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PRENDRE UN CANON 2



イブ前日。

仲間たちとのパーティに備えての準備に走り回る。
室内のデコレーションは外ほど力は入っていないけれど、どこから仕入れられてくるのか、毎年ジェットよりも背が高く、ジェロニモと変わらない高さのもみの木がリビングルームに青々とした緑の香りを満たす。

たとえそれが”作り物”の木であっても、電飾は飾らない。
ジェットお気に入りな”クリスマス”らしいカラフルな電飾を巻こうとやっきになっていたけれど、ジェロニモが”点灯”しないならいいぞ。の言葉になんのための”チカチカ”だよ!と文句を言った。






『みてっ!!フランソワーズっ宝箱をみつけたよっ!』


飾り付けるためのオーナメントを納める、アンティークの木箱をみつけたのは、ジョーだったわ。と、ひとりごちた。
00メンバーの本拠地を日本に決めて。自分たちの身を守り、隠す場所に適した土地を探し、みつけた打ち捨てられた洋館。明治時代の歴史ある建物だと説明されて、希少価値のある建物がなぜに長い間誰からも忘れられて放っておかれたのかと、ジョーと一緒に首を傾げたことも思い出した。


---立地条件と、・・・潮風、吹きさらしにされて修復にかかる費用から、壊すこともできず、再建築することもできず・・・・。



『僕たちを待っていてくれたんだね。きっと・・・・。だから、ここが僕たちの家だ、他にはない、ここなんだよ。キミと僕と、・・・ね?』





自分たちの手で修繕していく洋館。
過去に暮らしていただろう人の名残を見つけながら、触れながら、そしてさようならと言いながら。

2階にある、細長いウィーキング・クロゼットのような収納室に、3階へ通じる秘密の階段をみつけたのは、その能力がある故のフランソワーズだった。
彼女から3階があることを報告されたジョーは、「誰にも言っちゃ駄目だよ」と彼女に口止めをする


『今日の夜、12時過ぎたら・・もっと遅い方がいいかな?13時くらいがいいかも。みんなに内緒で、そのくらいに僕の部屋に来て』


思いがけない誘いの言葉に、フランソワーズは胸に緊張を走らせた。
彼女の戸惑いと驚きに見開かれた瞳に、何かを勘違いさせたと気づいたジョーは慌てて、訂正する。


『あ、大丈夫っ!違っ!!違うよっ。フランソワーズ。安心してっ!!変な事をなんてしないよっ、考えっても、な・・、そのっああっ何を言ってるんだろう僕はっ!』


約束の時間に”何もない”とはわかっていながらも、”もしも”を無意識にときめかせる胸が、色付きのリップと、つけなおしたパルファンが表していた。


『楽しそうなことを、ちょっと独り占めしてみたかったんだ』


真夜中の宝探しを、密やかに告白するジョーの顔を、思い出す。





『フランソワーズっすごいよ!本当の宝箱だっ!』


大きなアンティークの箱は舶来のものね、どこの国かしら?と、誇りを払うフランソワーズの隣で、珍しく興奮にはしゃぐジョーがいる。
3階の部屋の隅っこに、色を変えてしまった子供用の毛布に覆われて隠れていた。


『クリスマス、これを飾ろうよ!たくさんあるから、おっきなツリーを探してこなくちゃ!』


おもちゃ箱と見間違えるような、ツリー・オーナメントがその箱一杯に納められていた。
他にも、大きさは小振りになるが、同じアンティークの木箱からも・・・・。









「フランソワーズ、どうしたの?ボーっとして・・疲れた?」


ピュンマの声に、自分の世界に浸っていたフランソワーズは現実の世界へと目覚めた。
手には、まあるい白い陶器のオーナメント。ブルーのインクで雪の街が描かれていて、制作者のサインが、雪の街を駈ける小さな男の子の足下に書かれていた。


「これを、見つけたときのことを思い出したの。本当にサンタクロースがいるのかと思ったのよ。私たちにこの邸と一緒にプレゼントしてくれたんだって・・・」
「帰って来るよ」
「!」
「だって、これらのオーナメントは彼と2人で見つけた宝箱じゃないか。それを置いたままでなんて、ないよ」


きらりと爽やかに白い歯を光らせて、満面の笑みで自信たっぷりに宣言したピュンマに、ずっと胸の底に隠していた不安が浮上してくる感覚に、瞼を何度も忙しなく動かして、気持ちを紛らわしながら、手に持っていたオーナメントーを背筋を伸ばし、つま先だってもみの木に飾った。


「でもよ、イブ前夜にツリーの飾り付けって・・・何やってたんだよ、フランソワーズ。いつもはもっと早くに・・・」


使用される様子のないクリスマスらしいカラフルな電球たちを手にしたジェットの声に、フランソワーズは堪えきれず「何か飲み物を用意するわ」と言いながらも、キッチンとは逆のドアへと消えて行った。


「ジェットおおお・・・」
「な、なんだよ?」


リビングルームに盛大なため息が次から次へと吐き出された。


「もう少し考えてから言葉を口にしろ」
「・・・去年も、一昨年も、その前の年もツリーが届いた翌日に、”2人きり”で1日かけて飾りつけていてなあ、知らなかったのか、ジェットは?」


