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LIttle by Little・24
(24)




その日の夕食に、ピュンマの昼間の感想を述べる声がダイニングルームのテーブルを飾った。


「もーっほんっとにびっくりしたんだよー!」
「そんなことがあったなんて・・・。なんで教えてくれなかったの?」


朝早くに海の病院へ同伴したピュンマ。


「そりゃあね、まあ色々あるからだよ。でもさ、聞こえてたら聞こえてたで海、イルカ以上の聴力ってことだから」
「イルカ・・・」


彼らはタクシーではなく、電車とバスを乗り継いでギルモア邸へと戻って来たのは、ちょうど昼少し前。


「私たちだってとっても驚いたわ、あの音は初めてだったんですもの」


張大人が喜びのすべてを全身にこめて飛びついてきた衝撃を、受け止めきれなかったジョーが、地下へと通じるドアに思いきり頭をぶつけた。
00メンバーとギルモア博士以外の人間に使われる事がないよう、精巧にセキュリティを強化されていた、そのドアが衝撃を受けて侵入者と判断。


「なんだ?姫、一応の作動チェックの確認のために聴かされていただろうに」
「それは・・・”訓練”としてはでしょう?」


地下にある部屋のすべてに緊急用ロックをかけられるようになっていた設定だったため、メンテナンスルームにいたギルモアは、意識のない002と005と一緒に閉じ込められてしまった。


「アイヤー、そうあるなあ。ワタシもドキイイイっとしたアルよ!」
「って、なに言ってんだい、あれを鳴らしたのは、張大人のせいじゃないか」


邸に一番近いバス停に降りたとき、008として優れた聴力を持つ彼の耳にとどいた、人には聴こえることのない周波数でるくられた、警報音。そして、その音が発する独特なウェーブから彼の持つ補助(コンピュータ)脳が伝えた。


”侵入者アリ”



「あはは、海を連れて邸に戻るのも駄目だろ?かといって、バス停に放っておくのもさあ」
「珍しいな、ピュンマ。判断ができなかったのか?」
「怖いね・・・。一瞬だよ、ほんの一瞬だけだけど慌てちゃって、冷静に状況判断ができなくなってた」


即戦闘態勢に入り、海の安全確保を第一と考えて彼には悟られないように邸から距離を取りつつ、邸内にいるであろう仲間にむかって脳波通信で連絡を取った。


<すまない、・・・誤報だ。戻って来てくれて大丈夫だよ>


間髪入れずに帰って来た返事は、リーダーである009の力ない通信だった。
その通信を送ったときには、すでに009は地下へと降りて、警報音を解除。すべての緊急用ロックを解いてメンテナンスルームにいるギルモアに事情を説明していた。

ペナルティが3つ(ゲストルーム付属のユニットバスの壁に大穴/ミッション中の外泊/今回の警報音誤作動)揃ってしまったジョーは、ジェットよりも早くレッドカードを渡されてしまった。


「瞬きにもみたない一瞬の迷いが命取りになるって、嫌でも解っていたはずなのにさ・・・。ま!自分を責めるよりもリーダーの009の石頭を責めようかと思っている今ですよ、うん」
「あれくらいで警報音が鳴るたあ、どれだけ石頭に出来てんのか・・ジョーのやつ」
「ジョーの頭ってさあ、やっぱり僕たちと強化度が違うのかな?」


海は夕食の酢豚に入ったパナップルを皿の隅によけながら、隣に座るピュンマに尋ねた。


「ね、(サイボーグの頭って)どれくら固いの?」
「どれくらいかって?・・・うーん、どれくらいかなあ?」
「まあ、あれだ。ちょっとした大きさの岩くらいなら割れるだろうなあ」


ピュンマが海から受けた質問を視線を流して、ダイニング・テーブルの向かい側に座るグレートへと渡した。


「ちょっとした大きさってのが解らないよ、グレートさん」
「まあ、とにかく。岩は頭突き一つで割れちまうくらい、固いってことさ。海くんがやったら頭の方が割れちまうだろう?」
「当たり前だよ」
「その、当たり前のことが当たり前じゃないのが、我々なのさ!」


ウィンクを海へと飛ばしながら、グレートは焼き餃子を2つ一片に口に放り込んだ。


「あ!あんた食べ過ぎね、アルベルトの分残しとかないと駄目あるよ!」
「なに、また焼き直したらいいだろ?冷凍庫にまだあるのを我が輩はしかと観ておったぞ!」
「あれは、ジョーと博士の分よ」
「グレート、よかったら私のをどうぞ」


グレートの隣に座る張大人の向こう側から、すっと餃子の乗った皿が移動してきた。


「おお!これはこれは姫、優しきお心遣いに感謝感謝でございまするが・・・」
「駄目アルよ、このおっさんを甘やかしたら!!」
「手伝ってくださらない?」
「え?・・フランソワーズ、どうしたの?」


いつもの彼女なら、ぺろっと食べてしまえる量なのに。と、ピュンマは斜め前に座るフランソワーズにむかって心配そうに声をかけた。


「ふふ、まだびっくりしているのかもしれないわ・・。ごちそうさまでした」
「もういいアルか?」
「とっても美味しかったわ。ありがとう、張大人・・・それにしても、アルベルト遅いわね」
「なに、大人にゃ、大人の事情ってもんがーあるんでさあ、姫が心配するこたーねー」


