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Treat me
肩がつん、とふれあったとき、彼の体温にじん、とやけどした。


「あ、ごめん」
「ううん」


慌てて大丈夫よ、と首を振って答えた。


「寒くない?」


触れ合った場所が、じんじん痛み出す。


「え、ええ。大丈夫よ」


私は横座りしていた膝を立てて、両腕で抱き込んだ。
そんな私の様子を伺う、彼の視線から逃れたくて、私は外の状況を逐一報告する。
報告ないように、うん、うん。と、彼らしく相づちを打っていたら、寒さを忍ぐためにシェアしていた薄い毛布が、私の肩から落ちた。


「もう少し・・・こっちに寄ってもらえないかな?」
「・・・」


彼は私の肩に毛布をかけ直しながら、声のボリュームを1つ落としてつぶやく。


「その、動くたびに、ほら・・ね?」
「・・・」


かけ直してくれた薄い毛布を手に、ぐっと肩を抱かれた。
膝を抱いていた私は、バランスを崩して、彼の胸に頭を預ける姿勢になって。


「こっちの方が、ほら、温かい、し・・・その、さ」


やけどが広がっていく。
じんじん。じんじんと、熱い。


触れ合う場所が、焼けていく。














「ジョー・・・?」
「・・・・うん」




ギルモア邸の地下倉庫で。

久しぶりに集まった仲間に攻め立てられるようにハロウィンのパーティ準備に取りかかり、去年のクリスマスで使用したパーティグッズなどなどを探すためにジョーと一緒に訪れた地下倉庫。

どうしてか、ジョーと私はそこで”不審人物=侵入者”と判断されて緊急用のセキュリティー・ロックが発動。



ねえ、もうわかっているでしょ?






命に別状はない状況下なので、009は無理に倉庫のドアをこじ開けたりはしない。
修理する方が大変だしね。と、苦笑する。


階上にいる仲間たちに脳波通信で助けて欲しいと連絡を取るも、みんな何か意味の分からない理由をつけて、博士が戻ってくるまで我慢しろ!とのこと。

協力してくれて、ありがとう。











ねえ、ジョー。
気づいているわよね?





緊急用のセキュリティにロックがかかったとして、地下の電源が落ちるわけないでしょう?
冷暖房、温度調節パーフェクト管理で、いくら倉庫でもここまで冷えるなんておかしいわ。

どうしてここに、ドルフィン用の毛布が1枚だけあって、ジャック・オー・ランタン(お化けカボチャのランタンの中にろうそく。ライターも一緒にころがっているのかしら?

夕飯を食べそこなることがわかっているかのように、生活雑用品の用の倉庫にドルフィンに積む予定の非常食を詰めた箱があるのかしらね?





ちらっとジョーもその箱に視線を投げたの、知ってるのよ、私。

箱の中は、”非常食”とはみかけだけで。
なんだかとっても美味しそう。



2人だけで、ちょっとしたパーティができそうよ?



「・・・雨、まだ降ってる?」
「ええ、降ってるわ。だから冷えるのね」



私の肩を抱くジョーの手にぐっと力が入った。
















****



「ったく、まだかよ!!何もたもたしてやがんだよ!」
「まあまあ、相手はジョーだから、とにかく・・・放っておいていいじゃないの?」
「いくらなんでも、ジョーだって気づく。」
「みえみえアルからねえ~。でも、それで何もなかったというアルなら・・」
「さすがに、the endだなあ」


ギルモア邸リビングルームでくつろぐ、仲間たち。


「ばかばかしいな」


その姿は、仲間の二人が地下倉庫に閉じ込められていることに全く関心がない様子。


「ばかばかしいことしなけりゃー、なかなか進まんのでなあ、これが」
「で、今回は一体誰の作戦なんだ?」
「アイヤー、あんさん知らなかったアルか?」
「くだらんことに使う耳は持ち合わせてないんでな。・・・いい加減に出してやれ」


アルベルトは、テーブルの上に置かれたコーヒーカップを持ち上げた。
あきれて物が言えんとばかりに、ため息をつきながらコーヒーを飲むアルベルトにたいしてジェット、ピュンマ、グレート、張大人、そしてジェロニモが視線を合わせ、にいっと笑いあい、声を揃えて今回の作戦提案者の名を言った。


「「「「「フランソワーズだぜ、だよ!アル、だ。姫!」」」」」
「・・・ついに動いたかのか」





****







<だって・・・、一緒にいる時間がすごく減ってるの、最近>










それに、何度も何度も、星の数ほどチャンスはあったのに、なかなか言ってくれないんだもの。

ジョーが、そのチャンスを手に、気持ちを伝えようとしてくれたことは、わかってるわ。




そんな彼の気持ちが、私と同じだって80%くらいわかっていても、言葉なんかじゃないって、わかっていても、やっぱりちゃんと言われたいの。

一緒に過ごす時間が減っている、このごろだから。
ちゃんと、したいって思ったのよ・・・。





その言葉1つで、私は。
その言葉だけで、私は。






きっと、何があっても後悔することなく、・・・・・だから、ね?





