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視線の先/ボクは今から来年の夏が心配です。
キッチンとダイニングルームを区切るのは、キッチンカウンター・テーブル。その上は広々としているが、むかってダイニングルームから見た右側の、収納棚となっている場所の一角に、いつの間にやら”フランソワーズ・コーナー”が出来ていた。

彼女が大好きな食玩コレクションに、卓上日替わりカレンダー『水木○げる・浮世絵/妖怪道365』

つい先日までは日替わり”仮面ライダー”たちがふんぞりかえっていたが、現在は、お中元、お歳暮シリーズの食玩が、デパートの品物展示室のごとく、ディスプレイされていた。
手に入れる食玩の細かなディテールに、すごい!すごい!とフランソワーズが言うので、遊び心から実物と比べてみようと、ギルモア博士が食玩になっている実際の商品を1つの買って来た。
それは、洗濯洗剤などがぎっしりと詰まった、重たい箱だった。

フランソワーズは食玩のそれと本物を比べては、すごい、すごい!をいつもよりも多めに繰り返し、日本のお菓子のオマケのようなおもちゃ1つにも手を抜く事がない、精巧さと情熱に感嘆のため息をついていた、先日。

季節は早々と移り変わり、キッチン・カウンターの上のカレンダーも、2/3ほど切り取られて厚みをなくしていた。

「お早う、フラン」
「お早う♪ジョー、珈琲?」
「うん」

ジョーの部屋のドアが開く音を聞いて、フランソワーズはタイミングを計る。
彼がダイニングルームに入ってきたときには、彼専用のマグに注いだ珈琲が、ジョーがテーブルについたベストタイミングでフランソワーズの手によって運ばれる。
そして、彼女がキッチンに戻れば、チン♪と、甲高いベルがなり、ジョーが大好きな、焼く前にたっぷりと塗ったバターがしみ込んだトーストを皿の上に載せ、フランソワーズ特性のドレッシングがかかったサラダと一緒に、珈琲の後やってくる。

「フラン、朝刊は?」
「ジェロニモが持って行ったわ」

再びキッチンに戻ったフランソワーズの手で、油を落とすためにキッチンペーパーに包まれたベーコンが、フライパンにのせられて、双子のように卵が2つ落とされる。

「その、ジェロニモは?」
「朝のお散歩に出掛けたわ」
「で、新聞は?」

じゅううっと焼けるベーコンの香り。
ジョーはマグを手にもち、いれたてのブラック珈琲を嘗めるようにすすった。

「ジェロニモが持って行ったと思うわ」
「ふうん・・・」

キッチン・カンター越しに、自分の朝食を準備してくれるフランソワーズの後ろ姿。
見慣れてしまった定番の朝の光景。
けれども、ジョーにとってはかけがえのない、何事にもかえられない、大切な時間。

「ジョー、今日は?」

フライ返しを手に取ったタイミングで、ダイニングルームの方へと振り返って尋ねる、フランソワーズの笑顔。

「今日から一週間大学のバイトはないし・・・、どうしようかなあ。博士は?」
「イワンが今朝起きたの」
「ああ、じゃあボクの出番はないね」

フランソワーズはくるりとジョーに背をむけて、出来立てのベーコンエッグを皿にのせた。
それから、今朝のデザートである、ジェロニモが昨日買って来た秋の果物代表の梨と、自分用の紅茶を入れたティカップをのせ、トレーと一緒にテーブルについた。

「はい、どうぞ♪」
「ありがと」

ばくん。と、トーストを齧りながら、出来立てのベーコンエッグに視線をおく。使ったトレーをキッチン・カウンターに置いて戻って来たフランソワーズは、ジョーが朝食をとっている間、用事がなければその隣に座って紅茶を飲むのは、いつものこと。

「リンゴじゃないんだ?」
「ええ、リンゴじゃないのよ」

ガラスの小皿にある、それが定番のデザートのリンゴじゃないことに気づいたジョー。

「もう・・・秋かあ」
「それにしても、まだまだ暑いわ・・・」

多湿高温の環境が苦手らしいフランソワーズのちょっと眉間に皺を寄せた、拗ねた物言いに苦笑しつつ、ジョーは朝食をすすめる。

「今日はどうしよっかなあ・・」

不意にフランソワーズ越しにジョーの視線は、キッチンカウンター右端に設けられた”フランソワーズ・コーナー”を捉えた。
ジョーの瞳のビューポイントが、卓上日替わりカレンダー『水木○げる・浮世絵/妖怪道365』にフォーカスされる。

「どうしたの?」

ジョーの視線の先を追って振り返った先にある、卓上日替わりカレンダーを見たフランソワーズ。

「いや・・・」
「?」

ジョーはなんでもないよ。と、堅焼き目玉を口に放り込んで、かりっとやけたベーコンも一緒に詰め込んだ。




今日は、そうか9月3日なんのか・・・。




9月3日・・9月、3日・・。
9と3の日。


ボクの数字が9で、彼女の数字が3だから・・。





ボクとフランソワーズの日♪


とか・・・。

だから、今日は2人っきりで・・・出掛けようか?って誘う?・・・のは、変かなあ。




いいよね?