フランソワーズがグレートに渡した皿の上の餃子をひょひょい!と、箸でつまみ、口に放り込む。
そのグレートがいつもの彼らしくない言葉遣いを披露したので、使用した食器を重ねようとしたフランソワーズの手が止まった。


「・・あんた、何者ネ?」
「岡っ引きぼくないか?」
「なにアルか?」
「せっかく日本にいるんだ、日本の時代劇っていう分野をちょっくら勉強してみてもおもしれーんじゃねーかと思ってよ!」


<ジェットっぽいね>
<ジェット・・ネ>
<岡っ引きって・・私わからないわ・・・>


「英国紳士の次はお侍さんですか?」
「はげてる侍なんていないよ、海」
「だーからー!侍じゃない!岡っ引きっていってんだろうが!てやんでいーっ」


乱暴にそれらしく中華スープなんちゃってツバメの巣っぽいものが入っているお椀を手に取り、ぐいっと飲んだ。


「アチっ!アチチっ!!」
「あー・・熱いにきまってるネ。さっきお代りしたばっかりよ」
「・・・・サイボーグって喉とか火傷するの?」
「全部が全部”機械”ってわけじゃないんだ、人工細胞で躯の中の機械と(生身の)組織を融合させるのにひ」
「ピュンマ、お願いがあるのだけど」


すっかりサイボーグメンバーの一員と家族のように馴染んでしまっている海の、好奇心旺盛でシンプルな質問にたいして、つい口が軽くなるピュンマ。聞いていたフランソワーズが、さりげなくそれ以上の情報を海に与えないように、会話を止めた。


<駄目よ、ピュンマ。あなたいつからそんなにおしゃべりさんになったの?>
<つい、・・・でもこれくらい大丈夫だよ>
<これくらい、これくらいって思っているうちに・・・。海さんのことを思うなら、どんな小さなことでも余計な情報は与えない方がいいと思うの>


「姫、何かお手伝いが必要なら、我が輩いつでも・・」
「岡っ引きはどこへいったあるか?」


<・・・・・・・余計、か>
<ごめんなさい。でも、ピュンマ・・>
<わかってる。ありがとうフランソワーズ。僕はどこか・・ネジが緩んでるみたいだね>


---・・・幸せだからさ。



旅から旅のドルフィン号での生活を離れて、定住場所のある安定した暮らしに慣れた今、ピュンマは自分がこころの底に大切にしていた、彼のもうこの世には存在しない家族との生活に今を重ねてしまっているのかもしれなかった。

ジェロニモのように部族単位の生活ではなかったけれど、ピュンマの育った村は団結力もあり、各々で作った自治体の構成も整っていた。
仲間も家族。家にはひっきりなしにピュンマが所属していた部隊の仲間が自分の我が家のように遊びに来ていた、父に母。そして妹。と、仲間。


今一度あのときのような、辛いけれども温かい日々が・・・。









「お願いって、なにかな?」


海はピュンマの説明が途切れた事はさほど気にする様子もなく、フランソワーズにピュンマとの会話を譲って、皿の上にある残りの餃子を食べ始めた。


「当麻さんの様子を、視て来てもらえて?」
「了解、夕食はどうするんだろう?」
「夕方に軽くとっていただいたのだけど、・・・」


隣に座る張大人に相談するように、彼へと視線を動かした、フランソワーズ。


「いままで点滴と流動食だったアルから、お腹が好いてどうしようもない様子ならおしえてネ、スープを用意するアル」


にっこりと笑って、フランソワーズにむかって返事をした。その声に頷いたのは、ピュンマ。


「ごちそーさん!」
「ごちそうさまでした!!」


グレートと海の声が重なった。


「篠原の様子なら、ぼくがみてきます。行ってきます!」
「海さん、あのっ」


間を開けずにダイニングテーブルから立ち上がった海に、フランソワーズもつられて立ち上がった。


「海、食器くらい下げてけよー」
「ピュンマ、あとよろしくー♪篠原の部屋に先に行ってるね、ちゃんと全部食べてからだよ、お残しはゆるしませんアル、ね?張さん」
「そうそう!ピュンマはしゃべるばっかりで端がちーっとも進んでないアルよ!」


フランソワーズが止めるのも聞かず、海は元気いっぱいにダイニングルームのドアへと移動する。


「起きてるとは限らないよー?」
「そのときはまた、こっちにもどってくるよ!」


じゃね!と、テーブルについているサイボーグメンバーに手を振って、ダイニングルームを出て行った。


「海の義足、前よりも軽くなってるんだ。長時間義足をつけてると接続部部がどうしても痛むっぽかったんだけど、やっと改善されたんだよ、今日」


海を見送ったピュンマは、止まっていた箸を動かし始めた。
フランソワーズは立ち上がったついでに、そのまま重ねた食器をキッチンへと運んだ。


「そうか、それでご機嫌さんかあ」
「帰ってきてから、まだ外してないだろ?」
「よかったアル~♪」
「なあ、ピュンマ」


張大人も、フランソワーズを追いかけるように、テーブルの上にある使用済みの食器を重ねてキッチンへと向った。


「なに?」
「・・・・・平和だなあ」
「・・・・・・・・・・・・・・って、思ってるのは、僕とグレートくらいかもね」
「そおかあ?」
「そうだよ」


ピュンマは酢豚の中のパイナップルも気にせずにぱくぱくっと口にいれて、茶碗の中の残りのご飯も一緒にかきこんだ。


「我が輩もちゃんと命じられた仕事はこなしておるぞ?」
「わかってるよ、その上でそう感じてるってことが、僕とグレートくらいって話し」
「みな、贅沢だな」
「そうだね」


