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1月25日に感謝します。
 ギルモアはふと視線を、膝の上に抱えながら書き込んでいたノートから外した。2、3度強く瞬きを繰り返し、老眼鏡がかかっている右耳の付け根にたまったかゆみを払う。

 吐き出すタイミングを逃して肺の底に溜まりつつあった古い空気を意識して出し切り、膝上のノートの2行ほどの文章をさらりと読み返す。

「うむ。まあ・・・ここはこれでいいじゃろうな」

 独り言を呟いてからノートを閉じた。
 手に持っていた万年筆のキャップを、自分が座る安楽椅子の前にあるガラス作りのローテーブルの上に置いたはずだと、探す。

「はて・・・どこにやってしまったのか・・」

 ギルモアは、老眼鏡を外しながらリビングルームの安楽椅子に腰を落ち着けるまでの行動を振り返った。










「博士、今日の夕食は張大人のお店ですからね」
「忘れないでください」

 朝食もまだ済ませていないと言うのに、もう夕食の話しかと、ギルモアは双子座のようにぴたりと隣り合って立つジョーとフランソワーズにむかって微笑んだ。

「やれやれ・・昨夜のパーティもまだここに残っとるのに」
「今日は博士が主役のパーティなんですよ?」
「そうです!昨日は昨日!今日は今日!!お散歩でもなさってしっかり胃を空っぽにしていてくださいませ、ね?」

 嬉しそうに秘密めいた微笑みと視線をかわす2人を微笑ましく見つめ、その日の朝食を軽めに終えた。

「・・・フランソワーズ」
「はい、博士」
「それは・・どうしたんじゃ?」

 朝食後、地下の研究室へと降りていったギルモアに、お茶を運んで来たフランソワーズ。その指に今までには見られなかった輝きがギルモアの注意を引いた。

「あ・・」

 トレーをデスクに置いて、ぱっと両手を背に隠した、フランソワーズの頬が赤く染まる。

「・・・ジョーから、か?」

 探るような上目遣いを投げかけた、ギルモア。その視線に、さらに頬を染め上げていくフランソワーズだけれど、こくん。と、素直に頷いた。

「昨日・・もらったんです、彼から・・・」
「どれ、見せなさい」

 ギルモアは手のひらをフランソワーズに見せながら、腕を伸ばした。

「え・・・」
「いいから、ほら・・わしに自慢しなさい」
「は、博士!」

 デスクチェアから立ち上がり、残念ながら左手ではない、フランソワーズの右手を取るとその薬指に光るシルバーの指輪をまじまじと見つめた。

「可愛いのお・・リボンの形かあ」

 フランソワーズの薬指を結ぶシルバーの細いリボン。

「誕生石・・やらではないのはチト寂しいのお」
「・・・今の、私にはこれで十分なんです、・・・いいえ、十分過ぎます・・」

 ギルモアは厚みのある自分の手とは対象的な白くて小さく、その手に似合った指輪と一緒にそおっと両手で包んだ。

「・・・おめでとう。よかったのお」
「ありがとうございます、博士。・・・博士も、おめでとうございます」

 手の中に包んだフランソワーズの右手をそっとあけて、改めて彼女の手とその指輪を見つめた。

「ジョーが、選んだのか?」
「・・・・はい」
「そうか・・・・・」

 そっとシルバーのリボンをギルモアの親指が撫でた。

「右手なのは、理由があってか?」
「・・・・・・はい」
「聞いてもいいかの、フランソワーズや・・・」

 フランソワーズのその指輪の感触を楽しみながら、視線をフランソワーズへとあげた、ギルモア。

「・・・・左手は、彼が夢を叶えたときにって」
「夢?」
「はい、私はその夢がまだ何か知らないのですが、・・・きっと手に入れるから待っていて欲しいって言われました」







ジョーの、夢....?











