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キミに一番似合うのは。
フランソワーズは迷っていた。

彼女の左の手にあるそれは、可愛らしいガラス作りの靴がついたペンダント。
8月も過ぎて暦の上での季節はすでに秋であるけれど、現実は、ぎらぎらと照りつける眩ゆい太陽が青い空に描かれる白い雲を限りなく白く輝かせている。
7月中旬から始めた夏の装いに、まだまだ活躍の場がありそうな勢いのため、左手に持ったペンダントの出番も多い。

同じように右手の上にあるのは、白い貝で象られた甘くないデザインの、小さなリボンのイヤリング。
リボンのデザインは一歩間違うと、大げさに甘くなり”時代遅れ”な印象を与えるために、バランスが難しい。
けれども、今、フランソワーズが手に載せているそれは、小さく無駄な飾り気もない、とても落ち着いた結びをした”リボン”だった。
見つけた瞬間に、これ!っと、迷う事なく買った一品。

左右の手のひらに載せたそれらは、どちらもフランソワーズのお気に入りであり、彼女が身につけるために持つ数少ない装飾品の中でも、使用回数が多い二つ。



張大人が、「リボンのイヤリングのさりげない上品さが可愛くとても似合うアルヨ」と言い、「杏仁豆腐のように繊細で甘さ控えめネ!」と褒めた。
グレートは、胸元をさりげなく飾るガラスの靴がフランソワーズのイメージにピッタリだと、覚えきれない彼独特の台詞まわしで30分くらいは讃辞の言葉を並べた。
「いいね!可愛いよ、すごくフランソワーズに似合ってるね。それってイヤリングだけだった?今度お揃いでペンダントがあるかみてみたら?」と、女友達のようなアドバイスをくれるピュンマには、買ったその日のうちに付けて見せた。
ジェットはどっちでも良さそうで、興味がない感じだったけれど、ガラスの靴の繊細な輝きに、「いーじゃん、それ」と、呟いた。
耳元のリボンの形が甘くないデザインであることを見て、大人過ぎず、子ども過ぎず、それくらいがちょうど良く似合っていると微笑んだのは、アルベルト。
小指で恐る恐る、触れたガラスの靴に割れないように気をつけろ。と、注意をしたジェロニモは、その小さく細やかな技術に日本だな。と、笑った。
ガラスの靴が邸のリビングルームでキラキラと光るのを、ミルクを飲みながら面白そうに、光を追いかけるイワン。
ギルモア博士は、フランソワーズが身につける物ならなんでも可愛い、可愛いと褒めちぎる。

「・・・ジョーだけなのよね」
華奢で繊細なガラスの靴のペンダントをを見ても、上品で愛らしいリボンのイヤリングを見ても、いつもすうっと表情を長い前髪に隠してしまい、フランソワーズにそれらがどう似合っているのかなどの台詞は1つ彼の口から語られることはない。

フランソワーズは手に持っていた二つを、そっとジェロニモが作った小さな木造りのジュエリーボックスにしまい、、ため息をついた。



そのタイミングで、彼女の部屋のドアがノックされる。

「どうぞ」

フランソワーズは声をかけてから5秒、静かに待つ。
5と6の数字を頭に浮かべる間にため息をついたとき、フランソワーズの部屋のドアノブが遠慮がちにまわされた。

「・・・用意、できたかな?」
「ええ、・・・行きましょう」

薄くあけた部屋のドアの隙間から覗きこむ、女の子のアクセサリ-なんて興味がない人にむかって微笑んだ。

「ルーペンス夫妻の泊まっているホテルに行くのよね?」
「うん」

数日前のミッションで護衛したルーペンス夫妻を空港まで送る、今日。
フランソワーズの耳と首元にちらりと視線を動かしたジョーは、そこに何もないことに、フランソワーズには気づかれないように口の端に力を入れて強く一文字を描いた。

もう何も事件性のある出来事はないとわかっているけれど、それでも”もしも”のことが起きたとき、フランソワーズのお気に入りがなくなったり壊れたりするかもしれないから、今日は身に付けていないのは当然だよな。と、考える。

そんな理由ばかりがつきまとう外出でしか、2人ででかけることが出来ない自分に不満を抱きつつ。

「・・・・・・ペンダントとか、そういうのなくても、いつもフランソワーズは・・キラキラしてるし、十分に綺麗だから」
「え?」

ジョーはいつものように、長い前髪に表情を隠して、早足に階段を降りて行く。

「あっ・・・」

彼が言った言葉を飲み込めないままに、フランソワーズは慌ててジョーを追いかけた。

「・・・待って、ジョー」

ジョーの手が邸の玄関を押し空けると、差し込んだ強い光が白くまわりを消してしまう。
すべてを白に塗り替えてしまう光の中で、フランソワーズの瞳に写るジョーは逆光のせいで、切り絵のような形だけだった。


波音と潮の香りがする、光の中に進むジョーに、慌てて履いたサンダルの右足のストラップボタンを、バレエで鍛えた躯で膝を折ることなく腰を折り、パチン。と、止める。
そのままその足を一歩前に足を出し、左足を跳ね上げて、サンダルのストラップボタンをパチン。と、留めて大きく一歩踏み出して、彼を追いかけた。
かかとのあるサンダルが、こん、こん、こん、と早足にジョーに近付く。

玄関を出たフランソワーズが、「ジョー」っと、名前を呼ぶと、彼はジーンズの右ポケットに突っ込んでいたキー・ケースを取り出し、何かにつまずいたように躯を揺らして足を止めた。





「・・・・いつも笑ってるキミには、何もいらないよ・・・・・。」





ちらりとかすかに顎を肩に寄せて振り返ったジョーの瞳の中に、戸惑い微笑んだフランソワーズがいた。



「笑顔が一番、似合ってる」








end.








*・・3の笑顔は最高です・・・。いただいたお話の最後のイラストの微笑む3に・・・



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