最後に中華スープで喉へと流し込み、ごちそうさまの声と同時にピュンマはイスから立ち上がった。


「さて、と」


<ぼっちゃんのことで一つ聞いてもらいたいことがあるんだが..>


グレートは海とピュンマの分のあと片付けを引き受けた。











####



篠原当麻が使用しているゲストルームへと一足先に訪れた海が、ドアをノックすると、予想通りに彼は起きていたらしく、返事がすぐに帰って来た。


「久しぶり」
「・・・津田」


ドアからひょこっと顔だけだした友人に、当麻はためらいがちに微笑んだ。


「入っていい?」
「うん、・・・なんだかすごく久しぶりな気がする。津田と話すの」



当麻はベッドの上で読んでいた本を、膝上に伏せて置いた。


「はは、そうかもね。・・・・具合はどう?」
「もう大分いい。・・・病み上がりにあまりウロウロしていると余計な心配をさせてしまうみたいだからね」


海はゲストルームへと入り、手近にあったライティングデスクのイスをベッドわきまで寄せて、それに座った。


「お腹はすいてない?さっき、ぼく夕食をすませてきたんだけど」
「・・夕方食べたので、今は大丈夫」
「それなら、よかった」


海はにっこりと笑った。
微かに、彼の肩が緊張しているのか力がはいって碇気味になっている。


「優しいね、みんな」
「・・・そうだね」
「ちょっと大げさなくらいに、親切で、・・・よくしてくれるね」
「うん、本当に」


当麻は海の顔を見ずに、手元近く、膝上に伏せた本の背表紙をぼんやりと眺めた。


「それってさ、やっぱりぼくらが”人間”だからかな?」
「・・・・・」

ささやくようにこぼれ落ちた海の言葉に、当麻は短く「さあ」と、かすれる声でだけ応答した。
海は、まっすぐに座った位置から当麻を観る。

その視線の強さと固くなっている態度が、海が何か言いたい言葉があることをはっきると当麻に伝えていたので、当麻はゆっくりと視線を海へとあげた。


「単刀直入に聞くよ?」
「津田らしいね」

視線が合った瞬間に、海がはっきりと言いたい事を言います。と宣言する。
その様子にくすっと口元だけで笑った、当麻は初めて海と出会った中等部1年後期を思い出す。
彼は陸上競技の練習などのため、見た目の体格は変わったけれど、性格は中学のころのまま、変わらない。


「今後、どうするの?」
「どうするんだろう・・・」


微笑んだ口元のままやんわりと答えた。


「聞いたんだけど、その、」
「どこまで知ってるかわからないけれど、・・・9月には篠原じゃなくなるかもしれない。まだ祖父母に会ってないから正式に決まったわけじゃないんだ」
「・・・・そっか」


おせっかいなところも、当時のままで変わっていない。


「さえこさんは籍が変わっても”約束”だからって、今まで通りぼくの保護者(後継人)でいてくれるようだけど、・・・今までの形ではなくなってしまう」
「・・今までの?」
「・・・母と息子は解除ってことだよ」
「え?」


親子の縁をきられるようなことを、さらっと何ごともないように言ってのけた当麻に、海は驚きをそのまま表情に載せた。


「そのための養子縁組だし・・・。それがさえこさんの望みなんだ」
「なんのために?」
「もちろん、篠原の家とぼくを完全に切り離すためさ。説明はちゃんとしてもらったから」
「それでいいの?」


当麻が誘拐されそうになっていた場所に遭遇した海は、そのときの負傷のために左膝から下を失うその日まで、海は当麻の中で彼のおせっかいな性格が上手く働いて、一番身近な友人であった。
当麻は自ら進んで友人を作ることなどしない、タイプだったので声をかけられれば、来る者拒まず。誰とでもつき合っていた。
声をかけてくる回数が一番多かったのが海であった。と、言えばいい。


「それで良いも、悪いも・・・ぼくは」
「・・・・どうしてもさ」
「?」
「どうしても、言っておきたいことがあって、病み上がりの篠原に、こんなこと言うなんて最低かもしんないけど、早い方がいいって思って・・」
「津田?」
「フランソワーズさんはそんなお前だから、・・・」
「・・・・」


海は、先ほど胃に納めた夕食が競り上がってくるような感覚に襲われた。
鼻から深く適度に冷やされている空気を吸い込んで、ゆっくりと肩から吐き出し、気持ちを整ええた。

きっとまた、余計なおせっかいだと思われて、いつものように微笑まれて”ありがとう”なんて思ってもいない言葉で軽く流されることだろうと感じている、海。

もしかしたら、今度(ミッション/恋愛)のことがきっかけとなって、今までは答えてくれなかった見せてくれなかった当麻自身の考えが聞けるかもしれないと、緊張に似た期待をぐっとせりあがってくる夕食と一緒に押させ込む。


「そんなお前だから、・・・・・優しくしてるだけだと、思う。放っておけないんだよ、自分が辛くて哀しいこをいっぱいいっぱい、経験してるから、・・みんな、ぼくらが想像できないようなこと、いっぱいいっぱい・・いっぱい、経験してるから、しってるから、嫌なくらい人の痛みをしってる人たちだから・・・。それは平等な立場からの想いじゃないから、」
「なんだよ、津田・・・同情されていることに勘違いしたぼくの独り相撲っていいたいの?」


