RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Little by Little・22
(22)





学院本館との間に中庭園をはさみ、向い合うようにして建てられている星辰(せいしん)館。
そのメイン・エントランスは学院本館の裏にあたる、第一グラウンドに面している。

第一グラウンドに作られたイベントブースはすでに片付けが始まっていた。
そのためにメイン・エントランスは使用できないように鍵がかけられ、エントランスのドア前に警備員が1人、折りたたみ椅子に腰をおろし、右耳につけたイヤホンから流れるJ-popを聴いている。

星辰(せいしん)館と中庭をはさんだ本館を繋ぐドア1つだけしか生徒、一般来客者は使用できない。

関係者以外立ち入り禁止となっている地下への道は、当然のごとく解放されておらず二人の警備員がその場を守っている。
警備員は暇そうに手持ちの携帯ゲーム機で対戦ゲームを楽しんでいたが、後夜祭/プロムパーティが終わりに近付くにつれて、慌ただしくなってきたために、ゲームどころではなくなった。


「IDカードはお持ちですか?」


開け放ったドアを通りすぎようとしたノータイの、青みがかった黒いスーツ姿のドイツ人を、呼び止めた。


「ああ、すまない・・・」


男は容姿からは想像できないほどに流暢な日本語で話しながら、スーツの上着から銀のチェーンに通したIDカードを出した。
この真夏日に手袋をしていたことが印象的だった。
警備員の一人はIDカードをさっと確認して彼を星辰(せいしん)館内への入場を許した。













####

大ホールへの出入り口は東西わかれて5カ所に設えられている。その内の1つはロビーから二階席へと続いて、第一グラウンド前エントランスに繋がっている。

大きく開け放たれている今回使用されている大ホールで入り口のドアを出ると、待ち合い室を兼ねるロビーが広がり、絨毯が敷かれた左右に広がる廊下が視界に入る。
ホールを出て左手に、手荷物を受付用の小さなクロークコートが設けられていた。
ホール内で溜まった熱気は開け放たれたドアからロビーに移動する。中庭を繋ぐ観音開きのドアもめい一杯開かれており、星辰(せいしん)館内の冷やされた空気が夏夜の空気に混じり合う。
人の流れからそれた人々によって小さなグループが忙しなくそのメンバーを変えながら、ロビーにいくつもの和を描いた。その中に2人の学院生と1人の参加者が、壁際に並ぶ近代的な室内に会わせたモダンなデザインの長椅子前にいた。
彼らの会話はロビー内のざわめきに飲み込まれて、誰も気にする者はいない。その場の空気に馴染んだ、1枚絵にきちんと描かれるのに相応しい3人。
ホールから出て来た人の波を縫い、ジェット、フランソワーズの前に立ったジョーは、彼女とは視線を合わせずにジェットへと視線をむけた。


「アルベルトが駄目なら、君がフランソワーズをホテルまで送っていってくれ。空から戻って来てくれたら、そのまま任務についても問題ないだろ?」
「断る、その2」


009なのかジョーなのか、判断しづらい彼は、入学案内のパンフレットに載ってもおかしくないほどにきっちりと規則正しく制服を着こなしていた。対するジェットは、彼流に制服を着崩している。
学院指定のネクタイは、パーティが終わったと言うとこでブレザーの右ポケットに突っ込まれ、収まりきれなかった部分がはみ出している。



「・・・・リーダーとして命令する、002」
「けっ!関係ねーよ。004が断った理由考えろって。なんで粧した他人の女、しかも”リーダーの彼女”を送らなきゃなんねーんだよ」
「「!」」


ジェットの発言に、敏感に反応した2人。
ジョーとフランソワーズ。




昼食後、ホテルに戻ったギルモアは、自分が手に入れた情報をまるで芸能リポーターが特ダネを速報で流すがごとく、携帯メールを使い00メンバー(001、003、009を除く)へと”ジョー告白!フランソワーズと想い通じ合った。公式に2人の交際を認める。が、このことに関しては他言無用。”と一斉送信した。

ジェットがそのメールに気づいたのは、制服に着替えるためにホテルの部屋へ戻ったときだ。
他言無用の意味がない。と、受け取った者全員がこころの中でギルモアに突っ込みを入れたが、意味としてはジョーとフランソワーズに余計なことを言うな、今まで通りでいろと言いたかったのだろう。
各々に同じような考えでギルモアからのメールに答えを出した。


