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呆れ返る/キミに片思いなボクのまま、春。
注意)もじもじ9はコズミ博士の伝手で、とある大学の人類学科の研究室兼事務所で雑用(何でも屋的)アルバイトをしています。








春だなあ。と、感じるときは、どんなときだろう?







街を歩けば1年中色鮮やかな花を愛でることができる花屋に季節感を感じるといえば、そのシーズンのイベントにかかせないアイコン的花々が店頭を飾るとき。

春を代表的花、チューリップが七色に店前にならんでいたのを、思い出した。




スーパーに並ぶ野菜たちは、海も山を越えてやってくるために夏定番の野菜だって冬にも美味しく食卓に並ぶ。
春らしい食材といえば、昨夜の夕食が「春の山菜キノコタケノコづくしで万歳」というテーマだった。



ボクは、ちゃんと春を感じていただろうか?









空の青がすうっと遠く離れて気持ちよい広がりをみせる。
見上げた位置から自分を中心に360度の丸い視界の端を縁取るのは、新緑の合間に色づく薄桃色。
ピンク色の絨毯となった道は、滑りやすくて、見上げた頭の重さにうっかり足を取られないように、ちょっとだけ膝に力が入った。



ピンク色の絨毯を踏みしめる足から香る、甘やかな空気と雰囲気が僕に教えてくれた。
ボクが春を感じようとしている間に、春は急ぎ足で去ろうとしていることを。






温かな日差しが嘘のように肌がつんと寒さに震える。
つめたく冷えた風は意地悪く、春が訪れたことをボクから隠そうとしているように思えた。

Tシャツ一枚ではまだまだ外を歩く事はできず、その上に長袖のシャツを羽織る。
まだ寒いのよ!と、ピンク色の絨毯の道と同じ色のスリッパを鳴らしながら、2階から駆け下りてきた彼女を思い出した。


そういえば。
彼女のカチューシャの定番の色でもあったなあ。と、見上げていた頭をゆっくりと下ろしていった。




「なーに、ぼうっとしてるんだ?花見はもう遥か彼方のまた来年だぞ?」


ボクの背後から小走りにかけよってきたのは、バイト先の友人(といっても”バイト仲間ではない)。
今年めでたく文化人類学科の臨時講師件アシカガ名誉教授のアシスタントとなった、湯田さんだった。


「あ・・いえ。桜の絨毯だなあって」
「まあ、ここは向こう側とあっち側を抜けるための一本道だし・・その両側には創立記念に植えられた桜がだだーっと並んでるし・・・と言っても、ほんの10mほどだけどな」
「贅沢な10mですよ。今年の卒業式はちょうど芽吹き前のさくらで、入学式には・・満開で・・奇麗でしたね」

「そうだな・・。やっと使いっ走りから解放されて、やれやれだ」
「新任といっても、在学歴からいえば古株もいいとこですからね、みんなたよりにしているってことですよ」
「迷惑な話しだなあ・・・」


人類文化部の校舎裏を抜けて正門までの道の途中、教員専用の駐車場と真逆の道に、地域交流のためのイベント用広場へとつながる道がある。

教員用駐車病と、広場の分かれ道までの、10mほどの道の左右に規則正しく植えられた桜の樹たち。
広場は普段、公園の役目も果たすように大学関係者以外にも開かれているため、平日も学生外の人たちが訪れる。
広場からみえる桜に誘われない人は滅多にいないだろう。ほんの少し足を伸ばせば、日本人のこころが騒ぐみごとな桜の並木道に出会えるのだから。

この辺りでは、ちょっとした桜並木道として名所となってしまっているらしく、毎年この10mの道を楽しみにしている人も多いと聞いた。
しかしここは大学指定区域内のために10mほど道での”花見”という名の”宴会”は禁止されている。