尖った言葉がむけられたけれど、今までの当麻らしくない解答に、海の心拍数が上がった。


「そうじゃない!そうじゃなくってさ!!」
「・・・」

あれも言いたい、これも言いたい、と今まで当麻には言えなかったまま沈めていた言葉たちが頭の中が言葉の洪水となって海の胸を満たし、頭の中が興奮にかっと沸騰しそうになった。


「上手く・・言えない・・」


けれど、渦巻くどの言葉も、今一番当麻に言いたい言葉に適していなくて、海はため息と一緒に興奮を体から追い払った。


「ごめんな・・ちゃんと整理したつもりなんだけど、いざこうやって話そうとすると、色んな事がごちゃごちゃってなって・・。でもさ。篠原」
「なに?」


海は、いつも思っていたことを口にした。


「どうして言われたままのことしか、しないの?理事長が養子縁組を持ち出したって、篠原が嫌っていえば、・・・」
「さえこさんの言いなりになってるようにみえる?」
「そんな風には、・・言ってないよ」


病み上がりには、やっぱり聞かない方がよかったのかもしれないと、海は刺々しい反応はしんどいせいからかもと、今更ながらいつもの当麻らしくない返答の理由に気づき、言葉が弱くなる。


「・・自由にしたらいいって言ってもらえてるし・・縁組みについては向こう方の出方次第なんだ」
「なんか、さ。・・・・良いも悪いもずっと理事長のために良い子でいて」
「逆らう理由がないからだよ、さえこさんの言う事に自分が納得していたなら、当然だよ」
「・・・自分のこと、自分で決められないわけ?18になるんだから、今更養子なんて、必要ないじゃないか」
「決められるよ。・・・・津田・・心配してくれるのは嬉しいけれd」


当麻は徐々に視線をさげていき、膝上の伏せた本へと戻すと、右手でそれに触れた。



「可愛そうだよ、フランソワーズさん」
「可哀相・・・?」


話しのトピックが急に変わったことに、当麻は素早く反応して、うなだれ気味だった顔をぱっとあげた。


「迷子になって泣いてる篠原を見捨てることなんて、できる人じゃないよ」


すうっと大きく息を吸い込んだ海が、今までの会話で一番強く主張するかのように言い切った。


「たとえ、自分が選んだ人がいても、最後にはきっと篠原の手を離さないままなんだ。・・・・・離すなら、きっと強い人の手を離す方を選ぶんだと思う・・・そんなことをすきな人に選択させていいの?」


話題がフランソワーズのことに触れられて、当麻は動揺する。


「津田、言っている意味がわからないよ。どうして、ぼくが迷子なの?それに・・。もう少し要点をまとめてくれないかな?」


彼は海が何を言わんとしているかが飲み込めず、困惑の表情をその眉間によせた。


「ごちゃごちゃ言って、よけいに混乱させ、てごめん」


上手く伝えられない事に、海は悔しげに下唇を噛んだ。


「ぼくはちゃんと自分のことをわかっているし、迷子になんてなってるつもりはないよ」


当麻が、ため息をついた。
そのため息の深さが、部屋を出て行ってくれといわんばかりの空気を作り出そうとしていたので、海は勢いにまかせて口を開いた。


「フランソワーズさんはサイボーグなんだよ。みんなはサイボーグで、ぼくと当麻とは違うってことをちゃんと、わかって欲しいんだ。現実として考えて欲しいんだ」
「サイボーグなんて関係ないっ!彼女は人だっ!!」


当麻は感情的になって叫んだ。
海は初めて、当麻の荒げた声を聞いた。
誘拐されかけていた、自分の身の危険を感じているときでさえ、声を荒げて助けを呼ぶ事などなかった、彼が。


「津田はギルモア(ピュンマ)と凄く仲が良いのにっいまさらそんな風に差別するのかっ!!」


当麻は身を乗り出して海に近づいた。


「違うっ!!違うんだよっ!ぼくが言いたいのはっそうやって平等な線の上でみんなと接すること自体が、逆にっ」


デスクチェアから腰を浮かした勢いで、ベッドに両手をつき訴える海。


「津田の方がわかってないんだよっ何もかもっ」
「わかってるよっ」
「わかってなんかないっ、その性格もっ中学時代から変わってないのと同じでっっ!ぼくの気持ちだって、フランソワーズだって、何もかもっ何もかもわかったような口で話しかけて来るけどっ」


手をのばせば海の襟首をつかめそうな距離に、当麻の手がのびる。


「篠原っ!ぼくはっ」
「そこまで!」


ドアがノックもなく、開かれ、ぱん!っと乾いた音が、始まりかけていた言い争いを、助走程度で留めた。


「ピュンマ・・」


顔色が冴えない当麻であるが、止められていしまった会話に納得がいかないらしく、行きどころを失った手を掛け布団を握りしめてることで表していた。


「海が言ってくれている内容は、・・・・人に言われて解るもんじゃない。教えられて納得できるような、ものじゃないから。それに気がついて、考えてくれて、感じてくれて・・・自分で発掘してくれないと、到底無理なことだと、アドヴァイスはしておくね」



---・・・嬉しいよ、海、僕は本当に・・嬉しい・・・.