けれど、ここに裏切り者が現れた。


「みーんな知ってるんだぜ、お前らが”両想い”ってこたあよ。2人で外泊して、なんでもなかった”俺たちは別に~”で通じるかっつーの。・・・博士に報告したのが、まあ、失敗だったな」


にやあああ。と口角をU字を描いた笑顔。



「・・・・・・・・・・・・・・・ミッション中」


ジョーは009として冷静に、答えた。
フランソワーズの思考は停止。美しい彫刻となってぴくりとも動かない。


「どうせ戻ってくるんだったら、誰が送っていっても一緒だろ?だから、お前が送っていけよ。なあ、フランソワーズ、そっちの方がいいだろ?」


フランソワーズはジェットの声に反応しない。
2人を視界から外して俯き、固くなっているフランソワーズに、ジェットは軽くため息をつきながら腕を自分の隣に立つ彼女の背中へと回した。
フランソワーズの背後から人差し指で、むき出しの丸く柔らかそうな曲線を優雅に描く大理石のようにつるりとした、思考停止中のフランソワーズの肩を指し、ジョーに言う。


「おい、いいのかよ?この、”フランソワーズ”を独りでホテルに戻らせてよ!」
「・・・ぜ、004と合流することになっている」


軽く舌打ちをつくように、口元を歪ませたジョーの視界がフランソワーズの肌に注目した。
露出を控えた服を選び、好むフランソワーズが、春少し前に”ローレライ”と言う店で、彼女自らが手に取り選んだワンピース。
とてもフランソワーズに似合っている。
彼女のためにオーダーメイドで仕立てたと言っていいほどに。けれども大胆な肩周りの露出に、ジョーは目線の置き場が、どうしても見てはいけない部分へと流れて落ち着かない。


「オレが合流すれば良いだろ?」


頭1つ分半ほどジョーよりも背が高いジェットは、軽く腰を曲げてわざと視線をジョーに合わせた。
フランソワーズの肌をジョーの視線が犯すのを防ぐつもりで動く。


「・・・命令しっxて、して、いるのは、お、・・ぼ、僕だ」


顔はにやにやと笑っているが、からかいを含まない真剣な瞳で「お前がフランソワーズをホテルへ連れて帰れ」と命令するジェット。
その彼の視線を振りきろうと、顔を右へと振ってジョーは大げさにジェットから顔をそらした。


「だから、なあ、こm」
「ジョー・・・が、言ったの?」


ジェットの声にからまったフランソワーズの声。

星辰(せいしん)館内のロビーは、いつの間にか人の流れが途切れていた。
チャンネルのあっていないラジオが流れているような雑音が、会場内から微かに流れているだけだ。
それらの音とボリュームが変わらないフランソワーズの声に、ジョーとジェットは彼女の声に耳を傾ける。


「博士に、・・・その・・・言ったの?」


か細い声がジョーとジェットの耳に切れ切れにとどく。ジェットは躯を引いて、ジョーの視界にフランソワーズを戻した。
ジョーとジェットの視界に、細く華奢なあごを胸元にくっつけ、まとめていない髪が亜麻色のカーテンとなって表情を隠しているフランソワーズがいる。
彼女が着ているワンピースと同じコーラルピンクのカチューシャが視界にはいり、そのカチューシャが同色のレースによって模様がついていたことに、今初めて気づいた、ジョー。


「ね・・・ジョー?」


ミシン色のようにぴん。と張った細い声が、ジョーに答えを求めた。



「・・・うん」


ジョーはこくん。と、小さくうなずきつつフランソワーズの声に答える。


「・・・・・昨夜のこと、を、謝罪したときに、その・・・言ったというか、言わされたというか、・・なんて、言うか・・博士に・・その」
<バカっこういうときははっきり、堂々と言えよ!”つきあいはじめました!”って報告したってよっ>


しごろもどろで答えるジョーに、脳波通信でするどく突っ込むジェット。


<付き合いって・・>
<好きって言って、言われて、んじゃっ、付き合うってことだろうよっ!>
<・・・・・・・・・・>


---おい・・・ジョー、てめえ、告白しただけで終わりとか思ってんじゃねえだろうなあ?!



