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その一口が、幸せ。
お世話になっているコズミ博士の邸を出て、ドルフィン号でまた旅に出る。
未だに帰られることのできる住居を定めていないため、旅から旅の合間に身を寄せる場所は日本の、コズミ邸となっていた。
身を寄せる事を頼む度に、ギルモア博士はコズミ博士に根無し草の自分たちで申し訳ないと頭を下げた。

次回こそは迷惑をかけることのないようにすると頭を下げるギルモア博士に、帰ってきてくれなくては寂しくてたまらないからまた、必ずここに戻って来てくれと、何度も約束させられる。

そんなやり取りが始まれば、あと、2、3日中にここ、日本を離れると言うこと。





「ちょっと、出てくる」

リビングルーム(と、言っても広い畳の部屋で、いつの間にかそこが居候たちのたまり場となってしまったところ)にいる仲間に伝えた。
その中の1人だった私は、腕に抱いていたイワンをクーファンへとおろして、ジョーをおいかけた。
玄関で履き慣れたスニーカーをのヒモを結んでいたジョーの、まるまった背中を見下ろしながら、彼に声をかける。

「どこまで行くの?」
「・・・そこのコンビニ。雑誌類を少し買っておきたいから」
「そお・・。当分は(日本のを)読めなくなっちゃうものね」
「出発は明後日の夜だから」
「ええ」
「何か必要なの、ある?」

結び終えて、段差のある玄関に腰掛けていた彼が立ち上がると、私との身長さがなくなる。

「特には・・」
「何か必要な物があるなら、明日の午前中には手にいれておいて。移動は午後だから街に出てる時間はないよ」
「そうね。でも、・・・今のところ何もないわ」
「・・・本当に?」
「え?」

ジョーが何かを探るような視線で、私を見つめて来た。
その瞳の色がいつもの彼らしくない色をしていたので、私は戸惑う。

「・・・別に、ないならいいよ」
「え・・ええ。気をつけて」

彼を見送る言葉をかけて私の言葉に小さく顎を上下させたのを確認した。
くるっと背中をむけるだろう次の動作を無意識に頭に描いたのだけれど、彼は私の予想を裏切った。

「どうしたの?行かないの?」

玄関に突っ立ったまま、動かない彼と、まっすぐにぶつけあう視線。
私は、ジョーが何を考えているのか読み取ろうとまっすぐに彼の瞳を見つめた。

「・・・いや、なんでもない」

ジョーの小さく唇だけの動きを、読む。
声に出していたかさえも確認しづらいものだったけれど、私の耳には、・・・頭の中には確実に届いていた。

「いってらっしゃい」

ゆっくりと空気をゆらすことなく彼の躯がくるっと180度回転する。が、まわりきらないままに腰だけを残して、一度私から離れた彼の視線が再び戻って来た。

「・・・・一緒に、さ・・来ない?」

ちらりと私と視線を合わせたのは一瞬。
それを結んだスニーカーのヒモに落とした。

「コンビニへ?」

逡巡した私の考えを、彼が読み取ったかどうかはわからない。

「もしかしたら、・・店で品物を見ていたら、思い浮かばなかった必要な物とかみつけるかもしれないよ」

私はそれが”009の命令なら”と、変な言い訳を心の中で呟いた。
数秒の間をあけて「そうね。日本のコンビニも当分の間は行けなくなっちゃうものね」と、言葉を終わらせることなく、外出するためのコートを取りに、くるっとジョーに背をむけた。


コートとショルダーバックを掴んで、「でかけてくるわね」と、リビングルームにいる仲間へ顔を出すことなく通りすがりに声をかけていく。
背中でいくつかのリクエストを受けとった。

