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君に振り回される自分がいる/6


家族や友人たちと遊園地内で離れてしまった場合、最近は小学生でさえ持っていても当たり前になってしまった携帯電話を使い、連絡をとるのだろうが、携帯電話を使うという手間を惜しんで使ってしまう、携帯以外の通信機器が彼と彼の家族の間にはある。

通信可能な距離ならば、携帯電話よりもちょっと人には言えない家族間のみの通信機を使い、手っ取り早く自分たちの合流場所を決めた。


ジョーとフランソワーズとは別行動となり、遊園地に隣接する元動物園、現在の植物園内にあるグリーンフィールドと名付けられた広い原っぱのような場所で昼食の準備万端整え、今日の主役を待つ。

昨日の夕方から一生懸命に今日のためのランチを作ったのは、フランソワーズ。
天才料理人も、今日ばかりはフランソワーズ以上の料理を作ることはできないと笑いながら、クーラーボックスからずっしりと重い箱を次々に出していく。


料理は愛情。


今日の料理にふんだんに使われているだろう、フランソワーズの秘密のスパイスの言葉を彼は気づくだろうか?と、ちょっぴり恋愛事に鈍感らしい青年を心配していた。


「凝っていたのお、まさかショーのゲストが最大の敵ボスだった偽・仮面ライダーを倒すようになっておったとはのお、小さい子だったら、倒せんが・・・」


一足早くランチのミルクを楽しむイワンを膝に抱くギルモア博士。


「とっても面白かったアルネ!」
「博士、そんときゃきっと偽物と見破ったってことで話がすすんだんじゃないでしょーかねえ」
「おお、そうか、そうか、さすがグレートじゃな」
「だが。」


先ほどまで観劇していた、遊園地内の野外特設ステージで行われていた仮面ライダー・着ぐるみショーについて興奮気味に会話を弾ませている中、ジェロニモが言った。


「フランソワーズが関わると、ジョーが少し・・・。」


苦笑まじりに彼は一言注意を添える。


「まあ、それはのお・・」
「「・・・・」」
「相手が無傷で何事もなく良かったが。」


ジェロニモは、勢い良くミルクを飲むイワンへと視線を投げた。


「あまり関心しない。」
<ア。気ヅイタノ・・・?>


仮面ライダーの手をフランソワーズの”お尻”の上に置いたことを。


ジェロニモの視線を受けて、イワンはジェロニモをちらり。と観た。
グレート、張大人、ギルモア博士の3人の頭にクエッション・マークが浮かぶ。


「気をつけろ、今度からは。いいな?」
<ハーイ>
「なんの話しじゃ?」
「何かあったアルか?」
「お、主役が来たぞ!!」

グレートの視界に飛び込んで来た、小さな2つの人影。
2人はゆっくりとこちらにむかって歩いていたが、自分たちの姿を確認するや、少しずつその歩みのペースを上げて、しまいには手を振りながら走って来た。

ギルモアの目でも確認できる距離になる辺りで、家族たちは徒競走でもするように駈けてくる2人に微笑んで手を振っていた。




***

ジョーは生まれて初めて限界にチャレンジした。と、言っていい量をお腹に詰め込んだ。

重箱に籐籠のボックス、たくさん広げられたそれらの中に、形よく、色よく詰められたどの料理は、全部彼の好きなもの。

梅おかかと、明太子マヨネーズ、のりたまふりかけの、おにぎり。
太巻きとお稲荷さん。
鳥の唐揚げに照り焼きバージョンもある。
あっさりレンコンの練り辛しの挟み上げ。
ほうれん草のおひたし。
五目ひじき。
出し巻き卵。
ポットに入れた、椎茸のサワー・スープ。
ほくほくコーン・コロッケ。
ミニハンバーグにチーズをのせて、隣にタコさんウィンナーとセロリのオリーブオイル付け。
温野菜のチーズがけに・・・・ホワイトマッシュルームの薄切りとホワイトソールで合えた、白身魚。

それに、・・・・それに、それに・・。


右を見ても、左を見ても、食卓でジョーが美味しいと言い、これ好きだよ。と口にしたことのある品々が並ぶ。

うわー!っと感嘆の声をあげたジョーに、プラスティック・カップに注がれた、麦茶を渡されて。


<「「「「「「おめでとう、ジョー!!」」」」」>



乾杯!