「・・・・・・・s、そういうの、博士や、みんなに、言うこと、かしら?」
「え?」
「・・・・ひどいわ」
「ご・・・め、ん」
「・・・」


ジョーとフランソワーズが話し出した、その会話の雰囲気から、自分が参加するのはあまり良くないだろうと、”長年の経験”が自然と躯を動かす。


「私,みんなにどんな顔をして・・」
「・・・」


2人から意識的に足をひきつつ、脳波通信で004の個人チャンネルに合わせて報告しつつ。
耳の聴音レベルは最大にしておくことは、忘れない。そんなジェットがそっと左足を一歩後ろに下げて2人から離れようとしたとき、フランソワーズが顔をあげた。



---フランソワーズ・・・・・襲われっぞ、というか・・・・・襲ってくださいと言ってるようなもんだぜ?



真っ赤にそまった顔はイチゴと言う例えが似合いすぎるほどに赤く、染まった頬を両手でおおっているために、その手の白さが対照的だった。


「・・・も・・・、恥ずかしい・・・。やだ・・・みんな、本当に、その・・・・」


空色の瞳は戸惑いと恥ずかしさの熱に潤み、ミッション前にさんざん泣いたフランソワーズの涙腺はかなりゆるんでいるようだ。


「ふ・・ら・・」


無言の悲鳴がフランソワーズからきこえる。
ジェットは素早く足を動かした。


「・・・・ま、そういうことで!009、後はまかせとけ!戻って来なくても問題ねえぜ」
「待てっ、ゼロz」


ジョーはジェットを呼び止めようとしたが、視線はフランソワーズから離すことができなかった。






<そういうこったでミッション変更、009が003を送って行く。ついでに裏ミッション完了ってか>
<お前に009の役は重すぎるだろうが、仕方ないな>


さすがに加速はしなかったが、ジェットは眼にも留まらぬ早さで2人だけを残して地下へと向かい、009の代りに004と合流する。


<・・・・あんなフランソワーズ、初めて見たぜ>
<フン、どんなだ?>
「こんなだ!」


アルベルトの前に現れたジェットが、眼に焼き付けたフランソワーズの真似をしてみせた。


「撃ち落とされたいか?」


ジェットからの報告に対する感想は、冷たい一言で終わったけれど、アルベルトの足取りがいつもよりも軽やかにジェットにはみえた。













####

「みんなに言うなんて、私、考えてなかったの、だって、その、今日で、昨日で、まだ、1日しか・・・」


恥ずかしさにもだえるこころを解放して、きゃあああ。と、叫べない場所なために、必死で押さえているが、全身を包む羞恥心の限界は近いらしい。


「・・ジョーの、っ」


恥ずかしがるフランソワーズを目の前に、ジョーの思考は”可愛い”と言う文字がぽんぽん飛び跳ねていた。


「H」
「え・・・ち・・って、この場合は・・・。あ、でも」


こんな、フランソワーズは知らない。
出会ってから今まで過ごした時間の中で、一度も目にしたことがない。

バレエを一筋に生きていたために、一般平均的な少女たちよりも遅かった恋の目覚め。
雑誌や小説の中でなら、いいな。と思えた人は、まるで白馬に乗った王子様のような、夢の中の存在。
一度、淡く胸を高鳴らせたのは、当時のオペラ座で1stプリンシパルのダンサー。



リアルに恋をしたと気づいたときには、すでに思い出として胸奥へと沈めておかなければならなかった、フランソワーズ。



「・・・・・・あの・・・さ・・・キスしたことは、言ってないから」
「!・・・やっ・・・。言わないでっ」


頭を左右に振って、亜麻色の髪がロビーのライトをきらきらと弾く。


「~~~~~~~~っどうしたらいいの・・」
「どうもしなくていいんじゃない、かな?」
「よくないわ、よくないのよ・・」
「よくないなら、よくなるようにしよう」


パニックに陥り始めたフランソワーズを、ジョーは腕をのばして、その胸に抱きしめた。


「!?」
「・・・・ジェットはもういないよ」


「人に見られるわ!」と、ジョーの背後を通りすぎていく、会場内から出て来た何人かを意識して、フランソワーズはジョーの腕から逃れようとした。
けれど、ジョーはその抵抗を押さえ込むように腕にぐっと力を入れた。意識して、素手がフランソワーズの肌に触れないように気をつけながら。