「ジョー・・・?」
「・・・・う、うん」







だから。
言って欲しい。


間違ってないわよね?
私、勘違いなんてしてないわよね?



「Trick or treat!」


ジョーの隣に座っていた私は勢いをつけて、彼の正面に座り直した。


「え?」
「いたずらしちゃうわよ?」
「え、え???」
「浮気するんだから!」
「あ、え?う、浮気って、あ。」
「他の人、好きになっちゃんだから!」
「ええっ、それは駄目っ駄目だよ!!」
「じゃあ、私は、ずっと・・・片思いなの?・・・・どうすればいいの?」


ジョーの手が、のびてきて。
私の手を、強く握った。


「駄目だよ。他の人を・・・その、好きになるとか、駄目だよ」
「でも」


さらに強く、ジョーは私の手を握った。


「フラン、僕の気持ちはわかってるだろ?」
「・・・」
「ずっと、言葉にはしてこなかったk」



♪♪♪♪♪♪♪~♪
彼は慌ててポケットから携帯電話を取り出した。


「・・ジョー?」


ジョーの手が、ばっと私の手から離れた。
握られていた手の強さが信じられなくなるほどに、簡単に。


「あ!そうだった・・今夜でかける予定があって、・・・」
「え?・・・でかける予定だったの?みんなが揃っているのに?」
「ちょっと顔を出すくらいのつもりで・・・」


通話のボタンを押したと当時に飛び出した、声。


『ジョーっ!おせーよっ!お前抜きではじめちまうぞ!お前が”可愛いっ”て言ってた、あの林田さんがまってるぞお!な!いい感じなんだろ?お前ら!!林田さんとこの間デートしたんだってな!今夜決めるつもりなのか、林田さんちょー、いいぜ!!あと、綺麗なお姉様、工藤さんもジョーはまだかって、お呼びだぜ!こっちも気合い入ってるぜー!』


私に聞こえてない筈ないなんて、思っているわけないわよね?


「可愛い?いい感じ?デート?今夜、そうだったのね?ごめんなさい、知らなかったわ」
「フランソワーズっ!ちがっこれったのっ、デートはっ映画チケットがその日が最終日でっっ1人じゃ見られないって、じゃなくってだからっ僕はっ」


ジョーは通話の相手に今ちょっと立て込んでるから後で連絡する。と、早口に一言言って電話を切った。


「・・・・私、ジョーと映画なんて行ったことないわ」
「?!」


ふっ。とろうそくを吹き消したように、一瞬で目の前が暗くなる。
なんだか、自分が盛り上がっていた分だけに、自分がしたことがあまりにも陳腐で情けなくなってきた。


「そうよね、そうだったのよね、ごめんなさいね、ジョー。私ってば、バカだったわ」


1秒でも早く、地下倉庫から出て行きたくて、ドアを、渾身の力で開けて部屋に駈け戻った。


「まっ・・・・・・・・・・・・・・・ッッフランソワーズs!」






ジョーの手が私の自室のドアノブを掴む前に、私はドアを締め、鍵をかけた。
デスクに飛びついて、ラップトップを立ち上げると、ブックマークされたウェブへと飛ぶ。






「好きだよっ!」


ドア越しに聴く声に、足下からほのかな温もりが灯る。


「フランソワーズっ!僕が好きなのはフランソワーズだよっ!ねえっ!!聞こえてる?!好きだよっ」


夢にまでみた、彼からの好きをたくさん聴いてる、今だけど。
手は、すらすらと、明日のフランス行きのチケットを探す。


「今夜はもう、・・・・十分に悪戯されましたので、お帰りください」
「フランソワーズ!!」
「イワンも、博士も、ジェットも、アルベルトに、ジェロニモ、張大人、グレートそしてピュンマが大好きですから!仲間ですものね!」
「ちが、それらと違うっ」
「フランスへ帰る準備がありますから、おつきあいしている時間なんてありませんわ」
「なんでっ?!」
「明日はもう空の上、フランスです!」
「ええ?!」
「林田さんをお待たせしたら可哀相だわ。今夜”決める”んでしょ?急がないといけないんじゃなくて?」
「行かないよっ!」
「約束しているのでしょ?そんなに簡単に約束を破棄してしまうの?」
「・・・・」