ジョーが取り皿に次々と料理を載せてもらっている間に、彼の携帯電話がタイミングを計ったように3度、揺れた。


"wishing you a day as special as you are... Happy Birthday! P"
"Good Luck on your Birthday! yo, I'm gonna send you some gift. 2"
"Herzlichen Glueckwunsch zum Geburtstag. Sch?nen Tag noch! A.H"
"


初めに頬張った唐揚げと一緒ににんまりと笑いながら読む、海外で生活する家族からのお祝いのメッセージ。

少ししめった短い芝生。
鮮やかな緑色に、日陰をつくる木々の葉が夏の訪れを告げるようとする風にささやき合う。

高く広がる青空に、気持ち良さそうに流れて行く白い雲。
例えようのない形だけれど、芸術にうるさいグレートがアブストラクト・ドロ-イングうんたらかんたらと、ジョーには宇宙語にしかきこえない内容の話しが面白かった。

小学生くらいの男の子たちが遊び始めたフリスビーの黄色が空を横切る。
小さな女の子が、きゃーっと歓声をあげながら走って父親の胸に飛び込んだ。


「・・・・ありがとう」


隣に座っているフランソワーズが、ジョーの取り皿に綺麗に形よく、バランスよく具を巻き込むことができず、何度も、何度も、やり直しをした太巻きをのせた。


「ふふ♪いっぱい食べてね!!」


お店で売っているようにできないの!っと訴えて、張大人に見本を作ってもらい、一生懸命に巻いたそれは、結局成功したのは2本だけ。
2本できれば十分アルヨ!と、励まされたけれど、もっとたくさん用意したかったと、お弁当を詰めながらため息をついていたのを、そっとリビングルームのドア越しに聞こえた。

今日のランチのために、ジョーの好きなものリスト、”遊園地スペシャル・ランチメニュー・献立ブック”なるものを作っていた、フランソワーズ。
その内容をフランソワーズには内緒でチェックしてくれと、グレートが数日前の夜にこっそりとジョーに見せた。

料理の内容が決まらないと、買い出しにいけないからだ。


リストの内容に、ジョーは驚いた。
どれもこれも自分が好きなもので、リストを見ながら、ああ、好き好き!っと、何度も頷いた。
フランソワーズが悩んでいる項目をさっと目を通して、全部好きだから!っと、グレートに告げると、グレートはさりげなくフランソワーズにジョーの好きはこのリスト内容全部、間違いないから自信を持って作れば良いとアドヴァイスをした。

サプライズ予定だったアルヨ!っと確認後に張大人に怒られていたグレートだったけれど、メニュ-がわかって逆に、楽しみで、楽しみで仕方がなかった、ジョー。


昼食中にグレートが取り出したデジタル・カメラをジェロニモが受け取り、写真を撮り始めた。

彼の大きな手にすっぽり包まれてしまうカメラは、写真を撮られていることを気づかせない特技があった。



もちろん、今日この日のために改良に改良を重ねて進化した”虫”たち(G博士とイワンの2人しか今日の”虫”の存在を知らない。)が園内にいるけれど・・・。







総勢6人でとりかかった昼食に、全員が全員苦しいほどにお腹を満たした後、さすがにギルモア博士は午前中のショーでの人疲れか、普段地下の件中室に籠っているための運動不足のためか、うつらうつらと心地よい午後の空気に船を漕ぎ始めた。