それらは、ドルフィン号に持ち込むためのものでなく、ちょっと口にしたい物たちで、日本に滞在している間はよく買っていた馴染みの品たちだった。







「それ、グレートが頼んだのだろ?」

買い物かごを手に取って、コンビニの中を歩き、すでにどこに何があるかを把握してきった店内で、迷うことなくリクエストのものを入れていった。

「わかる?」
「わかるよ」

購入予定だった雑誌を手早く選び、近づいて来たジョーが買い物カゴの中のものを覗き込んだ。

「じゃ、これは誰が頼んだのでしょうか?」
「ピュンマ」
「正解」
「今回は予定より長く居たからね」

くすっと微笑んだ、ジョーの頬が少し嬉しそうな色をしていた。

「ねえ、もういいの?」
「そうだね、・・雑誌はこれでいいけれど・・」

ジョーが手に持っていた(私が予想していたよりも)たくさん積み重なってる雑誌類を見た。

「漫画も?」

その一番上にある本に、眼を留めた私に気づく彼。

「この巻はもってないんだ」
「?」
「あ・・・ええっと、まあ、そういうことだよ」
「わからないわ」
「え、・・・。わかってよ」

もしかして、ドルフィン号のアナタのコンパートメント(個室)には、この漫画が揃ってるの?

「完結してないんだ。・・・だから、気になるだろ?」

漢字がたくさんならんだ漫画の表紙をじいっと観る私に、ジョーは何が恥ずかしいのか、それをくるっと回転させて一番下に伏せた。

「葛飾区って、実際にある地域よね?」
「・・・いいから、買い物の続きをどうぞ」
「ねえ、私もそれを読みたいわ」
「え?・・キミが???」
「あら、いけないの?」
「別にいけないってことはないけど「
「・・・もしかして」

私は買い物カゴを、後ろ手にまわして一歩ジョーへと近づいた。

「もしかして、なに?」

少し背を逸らして、気持ち私が近づいた半分、距離を取る、ジョー。

「私が読んだら都合の悪い内容なのかしら?」
「っ・・・ないよ、そんなのっ」

首を左右にぶんぶんと振った彼が作り出す風が頬を撫でて、名前のわからない彼の香りが鼻孔へと届く。

「ふふ♪慌てているところが怪しいわ」

買い物カゴを持ち直して、ジョーに背をむけた。
カゴの頼まれたものをチェックしながら歩き出す。

「じゃ、読めばいいよっ、僕が言いたいのは、この面白さがキミに理解できるかどうかで」

すると、後ろから私の背中についてくるジョーが、早口に言葉を繋げた。

「あとは・・何かあるかしら?」

彼の言葉を右から左に聞き流して、頼まれたものがカゴの中にそろっていることを確認しつつ、今度は自分の物を探す。
私が取り合わないということの意味をよく解っているリーダーの009は、軽くため息をついて、それが決定していることに一言だけ注意をする。

「誤解しないでよ、あくまでもフィクションなんだから全部信じないこと。いいね?」
「はーい」

よゐこのお返事にジョーは2回目のため息をついた。

「僕、こっちをみてるから」

彼は現実をうまく捻ったフィクションによって、私がとんでもない勘違いしてしまわないかと心配する。
漫画の内容に私が日本をミスジャッジする内容があるということなのだろう。漫画なのだから、エンターテイメント性を高めるために誇張して書いていることくらい、私にだって理解できるようになったのに。

「はーい」

私たちはまた店内で別行動とる。




・・・前にちらっと観た週刊雑誌の漫画で、ジョーも”不良/ぐれていた”=パンチパーマだったと信じ込んでしまった私のせいなんだけど。









コンビニ内を3周したところで、びっくりするくらいの種類がある、おにぎりコーナーで物色中のジョーの隣に立った。

「おわった?」
「ええ、もう大丈夫よ」
「じゃあ、これと・・これ・・・かな?」

2つ手に取ったおにぎりが、買い物カゴに加えられた。

「お腹すいたの?」
「まあ、ちょっとね。キミは?」
「そうね・・」
ひとつの乱れなく綺麗にきっちりと並べられた商品の棚を左から右へと首を流して見渡す。
どの商品も綺麗にお洒落に、可愛く、またはセンスよくデザインされたパッケージにつつまれて、手に取ってもらえるのを今か今かと待っている姿が、私の瞳を占領する。