「博士?」

 所用で昼食の時間がずれてしまったジョーが、リビングルームで万年筆をじっと睨んでいたギルモアへと通りかかりに声をかけた。

「お・・おお、ジョー」
「どうかなさったんですか?」
「ん、いや・・・なに、・・・この万年筆のキャップが見当たらんくてなあ」
「どこに置かれたか覚えていらっしゃらないんですか?」
「そのテーブルの上に置いたはずなんじゃが・・・見当たらんのじゃ」

 安楽椅子から立ち上がろうとしたギルモアに、そのままで居てください。と、声をかけながらジョーはギルモアの周りをさっと見渡した。

「その前はどこにいらっしゃったんですか?」

 膝をついて、カーペットの敷かれた床に落ちてないか、探し始めた、ジョー。

「地下の研究室じゃ、そこでこのノートと万年筆だけを手にもって移動してk」
「あった!」
「おおっあったか!」

 ジョーは、安楽椅子の左側の毛足の長いカーペットと椅子の足のちょっとした段差に埋まっていたキャップをつまみ、ギルモアの膝上にあるノートの上に置いた。

「博士は、キャップとか消しゴムとか、そういうのを膝の上に置く癖があるの、気づいていらっしゃいますか?」
「むう?」

 初耳じゃ、とばかりに眉間に皺を寄せたギルモア。

「無意識なんでしょうね、」

 ジョーはそんなギルモアにくすっと笑った。

「作業なさっているときは膝上になんでも置かれるじゃないですか、特に筆記用具系は。・・なくされるのが多いのはそのせいだと思うんですけれど。ご自分では机に置いたと思われているようですが・・だいたい膝の上に置かれてますよ」

 膝立ちの状態でギルモアの膝を指差した。

「博士は気づいていらっしゃらなくて、こうやって膝から落ちてしまうんです、研究後の博士の椅子周り、いつも色んなのが落ちてますからね」
「そうかあ・・、気づかんかったなあ」
「また、見つからなかったときがありましたら、椅子周りの床を探してみてください」

 ジョーはギルモアの膝上にあるノートにちらりと視線を投げた後、その場で立ち上がり、ギルモアに背をむけた。

「待ちなさい、ジョー」
「はい」

 くるっと再びギルモアの方へ躯を戻した。
 ギルモアはジョーを見上げる。

「今日はの、儂の誕生日じゃ」
「はい!みんな楽しみにしてますよ、すでに張大人の店で準備中ですから」
「・・・お前とフランソワーズは?」
「僕たちは留守番役です」
「ほお、みんなの姿が見えんと思ったら、そうじゃったのか」
「はい」
「それで、ジョーや」
「はい?」

 なんとなくギルモアの話が長くなりそうな予感がしたので、ジョーは近くのソファに腰を下ろした。


「なんですか、博士」
「ジョーの夢とは、なにか教えてくれんか?」
「ぼくの、・・・夢?」
「ふむ、ジョーの夢じゃ」

 突然の質問に戸惑いよりも驚きを載せた顔が少しだけ傾いた。

「・・・ぼくの夢ですか、・・・・ええっと色々あるんですけれど」
「絶対に叶えなければならん、一番の夢は?」







「それは、もちろん・・・、博士、NBGを倒して、世界に争いのない本当の平和が訪れる日がくることです!!」








「でかすぎるっ」
「は?」
「それじゃあ、いつまでたっても・・」

 人の夢を聞いておきながら、ぶつぶつと文句を呟くギルモアにジョーは困惑する。

「博士?」

 苦笑まじりの呆れた表情がジョーをじっとみつめる。

「ジョーらしいと言えばらしいがのお・・やれやれ」

 ギルモアは視線を万年筆のキャップへと変え、それを手に取ってぱちりと閉めた。

「ちょっと散歩してくるでな。なに、近くの海岸までじゃ」
「今日は風もなく温かいですから散歩はいいですけれど、・・・ちゃんと厚着ででかけてくださいね」

 ギルモアが安楽椅子から立ち上がったので、ジョーもならって立ち上がり、ギルモアにカーディガンを着せた。そのギルモアが手に取ったトレンチコートよりも防寒にすぐれたダウンジャケットをすすめ、玄関から送り出した、。