ジェロニがイワンと博士と一緒にこのままグリーン・フィールドで一休みしていると言い、張大人は植物園内にある”世界の名きのこ展”と言うエキシビジョンに興奮し、「ちょっと見て来るネ!」と丸い躯をぽんぽん跳ねさせた。
そんな張大人にグレートがつき合うと言い、ぐるりと植物園内も見学してくると付け加える。


「あー・・!もう、動けないっ!」


ギルモア博士つられるように、レジャーシートの上にごろん。と、寝転がったジョーを、のぞきこむフランソワーズ。


「ごちそうさま?」
「うん、ごちそうさま!すっごくすっーーーーーぅぅっごく美味しかった!!いっぱい食べたー・・」
「ケーキは邸でね」
「ケーケ?!・・もう食べられないよ!」
「ケーキは別腹なのよ、日本人でしょ?」
「はは・・それは日本人とか関係なくって、女の子がだよ」


くすくすと笑うジョーに、フランソワーズも笑う。
食べ終えたランチの後片付けを始めたフランソワーズを、ジョーは寝転がった姿勢のまま彼女を見上げた。

亜麻色の髪が、陽光をつやつやと弾く。
ほっそりとした白い手が、日に当たってまるで浜に打ち上げられた貝殻のように輝いていた。


「なあに?」
「え?」


片付け終えたランチボックスたちを、駐車している車に置いて来ると言ったジェロニモをその場で見送り、腕にイワンを抱くフランソワーズが、再びジョーを覗き込む。


「何か言い足そうな顔してるわ」
「え、・・・あ・・・・別に・・・」


ふわり。と、5月の風がジョーの前髪を揺らし、珍しく彼の双眸が表れる。
空の青を切り取った青の中にいる自分と視線が合う。





ボクってこんな表情(かお)してたっけ・・・。


青の中にいる青年は、満たされて、幸せそうで、けれどちょっと照れた笑いを浮かべている。













いつから、誕生日の日に決まって自分に殴りつけていた言葉、”生まれてこなきゃ良かった”って・・・思わなくなったんだろう。


それどころか。

自分の誕生日には願い事が叶うと、どこの誰が言ったのか。
施設ではその月の生まれた子、みんな一緒に祝っていたから、自分だけの誕生日ケーキに灯したろうそくの日を消すような経験なんてない。



だから、願ったことなんて、なかった。
願ったところで、それが叶うなんて信じてんかったボクなのに。





ろうそくの火を吹き消す前に、願いたいと思った内容は・・・


ボクの誕生日にボクは、彼女の好きを叶えて、特別になりたい。





過去の自分からは想像できないくらい変わってしまった、青の中にいる自分にむかってジョーは笑った。







---いいな。・・・・ずっと、ずうっとみんなと一緒に、フランソワーズと一緒に・・・・このままがいいな。










「ジョー、あのね」


じっとまっすぐに見つめられて、その視線がいつもと雰囲気が違うことを感じたフランソワーズは、瞬きを繰り返した。

長くカールした睫毛が起こした風を、青の中にいる自分ではなく、ビュー・ポイントを広げて、フランソワーズと、フランソワーズが抱くイワンを視界に入れた。


「・・・うん」
「おやつにね」
「フラン、もう食べられないよ・・・さすがの009の胃も、降参」


はは、っと、苦笑いするジョー。


「でもマーブルチョコレートをね、今朝早くにコンビニでグレートがたくさん買ってきてくれたの」
「マーブル・・って、え?なんで・・・?」
「ジョーがこのお菓子と一緒に観覧車に乗るのが、夢だって言って教えてくれたのよ・・・」
「へ?」


ジョーは昨日思いめぐらせた妄想を甦られた。

仮面ライダーショーの後、1回だけのフリー券を夕暮れの観覧車に乗る事に決める。
楽しかったわ。と、すごく嬉しそうに微笑むフランソワーズから、お誕生日おめでとう。の、言葉。


