがカゴをテーブルに置くのが待てなくて、腕を伸ばして3つ を一度にとると、「行儀が悪いぞ!」とアルベルト。 彼も焼きたてロールパンを今か今かと、庭の端っこに作られたジェロ ニモ菜園で取れたプチトマトを口に放り込みながら待っていたた めに、フライングしたジェットに文句を言った。 「ジョー、珈琲ない!」 空になってしまったポットを指差したピュンマ。その隣で「んー・・・!」 と、満足げに唸るグレートは、今朝のヌワラエリヤの葉に1人だけの 世界に浸る。 ジェロニモはヨーグルトに載せるジャムがなくなったことを瓶を持 ち上げてジョーに見せて訴えた。 「卵はっ?」 ふわふわのスクランブルエッグは、大家族の朝に欠かせない定番中 の定番メニュー。 「今作ってるよ、大人が」 空になったコーヒーポットを受け取りながら、はあ。と、ため息を ついたジョー。 「ジョー、ロールパン、もうないよっ!」 「ええ?」 ピュンマが最後の1個を手に取って言った。 「ジョー、シリアルはどうした?」 「はあ?」 ベーコンにアスパラガスをまいて爪楊枝で止めて茹でた、それを ナイフとフォークで優雅に切り分けるグレートは、どうやら今朝は パンではなく、シリアルな気分らしい。 「ブルーベリージャムの換え、あるんだろうな?」 ジェロニモが手に持ってジョーに見せて訴える、空になったジャム の瓶をみながら、お皿においたロールパンを綺麗に二つに割いた アルベルト。 「ジョーっ卵っ!パンに挟むんだから、卵だせ!」 「ジョー、サラダ用のマヨネーズが出ていない。」 「ジョー、珈琲がないなら、オレンジジュース!」 「ジョー、我が輩はソイミルクでな」 「・・・・・っ」 ちん♪とオーブントースターが鳴った。 「次、焼けたアルヨ!ジョーっ!」 研究室に籠っていたギルモア博士がひょっこりダイニングルームに 姿を現したことに、ジョーは気づかなかった。 「ジョー、儂n」 「うるさい!」 ダイニングテーブルとキチンカウンターの間の空間に立っていた ジョーの肩に、ぽん。と、ギルモアの手が置かれた。 「そうか・・・、すまんかったな。うるさいか・・」 ぎょ!っと驚きにめいいっぱい見開かれたジョーの瞳。と時間を止 めてしまった家族たち。 「はっ博士っっ!!」 「大人、儂の朝食を頼むよ」 「博士、おはようさん。アイアイねー!すぐアルねー!」 キッチンカウンターから覗き込むようにしていギルモアは張大人に 言った。 「博士っ僕は別にっ」 「「「「「「おはようございます、博士」」」」」」 テーブルに着く家族6人の声が揃ってギルモアに挨拶をする。 「うむ、おはよう・・・」 「は、博士、あのっ・・・」 慌てるジョーに対してにんまり笑い、気にせんでええ。と、言う言 葉を呟きながら、すたすたと足を進めてダイニングルームの定位置 に席に着くと、間髪入れずにグレートが彼の自慢のモーニング ティーを呼びのティカップに注いでギルモアに出した。 それが合図となり、動きを止めていた家族たちが再び賑やかに ジョーを呼び始めた。 「ジョー、パンが焼けたってさ。もってきてよ!それと珈琲!」 「マヨネーズ。」 「ジョー、卵っ」 「ジョー、我が輩のシリアルは?」 「ジョー、ジャムがないぞ」 「はいはい、おまっとさんネー!!ふわふわふんわり、特上エッグよ! ジョー、博士の分をすぐ運ぶアル!」 フライパンを片手にキッチンから出て来た張大人からふわふわふん わり・スクランブルエッグの美味しい香り。 その香りにジョーのお腹が、ぐううっとなる。彼の分の朝食はきち んと彼の席に用意されているものの、その席について食事をする暇 などまったくなく、悲しい事に、ふわふわふんわり・スクランブル えぐはすでにつやを失い、冷めてしまったベーコン巻きアスパラガ ス。添えられているプチトマトだけがつややと皿の上で美味しそう な色を放っていた。 「はいはいはいはい、はいネ!ジャムはブルーベリーじゃないアル ヨ、ワイルドベリーで我慢ネ!マヨネーズ受け取るヨロシ!