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ciel fourmillant d'étoiles/水無月りら様から頂きました!
ciel fourmillant d'étoiles。
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海沿いに、水平方向に井桁に組み合わせて建てたLog Home。
海側に面した部屋(リビングルーム)には、海と空との境界線を見分けることが難しい青だけの世界を飾るガラス窓がある。昨夜の嵐が嘘のように穏やかな夜風と戯れる波を描く。



リビングルームに置かれた安楽椅子に深く腰を下ろし、夕方の早い時間にさっぱりと汗を流したギルモアは、室内着として愛用している鶯色に染められた麻の作務衣に身を包み、故国の言葉で綴られた研究書を膝に抱えていた。

夕食を済ませ、就寝までの自由な時間。食後にダイニングルームからリビングルームに移ると、自然と集まって来る家族とたわいない会話を楽しんだり、テレビから中継されるスポーツ観戦に夢中になるときもある。たまに胸を痛めてしまうニュースを聞いて、自分たちの使命を感じて長く家を空けることもあった。


ギルモアは集中させて視線を走らせていた文字から顔をあげると、藍色に染まったガラス窓に立つ青年に気がついた。


「・・フランソワーズ、麦茶のおかわりをもらえるかのう?」





じっとりと躯にまとわりつく夏独特な熱を含む湿気に、いつの間にか体力を吸い取られていく。
人工的に気温を下げて、湿度を減らすことも可能だけれど、自然に逆らうことなくありのままの世界に自分を置きたいと願うジョーがいた。しかし、同居するギルモアの体調を考えれば、自分勝手にエアコンディショナーの電源を切るような行動はできない。

自身を自然の場所に置くために、彼はリビングルームから続くバルコニーで過ごすことをを好んだ。
そこからなら、リビングルームで過ごす家族の様子を眺める事も、会話に参加する事も可能だからだ。



ジョーの耳に、ギルモアの声が聞こえた。
そしてその声が誰にむかってかけられたものかも、同時に知る。

ギルモアと会話する人の声の主を意識している自分に気づくと、両腕をバルコニーの柵の上に置いて、重心を預けるようにして背をまるめた。

姿勢を変えたために、見上げていた空から視線が海へと落ちる。
空の色を写し取った海は、星たちの光をうけて輝き、その動きを止める術をしらない波が、砂浜に向かって寄せては引いてを繰り返し、波の上に描く月明かりの白い影がレースのカーテンのように揺れていた。

「ジョー、お風呂を先にどうぞ」

ガラス越しにでなく聴こえてきたフランソワーズの声に、少し緊張しながら、ジョーは彼女の方へは振り返らずに後ろ髪を揺らしただけで、答えた。

リビングルームからバルコニーへと続くドアが薄く開かれている。月の光がフランソワーズの亜麻色の髪をなでるには少し遠い。

「・・・思ったよりも、今日はすずしいのね・・」

歩み寄って来る足音とともに、フランソワーズの声も一緒にジョーへと近付いてきた。





「・・ふむ」


ギルモアは安楽椅子からからだを伸ばし、ローテーブルの上に置かれた冷たい麦茶が注がれたグラスを手にしたはずだった。しかし、そのグラスの中に頼んだ飲み物は注がれておらず、無色透明な四角いキューブだったものが姿を変えた液体になってしまっていることに、ため息をついた。

「フランソ・・・」

グラスの表面に浮かんでいた水滴がぽたり。と、膝上に開いていたページにひと雫落ちた。

「・・・寝るかの」

手に持っていたグラスをもう一度、ローテーブルの上にあるコースターの上に戻し、ページにしみ込んでしまった水滴を気にする事もなく、研究書を閉じて立ち上がる。

小脇に抱えた研究書を持ち、リビングルームを出て行くギルモアが、ドアノブに手をかけてひねり、一歩半ほど左足を引いてドアをあけたときに、ふと、バルコニーとリビングルームを隔てるガラス窓の方へと振り返った。

寄り添うように星空を見上げる2人の背が、ルームライトに反射して映り込んだリビングルームの室内に重なって、ギルモアの目に映る。

大きな鼻に負けないほどに高くなった頬に、白い立派なひげが揺れ、リビングルームのドアが静かに閉じられた。



62-hoshizora2.jpg

「綺麗、ね」
「・・・うん」


星空を見上げる2人を羨ましく思う星が、
きらりと瞬いた・・・。


















end.






*いただいたイラストに大興奮の私っ!ですっ!!


水無月さま!
素敵なイラストをありがとうございましたっ♪
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