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Le coup de foudre
こちらは2010年8月にブログトップに出てしまった広告を避けるためにUPした記事です。
このたび、少し手を加えまして「ショートの方へと移動」いたしました。
初出/8.26.2010










「サイボーグでも、疲れるんだ・・」


思わずつぶやいた言葉に反応したのは、近くにいた1人の女の子だった。


「…009?」


ブラックなんちゃらと言う、僕をサイボーグとして改造した悪の組織?
・・・から、奪取した。

わけの分からない状態で、空も海も(もしかしたら地上も?)移動可能な、まるで去年公開されて一代ブームを起こしたSF映画に出てくるような、戦闘機の中に僕は居た。


ーーーそうだ、まるで映画っぽい。


残念ながら、僕の腰にあるものはビームサーベルじゃなくてレーガンと呼ばれる銃だけれど。
どうせ僕は、剣道とかフェンシングの経験なんかないから銃でヨカッタかもしない。

本格的に銃は習ったことはないけれど、夜店の射的は得意だった。
BBガンの経験が本物の銃に活かされるのかどうかは判断できない。



「・・・疲れた、の?」


射的の的は動かないし、逆に攻撃なんてしてこないから。


「あ・・、う・・うん、す、少し」


肩くらいにまで伸びた、何色といっていいのか・・、蜂蜜色でいいのか。
そんな髪色をした、同じユニフォーム?
...を着た女の子が、コクピットのドア口に立つ僕へと振り返った。


ーーーアニメで観た乗り物的に、あの位置は指令席でいいのかな?


コクピット中央に位置するちょっと他の場所よりも高い位置にあり、座り心地が良さそうな作りの椅子が置かれている。その場所に座っている、ギルモア博士さ・・ん?の、隣に、赤ん坊の超能力者を抱っこしている、女の子。


「仕方あるまいて。・・・躯は改造されたといえど、精神的な疲労はやむえんことじゃ」


確か、彼女は3番。


ーーーぜろ...ゼロ、スリー。


その、3番より数秒遅れて僕へと座っている指令席の椅子ごと振り返ったギルモア博士・・さん。


「初めての戦闘に、まあ、すべてが初めてづくし・・・だったからな、まだ、・・・現実に感じられないか?」


3番の女の子とは、ギルモア博士を挟んだ左右対称の位置に立つ・・左手がみるからに”機会”の、彼女の次の番号の、人。


ーーーゼロゼロ、…フォー。


「それでもアレだけの戦いができたんだから、さすがだね」


指令席からみて、右手側で何かをしている、僕の一個前の8番が、首だけをあおって僕にウィンクと白い歯をにっかりと笑ってみせた。


ーーー彼は、ゼロゼロ、エイト。


「アイヤー、それなら少しお腹に何か入れてみるいいアルさんすー!キッチン見てくるあるよ」
「・・・003、適当な部屋に連れていって休ませてやれ」
「ちっ!最新型っつーのになよっちいな!」
「002、あの戦いっぷりが”なよっちい”ってそりゃないだろう?なあ、009」


次々に声が重なっていったと思えば、その場のこくビット内にいた全員の視線が、僕に集まった。


「・・・あ・・・・え・・ええっと・・」


ーーーどうしたら、いいんだろ・・う・・。


何かの言葉を期待されているのか、なんなのか。
...これと言った話題を振られたわけでもないので、なんとリアクションをとっていいものなのか。
戦闘よりも今のこの状態の方が、僕にとってはとってもきつい。


「はいはい、ちょっと通して欲しいあるよ!」
「あ。は、はい・・」


場の空気を僕からさらっと奪い取っていったのは、油を飲まなくても、ライターを使わなくても口から火ががぼおお!っと出せるゼロゼロシックス...さん、だった。
彼にたいしては、なんとなく同じアジア人ということで親しみを持った視線を送ることができる唯一の相手。
その、ゼロゼロシックスさんはコクピットから出て行く途中、僕の背中というよりも身長さのせいで腰あたりをぽんぽん。と、励ましてくれるようにたたいて出て行った。


「003、009を適当な部屋に連れていって休ませてくれ」


ゼロゼロシックス(さん)がコクビットから出て行くのを躯をねじって見送った僕の耳に、ひどく抑揚のない冷静な声が飛び込んでくる。



ーーー009、は・・・。ああ、僕のこと、・・だ。


「了解」
「いまのところ追っ手も撒けたみたいだからな。・・・順番に休憩を入れていこう、まずは003と009からということで、いいですか?博士」
「ああ、そうしよう。・・・フランソワーズ、イワンは儂が」
「はい、博士」


---ふらん・・そ。・・・・え?


聞き慣れていない単語が耳をくすぐった。
眼の前で、肩よりも少し長い髪の女の子が抱いていた赤ちゃん、001をギルモワ博士(ギルモア?)さ・ん。に、抱き渡した。

「ミルクもお願いしときましょうね」と、出て行ったゼロゼロシックスをさして、にっこりと003の彼女が001に話しかけた。


その後に、僕へと振り返って。
こくりと首を愛らしく傾けた。


「009、行きましょう」


その仕草が、ずうっと前に施設のみんなで大切に育っていたカナリアの、僕を見て嬉しそうに鳴いてくれる前の、動きによく似ていた。


---ああ、なんだか・・・なんだか熱いなあ・・・。首周りもなんだか・・さっきよりもきつい。


僕は首とマフラーの間に手を突っ込んで、息苦しさから解放されようと黄色のそれをぐっとひっぱった。
息苦しさはまるで変わらない。
今度は心臓がマラソン中でもないのに、ばくばくと大きな音を立てはじめた。
この息苦しさに反応して、足りない酸素をもっと!訴えている。


「009?」


いつの間にか僕の隣に立って、コクピットのドアを開けるためにセンサーパネルに手を伸ばしていた彼女の顔が、僕の予想に反した近すぎる距離にあった。


「うわ!」


びっくりして彼女から距離を取ろうと跳ね上がった。
近くの壁にどん!とぶつかってそこから跳ね返った衝撃で前のめりに膝をついて転ぶという失態。


「009?!」
「あ、ええっ・・と、だ、大丈夫だよ、大丈夫だから・・はは、・・あはははは」


びっくりした僕に、びっくりした彼女が僕を助け起こしてくれようと、膝をついた。














優しく僕の肩に添えられた手が、なにか魔法をかけたに違いない。




















そのときの様子を、客観的にみていた、006以外のみんなから後にイヤというほど聞かされる事になる。

見られていた位置の違いのせいなのか。
それぞれの主観が入っていたせいなのか。
それとも個々の性格故か、表現力の差か。


同じ場面を語っていると言うのにもかかわらず、みんながみんな、面白いように違った。
ただ1つ、みんなの話しに共通点があるとしたら。


『ああ、こいつ003に惚れたな』と、口を揃えて、あのときこそ僕がフランソワーズに恋に堕ちたときだ。と、言う。






僕はフランソワーズがその場にいないことを確認してから、みんなの耳元でささやく。


「残念、違うんだよ・・。あのときじゃないんだ、たしかに意識しはじめたのは、あのときからかもしれないけれど・・・」







みんなの視線があのときのように僕へと集まる。

じゃあ、いったいいつなんだ?と問いかけてくる視線に、口元がほころぶ。






















「一目惚れってやつさ」



END.











***
「Le coup de foudre」=フランス語で「一目惚れ」に近い言葉だそうです。
直訳になると「雷の一撃」だとか。



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