見下ろす遊園地のネオンが灯り始める。
空の色がグラデーションを描いて、不思議な空間を作る。

乗っているゴンドラが一番高い位置にたどり着いて。



着いて。




自分世界の妄想シチュエーションだったはずなのに。


<イワンっっ!!>


考えられる事は1つ。
彼の妄想を読み取れる人物が昼の時間であること。そして、その妄想をシェアしてしまった人物。

レジャーシートの上で寝転がらせていた躯を跳ね起こさせて、フランソワーズの腕に抱かれているイワンを睨んだ。
別に悪いことなんてしてないよ。と、言いたげにイワンはお気に入りの黄色いぼんぼりがついたおしゃぶりをモゴモゴと動かす。


<ジャア、じぇろにもガ戻ッテキタラ2人デ乗ッテキタラ?>


すました顔でジョーにではなく、フランソワーズに言った。


「観覧車なら博士も大丈夫だから、みんなで行きましょうよ」
<イヤ、博士ハあれデ、アマリ高イ所ハ好マナインダヨ。キットじぇろにもハごんどらノ規定カラ外レテルダロウシ・・・ぐれーとト張大人ハ、当分戻ッテコナイ>
「でも、せっかくジョーの・・・」
<午後ハ、”半分”自由行動デイインジャナイ?ネエ、じょー>


ショーの中で彼女に嫌な思い(仮面ライダーの手をフランソワーズのお尻に触らせた)に対する(あくまでもジョーではない)イワンなりのお詫びのつもりらしい。


<ミンナガツキ合エナイヨウナ、乗リ物ヲコナシテオイデヨ、2、3時間後に、マタ合流シテ、一緒ニ園内ヲマワッタライイト思ウ。僕モ、タクサンノ人ノ思念ニチョット疲レタシ>


---本当は、それくらい全然平気なんだけどね。






タイミング良く荷物を駐車している車に置いて戻って来たジェロニモも同じような内容(イワン、事前にテレパスを飛ばして、ジェロニモを巻き込んだ)で、2人で遊んでくるように勧められ、背中を押させる形で、植物園から遊園地内に戻って来たジョーとフランソワーズ。



食べてすぐだから、絶叫系はダメ!っと言うフランソワーズに、ボクの胃はそこまで柔じゃないよ。と言ったけれど、フランソワーズは食後1時間はダメ!と、まるで小さな園児にお昼寝を教養する保母さんのように調子で言う。


そんなフランソワーズが可愛いと、頬が緩む。




ショーの後にもらったフリーバスがあるので、どの乗り物でも好きなだけ乗る事ができる、2人。


「ね、早速、観覧車行きましょ!ジョー、好きなのでしょ?」
「う、あ・・・え、あ、もう少し後に・・ほら観覧車は最後って言うのが、定番で・・・」


フランソワーズの鞄の中には筒状の形をしたマーブルチョコレートが3本はいっている。
彼女がスキップするように跳ねると、かしゃかしゃ。っと音が鳴り、ジョーの心臓がおいかけるように、どきどきと鳴る。



---こころの準備がいるんだよ・・・。









興味なんかなかった少女漫画。
施設の中でお小遣いを出し合って買い集めていた女の子たちが夢中になっていた、それ。

暇つぶしに手にとった。




話しの内容は覚えていない。
けれど妙にその”遊園地と観覧車で、マーバルチョコレートのシーンだけは、鮮明に覚えている。




ゴンドラの中でばらまかれた、色とりどりのチョコレート。
主人公は片思いの相手に、・・・・好き。を、伝えていた。















***

園内の地図が欲しいと言った、フランソワーズ。

植物園から遊園地内に戻って来た2人は、園内中央にあるインフォメーション・センター兼室内遊戯(アーケード・ゲーム/AC)場を訪れた。
UFOキャッチャーが好きなフランソワーズだけれど、駅近くのゲームセンターの外のゲーム機、それらでしか遊んだ事がない。

ばこばこと叩いているグループの笑い声に誘われるように視線を向けると、ジョーがやってみる?と声をかけた。

ずらっと並んだワニがランダムに出て来るので、それを付属されているハンマーで叩くと言う単純なゲーム。
隣にはモグラヴァージョンがあるが、家族に連想させる人物がいるので、それはちょっとと、フランソワーズは笑った。