・・・けれど。


ランチボックスを手にお昼ご飯を楽しむ程度は見回りの警備員のはからいで、見逃されることが伝統らしい。


「今日は車なんだ、乗っていくか?」
「ありがとうございます。でも、・・・このまま人と会う予定があるんで」
「・・・人って・・アールヌーボーさん、か?」

葉桜となった並木道を歩けば、さらさらと気持ちよい葉のさえずりによく似合った影絵が躯の上をと降り抜けていく。


「・・・その呼び方、そろそろやめてもらえませんか?」


陽の光が葉を透けて、ステンドグラスのようなにじみを桜の絨毯の上に落とせば、踏みにじられた桜の花びらの濃さがスポットライトを浴びる抽象画のようにみえた。


「じゃあ、ふーちゃん」
「ふ・・う・・ちゃん?」
「クリスティーナの、スティーナみたいな感じで、ソワーズちゃん?」
「・・・普通に呼べないですか?」


どこを切り取っても、どこへ視線をおとしても。


「まあ、妥当なところでフランちゃんか・・。まあその辺は適当に、・・・それにしても、その、アールヌーボーさんなんだけど」
「・・・・・そう呼びたいんですね、湯田さんは・・」
「残念だったなあ。・・オオガミ教授のお墨付き推薦で・・ぼくだってそうなれば楽しくなるって思っていたんだけど?」
「フランス語の授業の・・アシスタント。彼女も悩んでいたんですよ・・・」
「悩むくらいならやればいいのに」
「悩んだからやめておいたんですよ。彼女はそういう子なんです・・」


すばらしい模様を描き、今日、いま、このときだけの、贅沢な生きた芸術をボクに見せてくれた。


「それで、見せてあげたのか、ここ?」
「いいえ・・いろいろと急がしてく、そこまで頭が回りませんでした」
「おやおや・・・、それは残念だ。・・・で?」


湯田さんはコーデュロイ地のズボンのポケットから、でっかいマスコットのついた車のキーを人差し指にひっかけてくるくる回し始めた。


「?」


ゆったりと日光浴をかねた散歩というべき歩みをさらに緩ませた、湯田さんにあわせて、ボクは歩調をかえた。



「人と会う予定って、いまさら隠さなくてもいいんじゃないのか?」
「なんの話しです?」
「”人”って女の子だろ?」
「・・・」


少し先に見える一般道。
左へ行けば、野外用イベントに使われる広場。


「見惚れるほどの奇麗な亜麻色の髪にカチューシャがチャームポイントの、とびきり大きな空色の瞳に、頬に陰がおちちゃうくらい長いまつげをぱちぱち瞬かせるお人形のような、子と。だろ?」
「・・・別に隠してなんかいませんよ!」
「デート?」
「違います!映画を見に行くだけです」
「・・・・それをデートといわないのか?」


右に進めば、教職員専用の駐車場。


「だって、ボクたちは別にっ・・まだ・・・その・・”恋人”とかじゃないんで・・・デートっていうのは・・ちょっと違うような・・」
「・・・待ち合わせ場所ってどこだ?」
「新しくできた○x駅のシネマ5前ですけど?」
「そうか、噂には聞いていたんだが、3D用のでっかいimaxシアターですごいらしいじゃないかあ、そこ!映画なんて久しぶりだなー♪そうかそうか、それは楽しみだ、島村!」
「へ?」


湯田さんはなんだかフランソワーズがみたら喜びそうな、でっかいマスコットのついた車のキーを再び右側の尻ポケットへと突っ込み、収まりきらないマスコットを揺らしながら、ボクの肩に腕を乗せて寄りかかってくる。


「デートじゃ悪いかなあ?と思ったんだけ違うなら、一緒してもいいだろ?」
「へ、・・・え?・・・え、あの、・・湯田さん・・でも・・その・・」



---今日の映画はフランソワーズに連れていってとおねだりされた映画・・だから・・そのお・・・.



