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眩暈
目眩いがした。


この世のものとは思えない、すべらかさに。
すらりと乾いて、温かさを感じながらも、ひんやりとした印象を伝えられて、心地よいという清涼感が躯の底から沸き起こった。

吹きガラスでつくられたつるりと滑らかな、婉曲したグラスの清純さ。もしくは芸術的な奇跡の技術で塗られた漆椀の、潔いひかりを滲ませた艶やかさ。


ほんの一瞬触れてしまっただけの彼女のむき出しの腕に、全身を繁殖期の猫のように、喉を鳴らした。








ドナシファン・レンスバレロ 元子爵、ヨーロッパ間の貿易に大きな影響力を持つ彼が、ある組織から、ある物資の郵送を拒み、取引を断った事から、命の危ぶむ出来事が相次ぎ、その出来事の以上さからギルモア博士の知人を通じ、僕たち00ナンバーに助けを求めて来た。


彼の命を護るために、華美(はで)な場所への出席は遠慮願いたいと申し出たけれども、どうしても今夜のパーティに出席しなければならないと言われ、承知する。



「思ったとおりだ・・。とてもよくお似合いですよ」
「こんな素敵なドレスを・・・、申し訳ありません、ムッシュ・レンスバレロ」


元子爵が出席するクリスマス・パーティに、彼の身を守るためパートナーとして、フランソワーズ/003が彼にエスコートされる。


元子爵の友人が所有する、シュヴェルニー城で開かれるパーティ。
その規模と、ヨーロッパの階級制度が現在でも存在することを証明するような場と、その場に相応しい要人たちが揃った。






「少し、外の空気を・・・」

独身貴族として名高い、レンスバレロ元子爵がパートナーとして選びエスコートする謎の美女。
その日の主役となったと言って過言ではないフランソワーズは、人の輪を抜けて会場と鳴った大広間から、そっとバルコニーへと抜け出した。


<会場内にいる人をざっと視たけれど、サイボーグは見当たらないわ>


脳波通信で連絡を取り合う中、ショール1つ持たずに会場の外へと出たフランソワーズに、009は、いや、ジョーは音もなく近づき、雪よりも白く、星よりも厳かに綺羅めく肌を自分の背広をかけて隠した。


その、ほんの一瞬。



ジョーの指が、フランソワーズの生の腕に、触れた。














---っ・・・・・・・・・ああっ・・フラン・・っ!!










腰からまっすぐにすらりと伸び上がる、背につづいて、ゆるやかに結い上げられた亜麻色の髪がいつもは隠しているうなじ。

無駄のない、細胞がしきつまった健康的なボディラインをぴったりと浮かび上がらせたシルエットを、品よく装うドレス。マーメイドのようなタイトなスカートがよく似合う張り出した腰。深く切り込まれたスリットから、ぴんと張りつめたような緊張感漂う太もも、彼女の強気な意志を表す高い胸。


「風邪をひく・・・っ」


理性と言う水が、砂漠へと舞い降りたときのように一瞬かすかに触れただけで、フランソワーズの肌によって蒸発させられた。


「あ、・・・ありがとう」


はりのある艶が描くなめらかな輝きを放つ爪。それを飾る華奢な指先が、ジョーがパーティ会場の給仕(ボーイ)として着ていた背広の前をつまみ、寒さを遠ざけるように前を合わせた。

そして、ジョーに気づかれないように、そっと胸いっぱいに、彼の香りを吸い込んだ。


「009・・・」


会場の華やかさと世間から切り離された夢のような空間に身を置くフランソワーズの意識は、普段よりも大胆な思いを胸に描く。
けれども、残念なことに高性能の耳は、生演奏が途切れなく続きパーティに相応しいににぎわう談笑が絶え間ない会場内のささやかな会話を捉えてしまった。


「なに?」

会場内で、お連れの方はどちらへ?と、レンスバレロ元子爵に尋ねた人が現れて。
彼の視線が、こちらへちらりと流れただろう。


「・・・・・・・メリー・クリスマス」
「うん・・」


フランソワーズは、戻らなければならなくなった。


「戻ります」


レンスバレロ元子爵のパートナーが、”給仕(ボーイ)と逢い引き中と噂がたたないように。


「飲み過ぎたら、駄目だよ?」

時間にして、ジョーがたまに食べたいという、インスタントヌードルが出来上がるかどうかの、つかの間の、休憩。


「任務だということを、忘れてないわ」


フランソワーズは肩から、ジョーにかけてもらった背広をするりとおろし、彼に返した。


「あと、1杯だけだからね。6杯目からは、ノンアルコールで」
「まあ、数えてたの?」
「リーダーとしてね」
「嫌な人ね」


くすりと笑ったフランソワーズの唇の端が、魅力的にきゅっと上がる。


「何が良い?」


フランソワーズから受け取った背広を羽織り、ジョーは微笑んだ。
微笑むことで、今日のフランソワーズを観る視線に1枚の厚いフィルターをかぶせる。

一度失った理性を取り戻すのは、至難の技。
今、009と言う使命がなければ・・・。と、喉に力を入れた。


「あなたの、オススメがあるなら、それを・・・」


会場へと戻り任務をこます気持ちを引き締めるため、ひんやりと冷えた12月の空気を薄く吸い込んだ。
フランソワーズの後ろ姿を見守りながら、ゆっくりと彼女のくちびるから線を引くように流れる白へと、くちびるをよせていく躯が、自然と彼女を追うように動く。






そして、想像する。




あの肌に、指をすべらせ、唇で吸い上げ、舌を這わす。


あの肌に、無我夢中になって昼も夜も見失い、寝食を忘れて貪りつくす。


あの肌に、溺れて堕ちていくだろう、自分の姿に、


その、自分の姿に、目眩いがした。















+++



<ありゃあ、まるでロミオとジュリエットだなあ>


さまざまな物/者に姿を変えて会場全体の様子を見守る007


<どっちかというと、タイタニックじゃないか?>


ジョーと同じホール給仕(ボーイ)の仕事に精を出しながら、こっそりポケットに電話番号のかかれたメモを溜めていく002。

会場の外にいるメンバーたちは、2人からの報告(プレゼント)を楽しんだ。










end.






*イベントにおけるほど、クリスマスしてないと思ったので、ショートへ置きます。
・・・今夜、素敵にドレスアップした3に、キスするかどうか、をかけていたと思われる00ズさんたちを妄想してしまったことを、書いときます。

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