「003ですもの!これくらい100点よ!」と、鼻息荒く胸を張ったフランソワーズだけれど、ある得点を超えて、”も~怒ったぞー!”と声が流れると、ほぼ一斉におもちゃのワニが出てきて、出て来るスピードもあがる。

ワニワニ・ばにっく!と言う名のゲームの通り、彼女はパニックに陥った。


「きゃああああっや、や、や、っやだっ!!やっやっ来ないで、来ないデッs!」
「ほらっしっかりフラン!!、そっち、ほら、こっちも、ほらほらっ!!」
「いやーっんっ、いやーっっやっやっや、もおおおおっ!!」

ハンマーを振り回して、ぱこぱこぱこぱこワニを叩くフランソワーズの慌て具合にジョーはお腹を抱えて笑う。

イテ!イタ!っとワニが叫ぶ。


「フランっフランっ!こっちこっち」
「やああああああっ」


ゲームが終わったときの得点に、不満顔のフランソワーズ。


「こんなのっ!ズルいっ無理よッ絶対に無理だもんっ!!」


と、逆ギレモードに、ジョーは、「じゃあ見ててね」と、100円玉をいれ、フランソワーズからハンマーを受け取ると、にやっと笑った。


「よ、よ、よ、よ、よ・・っと」
「噛まれちゃう、ッジョーっ、噛まれちゃうっ!!」
「ない、ない。大丈夫って・・ほっ、よっ!っと・・ね。か、ま、れ、ないっと!!」

見事にワニを叩いていく余裕のジョーに対して、ちょっと面白くなく感じた、フランソワーズ。


「・・・・噛まれちゃえ!」
「あっ邪魔しないでよっフランっ!」


ハンマーを持つ手の、右脇をくすぐった。


「ワニさん、ジョーを噛んじゃって!」
「こらっ!よっ・・・・と」
「もっ!噛まれちゃって!」

ジョーの右腕にぶら下がる、フランソワーズ。
けれど、素早くひょいっとハンマーを左手に持ち替えて叩き続ける、ジョー。


「噛まれませーんっっと・・」
「もっもっもおおおっっ!!!」





”あー負けちゃった・・・”と、ゲーム機が降参したとき。
邪魔をしたにも関わらず、高得点の更新をしたジョーに対して「009だもんっ、当然よね!」と、言いながら拗ねるフランソワーズを引っぱって、対戦式のバスケットボール、3ポイントシュート・ゲームにジョーは誘った。


「なんか、久しぶり♪ゲーセンで暇潰してたからなー・・・」


華麗にシュートを決めていくジョーに、戻ってくるボールが追いつかない。
ジョーの圧勝に、ますます拗ねていくフランソワーズの手を引っ張って、エア・ホッケーゲームへと連れて行く。

ゲーム台の穴からの空気に浮いた固い円盤(パック)を、マレットもしくはスマッシャーと呼ばれるスタンプのようなラケットで打ち合う。

初めて見るそのゲームをジョーに軽く説明してもらい、フランソワーズは”009”に真剣勝負を挑んだ。


「ゴール!」
「させませんっ!」


白熱する2人の熱戦に通りかかった人たちが素晴らしいラリーにほお、っと感嘆しつつ、あまりに真剣なやり取りに笑いを提供したりもした。


「うおりゃ!」
「いやああああああああああっ!!」


バックがフランソワーズの守るポケットに轟音ととにも入り、最後のゴールをジョーが決めた。

今回のエア・ホッケーゲームでの勝負もジョーが勝利をおさめた。
ますます、ぶーたれるフランソワーズの手を取り、ジョーは一角にあるお菓子ゲーム機やフランソワーズの好きなUFOキャッチャーへと連れて行き、彼女の機嫌を直そうと移動する途中、フランソワーズがジョーの腕を引っぱりその足を止めさせて、あれはなあに?と、ずらっと並んだ機種の1つを指差した。


