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awake
防護服を新素材を使用して新調するとギルモア博士が言った。
一般に市販されている服とは明らかに違う上、普通の布ではないために製造法も少しばかり手間がかかる。9人分を揃えるのに約1年ほどかかったが、ようやく今、00メンバー全員に配れることとなった。


海に面した岸壁と雑木林に護られ、人が滅多に近づくことのない荒れた地に建てたられた洋館は、階上3階、地下5階の作り。
洋館の最下層ドックにはドルフィン号と名付けられた陸海平用戦闘機が納められている。




「これが、008の分」

そのドルフィン号内、ミーティングルームで1人、コードナンバー003を持つ、少女と呼ぶには彼女が醸し出す雰囲気とは少し差がある、不可思議な魅力を持つ亜麻色の髪の女性が、同じコードナンバーで呼ぶ合う仲間の新調された戦闘服を揃えて、テーブルの上に並べていた。


「そして、これが最後・・」


健康的な色の爪を持つ指が白い箱から取り出した、ビニールに包まれた赤。
そして、付属する黄。

フランソワーズはテーブルの上にそれを大切に置いて、そおっと壊れ物にでも触れるかのように表面を撫でた。

「・・・・」

彼女の手が赤ん坊の頬をなでるかのように往復すると、ビニールの中へと移動し、きっちりと折り畳まれている黄色の布を取り出す。
自分以外はココには誰もいないと知りつつも、手に取った黄色を胸に抱ききょろきょろと辺りを見回して、用心深く眼のスイッチも入れたりし、階上の部屋にいるギルモア、イワンの様子をうかがった。

日本組と称されるメンバーは自分を含めて、張大人、グレート、そして、ジョー。3人は朝早くから海釣りに出掛けていてまだ帰宅していない様子をその青い眼で知る。
張大人の経営する中華料理店は今日、定休日。いつ頃からか、その日は決まって3人は釣りにでかける日となっていた。

「・・・・・・・いいわよね、長さだって・・そんなに変わらないもの」

フランソワーズはゆっくりと右へと6歩移動する。
テーブルの上に置かれた自分用の防護服の中から、同じ黄色の布を取り出し。そして、胸に抱えている布を自分の防護服の上に置き、取り出した自分のと、ドキドキと緊張する胸を押さええて入れ替えた。


再び密やかに6歩左へと移動し、黄色の布がない防護服前で手に持った自分の布へと顔を近づけた。

「ジョーと、・・・ずっと、一緒にいられますように」






口づけをひとつ。
黄色に願いを込めて。



「彼を護ってください・・・」



フランソワーズは秘密めいた手つきで黄色を最後に置いた、9番目の防護服を包むビニールバックの中に納めた。

















***


クリスマスを前に海外組と呼ばれる仲間たちが日本へと、ギルモア邸へと帰ってきた。
ドルフィン号の整備や、その他周辺機器のアップデータに関する説明を009から手短に受けた後、ミーティング・ルームでそれぞれ、新調された防護服を手に取った。

「前とどこが違うアルか?」
「ちーっとも差がないように見えるがなあ」
「新調するって訊いたらから、てっきりデザインも変更になったのかと思ってたよ」

それぞれ以前のとなんら一つとして変わることのない防護服に関して好き勝手にコメントする。

「○ヴァっぽいのとか、いいんじゃん?」

ジェットがほれほれ!と、この夏公開されて一代センセーショナルを起こし、海外でも知名度の高いアニメーションの主人公が着るプ○グ・スーツみたいなのがいいよな。と、周りに同意を求めた。

「嫌よ!あんなにピッタリとしたのなんて、着たくありません!」
「何言ってんだよ、あれくらいの方が何かと動きやすくていいんじゃねーか!それに、よく似合うと思うぜ!003」
「おお、それは我が輩、姫のチャイナ服の次に興味がありますぞ!」
「もうっH!」
「それなら日本の戦隊物シリーズとかどうかな?何かベルトとか腕時計とか使って変身!。着替える手間が省けるって感じでよくない?」
「それなら007には必要かもしれんな。変身を解く度に服を持ち運びせずにすむ」
「004、008。防護服のデザインだ。」

やんや、やんやと賑やかな声で色めくミーティング・ルームの中、ギルモア博士は夜の時間のイワンに彼の分の緋色のマフラーを首にそっとかけてやった。

「どうしたんじゃ、009」

久しぶりにミッションに関係のないイベントで仲間たちが全員顔を合わせ、ギルモア博士は幸せを噛み締める中、防護服の置かれたテーブルの端っこで黄色のマフラーを手にぼおっと突っ立ち、こころここにあらずと言ったジョーに声をかけた。

「!」

ギルモア博士の声に、009は、は!と我に返ると同時に耳を真っ赤に染め、それがリトマス試験紙に例えるがごとく、顔の色を変えた。

「009?新しい防護服に何か不都合があるか?」
「い、いえ!・・・す、すみません。ちょ・・ちょっと・・・」
「ちょっと、なんじゃ?」
「なんでもありません!っあ、僕、さ、さっさっき、コクピットの方に、わ、忘れ物がっ」

ジョーは自分の新調された防護服をがばっと両腕に抱えると、そのまま早足にミーティング・ルームを出て行った。
そんな彼に特に注目している仲間たちはおらず、ギルモア博士は首をかしげて、彼を見送った。















「・・・・なんで僕のマフラーから・・フランソワーズの香りがするんだ?」

ミーティング・ルームを早足に出て、ドルフィン号のコクピットに向う足がスピードを落として行く。
廊下の途中で足を止め、ジョーは腕に抱えた防護服に視線を落とした。


真新しい布地の香りに混ざって、確かに香るフランソワーズの香り。
それがどんな香りであるかを言葉では簡単に説明できないジョーだけれど、ただ、防護服を取り出したときにジョーを包み込んだ、香りは絶対に間違いなくフランソワーズの香りだと自分が009であることに懸けて宣言できた。


