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PRENDRE UN CANON

日が沈む早さに感謝した者は、彼以外いないだろう。
自国の大型ショッピングセンターでこれでもか!と言うほどに買い占めてきた彩り鮮やかな電球たちを、みんなへのクリスマスプレゼントだ!と、自慢の高い鼻をさらに高く、高くした、ジェットがギルモア邸に帰って来た。


「ふふふっとっても素敵なサプライズだわ!」


喜びと興奮に、躯が自然と跳ねた、フランソワーズから鈴の音が聞こえた。


「だろ?フランソワーズ、今年のクリスマスは半端ないぜ!!」


ジェットのスーツケースの中にめいいっぱい押し込まれていたイルミネーション用の電球をみながら、その多さと種類と、なるべくは世間一般の眼から隠れていなければいけない身分の者が住まう邸を飾り付けるのか。と、呆れながらも、さっそくインターネットで自宅をデパートメント顔負けのデコレーションをほどこす、クリスマス・イルミネーション画像を色々と検索しはじめた、00メンバー内でアーティスティックなセンスが光る、ピュンマ。
黙って邸の地下からざっくり必要かと思われる数のパワー・エクステンションコード類を用意するジェロニモは、木々に飾り付けることだけは断固として反対する。
なんだかわっくわくするアルネ!と、何やら楽しげにお茶と中噛まんを用意しはじめた。
イブの夜、ほんの数時間くらいならいいんじゃないか。と、顔をしかめて反対意見を口にしそうなお固いドイツ人をまあまあと宥めるイギリス紳士は、飾り付ける邸の外観部分を、一般道に面していない、裏手の海側部分だったらと妥協案を提示する。
ばかばかしい。子どもじゃないんだぞ、子どもじゃ。本来クリスマスは乱痴気パーティのネタじゃなく。と、蘊蓄が飛び出してきそうな口もとをぐっと堪えたには、訳がある。










『ジョーが・・・、帰って来ていない?』

それは本格的な冬の訪れを告げる季節風と一緒に、海外組の00メンバーへと日本組のでこぼこコンビが送ったメールから始まる。


彼の趣味なのか、なんなのか、ジョーはふらりと定住している邸からいなくなる。
予定も行き先も何も告げずに外泊を重ねることに、難色を示す仲間たちの忠告など右から左へと聞き流し、その放浪癖は変わることなく続いていた。
せめて”万が一”の出来事に備えて行き先は言っていけ。と、家族を代表して言ったアルベルトにむかってみせた、携帯電話。


『買って来た。・・今後は肌身離さずにこの電話を持っているから』


その後は、自分が買ったのと同じモデルを持たせたフランソワーズに、外出先から連絡(メール)が入るようになった。


”フランソワーズ、僕は南にいます。元気です。”




けれども、今年の9月末から出て行ったきり、クリスマスを3日前に控えた今日まで、一度も連絡が入らない。
こちらから何度も携帯電話にメールし、電話をかけるけれど、留守番電話サービスのアナウンスばかり耳に響かせる日々が続く。


『クリスマスには帰ってくるわ、だって約束したもの。一緒に・・って』


心配などしていないと笑って答え続けるフランソワーズの、その余裕ぶりにもしや彼の居場所を知っているのかと、何気なく昼の時間のイワンに尋ねた。


<ふらんそわーずハ何モ知ラナイ>







では!と、かけ声をかけたのは、009ではなく、008だった。
ギルモア邸イルミネーション計画の総指揮を取る。彼は手早く海側に面したギルモア邸の外観を写真に撮り、2D、3D使用で外観設計図を作った。その設計図を元に、おおまかなイルミネーションの配置をデザイン。ジェットの買って来た電球の種類、ケーブルの長さ、色、形別にリストを作成。


「全部アメリカのなら、電圧変換機がいるな。」
「邸になかったっけ、005」
「地下から繋げるか?・・それなら電圧も問題ないんじゃあないのか?ドルフィンでもいいんだろうけど、ここに着陸させるわけにはいかんだろうしなあ」
「地下からだと、かなりの長さが必要になる。ブレーカーが落ちないか?008」
「地上に建てられている邸の電気配線は一般のと変わらないからなあ。一応シュミレーションして計算するけど。・・・、点灯時は邸内の電気をすべて落とす予定だから心配ないよ、きっと」