シリア ルとソイミルク!焼きたて熱々ネ、ロールパンお待ちーっ♪珈琲は も少しかかるアル」 ダイニングルームに着いたギルモアの前に朝食の皿を置くまでの間 の時間、まあるい躯を素早く動かして、張大人が家族たちのリクエ ストにあっと言う間に応えていく。 「ジョー、ありがとね。もう席に着くヨロし、せっかくの朝食がひ えひえネ」 張大人に言われてやっとダイニングテーブルに着いたジョーの目の 前にどん!と置かれたオレンジ100%ジュース。 「珈琲はまだないアルヨ」 「・・・・・うん」 「大人っコーラ!」 「ジェット朝からアルか?!」 「関係ねーよ、飲みたいときが飲み時なんだぜ」 すっとジョーの隣の空席に身を滑り込ませた張大人は、ジョーの皿 の上の冷たくなってしまったスクランブルエッグを、手に取ったあ つあつのロールパンに切り込みを入れ、グラスの小皿にもられたレ タスとあわせて、ジョーのためにミニ・サンドを作った。 ばちん。とウィンクひとつをジョーに残して軽やかにキッチンへと 向かった張大人。 「フランソワーズはどうしたんじゃ?」 ケチャップをたっぷりスクランブルエッグにかけながらギルモアが 家族たちを一人一人の顔を確認するように見てから言った。 「今朝はフランソワーズの代りにジョーががんばってくれたアル よ!」 キッチンカウンターテーブルからひょっこり顔を出した張大人が 言った。 ダイニングテーブルに着く、全員がサンドイッチロールを嬉しそう に頬張るジョーに注目する。 ジョーはゆっくりマイペースに咀嚼してごくん。と飲み込み言っ た。 「こんなに朝が忙しくて大変だなんて、知らなかったよ・・・」 ちん♪とオーブントースターが鳴った。 あと何回この音を聞けば朝食の時間が終わるのだろうか。当分は パンを食べたくない気分にさせられそうだと、ジョーはため息をつい た。 「姫もときにはゆっくり寝坊でもしたいだろうさ」 受け取ったシリアルにソイミルクをかけた。 「お勤めご苦労さんだな!(にやにや)」 やっとできたふわふわふわふんわりのスクランブルエッグをたっぷ りとロールパンに挟んで頬張る。 「今後はフランソワーズが大人を手伝えない日も出て来ると思うか ら、みんなも協力してくれないか?」 「てっきりジョーは(今まで以上に)亭主関白になると思ってたの に!」 ジョーの言葉に間髪入れずに突っ込むピュンマは躯を伸ばして、 オレンジジュースのパックを手に取った。 「調子悪いのか?」 ジェロニモはデザートのヨーグルトを彼の人差し指よりも小さな スプーンですくう。 「夏風邪でもひいたのか?」 ジェロニモの言葉をついで、アルベルトが家族を代表するように 尋ねた。 「ジョー、それならフランソワーズを儂のところに連れて来な さい」 ギルモアがケチャップをたっぷりかけたスクランブルエッグを 口に運ぶと、彼の立派は口ひげを赤くした。 「いえ、風邪じゃありません」 「じゃ、どうしたんじゃ、フランソワーズは?」 「・・・ああ、・・・でも、博士には報告しておいた方がいいの かな?」 独り言のように呟いたジョーは、皿の上のベーコン巻きアスパラガ スを口に放り込んだ。 ギルモアだけでなく、家族が、再び手を止めて彼の”報告”を待つ 中、張大人が新しく焼き上がったロールパンを入れたカゴを手にダ イニングルームにやってきた。 喉にごくん。と、口に放り込んだものを通した後に、ギルモアが座 る席にむかってジョーは姿勢をただした。 「彼女の生物学的バイオリズムに合わせてこれから生活をしてい こうと話し合いました。ちょうど今の仕事先との契約も切れるし、 この不況時、契約更新ができるかも解らないので、彼女の望むこと を最優先に、僕たちの遺伝子共有者を増やす努力をしようと決めま したので、よろしくお願いします」 「「「「「「?」」」」」」 ダイニングルームに浮かび上がる無数のクエッションマーク。 「・・・・と、いうことは、じゃ」 ギルモアはジョーから視線をお皿の上にスクランブルエッグに視線 をうつして、静かに言った。