「いつもながら、迷っちゃうわね」
「別に急いでないから、もう少しみる?」

飲み物を置いているコーナーへと移動しはじめたジョーを追い掛ける。

「ううん、いいわ。これで。特にお腹が空いてるっていうわけじゃないもの」
「・・・本当に、これでいい?」
「ええ、もう十分よ」
「・・・・・・そう」

ジョーは小さなパックにはいっているアロエの実入りのジュースを手に取り、私が持っているカゴにいれた。

「重くない?」
「平気よ」
「・・僕が持つよ。本当に何もない?」

カゴを私の手からそっと取り上げる。
その力具合から、私が拒むことを許さない感じを受け取って、素直に彼にカゴを渡した。

カゴから解放された手。
ほんのちょっぴり身軽になった躯。


ジョーが他にないか、確認するようにレジへの最短コースではなく、ぐるっと大回りするコースを歩いて行く。

「・・・ないこともなかったわ」

レジへと進んで行く彼について歩く私は、気づかれないようにそっと棚へと手を伸ばして取ったそれを後ろ手に隠した。
素知らぬ顔でレジで会計をすませるジョーの後ろに並ぶ。
日曜日なのに、あまり客がいない時間帯らしく、いつもは2人いる定員が1人でレジを打つ。

彼がそれらに意識を向わせている間、彼の背後でショルダーバックの中をさぐって最後に選んだ商品の、値段+消費税分を手のひらに握った。

「ありがとうございましたー、いらっしゃいませー」

「いくよ」と声をかけるために私へとふりかえったジョーに「先に外で待っていて」と、視線で言う。
彼の瞳が、私の視線を聴いたあとにレジカウンターへと流れていき、私が何かを買い足したことを知る。けれど、とても優秀だった店員さんの手によって、ピッとバーコードを読み取られた瞬間にプラスティックバックの中へ飼った品は消えていた。

私は小銭置きようの小さなお皿にぴったりの数字を置いた。

「レシートはけっこうです」
「ありがとうございましたー」

一連のやり取りは、10秒にも満たなかった。

「いくよ」

私が受け取ったプラスティックバックがとても軽そうな様子を視線で追い掛けるジョーが、小さな声で帰ることを促した。
前後に並んでコンビニの自動ドアをくぐる。
私はスキップするように、2歩ほど跳ねて彼の隣に並んだ。

車が4台止められるスペースのある、コンビニエンス・ストアは、コズミ邸から歩いて10分強。
その斜め前にバス停があり、駅までの道のりを短縮してくれる。

バスに載る前に、ちょっと何かを。
バスから降りた後、ちょっとアレを。

利用者は馴染みのお客さんが多いのではと思う、そんなコンビニの馴染み客に加わるには滞在時間が短すぎた私たちは、最後の買い物を一緒にすませた。

「お行儀悪いかしら?」
「?」

私はプラスティックバックの中に手を突っ込んだ。

最後に選んだ商品は、長方形の薄い板。
かさかさとした銀紙に包まれて、その上をさらにつるりとした感触の紙がレトロなイメージで商品名をプリントされてくるっと包んでいる。

とてもシンプルな板チョコ。

「ミルクチョコレートなんだけど、一口いかが?」

ちょっとびっくりしたような瞳で私が手に持つ板チョコを観た後、はにかんだような笑みを口元に載せた。

「いただきます」

ジョーのためにひとかけら割った音が、まだまだ寒い空気に心地よく響いた。

「・・・・もらえないのかと、思った」

コンビニの一角に赤とピンクで専用コーナーが作られていたことは、大分前から気づいていたけれど。
あらたまってそういうの、恥ずかしいのよ。

「たかがチョコレートじゃない」
「されどチョコレートだよ・・・」

私とジョーの足が、歩道の真ん中でとまる。

「みんなには内緒よ?」
「了解」

二つにわけられた荷物を両手でもっていたジョーが、チョコレートを受け取るために片手に持ち替えようとしたけれど、私は、指先でつまんだひとかけらを彼の口元まで運んだ。

「どうぞ」
「あ・・・うん、」

少し寄り眼気味に口元にまで差し出されたチョコレートをみつめて、ジョーはキスするかのように瞼を閉じる。
私の指から薄く開いたジョーの唇に吸い込まれていく、ひとかけらのミルクチョコレート。


指先がキスした後のように感じた。

すごくくすぐったくて、私は手に持っていた板チョコを割る事なく、かっぷりとそれ自体にかじりついた。


「・・・本当に一口だけしかくれないんだ」
「おにぎりがあるじゃない」







end.











前回もだったので、バレンタイン/コンビニ・シリーズができそうです。
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