ピュンマは開けたドアをゆっくりと閉める。
途中、アルベルトが帰って来たのであろう、邸のドアが開く音が聞こえた。



「・・・ピュンマのこと、きっと根っこの部分ではちゃんとわかってあげられない・・と、思う。力になろうとしたら、きっと余計に迷惑をかけてしまうと思う。・・でもさ、でもっ・・・友達でいたいから、ここに住むみんなの、友達で、いたいから・・・。ちゃんと言うし、ちゃんと理解しようと思う。ピュンマとみんなはサイボーグ。ぼくらとは違う。生きて来た世界も、経験したことも、全部、違う」


ドアを閉めて、嬉しさいっぱいのにこやかな笑顔で、2人に近づいた。


「・・・うん。そうだよ、僕らはサイボーグ改造された半分機械の躯」
「でも、」
「そうだよ」
「だから、」


---対等でいたいから、・・・ちゃんとピュンマと対等で、友達で、みんなとこれからも会っていたいから・・受け入れなければならない事実を、ぼくが”片足を義足で補っている人”であるのと一緒で、”サイボーグ改造された人”として、ぼくはっ



「うん、海が言いたい事、全部わかってるから・・・きっと、みんなも同じだよ」


海の頭に手をおいて、くしゃくしゃっと撫でてやる。そうしながら、ピュンマは当麻が座るベッドの端に、海と膝頭を浮き合わせるようにして座り、腰を捻って当麻を見つめた。


「言葉で理解できないこともあるからね。自分が経験してみないとわからないことだと、思うから」
「・・ピュンマ」
「でも海、それを強要しちゃ駄目だよ、ね?当麻センパイ、センパイはセンパイの方法で、海が自分自身で導き出した、僕らがそうあって欲しいと望んでいることに、たどり着いてください」
「・・・」






サイボーグだけど人間。
人間だけれど、サイボーグ。

改造された躯は残念だけれど、人という基準からみれば、人ではなくなっている。
それは絶対的な事実であり、受け入れて生きていかなければならず、同じように、受け入れてもらわなければならない。
その事実を避けること自体、不可能なこと。


なぜなら、実際に存在し生きている僕らが避けると言う事は、僕ら自身が自らの手でその存在を消さなければならないから。


言葉や文化、風習などで、どうしても埋められない感覚にひどく似ている気がする。
人類の長い歴史の中で、数えきれないほど理解の相違によって争い、・・・改造なんか”されてない”同じ人間であっても、起きてしまうこの世界だから。

・・・僕らのような存在を理解されて受け入れられる環境になる世界は、まだまだ未来(さき)の話し。
解ってるからこそ、細心の注意を払って、生きて行くためにいくつもの規則(ルール)を己に課している。


機械を組み込むことで強化された躯を持つ、人間。



人間なんだ。
けれど・・・、かならず”機械を組み込むことで強化された躯”と言う言葉が生む違いを・・・。



理解してくれないと。
受け入れてくれないと。



それらは、決して難しいことじゃない。
日本は主食がお米だけれど、アメリカはパンやパスタだってことくらいの違い。慣れてるか、慣れてないか、理解しているか受け入れてみるか。

クジラを食べる民族か、食べない民族か、そういうのに似た違いかもしれない。
食べることを責める前に、どうして食べるのかを理解して、知る努力を惜しまないことと同じ。


髪が黒いのか金髪なのか、赤毛なのか、くらいの違い。
「あなたの髪は赤いのですね」と、受け入れた時点で、その人は赤い髪の人。として向き合ってもらえる。
同じように、「ああ、あなたは躯を強化する改造をほどこされた人なんですね」って、改造された人として、向き合って欲しい。

サイボーグ(改造された躯)であることを理解し、その差異から眼をそらさずに、その人はそういう人なんだと、向き合ってもらいたい。


人であり、人でない。
サイボーグと言う”人”であることをふまえてつきあっていこうとしてくれる・・海が、見つけてくれた。

サイボーグ改造された人間として、その存在を知らなかった世界に受け入れられた、気がした。
この世界に海のような人がいるのなら。





---僕らのこれからはとっても素敵な未来への道がまってるってことだよね!







「センパイ、疲れさせてごめんなさい。僕たちは行きます」


当麻の顔へとずいっと近づけて、そのシナモンカラーの瞳を覗き込み、至近距離でにっこりと笑ってみせた。


「海はせっかちさんだから、伝えたい!って思うともうレーザー光線みたいにぴゅーっていっちゃうみたいで、その辺りの性格は、ボクよりも当麻センパイの方がよくわかっているんでしょう?気にしない、気にしない♪」


ピュンマのにこにこスマイルにつられて、引きつったように頬があがった当麻。


「ぴ、っピュンマ!」
「そんなことよりも、早く体調を整えてください。海と取っ組み合っても誰も止めないで楽しく観戦させてもらうから。ケンカ上等なのが2人いるし。ここは海岸が近いから、太陽のバカヤローと叫ぶ青春ができますから!」



---喧嘩上等ってピュンマ・・1人はジェットで、もう1人って誰???