「ジョーっ・・・あの、」
「・・・・・・うん、観られてるね」


ホールから出て来てたのは、数人の学院生だった。
「あれ、誰だよっ誰だっ」「シニア、だ、シニアのほら!」と、ひそひそとした声が、ジョーの背後を流れていく。


「ミッション中・・よっ」
「・・・・キミを送っていく。それもミッションの1つだ。・・・・それに、僕がリーダーだし、僕がいいって言ったら、いいんだと思わないかい?イワンだって何もないって宣言してたし、あとは002と004にまかせて遊びに行ってもいいくらなのかもしれないよ?」
「え・・、あ。え??」
「グレートじゃない、本物の俺だよ」


さらに、ジョーはフランソワーズを抱きしめる腕の力を強めた。フランソワーズの混乱は深まる。
ジョーがジョーらしくない。009が009としての務めを放棄するような発言。


「フランソワーズ・・、キミに、お願いがあるんだ」
「?」


フランソワーズの髪から香る、昨夜と同じ香りを胸に吸い込みながら、ジョーは言った。




「邸に戻ったら、篠原当麻とは関わらないで欲しい」























篠原、フランソワーズをあきらめてくれ。










フランソワーズのこころの奥底にある願いを、篠原を通して気づいた。
それがどういうことか、よく、わかっている。




ずっと彼女を見てきたから。
アランのことも、あった、から・・・・・。


たとえ、ひとときでも、その想いが満たされるのなら、彼女が取り返せない時間を取り戻すことができるなら、それを彼女が望むなら。





フランソワーズが望むなら。







望んでいるから。


知っていたから。





















悔しいけれど。

俺の手で、どうにかしたくても・・・できない。
彼女の望みはイワンでも、難しくて。






けれど、手に入るかもしれない。
篠原当麻という存在を通して、彼女は連れ去られる”前の日”に帰ることができる・・・。



限りある時間だけれど。
それを望むなら・・・。


望んでいないとは、いえない、彼女だから。


わかってるだろうけれど、俺は、篠原、君みたいな男にはなれないんだ、よ。
なりたいと言っても、なれないことは、解りきっている。





彼女の望みを叶えて、あげるなんて、・・・。
・・・俺は、そんなにできた人間じゃないんだ。






彼女が取り戻せない時間なんて、俺には関係ない。
それは、俺が知らない、俺がいない、出会う前の彼女だから。



そんなの、知るかよ。




















考えない。
もう、考えない。



怖がらない。
逃げない。













ジョーは、ゆっくりと腕からフランソワーズを解放した。




---俺は、強くなる・・・。今よりも、それよりも、・・・・・強く、なる。




「・・・・大切な人を重ね続けるなら、・・・だけど。でも、できたら・・・。今までのように、ミッションで関わった人たちと同じように、・・・思い出にしてほしい」
「・・・・」
「もっと欲張ったことを、言わせてもらうと・・・。その、・・・・キミに、ちょっかい出す、奴、・・・・・・我慢できないと、思う、から。俺が、喧嘩ふっかけないうちに、・・・・危ないし、・・人身保護のためにも・・・・・」















残る者も、一足早く旅立つ者も、6年間の日々を長いようで短かった青春の日々を胸奥に誇らしげに飾り、月見里(やまなし)学院を後にした、今日。

高等部のシニア以下の学生たちはこのまま夏休みに入り、新学期は9月半ばから始まる。
退寮するシニアは週明けの月曜日に、寮内にある荷物を引き取ることになっていた。










####

「あっと言う間だなあ、まったく・・・,」

リビングルームの飾り棚に置かれている世界の名所シリーズの日めくりカレンダーをぺりっと剥がしたグレートが、自分で調合した紅茶の香りを楽しみつつ、呟いた。


あやめ祭3日目の翌日、ミッション終了1日目。

先に邸へと戻ったギルモア、篠原当麻、そして明日に戻ってくる予定の津田海、ピュンマの4人以外のメンバーが家路に着いた。その日のうちに、ジェットは009の手によってメンテナンスの準備に入る。
リビングルームから昼食後に庭に出て、メンテナンス前の最後の一服をアルベルトと”とある報告を含んだ”会話中のジェットに、時間だと脳波通信で001から呼ばれた。