「あの水沢を振ってまでってのに、まーったく進展してないなんて、心配で心配で、たまらんなあ、・・・呆れて物が言えん!」
「あの・・湯田さん・・は、車・・」
「その情けない島村を、水沢にもしっかりと見せつけて、ああこんな男に振られた逆に良かったわ!くらいの勢いをつけさせてやろうな!(あ、車は気にするな、明日電車でくればいいだけだから)」
「はあっ?!」


よりかかってきたと思えば、どん!っと肩を拳で着くように、ボクと距離を取って電話をかけるのを邪魔されないように先手を打たれた。
その勢いによたよたと、左側へとボクの躯が流れる。


「稲葉の電話番号は・・っと」
「なんでそうなるんですかっ!!!」



桜の花びらが、ボクの足が作り出した風に、小さく跳ねた。




「あー・・でないなあ。もしかして、剣崎さんにでもつかまってるのかなあ?」



あと、数歩進めば。




「湯田さんっ勘弁してくださいっ・・最近ずっと忙しくって・・なかなかフランソワーズとでかけられなっちょっと!なに電話かけてるんですかっ(それにっ今日はフランソワーズが観たいから連れていって♪といった映画でっ)」





桜の絨毯が終わる。





「あー・・残念留守電だな」
「なんで水沢さんに直接電話しないんですか?」
「そりゃあ、決まってるだろ?男心というもだよ、島村」
「?」












春。





「もー・・・にぶいなあ・・島村はあ・・いい加減気づいてくれないか、やりにくいんだけどなあ」
「・・・はあ・・???」



















キミに片思いのボクのまま、





今年も、



桜は、散っていってしまった。

























end.



誰だこの人たち?と思いましたら「もじもじ」の
~甘いふたりで5題~(17)にあります。









ーおまけー


「島村・・」
「申し訳ないですが・・湯田さんには映画のチョイス権なんてないですよ」
「・・・・これをデートと呼ばないことに納得したぞ」
「ありがとうございます」
「・・がんばれ、な」
「・・・はい・・・。がんばってますよ、これでも」
「うふ♪ヨーロッパの怪奇ミステリーホラーサスペンス、生まれて初めての恐怖が今日ここに!ですって!!湯田さん来てくださって嬉しい♪一緒に楽しみましょうね!」
「島村ああ・・手、握っていていいか・・・けっこう駄目なんだ・・こういうの・・お化け屋敷は入らないときめているんだ、じいちゃんの遺言でな・・・」
「・・ええっと、ホルモン系は飛び散らないと思いますけど・・・。少しでもましになると思うんで、これ、どうぞ」
「・・耳栓?」
「ボクはビジュアル的には平気なんですけど、あの・・効果音とか、絶叫がどうも・・・なんで、少しでもって・・それでもうっすら聴こえるんですけど・・」
「音で脅かされないだけましか・・・・・手、離さないでくれなあ・・頼むわ・・」
「大丈夫です、湯田さん!・・・・ボクがついてますっっあとは勇気だけですっ!!」
「映画のおともは、ポップコーンじゃなくて、春らしく花見団子にしてみたのー♪」





座席についてから、うきうきと取り出した有名和菓子店のラッピング紙の香りに呆れ返った、ボクは言葉を失いながら思う。
ホラーに花見団子との組み合わせを思いつくのは、フランソワーズ以外の誰がいるだろう?

ボクは呆れてものがいえないというよりも、フランソワーズが持ち込んだ花見団子の味と歯ごたえに集中することで、3時間を耐えきった。



きっと今なら、花見団子について熱く深く語れると思う。












春・・・。



end.









座った順番は、湯田さん→9→3だと思います。
湯田さんの絶叫に、3はびっくりしっぱなしだったそうです。

9は帰宅後、鑑賞中の間にずっと湯田さんに握りつぶされ続けた手を博士にみせて、本当に相手は人間だったのか?と問いつめられたそうです(笑_さすが極真空手黒帯有段者♪)




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