私は、ドア1枚はさんだ向こう側にいる、大好きな人を、瞳のスイッチを入れて観た。デスクの上に置いたラップトップに、明日の夜に発つ航空チケットを表示させたまま。

ジョーが、携帯電話を操作している姿が瞳に映る。
部屋のドア前まで、そっと近づいてジョーを見つめた。


「好きだよ・・・、ずっとちゃんと言葉にできなくて、ごめん。でもっ僕の気持ちっわかってくれてただろ?」


私がドア前に立ったことを、気づいたように、ドア向こうにいる私が見えるかのように話しかけて来た。
携帯電話をポケットにしまいながら。


「林田さんは?」
「だからっ、それはっ、…・・・ほら・・・・林田博士のこともあって、彼女は博士の娘さんで僕が009だって知っていてっ・・・その、色々とあって・・・・」
「可愛いわ、彼女」
「可愛いけど、・・・・・・それはっ、周りの一般的な評価であって」
「ジョーと林田さんはいい雰囲気なんでしょう?」
「他の人と、比べればってことだよ、・・・彼女は009でだることを知ってるから、他の人よりも懇意なだけで。それがそういう風に、勝手に周りが観てるだけ」
「今夜、決めるって何?」
「そんなの、僕が知りたいよ」


瞳のスイッチをoffにして、ドアノブを捻りゆっくりと深呼吸するようにドアをあけた。


「フランソワーズ・・・」


ほっと、肩から息を吐き出し、泣き笑いのようなジョーが立っていた。


「どっちが可愛いと思う?」
「へ?」
「林田さんと、私、どっちが可愛い?」
「ええ?!・・・・な・・んで?」
「・・・・ジョー、黒髪のさらさらとしたストレートヘア、好きよね?」


林田さんがそう。


「あのっだから、だって、それとこれとは」
「絵に描いたような、アジアン・ビューティな女性に弱いって知ってるわ、大きな黒い瞳の人、好きよね?」
「・・・・ちょ・・・それは・・・・・」
「知ってるのよ、私」
「フラン!」


ジョーがドアに手をかけて、30cmも開いていないドアを、広げようとしたけれど、私はそれを拒むように、ドアノブを手にして抵抗した。


「ジョーが好きなのは、林田さんのような人なんででしょっだからっ!」
「知らないんだよっ!」


ほんの少しのやり取りに、ドアが悲鳴をあげる。


「フランソワーズは何もわかってない!」


ドアを開く事を諦めると同時に、隙間からするりとジョーの手が部屋へ入ると私の腕を掴んだ。


「?!」


ジョーに引っ張られて、部屋から引きずり出される。


「離して!」
「やだ!」


彼の腕に引きずられながら、階段を降りる。
足を止めれば、ジョーのことだから、簡単に抱き上げられただろう。


「鍵はっ・・」

玄関前で、ジョーは車の鍵を持っていない事に気づき、舌打ちをうった。

私の腕を放さないままに、リビングルームへと向う。
飾り棚に置かれているキーケースの中から、彼が愛用する車のキーを掴むと同時に、リビングルームに集まっている家族にむかって、叫んだ。


「フランソワーズとでかけるから!パーティでもなんでも勝手にやってて!あとっ地下倉庫のドア壊れたからっ博士が気づく前に修理しておいて!」
「「「「「「「了解。」」」」」」」

何が起っているのか筒抜けの仲間たちは、ああそう。と、にこやかに見送られる。


「乗って!」


力の差を見せつけられるように、車に押し込まれた。


「どこへ行くの?」
「はっきりさせる!」
「なにを?」
「決まってるだろ、そんなのっ」
「・・・・」
「今日、バイト先のみんなに紹介するっ、電話をかけてきた野田はっフランソワーズ知らないから!キミを紹介したことないから、あんな物言いをするんだ!」
「・・・林田さんは私のこと知ってるじゃない」


キーを差し込んだ手は捻られずに、止まった。


「好きだよ、フランソワーズ」


耳が、じん。と痺れた。


「キミは?」


ジョーにみつめられて、みつめられている。と、意識した場所が燃え出す。


「・・・・・知ってる、でしょ?」
「知らない、言ってくれないとわからない」
「そんなの・・・」
「好きだよ」
「・・・・」
「フランソワーズは、知らないみたいだから。僕が、キミのことが大好きだってこと」
「言ってくれたこと、ないもの」
「・・うん。・・・ごめん、言いたかったんだよ、ずっと。ずっと、キミが好きだって、言いたかったんだ」
「・・・・・」
「もう、平気」
「・・・・・・」
「止められないよ、今まで言えなかった分、もう止まらない」


車は、車庫の中から出ることなかった。



「・・・・好きだよ、フランソワーズ」


ジョーからのTreatをたくさん手に入れた、ハロウィンの夜。


「ねえ、キミは?」
「・・・・・クリスマスまでとっておいてもいいと思わない?」
「・・・・・・・・・・・意地悪だ」
「待たされたもの、待っててくれてもいいじゃない?」


頬にふれられた手を、優しく拒みながら、私は考えた。


「キスは、そうね・・・来年の、ハロウィンまで、待って?」
「え・・・・?」
「ね?」
「せめて・・バレンタインとか・・・」
「ジョーのペースにあわせてるだけよ」




end.











*10月31日にアップできなかったのでありました。
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