「・・ああ、写真だよ。あの中に入って写真を撮るとシールにしてくれるってヤツだよ」
「・・・写真をシールにしてくれるの?」
「そう。撮ったシールを友だち同士で交換したり、持ち物にはったりして、すごくブームになったんだけど、今じゃもうそれほど・・・」


派手な広告デザインのプラシティック制の垂れ幕がかかる大きな箱の中から、チカッとフラッシュが光り、賑やかな声が聞こえている。

ブームは去ったけれど、まだ人気があると言えば、あるのかもしれなかった。



ジョーが知っているとても流行っていた当時に比べて、台数は激減し、使用率も低くなっている様子で、他のゲーム機に比べて隅っこに追いやられているように感じるけれど、機種の周りで出来上がったシールシートを、どこから持ち出したのか、業務用の大きなはさみで切っている姿の女の子たちのグループがいた。


「ねえ、やってみたいわ♪」
「・・・いいんじゃない?」


---フランソワーズのプリクラ、・・・欲しいなぁ。
  どこに貼ろうっかな。
  ・・定期入れ、携帯電話・・それとも・・・。





「ね!ジョーのお誕生日シールを作るの♪」
「え?ボク?!」



---いらないよ!自分のなんてっ。





「そうよ♪ほかに誰がいるの?」


フランソワーズに決まってるだろ。と声を大にして言いたいのを我慢する。


「・・・・・って言うか、ボク独りで写るの?やだよ、そんなの」
「どうして?」
「どうしてって・・・こういうのは、ほら・・みんな友達とかこ・・」




---恋人同士とかが・・・。


  遊園地に遊びにきた記念にって、さ。



  別に、”友達”・・・同士でも。











できたら、本音は”恋人”でプリント倶楽部/プリクラしたい。


「じゃあ、私と一緒ならどう?みんなとは後で一緒に撮りましょうね♪」
「まあ、・・1人じゃないんだったら」


---携帯電話に1枚、貼ろうかな。





どの機種を選べばいいのかわからないフランソワーズに、全身を撮るのか、顔だけメインで写るのにするのかを、ジョーは尋ねた。

プリクラに関する一般的な知識があるジョーだけれども、本当の所はフランソワーズと同じ”未体験”。

今の世の中、誰も読まなくなってしまっただろう、機種にラミネートされてぶら下がっていた説明書を読み、垂れ幕をくぐってライトで眩しい中途半端な密室へと入っていった。

変にハイテンションな説明アナウンスを耳にしながら、ペンタブレットを手に、フランソワーズと一緒に画面を睨みながら、シールのタイプ、サイズ、シリーズ、などを細かく決めていく。

「2枚プリントしてくれるのね?じゃあ、1枚は16分割で、もう1枚は、大きめにしましょう♪」


さすが、女の子?プリント倶楽部の順応力にジョーはこころの中で苦笑する。


「カキコミ有り?」
「有り!」
「フレームは?」
「・・いっぱいあるのね・・・・」
「みたいだね、こんなの選べないよ・・・」
「芸能人、変装、メルヘン、激可愛い、ミラクル、イベント、アニメ、スペシャル、・・・・・意味がわかんないわ、このフレームカテゴリー・・・」
「・・・・うん」

フレームチョイスに制限時間があるために、急がないといけないが、選択肢の多さに戸惑う2人。


カウントダウン10秒を切ると、急かせるような音楽が鳴り始めて、慌てるフランソワーズ。


「ジョー、どうしましょ?」
「フランが決めてよっ」
「そんな!ジョーのお誕生日記念シールだもんっジョーが決めて!!」
「え、ええ?!写ろうって言ったのフランs・・・」
「あ・・」