美的センスに信用がおける004と相談しながらデザインを絞り、オーソドックスな定番の飾り付けに、邸のリビングルームとは別に、2階のフランソワーズの部屋にあるバルコニーに、クリスマスツリーを置くことにした。
彼女の部屋の隣のコモンスペースはステンドグラスが埋め込まれているので、内側から光をあてポイントにする。


「ツリーは、光ファイバーの白いのがいいなあ。ロマンチックだ。あのほんのりとした色のグラデーションがなんともいえん。姫の部屋のカーテンに外からもうっすら幻想的に光るだろうて」
「ジェットの買ってきたのは、品のない配色の電球を使用しないとして、これだと足りん。買い出し部隊がいるな」
「何いってんだ、この配色こそがクリスマスって色じゃないかよ!」
「我が輩が、姫へのクリスマスプレゼントと、その1として、ツリーを買おうぞ!」
「決まりだな、この品のない電球は排除だ」
「なにっ!」
「まあまあ、色は白とブルー、グリーン、黄色っぽいので統一するから、その派手なのは、・・・」
「ドルフィン。」
「そうだね!僕たちの大切なドルフィン号もクリスマス仕様にね!」
「だーーーーっ!」
「おおお~いっついでに必要なものがあるなら買って来るよ~っ!、006っ何かあるぅ?」
「アイアイね~!今かき出すのことヨ」
「じゃあ、我が輩が車を出すとのことヨで。002!お前もくるんだろ?」
「その間に下準備をしておこう。004」
「もちろんっ。久しぶりの日本だからな!PS3を買うっ」
「了解、005」
「なんで向こうで買わないの?」
「向こうはすでにWiiがあるからな」
「えー、買うならW 8000 iiにしてよ。みんなでテニスとか、ほら、ダンスダンスのマットとかー。パーティで楽しいのがいいよ」
「PSでもあるから心配すんなって」


002はウィンクと一緒にサムズアップしてみせた。


「では、00メンバー諸君!」


ピュンマはリビングルームのソファから立ち上がり、集まっている全員とざっと視線を合わせた。


「ミッション、”星降る聖夜に願いよ届けっ!愛と平和(とジョーが戻って来る)を祈る、00ズ製作・イルミネーション”、始動!!」
「「「「了解(アル~)!」」」」
「・・・アニメ番組のタイトルコールみたいだな」


地下の研究室の隣に設えたギルモア専用の書斎から内線電話を使い、地上のダイニングルームの室内番号を押して子機を耳にあてがったギルモア。2度のコール音の後、涼やかに愛らしい娘の声が続いた。


『はい、博士。いかがなさいました?』
『おお、フランソワーズ・・・あと10分もしたらそっちへ上がるから、何か口に入れられそうな者を用意しておいてくれんか?』
『張大人の出来立ての中華マンがありますわ』
「いいなあ、それは。じゃあ後で・・・ん?』


フランソワーズの電話の向こうで何やら賑やかな声が聴こえてくる事に、気づいたギルモア博士。
フランソワーズはその様子を電話越しに読み取ってくすっと笑った。


『ジェットがとっても素敵なクリスマスを用意してますのよ』
『帰って来たのか?』
『ええ、博士にご挨拶もせず・・本当に困った人ですわ、そちらに行かせましょうか?』
「気にする出ない、どこも問題なく元気だというこであろうてな』


ふっふっと柔らかく笑ってギルモアは子機の通話を切った。


「あとは、末っ子だけか・・・。末っ子なだけにマイペースでのんびり屋とな」




誰1人として、ジョーの名前を出す者はいなかった。
12月に入り、ぽつり、ぽつりと帰省する仲間たち誰も、フランソワーズの前で”ジョー”と言う名前を問う事はなかった。


気を使わないで。と、キッチンに立つ3人目の父とも呼べる人にさりげなく言葉をかけると、その人はにこやかにクセのある話し方でフランソワーズを励ました。


「いつものことアルからねえ。みんな別に気になどしてないアル。気にしてるのは、フランソワーズね」
「・・・」
「約束してるなら、それでいいのね」
「亭主元気に留守が良い!アルヨ?」
「!!」
「ふふふのふ~♪妻はしっかり留守を護ってるスンバらしい、ねえ、フランソワーズは妻の鏡!」
「もっやめてちょうだい、張大人!」


