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距離、200メートル。
移り変わりの激しい都心のど真ん中に、新しくオープンしたベーガン用のカフェ。
肉・魚はもちろん、卵もミルクも、動物製品は一切使っていないという。

そんなカフェがあるとどこかの雑誌で目にして、「へえ、おもしろいな」と
感想を持ったために覚えていた。

残念ながら(?)共同生活をしている多国籍な住人たちの中には、ベーガン
はいなかった。
日本ではベジタリアンはよく耳にするけれど、ベーガンと呼ばれる人には
滅多にはお目にかかれないと思う。・・・と、そう思っているのは、僕だけで。
実は意外にたくさんいたりするのかも?


「ご注文はお決まりですか?」

珍しく日当りの良い店には、僕以外の客はまだいなかった。
開店時間の10時を少し過ぎただけだから、当然なのかもしれないけれど、ちょっと
意味なく静まりかえった店内に緊張してしまった。

案内された席で笑顔で接客してくれるウェイトレスさんの手から、紙ではない丸い
コットンのコースターがテーブルに置かれ、ミントの葉がちょこんと乗っている水の
注がれたさわやかな印象のグラスが僕の目の前にやってきた。

「えっと、・・・珈琲を」
「ミルクはソイミルクになりますが、大丈夫でしょうか?」
「ブラックでいいので、ミルクはいりません」
「かしこまりました」

ウェイトレスさんがさらりと長方形のプラスティックホルダーの上で、僕の
注文(オーダー)を書く。
その間に、店に僕以外の客が入って来たので、少しばかり緊張していた躯を
もそもそとほぐした。


「少々お待ちくださいませ」

決まりゼリフを言い切らないうちに、席を離れたウェイトレスさんと、レジ近く
に立って客に”2名さまですか?”と尋ねていたもう1人のウェイトレスさんの
スカート丈を、無意識に見比べた。


「ふうん・・」

僕の注文(オーダー)を取ったウェイトレスさんのスカート丈が異様に短い。
視線だけでスカート丈が短いウェイトレスさんを見送りながら、尻の下敷きに
なっていた携帯電話を救出する。

服以外に身に何かをつけるのが、苦手な僕は、腕時計もズボンに突っ込んでいた。
今は携帯電話のおかげで、時計を何回も洗濯機に放り込んでしまうこともなくなって、
助かっている。


さすがに、携帯電話は洗濯機に放り込むことはしないから。
時計の買いなおしや修理代が浮いてとても助かっている。

時計の役割が90%を占める僕の携帯電話で、今日も時間を確認する。
ついでにマナーモードに切り替えてテーブルの上に置いた。
手持ちぶたさを誤摩化すように、テーブルの上に置かれたままのグリーディング
カードのようなメニューを視線で追ってみる。


「・・・健康そう」


さっと目を通しただけで勝手に頭の中のHDみたいな場所に記録されてしまった
ことに苦笑しつつ、頭に入ってしまったメニューをじっくりと復習しはじめる。


彼女が来たら、軽く何かを食べようと考えながら視線をあげて、目の前の空席を
見つめた。



僕の眼の前に、誰も座っていない椅子がお行儀よくテーブルにぴたりとひっついている。
その椅子の背を通り過ぎて、案内されたテーブルに着いた2名様へ注文(オーダー)を
取りに行く、短すぎるスカートのウェイトレスさん。の、次に、視線をテーブルの上に
置いた携帯電話へと視線を移した。




彼女との約束の時間まで、あと53分22秒・・1、19、18・・・。



約束の時間までをカウントしながら、目の前の空席に思い浮かべた彼女は、
両腕をテーブルについて可愛らしい顎を載せた手に、ふにっと膨れた頬を描く。

きらきらの晴れた青が僕を見ている。



キミはこの店のメニューを見て、どんな顔をするだろう?
どうしてこの店を選んだの?って訊かれたら、「おもしろいだろ?ちょっと
覗いてみたかったんだ」って答える予定だ。

僕が座る椅子の背にかけたジャケットのうちポケットには、「そうだ、こんなのを
バイト先で見つけて」と言って取り出す練習済みの、前売りチケット。


ナッツクラッカーの公演チケット。
残念だけど、24、5日のは売り切れで、22日公演だ。





今日のイベントはコズミ博士のお膳立てだけど、次に繋ぐのは僕自身。
だから、季節的に狙うはクリスマスっしょ?