白い歯をキラリと輝かせて、ピュンマはさきほど海にしてやったように、当麻の頭もくしゃくしゃっと撫でた。


「じゃ、ゆっくり休んでください、また明日、おやすみなさい。」


撫でられたままに髪が乱れた当麻は、立ち上がって再度「おやすみさない」といったピュンマにたいして、何も答えなかった。
ピュンマに促されてデスクチェアから立ち上がった海も、デスクチェアを元の位置に戻したとき、当麻の方へと振り返った。


「おせっかいだってわかってるけど、ぼくは篠原の友達だから早く気づいて欲しいから、・・・・おやすみなさい、篠原」



何も返事を返さずに黙ったまま伏せていた本を手に取って文字を追い始めた当麻を、一度だけちらりと振り返って、ピュンマは海と一緒にゲストルームから出て行った。








####


...ピュンマ。



<ピュンマ。ぼっちゃんのことで一つ聞いて欲しい話しがあるんだが・・・昼間ちいっとぼっちゃんと話していて気づいたことがある。お前の眼でみて、どう思ったか聞かせてくれないか?我が輩、自信がないのだが、もしや・・恋(フランソワーズ)で現実(今置かれている自分の立場)を直視するのを避けるためのフィルターにしているんじゃないのか?今の現状から前に進むために、フランソワーズへの想いや、そばにいることがぼっちゃんのこころの支えになっているのならいいが、それが”逃げ道”であるなら、我が輩は張大人が提案した記憶改竄に賛成だ。もう一度、ギル博士と009に提案する。・・・悪いな、ピュンマ。そうなると海くんも巻き込むことになる>
<・・珍しいね、グレートがそんなことを言うなんて>
<こころのリハビリまで、我々が請け負う必要はないってことだ>
<うわ!それもグレートらしくないよ、・・どうしたの?>
<心配なんだよお、・・・あの2人が>
<え?>
<・・・・両思いになれた、お互いの気持ちはわかった。で、終わっちまうんじゃないかってなあ・・・>
<ええ!?>
<お互いに思い合って強ーーーい絆がある!だから、『私は当麻さんを支えるわ、それは私にしかできないこと。ジョーに思われていたってわかっただけで、私は幸せよ。彼をあんな風にしてしまった私たちの責任もあるわ、ジョー・・許して』『わかったよフランソワーズ。僕の気持ちを知った上で、彼を選ぶなら・・仕方ない。僕たちはサイボーグだ・・・いつの日か、僕たちが晴れてまた手を取り合う日まで・・・見守っているよ、フランソワーズ』『ああ!ジョーっ』『フランソワーズっ』『ジョーっ』>
<・・・・はいはい>
<なんてことになんないかと、心配でなあ・・あの2人のことだから・・。それくらいに今のぼっちゃんはなんだか危うい魅力があってなあ>





海を連れてゲストルームを出たピュンマは、ゲストルームで聞き耳を立てている間にかわした内容の、グレートが心配するようになるならなるでいいんじゃないか、と言う気持ちになっていた。


「青春だねえ」
「ぼくの努力をその一言で片付けるのは、ちょっと酷いよ・・・」


ゲストルームのドアを閉じると同時に呟いたピュンマの言葉に、脱力した海。


---離れられるもんなら、離れてみろっての!あの2人がそんな選択ができるか逆に見物だね。


と、心の中で言いつつも、きゅうっと夕食を食べたばかりの胃が縮まったような痛みを感じた。




「ピュンマ、海」
「アルベルトさん、こんばんは」
「おかえり、アルベルト」


ちょうど、自室にいたアルベルトが出て来てゲストルーム前に立つ2人に声をかけた。


「ぼっちゃんの具合はどうだ?」
「あー・・良好だけど、明日は具合が悪くなってるかも?」
「なんだ、・・・何かあったのか?」
「あったといえば、今あった。けど、なかったとされたなら、なかった」


微かに感じる胃の縮小に、ピュンマはアルベルトにたいする返事が適当になってしまった。


「ピュンマ、何か悪いものでも食ったか?」
「酢豚に入ってたパイナップルをよけずに食べたのがいけなかったのかな・・」
「夕食は酢豚か?」
「と餃子と中華スープにエビ入り生春巻きでしたよ」
「・・食っとくか」
「まだ食べてなかったの?」


ピュンマはちらっと、アルベルトが手にしている茶封筒へと視線を流すと、アルベルトが、く。と、左の口角を上げて嗤った。


「ああ・・・ちょっと雑用があってな。下に行くのか?」
「うん、まだ寝るには早いしね」


態とらしく茶封筒でピュンマの頭にぽん!と叩くいた。
ピュンマとアルベルトのやり取りをみていた海は、あの頭を撫でたりする動きは、アルベルトからの影響なのだと、観察していた。


「それなら、支度を頼んでおいてくれ、オレはその具合が悪いか悪くないのか看てから行く」


アルベルトは海とピュンマの間を割って押し退けるようにすすみ、ゲストルームのドアをノックした。


「了解」


そのノックにたいして返事が返ってこない。


「やれやれ、・・・具合が悪いようだな」


返事がないのにも関わらず、ドアをあけてゲストルームに入って行くアルベルトに、海はピュンマの腕を掴んで『入って行くけど大丈夫かな?!』と訴える。


「さ、僕らの使命はアルベルトが夕食を食べられるように、キッチンへいって彼の夕食の用意。大人まだキッチンにいるかな?」
「・・さっき僕らが出て行くときの篠原の様子がさあ・・」
「ほっといたらいいよ、アルベルトには何があったか一応は報告するから」
「通信?」
「そ!通信♪」