真っ赤に頬を染めて可憐に恥ずかしがるフランソワーズに小さな目をさらに小さくして細め見つめる張大人は、知っている。
今朝早く、涙まじりの声で日めくりカレンダーを破った、フランソワーズを。






『・・・ジョー、どこにいるの?』




切り離した日付を屑篭に入れる、フランソワーズからちりりん♪と小さな鈴の音が聴こえた。







買い出し組が戻って来たころに、ちょうど夕食の時間となり、ギルモアとクーファンで眠るイワンもくわえて夕食の席、ダイニングルームはジェットの新しい仕事、”ラスベガスで闘牛士”の話題に花を咲かせた。
クリスマス時期は一番の稼ぎ時なのに”花形スター”がこんなところに居ていいのか?と突っ込まれるが、スターだからこそ貴重性が必要で、出て来て当然と思われる日に当たり前のようにショーに出たら価値が下がると、よくわからない理論を語る。

どこまでが本当なのか、よくわからない武勇伝に、テーブルは時間が経てば経つほど盛上がっていく中、冷ややかに「好きに生きてくれたらいいが、油断しするなよ」と一言注意することは忘れないアルベルト。
そんな彼にグレートは「どうだい、アルベルトもラスベガスで働けるんじゃないか?」と話を振った。


「なぜ、オレが・・・」
「そうだよ、グレート。ラスベガスでショーならグレートの能力が一番だよ」


今日の夕食は、みなでつつけば幸せいっぱいの、鍋料理。
はフランソワーズ。取り皿や、足りなくなった野菜類などのためにキッチンとダイニングルームを往復する中、
彼女からちりりん♪と鈴の音が聴こえるが、誰もそれを気に留める者はいない。


「我が輩が出ては、一躍ハリウッドスターとなってしまうではないか!ここは、マジックショーをアルベルトに譲ってだな」
「「「「マジックショー????」」」」
「アルベルトがあ?」
「何もできんぞ」
「ビックリショーには出れそうだ。」
「・・・ジェロニモ、お前も似たようなもんだろう?」
「オレはインディアンの誇り、捨てていない。」
「ドイツ人の誇りも一緒にしておいてくれ」
「マジックショーは立派な芸術!ギルモア博士がお手伝いしてくだされば・・・」


グレートの視線が、ほふほふと熱々の白菜を頬張るギルモアへと向き、みなの視線がギルモアに集まった。


「儂が、どうした?」
「アルベルトの躯に埋められているロケットなど、その他諸々の危なっかしいやつを取り除いて、代りに・・・」
「代りに、何をつむんじゃ?」


にやあ。と笑ったグレート。
みなその笑みにつられて、それぞれに想像する。




『さあさあ、おあつまりのみなさま!不思議も不思議、世界の不思議を、今ここに!』


派手な司会者のイントロから、漆黒のタキシードをばっちりと着こなした、アルベルトが現れた。
ラメで飾ったアメリカ国旗をはりつけたような衣装の司会者が、りんごをほい!とアルベルトにむかってなげた。

しゅぴぃぃんっ!と、するどく風を切る音。
おおおお~っと、感動の歓声が追わないうちに、つぎつぎに司会者が投げるリンゴを”素手”で、しゅっしゅっしゅっぴぃぃんっ!と切り裂いていく。


そして、


「アルベルトにしかできない芸当といやあ」


改造された肉体を駆使してさまざまな”マジック”を披露した、クライマックスには・・・。


「わかった。グレート、わかったぞ!万国国旗に、紙吹雪、鳩にうさぎに、じゃな!!」


膝を割って構えたアルベルトから出て来る、出て来る、夢ときめく不思議な世界。


「はでにどかーん!と、打ち上げる花火も、いいね!」
「ロケットはそのままもなかなか良いアルヨ、ロケットの中から色々出るってのもね!」
「日本の伝統芸、水芸をアルベルトの左手に仕込んで欲しいな、僕は!」
「いいねえ、いいねえ!それいっとこう!」
「アルベルト、いくつかショーのマネージャー知ってるから紹介するぜ!」