軽く、”あ、今日は93だね!”ってッ。
軽くだよ、軽く・・・。




ダメ、かなあ・・。


数字の語呂合わせなんて、この世にどれだけ転がってると思うんだ。と、自分で自分を突っ込んではおく。けれど、フランソワーズと2人で何かが出来る理由になるなら、この際なんだっていい。と、最後には開き直ってみたが、9月3日をボクたちの日と言うなんて、まるでなんでも”記念日”にしたがる女の子たちと変わらないじゃないか。と、自分の発想に少し凹んだ。

「ねえ、ジョー」
「なに?」

卓上日替わりカレンダーから、視線を戻したフランソワーズは、もくもくもくと、懸命に咀嚼するジョーに向って、楽しそうに笑いかける。


「気がついたかしら?今日はね、アタシとジョーの日なの♪」


口一杯に詰め込んだものが、ごっくん。と、飲み込まれて、喉を通りには適していなかったサイズだけれども、無理矢理にそれを珈琲で流し込む。

「ね!9月3日、9と3!アタシとジョーでしょう?」

ジョーは口内が熱さに痛むのなどおかまいなしに、マグの中の珈琲を飲み干した。

「・・・・」
「昨日はジョーとジェット、一昨日はイワンとでしょ・・」


---そうなるよね・・。


9月3日があるなら、その前後もそういうことだ。と、飲み終えたマグをテーブルにおいて、”特別感”を失っていく、93の日。



「でもね、今日はやっぱり3日で、アタシとジョーの日なんですものね」
「・・・」

ふふ♪と、フランソワーズは紅茶を2口飲んで、視線を動かした。
ジョーもつられてその動きを追う。

ダイニングルームの壁の1面は庭に通じる、スライド式のガラスドア。
月は9月を読んではいるが、空の高さはまだ前の月と変わらない。

「・・・そういえば、結局プールとかそういうところ行ってないね」
「そうねえ、海が近いせいかしら?」
<ジョー・・市営プールは今週の14日まで営業している。>
<ジェロニっ・・、>


突然飛び込んで来た通信。
その通信から少し遅れて、ダイニングルームへと入って来たジェロニモ。

「あ、お帰りなさい」
「戻った。」

いったいいつから聞いていたんだよ?と、言う声を瞳にのせてジェロニモを見たジョーにたいして、彼は余裕でにっこりと笑った。


手に持っていた、朝刊。
ジョーに渡したのは、新聞の方ではなく織り込み散らしの方だった。

「あら、まだプールってやってるのね!」

ジョーが渡されたチラシを覗き込む、フランソワーズ。

「・・・・・・・・」

それは市営プールが営業日を伸ばしたお知らせのチラシだった。

「連れて行ってもらえ。」
「え・・?」

ぽん。と、ジェロニモはフランソワーズの肩に手を置いた。

「暇なら、遊べばいい。」
「でも・・・」

フランソワーズはジェロニモを見上げて、次にジョーをみた。
フランソワーズの肩に置いた手を動かして、今度はジョーの頭をぐりぐりと撫でた、ジェロニモ。

「留守番なら、オレがいる。気にするな・・・、バイトがない今のうちに遊んで来い。」








ジェロニモに背中を押されるようにして、邸を追い出された2人。
93の日に相応しいデートになったのかどうかは・・・。

「もっ!!ジョーってばひどいの!!」
「?」
「・・・だってさ!」
「ジェロニモっ!聞いてちょうだいっジョーったら、せっかくのプールなのに、あれしちゃダメ!これしちゃダメ!なのっで、しまいにはもう帰ろうだものっ」
「だって・・フランソワーズっ」
「早々にね、プールから出ようって行ってね、もっ!なんのために行ったのかわかんなかったのよっ」
「だからっ代りに映画に連れてったしっ」
「でも、ジョーが観たいのだったもん」
「キミが観たいのないって言うから・・。でもっ!ドライブもしたし、お○場のガ○ダムだって、ライトとかスモークとかのイベントを見られたし、なんだかよくわからない、防護服に似た服を着た古いアニメのヒーローを使った”地球博”かなんかだっていけただろ?・・・プールで遊んでいたら、観られなかったよ?」
「でも・・プールでもっと遊びたかったもの!」
「だから、来年の夏の楽しみにしておこうよ、次は市営じゃなくて、もっと大きいところに連れて行くから」
「・・・・絶対よ?1時間も遊べないなんてなしなのよ?」

ああだった、こうだったと文句を言う割に、デート内容はとっても充実しいたようだった。

<・・それで、プールで何があったんだ、ジョー?>
<・・・・・・・・フランソワーズの水着が>
<水着が?>
<ボクが、無理な・・・・・その、一緒に遊べない状態になりまして・・・>
<・・・・・前は平気だっただろ?>
<前はね・・>


???以前は、意識してなかったもんなあ・・・。


自分が女性のどの部分(=フェチ)が好みだとか、そういうの。
(参照・振り回される自分がいる)




ジェロニモの視線の先に、お土産なの♪と焼き菓子の箱をリビングルームで開ける、フランソワーズと、その彼女のそばに少し赤ら顔の、ジョーがいた。

「・・・・・ジョー」
「何?」

博士を呼んでくるよ。と、立ち上がったジョーに、お茶の準備に一緒に立ち上がろうとしたフランソワーズをジェロニモがとめた。
たまにはオレがお茶を用意しよう。と言い、ジョーと一緒にリビングルームを出て行く。

「来年は大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・自信ないです」










end.



*93デーっ・・・だからと、勢いで書いたらいけません。
・・・アップしたの30分遅れたし・・・。
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