ピュンマはとんとん!とこめかみ部分を利き手の人差し指でノックした。








脳波通信で話しかけてきたピュンマの声を、作業の片手間に聞くラジオのように頭の隅に置きながら、ベッドの上でうつぶせになって体を横たえている、当麻へと近づいた。


「起きてるのか?」


その問いかけに、蚊の鳴くような声で律儀に「起きてます」と答えた当麻に、アルベルトは、ふっと鼻で笑った。


「土産だ。・・覚えてるだろう?学院でお前さんが絵をみせた恩田充弘という男。今日会ってきた。・・・渡してくれと頼まれたんでな。置いておくぞ」


アルベルトは、ライティング・デスクの上に土産だと言う茶封筒を置いて、部屋から出て行く。


「・・・いい傾向だ。やっと”甘えん坊”な温室育ちの”箱入り息子”な地をみせてくれるようになったか?」


起きてます。の一言しか反応しなかった当麻にむかってではなく、独り言のように呟いた。


「電気消すぞ。・・・そのまま寝るだろう?」


部屋出る前に、ルームライトのスイッチに手をかけて、ベッドに向って言ったが、当麻の反応はない。
気にする事なく、返事がないならyesだ。と、言って、ルームライトを消し、ゲストルームを出て行った。


「温室箱入りではないけれど、ジョーもにたようなもんだ」


---男運がないのか、ないっていうよりも、悪い、だな。



後ろ手にゲストルームのドアを閉めて、階下におりていく階段の途中、何もいれていなかったアルベルトの胃がぐうっと鳴いた。


<ピュンマ、オレの夕飯できてるか?>
<アイアイね!今熱々焼きたての餃子いっちょあがったアルよ!>
<それはたまんらんな>
<ビールいっとくう?>
<1缶、用意してくれ>
<<アイアイね~♪>>


ピュンマと張大人の域のあった返事に微笑んだアルベルトは、いつもよりも柔らかかった。


「・・・俺にはなし?」


アルベルトよりも少し早く、地下から休憩がてら夕食を取るためにダイニングルームにやってきていたジョーは、自分には出ないビールに不満そうに、唇を尖らせた。


「レッドカード保持者はアルコールないないネー!」
「・・・・・(いったい誰のせいで..)」
「え・・それ以前に、島村先輩、未成年じゃ・・・」
「餃子に、ビールってすごくいいよ・・・、代わりに津田が飲む?」


はあ。と、ため息をついたジョーは昼間あったときよりもかなり疲れているようだった。


「え?!ぼ、ぼくぅ?」
「・・・ピールなんて、ジュースと変わらない、よ」
「いえ、まだいいですっ」
「・・そう?」


<こらこら、ジョー!未成年は未成年らしくねっ>
<もう学院生じゃないよ、俺は>


「いたのか?」
「・・います」


ダイニングルームに入ってきたアルベルトは、その部屋が”家庭”の香りに満ちている事に、帰ってきた家を間違えたのかと、平行感覚を失ったような一瞬の目眩に教われた。

ダイニングルームに、海とジョーが向かい合わせで座っている。ピュンマがトレーに生春巻きできたての餃子と茶碗にたっぷり持った熱々の白ご飯を配膳するためにアルベルトの前を横切る。


「なんだ、みんなそろってるのか?」
「おかえりなさい、アルベルト」


キッチンから顔を出したフランソワーズが、アルベルトへと近づいておかえりなさいの挨拶のキス(頬をあわせる)。

「博士は?」
「地下にいらっしゃるの。今はどうしても動けないっておっしゃられて、サンドイッチを持っていったわ」


ふれあった頬から薫るのは、うまそうな酢豚なことにアルベルトの頬が苦笑気味にあがる。


「で、助手のお前さんが休憩か?」
「・・・役立たずなもので」


面白くなさそうにダイニングテーブルに頬杖をついて視線だけで2人をみているジョーの目の前に、ピュンマがにひにひとした、彼の今言わんとしようとする台詞が頭の中に直接響いてくる笑みと一緒に、夕食が並べられた。


「海、フルーツ杏仁豆腐を出してくれるって」
「え!本当っ食べる食べる♪」


フランソワーズから離れて、アルベルトがジョーの斜め前、海の隣の席についた。


「アイサツだ」


<今更そんな顔するな・・・。お前のこころはペットボトルのキャップよりも小さいってことになるぞ>


「・・・俺は何も言ってない」
「目は口ほどに物を言う」
「・・・アルベルト」
「なんだ?」
「・・・・・何を企んでる?」


ジョーは配膳されたエビ入り生春巻きを手でつまみ、添えてあったピーナッツソースに浸して、ばくん。と、食べた。ぴりっと辛みが効いて甘みが控えられてはいるがしっかりと味のする濃厚なソースに、ジョーはつぎの一口のため、たっぷりめにソースをつけた。


「企んでるようにみえるか?」


トレーに載せたお皿の配膳をすませたピュンマが、使ったトレーをキッチンカウンターに置いた。


「なんか、みんなここにそろっちゃったね、当麻センパイ1人が部屋っていうのも気になるし・・・」
「寝ているから、今日はいいだろう」


キッチン内にいたフランソワーズの優美な曲線を描く顎がくっとあがった。

眼と耳を使ってゲストルームの様子をうかがう。
ルームライトは消されて入るが、呼吸は眠っている人間のものではない。
スイッチを切り、脳は通信でピュンマに通信を送った。