 1人、海岸へむけて歩いて行く。
 一歩、一歩、確実に足を左右に前へと出して。
 目的の場所までまっすぐに。途中、横断歩道や階段で、足が止まる事があるけれど、進めて行った足はいつしか、目的の海岸の砂を踏んでいた。






 冬の晴れた海は空気が澄み、冴え冴えとした青が美しかった。


「ジョーの夢が叶う日まで、わしは何がなんでも生き続けないとのお・・・。じゃないと、フランソワーズのウェディングドレスが見られんということじゃてな」

 ざああっと寄せる波音の数を数えながら、自分の歳を数えた。

「まったく、・・・でかすぎるわい。009の夢は・・・。フランソワーズもそんな男のどこがええのか」


 悲観的な思いはない。
けれど、誕生日を迎えるという事は一歩彼らとの別れに近づいたと言う事。
 祝いのムードに浸れないと言うのが正直な思いだけれど、それを口にするのは憚られた。



 楽しめるときに、楽しまなければ、そんな思い出と日々をつくらなければ。
今度、いつその時が訪れるのか、解らない身の上なために。

「・・・誕生日か」

 砂場にゆっくりと腰をおろして、ギルモアは考えた。
自分が生まれて来た意味を、なぜ自分は今ここにいるのだろうかと。



もしも意味があるのなら、その意味は・・・・。

彼らをサイボーグにするため。
世界のために戦う戦士を生み出すため?




「違うわい・・そんな勝手なことが言えてか・・・」

 ギルモアは冷たい砂を掴み、ば!と海に向ってなげた。
 風のない今日、それは力なくギルモアのズボンの裾をよごした。


「・・・・・・・わしは、わしの存在が、彼らの運命を変えてしまった。その責任を取るために、何をせねばならんのか、今日この日から考えて行こう」






時間(いのち)に限りがある故・・。





 まず、手始めに。

「・・恋仲になった2人の幸せを護ることかの?」


 人のいない海辺でぽつりといるギルモアはよく目立つ。
ゆっくりと立ち上がって腰回りの砂を払っているとき、彼に近づいて来るよく知る気配が二つ。

「博士、いつまで散歩していらっしゃるのっもう日が暮れてまいりますのにっ!」
「そんなところに座り込んでっ、風邪をひかれたらどうするんですかっ!」

 気がつけば冴え冴えとした青は暖かみのある色を加えて青色ではなくなっていた。
 ギルモアはどれくらい長く、その場に座り込んでいたのか皆目検討がつかなかったが、立ち上がろうとしたときに、冷えて固まって動かし辛かった膝や腰などで、自分が散歩に出ていた時間を計算する。

「・・すまん、すまん。ちょっと色々考えとってな、考え事をするのはここに限るんじゃ」

 砂浜を蹴って駆け寄って来たジョーとフランソワーズは、冷たくなったギルモアの手をこするように握り、しきりに心配する。

「大丈夫じゃ!今夜の酒であったまる予定じゃからな!!」

 そんな2人を大きく広げたその腕にぎゅううっと抱き締めた。
 ぎゅうううっと抱きしめかえしてくれる2人は、とても温かかった。

 冷えきった体を、こころを・・・温めてくれる。




「今日・・博士が生まれて来てくださったことに、感謝しますわ」
「ぼくも、・・感謝します、ギルモア博士」












博士が生まれていなければ・・・。

改造されて”成功”していたとは限らない。
BGの手から無事に脱出していたとは限らない。



アイザック・ギルモアという存在が、この世に生まれてきてくれたから。



私は、大切な仲間と出会い、ジョーと出会い、恋をしました。
僕は、父と呼べる人ができて、仲間を得て、愛を知りました。

それが哀しい運命の糸で繋げられた先にあったことでも。














「「お誕生日、おめでとうございます」」
「ありがとう・・ジョー、フランソワーズ・・・」







end.













*ギルモア博士のお誕生日用のようでそうでない・・・?でもイベントに置いておきます!
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