RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
ロマンチックください!
「003」

呼んでみたけれども、反応がなかった。

「・・・003?」

009は、003そして007と共に北ヨーロッパの国を訪れていた。

「・・・」

新しいBG研究施設が出来たという情報を得て、詳細を調べるために訪れた国の小さな街は、豊かな自然と民族工芸などを売り物にした観光地。
それらしい施設があれば簡単に見つけられると考えられていたけれども、逆にそれらしい施設などまったく見当たらず、捜査は難航していた。

---デマだったのかな?

確かな情報とは言いがたい内容だったために、00メンバー全員で調査するようなことはせず、イギリスに里帰り中だった007と現地(今いる街)で落ち合い、009と003は日本から1週間前に今座っているカフェの斜め前にあるホテルへと姿を現した。

「003、疲れたかい?」

小さなカフェは4つのテーブル席しかなく、ほとんどの客が持ち帰り用のオーダーだけで、早足に店を去って行く。
この一週間の間、決まった時間にかならず訪れる観光客の男女のカップルは、決まって店奥の小さなテーブルに向い合って座る。

窓にぴったりと寄せられた円形のテーブル。その上に載せられている陶器でできた、シュガー・ソルトカップ、テーブルに置きっぱなしの長方形のメニューなどを窓枠の上に毎回移動させるのは、
やわらなかな栗色の髪の青年だった。
決まって彼は、珈琲とチーズサンドトースト、サラダセットを頼み、ドレッシングはブルーチーズを選ぶ。
向かいあって座るカチューシャで亜麻色の髪を飾った、大きな青い瞳が印象的な女性は、かならずカフェオレをオーダーし、ワッフルかフレンチ・トーストのどちらかを頼み、ついでブルーベリーを添えるようにお願いする。


さすがに3日も続けば、店の者も顔を覚えられてしまい、今日は”いつもの?”だけで通じてしまった。

「・・・・」

目を離してしまうのが惜しいと思う情景から、ゆっくりと視線を009へとむけた003は、ため息とともにテーブルの上の置かれたカフェオレのカップを持ち上げた。

「別に」

カップのふちを唇によせる寸前に3文字、音にする。

「別にって・・・大丈夫?」
「・・・・」

003は静かに1口、2口、と、カフェオレを含んだ。
首を傾けて見守る009の視線は、003をいたわるような優しさがあふれている。

「003?」

その様子はどこをどう観ても、彼らは”恋人”か、”同じラストネームを名乗る者”だとしか見えない。





なかなか進展を見せない調査に息抜きをしようと言い出した007が、行ってみようと2人を街一番人気のレストランへと誘った。
予約していたグレートのラスト・ネームを告げて店内を案内されたとき、ウェイターから”Miss”ではなく”Mrs”で呼ばれ、明らかに2人は社交的に公式なカップルであると認識された扱いを受けた。




「・・・」

こくん。と、喉に通したカフェオレで潤した口内で、003はぽつりと呟いた。

「どうしたの?」
「・・・ただちょっと」
「ちょっと?」
「・・とっても素敵なところだったなあ、って思い出していただけよ。・・007が予約”してくれた”’レストラン」
「ああ!うん。とっても素敵だったね。料理もとっても美味しかったし。007が来れなくなったのはとっても残念だったけれど、004と合流するためだったから仕方ないね。でも申し訳なかったなあ、007には。007が誘ってくれて、予約までしてくれたのに。僕たちだけでおいしいご飯を食べることになっちゃったからね。僕が代わるって言ったのに・・・ね?悪かったなあ、本当に」
「・・・・・」

眉根を下げて007に申し訳ないと口にしていたが、手元の珈琲カップがすでに空になっていることに、目がいき、ジョーはレジ近くでスツールの椅子にどっしりと腰を下ろした、いつもオーダーを取る中年所背にむかってにっこりと微笑みながら手をあげ、珈琲のリフィールを頼んだ。

「そうね・・・。残念だったわ・・・」

009は003の言葉に、うん、うん。と頷きつつ、なんとなくテーブルの上に置かれているフォークの柄の部分を指先でなぞった。







---007は気を使ってくれたのよね・・・。


009と二人きりで素敵なレストランでディナー。
まるで、004と予め計画していたようなタイミングだったから。と、003は胸の中で呟いた。




ムードある素敵なレストランでの食事でも、せっかくの2人きりのディナーであるにも関わらず、昨夜はドルフィン号または、ギルモア邸のダイニングルームとなんら変わらなかった。

楽しく食事を進めて、ワインをグラスで3杯ほど楽しみほろ酔いになったけれど。レストランからタクシーでまっすぐに宿泊するホテルに戻り、「じゃ!また明日」と、日付けが変わる2時間前には、部屋前で分かれてしまい、デート云々とは言えない状態だった。


「・・・もう」

フランソワーズは銀色のケトルを持った女性がジョーのコーヒーカップに2杯目の珈琲を注ぐのを見つめながら、彼に見つからないように静かにため息をついた。

「ん?どうしたの?」
「待たせた!」

ジョーの声とキッチンに居た中年女性のパートナーらしき転がった方が早くテーブルまでたどりつけそうな男性の声とが重なった。立派に蓄えた口ひげをぴん!とはねさせた男性は、ジョーとフランソワーズが良く知る”アイヤー”が口癖の仲間を彷彿とさせる。