驚くかな?
びっくりするよね、きっと。
だって、僕がだし。

それとも、もしかして・・・・。
いやいや、そんなハズはないと思うんだけど、・・どうだろう?

僕の気持ち、まったく解ってないはずはないと、思うけれどさ。





「・・・・あのぉ・・」
「!」


うわっ。


「お待たせいたしました」
「あ、はい、はいっっ・・・ありがとうございます」









うわー・・・にやにやした顔で空席を見つめてたから、変なヤツって思われた?!


「ごゆっくり」
「ど、ど、どうもっ」


ウェイトレスさんの笑いを堪えるような引きつった笑顔が、僕の頬を赤く
染めた。







フランソワーズとの約束の時間まで、あと・・・。
冷静になろう。

変な妄想しないように、僕はテーブルの上の携帯電話を睨んで彼女との約束の
時間までをカウントしていたら、淹れたての珈琲をあっと言う間に飲み干して
しまった。


「・・・・すみませー・・ん」


彼女が車であと何杯、珈琲頼むんだろう、僕・・・。








***

彼が「ここで待ってるから」と言ったカフェ。
聞き慣れない”ベーガン”と言う言葉に、「店でメニューを見たらわかるから、
楽しみにしていてよ」とジョーに言われたけれど、我慢できなくてバレエ仲間に
尋ねた。

何人かの人が、最近できた可愛いくてちょっと珍しい0店だと教えてくれた。




「・・・うそ、約束の時間までまだ・・・」

彼と外での待ち合わせは、珍しくない。
そんな待ち合わせは行く先が決まっている。だから、待ち合わせ場所も、彼が
路上脇に寄せた車だったり、駅だったりが常だったけれど、今日は違う。


コズミ博士の、お気遣いに感謝して。





「・・・30分以上も前よ?」

腕時計を確認にて、私は笑いが溢れた。
彼も彼なら、私も私。

カフェの内部がよく見える、大きなガラス窓の向こうにいる、癖のある髪の人は
簡単に見つけられた。
もちろん、私がいる場所はその店から約100mほど離れた交差点だけれど。

嬉しさと恥ずかしさに、興奮した気持ちに反応して急いた、足が悪いのよ。
時間までどこかで暇をつぶせないかしらと、眼を使う。


一応、約束のカフェの場所を、その眼で確認したときに知ってしまった。







「・・・・ふふふ、ねえ、ジョーも・・・・私と同じ理由なのかしら?」




どうしよう?
約束の時間きっちりに行く?
待たせちゃう?

それとも・・。


いますぐにでも、走り出したくて、ウズウズしている足。
じんわり広がっていく、わくわくとした好奇心と対象的に、ばくばくと音を
立てる緊張した心臓がくすぐったい。






私はもう一度、視線を左手首の時計に戻した。
そして、彼へと再び視線を戻す。

さっそく珈琲のおかわりを頼む彼が視えた。
せっかくのベーガンのお店で、いつもと同じ珈琲だなんて、おもしろくないわ。


<009、珈琲のおかわりはそこまでよ!>
<!?>
<人の足ばっかりじろじろ観てるなんて!ジョーのH!!>
<はっ?!え、うそっ観てないっ!!観てないよっ!!絶対に観てないっ、て、
フランソワーズ、キミどこにいるのっ!>


んふふふ♪
あなたまで、距離、あと200メートル。







end.        







写真素材byミントblue
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