飾り付けをする様子を、愛用の安楽椅子に体をあずけてパイプをふかしながら眺めていたギルモア博士が、口をはさんだ。


「しかし、このツリーが届いたということは、ジョーのヤツはちゃああんと帰って来るってこった」
「?」

グレートがツリーを見上げて、うんうん。と、1人納得する姿を目にして、ジェットは首を傾げた。


「それも知らないアルか?ジョーは専門業者にきっちり12月1日届くように、ずうっと予約注文してるアルよ。邸に引っ越してきたばかりのころのクリスマスにもちゃんと木があったネ」
「ずっと日本に住んでないんだから、知るかよ」


フランソワーズの代りにと、オーナメントを箱から出して磨く役割を、アルベルトに譲って、キッチンへと向うらしい張大人が呆れたようにジェットに教えた。


「知ってたぞ」
「うん、僕も」
「業者を紹介したのはオレだ。」
「ちっ、そういうことは早めに”ちゃんと”教えてくれって!」








部屋に駈け戻ってしまったフランソワーズは、溢れ出した涙を止めることができない。 ドアを締めると同時に、その場に座り込み、唸るように喉から壊れた笛のような音を出した。


両手で押さえた口元が、みるみる濡れていく。
大雨の日の車のフロントガラスは何度ワイバーで拭っても滲み濁るように、フランソワーズの視界はぼやけて。
フローリングの床と、着ているスカートの色が混じり合って。


冷えた床と接触する皮膚が冷たくフランソワーズの体温を奪うかのように浸食していく。



寒くもない部屋で、フランソワーズは肩を震わし、体を小刻みに揺らし、喉をきゅーっと締める筋肉の痛みに逆らうように漏らす音を唇を何度も巻き込んで噛み、飲み込む。けれど、それは嗚咽となって、別の音となって戻って来る。








寂しさがこんなに痛いとは思っていなかった。
肌がぴりぴりと何かを探している状態で毎日をごまかし、ごまかし、暮らしていた。

明日には。
明日こそ。

明日がくれば。











けれど、一度も彼からの連絡は来ない。


『ごめん、・・・また、連絡もしないで・・・』


フランソワーズの躯の揺れに、携帯電話につけた”幸せを呼ぶ招き猫の”鈴がなる。
スカートのポケットの中で、遠慮がちに、ちり、り。と鳴っていた。


涙でべたべたになった手でスカートのポケットに手をつっこみ、上下する肩で上手く操作できない指が、電話帳に1つしかない電話番号を選ぶ。
もしかしたら。と、願いを込めて。

通話のボタンを押す。


5回のコール音。








ぷつ。と、コール音が止む。





「おかけになった電話番号は、現在電波の届かないところにおられるか、電源が・・・」



「ジョーーっ・・・・・っっ・・ぉぉ・・」



「・・・・ピーッと言う発信音の後に、メッセージを・・・・・」



「ジョーっ、私っ・・・・・わたっ・・しっ・・・っ!!」









ピー・・っと、発信音が、フランソワーズの耳に届くと同時に、彼女は通話をオフにした。








「フランソワーズ、休んでいるのか?夕食の時間だぞ?」


背中に響いたドアのノックが、フランソワーズを気遣う優しい音だった。


<・・・・ちょっとはしゃぎすぎて疲れたみたいなの、今日はこのまま休ませて・・・・ごめんなさい>


壁一枚、ドアの向こう側に立つアルベルトに泣き枯れてしまった声を聴かれたくはなく、フランソワーズは脳波通信を使った。


「なんでしっかり首輪をつけて鎖で繋いでおかないんだ?まったく・・・」
<・・・・>
「曖昧な関係のままでいるから、こんなことになるんだぞ?ヤツが帰って来たらちゃんと伝えろ。いい大人だろう?」
<・・・・・・・・>
「お前が甘やかすから調子に乗るんだ。男はバカなんだからな」
<・・アルベルト、も?>
「ああ、オレもだ。・・・・”バカだった”からな。”こんなこと”になるのなら、毎日朝昼晩、どんな時だろうと場所だろうと、プライドも何もかなぐり捨てて、・・・あいつにお願いされなくても、言ってやればよかったと、思っている」









好きだ。

愛してる。


そばにいろ。







離れるな。












「そうやって言っていたとしても、・・・足りないと思って後悔しているんだろうが、な。・・・・・だから、ヤツが帰って来たら、おもいっきり殴って、おもいっきり抱きついて、・・・・遠慮するな」


遠慮するな。と、繰り返し、ドアを離れて行くアルベルトの気配を感じたフランソワーズは、座り込んだまま床にうずくまる形で固まってしまっていた躯をゆっくりと動かした。
どれくらいの時間を、そこで過ごしていたのか、じんじんと重く痛む頭と、床にひっついてしまった皮膚を剥がす感覚にフランソワーズは、微笑んだ。


「今ごろになって泣くなんて・・・、みっともないわよ、・・・003なんだから」












***


24日、クリスマス・イブ。
誰よりも早く起きたフランソワーズは、1つ1つ丁寧にこころを込めて、朝食作りに取り組んだ。


気持ちのゆるみは、こころから心配してくれて励ましてくれる、みんなが居るから。
つんと胸を張って立っていた自分のこころの奥底にしまい込んでいた感情を、出してもいいよ、受け止めてやるからと、みんながみんな両手を広げて温かく包んでくれるから。


幸せね。
私はみんなに会えて、みんなと仲間で幸せ・・・。


食器棚に手を伸ばした、フランソワーズのスカートのポケットの中から、ちりりん♪と、鈴が軽やかに鳴った。









幸せを呼んでくれてるわ。
あなたがくれた、猫ちゃんが呼んでくれてる。




















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イラスト by ふるるか
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