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告白のチャンスは突然に
全てを終え、愛車を運転して帰路につく。
ハンドルを握る手がいつもよりも軽い。
躯は今まで肩にかかっていた責任から解放されて、疲れているはずなのに、普段よりもリラックスしていた。心地良い達成感から味わう疲労は、自分が生きている価値があるとしみじみと胸に広がり、全身を包み込む。

車の窓は黒い鏡となって車内を写していた。ちらりと右横にいるもう1人の自分に視線をむけたとき、すれ違った車のライトが眩しすぎて、瞳を細めた自分が映っていた。
その光に助手席で眠る彼女が起きてしまわないかと、少しだけ緊張しながら、車を走らせ続ける。


窓に頭を預けた彼女の静かな寝息は、エンジン音に邪魔されて途切れ気味なボリュームのカー・ラジオのせいで聞こえてはこない。
いつの間にか瞬く事なく降ろされた、瞼を縁取る睫毛の落とす影が、車道脇に立つ寂しげな白に彼女の頬を一定のリズムで左右にゆれていた。

『お待たせいたしました、このコーナー、密かに人気があるんで嬉しいですよ!』

街から離れた国道で、キャッチできる電波は限られるため、放送局の選択肢などなく、ノイズがないチャンネルに合わせた。

『懐かしドラマ主題歌特選!!ああ~、これこれ好きだったっと懐かしい気持ちで、当時の自分もついでに振り返ってくださいね!』


ラジオから流れ出したイントロに、ああ、懐かしいな。と、呟いて。

「・・・なにから、伝えれば、いいのか・・わからないままときはながぁれて♪・・」
「・・・・・・・・」

歌詞を覚えていた自分に対して、笑いつつ。

「誰かが誘う 甘い言葉に♪」

そのまま歌い続けて。

「・・・あの、風になる」

彼女が僕の声に起きてしまったなんて、気づかないままに。

「あの日、あのとき、あの場所でキミに出会えなかったら・・・」

歌い終えた、とき。

「・・・初めて聴いたわ、009が歌ってるの」
「!?」

フランソワーズは預けていた背をバックシートから離し、彼女の躯を軽く拘束するシートベルトをひっぱりながら腕を伸ばしてカー・ラジオをoff。

「・・・・・・・・・・・黙って聴いてたの?・・ひどいよ、寝たフリしてたわけ?」
「とっても素敵な歌声だったんですもの、起きない方がおかしいわ」

慌てた僕は、運転中にも関わらず、彼女へと振り向いた。

「ふふ、よそ見運転はダメよ、いくらあなたが”最強のサイボーグ”でも、ね」


アクセルを踏む足を押して、スピードを上げるとメーターがくん!と跳ねた。

「もう一回、歌って」
「やだよ」

ハンドルを握る手が急激に汗ばみ、ラジオの曲に合わせて調子よく歌ってしまった自分から視線を外すようにまっすぐにぽつぽつと灯る信号機へ集中する。

「なにから伝えれば♪いいのか、ぼくらは見知らぬ、2人のまま・・?」
「・・・・・・飛ばしすぎだよ、それ」
「だって、他のところは覚えてないもの」

再びバックシートに背をあずけたフランソワーズが、首だけを傾けて僕を見ている。
どんな瞳を僕に向けているのか、そちらへは絶対に視線をむけないと思う僕だから、わからない。

けれど・・。


「・・・・・・・・・・・・・このままカラオケでも、行く?」
「あら、素敵ね。009とカラオケなんて想像したことなかったわ」
「カラオケに誘うの自体、初めてだよ」
「と、言う事は。誘われるのね、いつもは」
「誘われても、行かなかったけどね」
「それじゃあ本当に”カラオケ”自体がが初めてになるのかしら?」
「初めてってわけじゃないよ・・・。ほら、張大人の店」
「あ、そうだったわね。宴会用の部屋にはカラオケセットがあったわ、ギルモア、コズミ博士専用になっちゃってるけれど。009が歌ってるの見た事ないわ」

クスクスと笑う声が、耳に届く。

「僕自身、張大人の店で歌った記憶なんてないから、歌ったところを見た事がないのは当然」

このまま邸に帰るのは、もったいない気持ちがするむくむくと僕の胸で育つ。

「行ってみようか?・・・今回の”お疲れ会”なんてのを含めて」

全てを終えて、愛車を走らせて帰路に向う、僕たちは。

「リーダーの命令なら、逆らえないわ」
「・・・・・・ミッションは終わったよ」

寄り道することに、決めた。

「・・・・じゃあ、ジョーが・・・・・誘ってくれてるの?」









「・・・・そうなるかな」







キミがあんまり、素敵だから。
好きという言葉が言えなくて。




あの防音がされているのかいないのか、わからないような部屋で、キミと2人きり。
僕は、どんな顔でこの歌を歌えばいいのか・・・。





これはもしかして、チャンスなのかな?








end.










*消えた妄想種からのネタです。

種では『あの日、あのとき、あの場所で。
キミにであえなかったら。』にフォーカス。
場所はCD屋さんでしたー。

『ラブストーリーは突然に』は勝手に私の中で「93愛を訴える会」(←え、何それ?)のテーマソングです(笑)
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