出来立てのそれはほかほかと優しく美 味しそうな湯気をたてて次の一口をギルモアに促している。 「・・・・・フランソワーズの・・・に、合わせて、今後は集中的 に子づくりに励むと?」 超大人の手から離れたカゴが落ちて、焼きたてのロールパンが床に 転がった。 「やだな、博士・・・。そんなダイレクトに・・・。せめて、家族 を増やすと言ってください、まだ朝なんですから」 ほんのり頬を染めたジョーは、恥ずかしさを誤摩化すように大急ぎ で皿の上を片付けて、契約社員として働く先へと出掛けて行った。 「イワンが拗ねなければいいが。」 時間が止まったままのダイニングルームに穏やかな波音と海鳥が鳴 く声が響き渡るほどの静寂に包まれていた。 デザートのヨーグルトにワイルドベリージャムをのせて食べ終えた ジェロニモが、デザート用のスプーンをテーブルに置いた音で、時 間が動き始めた。 「つーか、・・・できるのか?」 ジェットの素朴な疑問が口火を切る。 「・・遺伝子共有者・・・・?って、子ども???え? 子ども?!」 「クローンだったり、しない、アルか?」 「姫は、その・・・いや、ジョーもだが、・・・博士?」 「2人は、そういう家族を増やす・・・生物学的な繁殖機能が 備えられているということで、あってるのですか?」 家族の視線がギルモアに集まる。 ギルモアはじいいいいっとスクランブルエッグを見つめたまま、 言った。 「可能性は、2人の努力次第じゃ・・・・」 昨夜が生物学的バイオリズムが出した、遺伝子共有者を有する ために最も適した日であったために、今朝は伴侶となった人の許しを 得て、自室のベッドで安らかに眠っていたフランソワーズは、夢の世 界から、ダイニングルームで朝食をとる家族たちの歓喜に近い雄叫 びにより、起こされた。 「・・・・・・え・・っ!?」 フランソワーズがフランソワーズであるために、その会話の内容 は全て耳に届いてしまい・・・。 「ジョーっ!ひどいわっ!!どうしてっ、どうして私たちのプライ ベートなことをみんなに言っちゃうのっ!?」 フランソワーズが手にするもの全てが、帰宅したばかりのジョーに むかって投げられた。 「博士には報告する義務があるだろう?僕たちの躯のことだしさ」 見事な反射神経で、愛妻が投げて来るものを一つとして取りこぼす ことなく、キャッチしていく、我らが009。 「朝の食卓の席で言う必要ないじゃないっ!みんなの前で言う必要 だってないじゃないっ!!」 「けれど、みんなの協力があれば、目的達成はよりスムーズに・・」 フランソワーズの周りには、もうすでに投げられるような物は見当た らない。 「ばかああああっっ!!ミッションじゃないのよっ!」 「いや、これは僕とキミにとっては大切な人生のミッションで」 仁王立ちになった彼女は、がし。と室内で5番内に入る家具をがっ しりと掴んだ。 「もおおおおおおおおおおおっ!!!」 「落ち着いて、フランソワーズ・・・それは、いくらなんでもっ!」 「いやああああああっっ!!」 「うわあああっ!」 恥ずかしくて家族たちの顔をまともに見られない!と、フランソ ワーズは、実家(フランス)へ帰らせてくださいっ!と、初めての 夫婦喧嘩が勃発した夜。 家族たちはその物音の激しさから、一晩中若夫婦の部屋の壁 にへばりついていたと言う。。 最愛の兄、ジャンへ伴侶となった人に対する愚痴の電話をかける と、さっそく飛行機のチケットが最速便にて送られてきた。 そして、その朝の報告以来、遺伝子共有者がこの世に現れる可能性 のパーセンテージを下げ続けている。 end. 「・・・結婚して変わるのは、男じゃないと思う」 朝の食卓にて、彼はそう家族に報告したことを付け足しておく。 写真素材 ミントBlue
*うーん...朝の食卓が好きな方のイメージを壊してしまったら、ごめんなさい。
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