ちゃらり~ん♪と、音がなり、偶然ペンタブレットが触れていたフレームに決まってしまった。


変更は3回できるらしい。


「・・・どうする?」
「これでいいわ♪」
「・・・でも、これ・・・・・て、まあ、いいけど」


フレームカテゴリーは”激可愛い”。
ピンク、ピンクなフレーム。


「ものは試しだもの、撮っちゃいましょ♪気に入らなかったもう一回ね!」


モニターに”撮影するよ!”と表示が出ると、上、中央、斜め下に設置されているカメラを選ばないといけなかった。


「うーん、どれがいいかしら?」
「ふつう」


中央を選ぶジョーに、どうしてさっきのフレーム選びのときにそういう風に決められないの?と文句を言うフランソワーズ。


「わかんないよ、ああいうのは!・・・ほら、カメラ見てっ」


直立不動で横に並ぶ2人。
ジョーはフランソワーズを、フランソワーズはジョーを、カメラ写りを確認できる画面越しに見る。


”撮影しまーす”





「・・・なんか、ポーズがいるのかな?」


見本の写真には、雑誌に乗っているような色んなポーズをつける、女の子たちがいた。




3.


「どうすればいいの?」


2.



「例えば・・」


1.


ほらっと、機械画面の周りに、所狭しと貼られまくった無数のプリクラシールたちを指差すジョー。



カシャ!



「「あ・・・」」


画面に写ったのは、画面に近付きすぎてアップになった素面のジョーだった。


「ふふふ♪これ!これいいわっこれで決定♪」
「ダメだよっ、こんなのっ!!!ダメっ絶対にダメ、ダメ!!取り直しっ」


決定ボタンを押そうとするフランソワーズを慌てて止める、ジョー。


「これがいいのーっ!」
「やだよっ絶対にヤダっ」
「いいのっいいのっ!!決定♪」
「ダメダメっ、絶対に!フランっこの画像の使用は認めないっ」
「知りませーん!」
「リーダー命令!」
「こういう時には使えませーん!」


中途半端な密室内で、笑い合って揉める2人。
いつの間にか、ジョーのアップ写真は保存されてしまい、次の写真撮影カウントが始まっていた。


カシャ!っと、フラッシュと一緒に鳴ったシャッター音に、2人の悲鳴が重なる。


「あーーーーっ!!」
「きゃあっ!!」


笑って取っ組み合う(じゃれていると言った方が良い)2人がそこにいた。


「「・・・・」」


その画像を目にしたとき、反射的に2人はぱっと距離をとるように離れた。


「え、あ、あの・・あと、何回撮影できるのか・・な?」
「ら、ラスト、チャンスじゃないの?・・だって、・・・」
「そ、そ、そ、そう、いや、あと・・あと!2回できるみたいだよっ」
「よ、よかったわ!」
「次、次だね、次」
「ええ!次いきましょう!次はちゃんと撮りましょうね!」



三度目のシャッター音がなったとき、意識しすぎて変に距離をとって立つ、フレーム内に収まるギリギリの2人の顔は真っ赤だった。







写真を撮り終え、予定よりもイマイチなそれらだけれども、”初めて”だしね。とお互いに照れ笑いしつつ、今日の日付と名前を書いた。




”激可愛い”のフレームは、全面ピンク色に、まるっこいフォルムの可愛い天使のキャラクター・イラストが色々な楽器を持って飛んでいた。

偶然に決まってしまったフレームだけれど、フランソワーズの目には、ジョーのお誕生日をお祝いしている天使さんたちに思えた。



けれど、どこをどう見ても・・・
”仲の良い”2人を祝福する天使たちにしか見えなかった。








シールが出来上がるのをプリクラ機の中途半端な密室から出て待ち、プリントされたシールを銀色の受け取り口から手にして、2人は出来上がったそれをチェックした。・・のは、一瞬。