「過ぎてしまえば、まるで泡沫・・・どんなに辛く苦しいことでも、よき経験となり思い出となって懐かしむことができる・・ハズなんだが」



ミッション終了3日目。

津田海とピュンマの両名がギルモア邸に帰宅。
彼は通いの病院のスケジュールの都合により、実家に戻るまでの間、ギルモア邸に滞在することとなっていた。予定では1週間ほどだったが、お盆近くまで滞在したいと言ってきた。


「実は、海の(競技用)カーボン繊維製の義足を調整中らしくって・・実家に帰ると調整が先延ばしになっちゃうらしいんだ」


海の姉二人と一緒に海の義足を手がける、篠原グループが運営する篠原技研を訪れたピュンマの報告により、ピュンマの弟のような存在の海に対して誰も異議を唱えるメンバーはいなかった。



破り取った日付を見ながら、グレートはくしゃりと握ってそれを手にため息をついた。


「時間ばかりが過ぎ去る世の中にて、時の流れにのれずに彷徨うのは、我が身が普遍の躯であるからか・・ああ!の呪うは行き過ぎたテクノロジー!鋼の躯と無敵の勇気っ!!」


そして、009がミッション終了と宣言してから、数えて一週間目の今日。


「朝っぱらからつまらない事いってないで手伝うヨロし!」


ダイニングルームから顔を出した張大人がふん!と鼻息荒くグレートに文句を言った。


「へーへー・・フランソワーズはどうしたんだよ、大人?」
「フランソワーズはゲストルームよ、博士と一緒に当麻くんの診察中アル」
「・・・・そっかあ。調子は大分いいみたいだけどなあ」


月見里(やまなし)学院、9月の入寮までの間、篠原当麻を預かって欲しいと言う篠原さえこからの依頼。
あやめ祭3日目の体調不良がたたり夏風邪をこじらせたために了承する形となった。



「無理させてまた、病気は可哀相アルからしてネ!とっとと手伝うヨロシ!」
「人使いが荒いんじゃないの~?朝のモーニングティを楽しむ暇もないなんて、トホホ」


手の中の過ぎ去った昨日の日付が書かれた紙を、ぽい!っと部屋の隅にある屑篭へと投げる。


「仕方ないネ!暇してるのはあんさんくらいヨ」
「ピュンマは?」


遠くはなれた屑篭内にと見事命中させた様子を視線だけで追った、張大人は答えた。


「海くんの病院に付き添ってるネ、もうとっくに出かけたアルよ」


ウッシャ!と、命中させたことに小さくガッツポーズを取ったグレートが言葉を続ける。


「ジェロニモは?」
「地下アルヨ」
「ジェットは?」
「それを聴くのことか?!」
「あ、ああ・・そうだ、そうだったなあ」


---ジェットは昨日から本格的にメンテナンスに入っていたんだっけか・・・。


「ついでに004は調査に出てるアル」
「クラークんとこかい?」


手伝う気がないのか、のんびりとグレートはソファへと腰をおろして、紅茶を手に取った。



「絵里子・レキシントンを調べているアルヨ」
「っつーことは、朝飯は我が輩と大人だけかあ?」


胸いっぱいに紅茶の香りを吸い込んだ。


「当麻くんに博士と、フランソワーズ、そしてジョーもまだアル」
「その、ジョーは?」
「もちろん地下ネ!」
「・・・相変わらずかあ」


ズズズ。と、紅茶をすすったグレートは、紅茶の味など感じる余裕なく重いため息を吐き出した。


「結局、何も変わらんなあ・・・片思いだろうと両思いだろうと・・・」
「あんさん、何を期待していたアルか?」


ダイニングルームへのドア前に立っていた張大人は、スリッパを鳴らすことなく歩を進めて、グレートと同じようにL字型のソファに腰を下ろした。


「何って、別に・・・決まってるじゃないかあ!・・って、おお、それより。土地の交渉はどうなってるんだ?」
「今はそれどこじゃないアル、もう少し落ち着いてからでいいネ。イワンも夜の時間に入ったアルし」
「でもよ、早くしないと売れちまうんじゃねえか?」
「その時はその時なのね、ご縁がなかったと言うことアルヨ」


張大人はにっこりと笑った。










===23へと続く




・ちょっと呟く・

ハッピーフィーリング、ハッピーエンディング!と呟き続けて、書き直し続けて。
幸せになれ、幸せになれ、と願って。
22とうまくつながってますように・・サンタさん。
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。