「ありがとう」

その男性がトレーに朝食を乗せて運んきたので、ジョーはにっこりと微笑みながら英語で例を言う。

「1週間きてる、気に入った?ここが」

テーブルに二人の朝食をおきながら、男性がたどたどしく並べた英単語で訪ねた。

「ええ。とっても素敵でついつい次の国へ行きそびれてしまっているわ」

答えたのは、フランソワーズだった。

「ハネムーンはバタバタ観光より、ゆっくり二人きりで過ごすのが何より!次の国なんていかず、ここでゆっくり二人きりの時間を楽しんだらいいと思うわ。子どもが生まれたらあっと言う間に、年を取ってムードもへったくれもなくなっちゃうんだからね!」


ねえ、アンタ!と隣に立った男性の脇腹をドン!と肘でつき、鉛のある英語だったけれど、女性の方がすらすらとした英語で会話に加わった。

「?」

ジョーは一体誰のことを言っているのだろう?と、不思議そうに女性を見て、何の話かな?と、フランソワーズに尋ねる視線を投げた。しかし、フランソワーズはそんなジョーの視線に気づかないふりをして、にっこり微笑み、とっても美味しそう!と、話題を並べられた朝食へとと切り替えようとした。

あら?と、女性が首を傾げる。
男性はサービスしといたよ、と。ブルーベリー以外にも4種のベリーを混ぜておいたことをフランソワーズにむかってウィンクし、余計なことには首を突っ込む気はないと言う感じでその場をいそいそと立ち去った。

「ああ。勘違いなさってるんですね。僕たちは別に・・そういうのじゃなくて、仕事でここにいるんですよ」

ワンテンポ遅れて、やっと女性の言った内容を理解したジョーが、きちんと訂正をいれた。

「仕事が長引いてるんで、ね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ええ」
「仕事仲間・・なのかい?」
「はい」

はっきりと言い切った、ジョーにむかって恨めしげな上目遣いの視線を一瞬だけ投げた、フランソワーズ。
銀色のケトルを持ったままの女性が、ジョーとフランソワーズを大きいとは言えない瞳をまんまるく見開いて、2人を交互に何度も見た。





---まあ、まあ・・こりゃ、可哀想に。


女性は、ジョーにむかってにっこり笑いかける。
むっくりと鼻よりも高く盛り上がる頬が健康的なピンク色で、とても愛嬌のある笑みだった。

「また珈琲がいるなら、呼んでちょうだいな」
「はい」
「・・・どうも」

ジョーはにっこりと女性へと微笑み返し、朝食をスタートさせた。
フランソワーズはナイフを手に取り、ざっくりとワッフルを大きく切り分けて口いっぱいに頬張った。





***


「・・・ねえ、お嬢さん」

朝食を終えた二人がテーブルで支払いをすませて店を出るとき、女性はフランソワーズを呼び止めた。


「あの、これ・・・?」
「もっと食べてないと!」
「え?」

紙袋に入れた焼きたてのクッキーをフランソワーズは押し付けられて、大きな青い瞳を困惑の色に染める。

「もっとこうっ!あたしみたいにさ!バーンっと胸にも尻にも肉をくっつけないと駄目駄目!!そっちの方が簡単なんだから!」

バッチン!とウィンクをひとつ。

フランソワーズよりも背の高いその女性は、まるまるとした体を少し前屈みにして、スイカ並みの丸く豊かな胸を揺らしてみせた。

「ロマンチックな展開なんて待ってたら他の女にかっ攫われちまうよ!早いとこ勝負に出ないとねっ。また明日もおいでね!」


びっくりしているフランソワーズをぎゅうっと抱きしめて両方にちゅ!ちゅ!とキスをした。

「誰に似たのか、アンタみたいに細くてねえ!私の娘もそっちで苦労したもんさ!」












***


店を出て004、007と合流するために中央駅へと向かう途中、ジョーはフランソワーズが手に持つ紙袋からクッキーの甘い香りに鼻をひくひくさせた。

「いただいたクッキー、すごく美味しそうな匂いがするね」

時代をタイムスリップしてしまったかのような、美しい17世紀後期ヨーロッパの街並を残した、ロマンチックな街道を歩く中。
やっとジョーが話かけてくれた思ったら、クッキーの話題。

フランソワーズはこれ見よがしに盛大なため息をつき、晴れたスカイブルーと言うのに相応し空にむかって、叫ぶ。













---誰か!私に(できればジョーとの)ロマンチックくださいっ!!


「ねえ、1枚・・食べたいんだけど?・・・駄目かな?」
「私がもらったのよ。だからジョーにはあげません!」
「えー・・・・1人で食べるの?」
「そうよ!」
「・・そんなにいっぱい食べたら、太っちゃうよ?」
「っ太りたいの!」
「ええ?!・・・なんで?普通は女の子って痩せたいんじゃないいのかなあ?」
「どうせ、普通じゃないもの!」
「いや、そういう意味じゃなくって・・・、フランソワーズ?」


フランソワーズは歩くスピードをあげてジョーから距離を取ると、ガサガサと紙袋からクッキーを取り出し、ばくん!っと大きな口で食べた。

「太るわ!いっぱいいーーーーーーーーーーっぱい太るって決めました!ジョーが持ち上げられないくらいによっ」
「ええ?!・・・ちょっ、フランソワーズ?!」





end.

















*こういう二人を書けて楽しかったです!

web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。