「すごいわ!!ね、ね、ね♪ほんとにシールなのね!」


邸に帰ってはさみでジョーの分をあげるわね。と、直視できないプリクラシールをカバンに仕舞う、フランソワーズ。


「ぼ、ボクのこのアップのっいらないからっ」


クオリティの高い写真に2人は再び気恥ずかしさに顔を染めつつ、気分を変えるために、ジョーが遊ぼうと指差したのは、体感筐体 のF1カーゲーム機。

2人はプリクラを忘れようとする勢いに、はしゃいでゲームを楽しみ、ここでも(3戦して3戦とも)ジョーの圧勝。

フランソワーズの機嫌がまた、斜めに落ちた。




***

カーレースゲームのトップの記録を余裕で抜いたジョーはご機嫌に、JOEと名前を打ち込んだ。


「もっ、ジョーばっかり!」
「フランソワーズだって、けっこういい線いってるよ、さすがだね」
「褒めてるようで、褒めてない!」
「・・・ボクに勝つなら、がんばって通わないとね」
「絶対に勝つわっみてらっしゃい!!」
「いつでもチャレンジを受けるよ、なんなら、PS2でもやる?」
「あのちっちゃいコントローラーがヤ」
「そういえば、前もそんなこと言ってたよね?」


ジョーはフランソワーズのご機嫌を戻そうと、フード店が揃う場所へと足を向けた。
そこでソフトクリームを・・と、考えている。


ぷんぷん。と、不機嫌にジョーについて歩くフランソワーズが園内で”眼”のスイッチを入れて、くるっと見回す。

余裕で彼女の能力範囲内の遊園地と植物園。
家族がいるであろう、方角が解っているので、時間をかけずとも家族を見つけられた。


”世界の名きのこ展”内にまだいる張大人と、案内係のおネーさんに自分はイギリスのロイヤル・アカデミー出身だと自慢するグレート。

グリーンフィールドのレジャーシートの上で、気持ち良さそうに昼寝をしているギルモア博士と、イワンを膝に抱きながら瞑想するジェロニモ。の、近くを小さい子どもたちが外国のあかちゃんにむかって手を振っていた。
イワンも小さく応えるように手をあげている。


「・・・・フラン?」
「え、あ・・・」


ジョーに呼びかけられて、眼のスイッチをoffにした、フランソワーズはペロっと舌を出して肩をすくめた。


「大丈夫ってわかっているのだけど・・・」


優しい、フランソワーズ。と、思うけれど、周りの”優しい女の子”のそれと理由が少し違う。


「ボクがいるし、・・・何もないよ」
「・・・・・ええ、わかってるわ。ごめんなさい、・・でも、ね?やっぱりね?」
「あのさ、フランソワーズ」


ジョーは足を止めた。


「?」


フランソワーズも、止まる。


「・・・」


ジョーは言おうとした言葉を、やっぱり言わないと、決めた。


「ふふ、”癖”なのよ」
「観覧車」


フランソワーズが続けようとした言葉を遮るように、ジョーは少し声を大きくして単語をかぶせた。


「本当は、閉園前とか、もっと日が暮れた時間に乗りたかったんだけど、定番に沿ってさ」
「?・・・じゃあ、そうしましょうよ」
「今、乗りたい」


他の乗り物をすべて飛ばして、まっすぐに観覧車乗り場へ歩き出した。

ジョーの隣を歩くフランソワーズのバックには、2枚のブリクラシールと、筒状の箱の中でかしゃかしゃとシャッターを切るような音を出す、マーブルチョコレート。







「お二人様ですか?」

世界最大級!という宣伝の通り、乗り場から見上げる観覧者の大きさに、フランソワーズは感嘆の声を上げ、後ろに倒れないか心配なほど反り返って見上げて目をまるまると見開く彼女に、くすくすと笑いながら着ぐるみショーに付属しているフリー券を切った、チケット切りの人。


「一周に約30分かかります、お楽しみください。」



a href="http://lovezero9.blog45.fc2.com/blog-entry-466.html" title="君に振り回される自分がいる/7">7に続く。







*やっぱり・・・・つ、続いてしまいました(涙)
もじもじ9は願望妄想の通りに、観覧車告白するのかな!?

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