ギルモア邸が爆笑の声に揺れた。


「躯の中に、ウサギや鳩を飼えと・・?」
「膝から美女が出てくるっていうのも魅力的だなあ!」
「いっそのこと、グレートがアルベルトの中に住んだら良いと思うよ、コンビを組めば?」
「前もっていっておくが、オレは参加しない。」
「度は道連れ世は情け、仲間じゃないかっジェロニモっ」
「残念だなあ、僕は芸らしい芸がないやあ!がんばってね、応援してるよ!!」
「その気があるならいつでも言いなさい、アルベルト。それ用の改良を考えておくからの。仕込み用の小道具ま
できちんと面倒みるでな」
「博士、冗談を間に受けないでください・・」
「素晴らしいアイデアじゃと思っておる!」


そう、素晴らしい!新しい人生を謳歌できる素晴らしいアイデアだ!と、00メンバーがそれぞれの能力を駆使してエンターテイメント業界を駆け抜けるには。と、戦いのない世界で”お役御免”となったとき、など砂のように形にもならない、未来の話しでその日は終わった。







翌日。
昨夜のテンションを維持したまま賑やかに、イルミネーションの飾り付けが始まった。

あんまり高く飛ぶな!向こう側を通る車に目撃される!と、002が空へとすいっと飛ぶ度に、一喝する004は昨日の出来事をさほど気にしていないらしい。
今日アルベルトの機嫌が悪かったら、彼もまだまだっ・・・てコトあるからねえ。と、こそっとフランソワーズに耳打ちしたのは、電気ポットに温かなジャスミン茶を用意して、今回のイルミネーション・プランの指揮を取る008の隣に経つ、006。
現場監督気分の007が、もっと左だ、右だ、もう少し上だ、下だと細かな指示を出し、005が全体の動きを観て、必要な工具や道具、電球などを用意して作業がスムーズに運ぶように、大きな躯からは想像できない細やかに気を配る。

さすが00メンバーだ。と、自画自賛したくなる見事なチームワークで作業を進めていく。
その様子を普段と変わりない家事の合間に、手伝う事はない?と尋ねて来るフランソワーズから、ちりりん♪鈴の音が聴こえた。



しんしんと澄んだ気持ちよい空気の中で吐く息は白く、その白にジョーが邸を出ていった日を数えた。
着の身着のままで、出て行くこともあるけれど。
今回のように、きっちりと”予定”をたてていたとばかりに荷物をまとめて出て行くときもあった。
ジョーが持っている、スモールサイズのトランクケースと、スポーツバッグの両方を持って出て行くのは、初めてだった。


彼のクロゼットを確認したら、冬用のダウンジャケットも消えていた。



「もう・・・帰って、こないの?」









『フランソワーズ・・。これ』


ちりりん、と、鈴の音。
小さな小指の爪先ほどの猫が片手をあげておいで、おいで。の形をした、キーホルダー。


『招き猫。って言うんだ。・・・商売繁盛で、お金を呼んでいるポーズなんだけど、今はいろんな意味があるみたいで』


ピンク色の耳が可愛いだろ?と、笑った。


『幸せを呼ぶんだって、この招き猫は・・・・。だから、買って来た』


肌身離さずにいつでもジョーからの連絡を取れるように、邸内でも持ち歩く、ジョーからもらった携帯電話につけた。
彼女が歩くたびに、小さくちりりん♪と鳴る鈴の音。





私はここよ。

ジョー、ここよ。









あなたを呼んでるの。















私の幸せは、あなたが無事なこと。
あなたの、そばにいること・・・。





『色々なことが重なってさ、・・去年も一昨年も・・一緒にいられなかったから。今年のクリスマスは一緒にって約束する。うん、・・・一緒にって、約束しよう』


「まだ夏も終わっていないのに、もうクリスマスの話しなの?」と笑って、彼からの何かしらの”サイン”を見逃していたのかもしれないと。
フランソワーズは今更ながら、過去の自分を責めた。













ちりりん♪と、鈴が鳴る。

携帯電話につけた、それが鳴る。
時間を確認するようなフリをして、何度も彼からメールが来ていないかを確かめる。


クリスマス・イブ1日前の午後には、すべてのイルミネーションを、飾り付け終えた。
「予行練習は?上手く灯るかどうかテストしないの?」と、尋ねたフランソワーズにみなが口を揃えていう。


予行練習なんかしたら当日の感動も、楽しみもないだろう?
失敗も成功もひっくるめて、イブの夜のお楽しみだ、・・・と。





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イラスト by ふるるか
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