<そっとしておいてあげましょう、まだ本調子ではいらっしゃらないはずよ>


「アルベルト?」
「恩田が土産に美大受験や画塾なんかの資料預かったから、渡しに行っただけだ」
「・・・・」
「企むというなら、才能ある若者にその道への応援をしているということだ」


手に持っていた生春巻きをばく、ばくんっと食べきった、ジョーはもう一つに手を伸ばそうとしていた。


---機嫌が悪いな。


今夜はどうやら彼の機嫌”も”イマイチのようだ。
休憩と言ったが、集中して”マッド”と化したギルモアに地下のメンテナンスルームから厄介払いされたのかもしれないと、アルベルトは考えた。
ギルモアの悪い癖は熱中しぎると、周りが見えなくなりどんな小さなことでも総て自分の手でやらなければ気が済まなくなるのだ。


「はい!お待たせあるー!!おいしあげたてあつあつとろとろ酢豚二人前アルよ!」


そんな彼の呼吸にあわせて助手をすることは、とても難しい。
BGで働いていたときはすべてチームでこなしていた上に、それらのメンバーはみな、ギルモアの地位を脅かすほどに優れた才能をもった科学者たちだったという。
ギルモアの過去のチームメンバーと比べられては、ジョーが可哀想だというものだ。


「ご苦労さんだな」
「・・・・」


素手で手にした生春巻きをピーナッツソースにつけたとき、トレーに残りのおかずをのせてやってきたフランソワーズの優しくも厳しい、どことなく緊張したような声がダイニングテーブルに夕食よりも先に渡された。


「手は洗ったのかしら?」
「・・・・洗いました」
「お待たせしちゃったから配膳が整うまでまてなかったのはわかるけど、せめてお箸を使ってください」
「・・・・・了解」


深いため息と一緒に、むすっと完全に機嫌を損ねた顔をしたジョーなど気にせずに、まるで逃げるようにフランソワーズはトレーの上の皿を配膳し終えて、キッチンへと戻っていった。

その様子に、さらにジョーの機嫌が悪くなる。


<・・・・まったく、進歩したどころか後退したようにしかみえないじゃないか>
<そういうのを初々しいって言うんだよ、アルベルト♪>


フランソワーズと入れ違いに、2人分のフルーツ杏仁豆腐とアルベルト用のグラスについだビールをのせたピュンマがテーブルに着いた。


「海、おまたせー!」
「ピュンマーっ(この2人と一緒だと何を話していいのかわかんないよーっ_涙)


ピュンマがジョーの隣の席につきながら、そのまま脳波通信を使用し、今日の昼間の出来事の一番のニュースであるジョーの頭突き警報事件と、イエローカードが3枚そろってしまい、ギルモアからメンバー内で初めに要注意のレッドカードをもらったのが地上最強の戦士さまであると報告した。


「本当に、ご苦労さんだったんだな。今日は」
「・・・うるさい」


早かれ遅かれ知られる事になるだろうこと。
キッチン内からくすくすとした、フランソワーズと張大人の笑い声が聞こえてくる。


<張大人、いったい誰のせいで・・>
<あいやー!わかってるアルよー>


個人チャンネルにアクセスがあり、通信を送ってきた相手にだけチャンネルを開いた。


<ピーナッツソース、甘過ぎなくて?>
<・・?>
<・・・他のよりもピリッと辛めに仕上げてあるの・・・>


「アルベルト」
「どうした?」
「・・・可哀想に思うなら、その生春巻きこっちによこせ、よ」
「・・・・いきなりな、・・・・。まあ、いい。これで機嫌がなおるなら」
「このソース、もっとある?」
「アイアイ!アルアルたくさんアルアル♪」


キッチン内でジョーの声に張大人が答えながらフランソワーズにむかってだけ、小さくウィンクをした。
フランソワーズはうつむいて、ピーナッツソースを少しぴりっと仕上げる用意をいそいそとし始めた。


「なんだ、オレのにもあるぞ?・・何かジョーのと違うのか?」
「・・・もらうのは生春雨だけだからだ、よ」
「ジョー、こっちにはビールがある。生春巻き分餃子をわたせ」
「・・・・・・1個でいい?」
「ふざけるな」
「・・・・2個?」
「半分だ」
「・・・・・可愛そうだからくれたんだろ?」
「世の中はそんなに甘くない」


なま春巻きの皿がアルベルトからジョーに移動していくのを見ながら、海が遠慮がちにつぶやいた。


「あのー・・みなさんそろってるって言われたんですけどお」


キッチンにいる張大人、フランソワーズがカウンターから顔を出した。
テーブルについている、アルベルト、ジョー、そしてピュンマが、ダイニングルームにいる全員が、海に注目する。


「グレー・・・トさん、は、どこに行っちゃったのかなー・・なんて、・・あの・・」
「「「「「!!」」」」」」
「・・言わない方がよかったのかなぁ・・・」
















====25に続く








*ちょっとつぶやく
本気で7を忘れてました・・うわっ・・・・。
ええっと、彼はどこにいるのかと言うと・・・夕食をすませたあと、ひっそり隠したお酒を1人のみしてもうちょっと、もうちょっと飲むぜと・・部屋で酔っぱらって大いびきで、お願いします(苦笑)

7、ごめんなさーいっ


それにしても当麻くん、どうしちゃったのだろうか。
熱を出してる当麻くんの看病の間みな心配していたけれど、普段のノリ的にはこんな日常だったのかなあ、です。









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