「・・・・フランソワーズの、・・」


胸をすくような甘みのある色鮮やかな花の香り。
ヴァニラ・エッセンスが訊いた、クッキーのような温もり。
明るく晴れた空にちりばめられた、陽の光。

瞼を降ろして、緋色のマフラーに顔を埋めたジョーだけに見える世界。
フランソワーズの香りから、ジョーは永遠の旅に出る。










どのくらい、そうやって廊下に立ち尽して、黄色のマフラーに顔をうずめていたのか判断できないが、満足して深く息を吐き出し現実の世界に戻って来たとき、ジョーは黄色のマフラーから顔を離してふと考えた。

「・・・・これをミーティング・ルームに用意したのはフランソワーズだから、香りが移っていても・・」

でも、それならみんなのにも、彼女の香りがついているってことか。と、誰に言うでもなく呟いてジョーはミーティング・ルームのある後方へと振り返る。


うっすらと、仲間たちのはしゃぐような声が聞こえて来る。
その中にかの人の声もときおり混じる。



『そのアイデア、素敵だわ!』



耳に届いたフランソワーズの声にどきり。と、心臓を跳ねさせて、その内容にも冷や汗をかく。
会話の内容は、防護服から自然とクリスマスの内容に進んで行った様子で、今年はプレゼントをシークレット・サンタにしようなどと、盛り上がっていた。


「・・・シークレット・サンタは・・ちょっと」


まもなくやってくるクリスマス。
そのパーティの内容の1つにたしいて、シークレット・サンタになったら困るなあ、と。離れた場所から会話に参加する。



先月の話し。
通りかかったデパートメントのおもちゃ売り場で、こぼれ落ちそうなほどに大きな青をめいいっぱい大きくして、「すごいっ可愛い!」と歓喜の声を上げたフランソワーズを思い出す。
「私も抱っこしてみて、いいかしら?」と、子どもたちに混じって、おどおどとおもちゃ売り場に置かれたサンプルの巨大な大ト○ロのぬいぐるみを抱き締めた。

フランソワーズはそのキャラクターがいったい何のキャラクターか知らなかったが、そのまんまるいフクロウのゆうな不思議な容姿にすっかり魅了されたようで、しきりに、ジョーに説明を求めた。
売り場に置かれた巨大なぬいぐるみが欲しい。と言う気持ちがありありとフランソワーズの全身から発せられている姿から、彼女にしては本当に珍しいことだったので、「ジョーは買って帰ろうか?」と、尋ねた。

びっくりする大きさではあるけれど、これくらい1つ、フランソワーズが部屋にあって誰かに迷惑をかけるわけじゃないし。と、ジョーはフランソワーズに数回尋ねたが、彼女は恥ずかしげに微笑みながら、「もう子どもじゃないもの、ぎゅうってできただけでいいわ。」と言い、小さなキーホルダ用のマスコットだけを購入した。

口で説明するよりも、観るのが一番だからと、翌日にレンタルショップでそのキャラクターの映画を借りてきたジョー。午後のおやつの時間に観賞したフランソワーズは、すっかりト○ロ・ファンとなっていた。

家事をする彼女の口から「あっるこ~♪あっるこ~♪」と、ちょっと調子の外れた主題歌が聞こえてきたりするようになり。

普段にあまり見せないフランソワーズの可愛らしいプライベートな一面をジョーは知り、小さな女の子のようにキャラクターに夢中になるフランソワーズを、今までとは違った目線で見て接するようになっていた。

もしかして妹がいたらこんな感じかな?とふと思い描く日もある。




そんな日々の中、デパートメント内の書店にて取り寄せを頼んだ帰り、ふらりと、おもちゃコーナーへと立ち寄った。
フランソワーズが小さな子どもたちに紛れてぎゅうっと抱き締めた巨大ト○ロを購入するために。
週末であったため、巨大ト○ロを購入するジョーの姿を羨望の眼差しで見つめる子どもたちの瞳に苦笑しながら、それを、フランソワーズのクリスマス・プレゼントとして購入することに少しばかり興奮しつつ。


満面の笑顔で、巨大ト○ロをぎゅうううううっと抱き締めるフランソワーズを想像すると、ジョーはすごく幸せな気分になる。

頬が上がり、滅多にフランソワーズが出入りしない地下4階の第3倉庫隠しているぬいぐるみを今すぐにでも彼女にプレゼントしたくなって、ウズウズしてくる。


仲間たちの会話を耳に、シークレット・サンタの案は却下されるように願いつつ。









---僕もフランソワーズをぬいぐるみみたいに、ぎゅうっと・・できたらいいのになあ。


胸の中の自身の呟きに、ミーティング・ルームとコクピットを繋ぐ廊下で009はおおいに狼狽えた。





「って!何考えてんだよっ!僕はっっ」




呟きとともに、とある日にぎゅうっと巨大ト○ロを抱き締めたフランソワーズに重ねて、自分が同じようにフランソワーズを抱き締める様子を描いてしまったがために。

「したいけどっ、いや、そういうことじゃなくって!フッフランソワーズはっ、なっ仲間なんだぞっ!!」

真っ赤な顔で、フランソワーズの香りがする黄色のマフラーを手にしながら、
のんびりと一歩、恋の道へと足を踏み入れた。







end.















*猫バスのティッシュケースが欲しくて仕方なかった時期があります(大分昔の話しですが)。
欲しいときに限って見つからない・・。
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