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愛おしくて。愛おしくて。愛おしくて。
ジョーがイギリスから帰ってくる。

5ヶ月近くをずっと海外(向こう)で過ごしている間、ジョーとは電話とメールのみだと聞いた。

あまり話すのが得意でない。と、言うジョーは、フランソワーズさんが日々の出来事を電話で話し続けると言う。

彼は「うん、そう、よかったね」などの言葉と相づちばかりらしい。

あとは必要な連絡事項を話して終わってしまうの!っと、
彼女は少しだけ唇を尖らせて拗ねてみせたその姿は、いつものように天使のように愛らしく、妖精のように可憐で、うっとりと見惚れてしまう美しさは、ただ、容姿に恵まれただけでは得られない。彼女の くるくる とよく変わる、豊かな表情と、バレエを長く踊ってきたせいなのか、ゆるやかに動く仕草は、柔らかく優雅で、彼女が動くたびに、きらきら と 光の雫が舞っていく。
オレはそんなフランソワーズさんから目を離すことができなくなってしまう、

相変わらずのオレ・・・。

それでも、彼女は幸せそうで。
遠く離れた恋人との距離をまったく感じさせなくて・・・

怒っているのか、嬉しいのか、恥ずかしいのか、心配なのか・・・
ジョーのことが話題になると、頬をうす桃色に染めて話す姿は、彼がいなくなった日常を、ちゃんと彼女なりに受け止めて暮らしていることの証明で、フランソワーズさんの強さに尊敬した。

ジョーが抱きしめるたびに彼の腕の中に消えてしまうほどに小さくて、華奢なフランソワーズさんのことを

「彼女のような強い人を知らない」

と、何度もはにかんだ笑みで言う。

少女のようなフランソワーズさんを、それも、自分が愛する女性にたいしての賛辞としては、ちょっと物珍し言い方をする、ジョー。
まあ、やつはフランソワーズさんにとって、

「すごく可愛い人で泣き虫さん」らしいから・・・バランスがいいのか?


そういえば・・・ジョーがイギリスへと去った後、
彼女の麗しいふくよかな唇からは、「逢いたい、恋しい、寂しい」などの単語を一度も訊いたことがない、オレ。
もしかしたら、彼女はオレではなくて、香奈恵さんや義姉さんには言っているかもなあ。っと、思っていたけど、彼女たちもフランソワーズさんから一度もそういう言葉を訊かないと、逆に心配していた。

心配されていた通り。と、言ったらおかしいかもしれないけれど、「ジョーが帰ってくる日」と、もう2週間も前から指折り数えて楽しみにしていたフランソワーズさんは、彼を空港へは迎えに行かないばかりか・・・・・・。
なんと・・・家にも帰りたくないと言い始めたのだ・・・。


ドアのチャイムが ちりりん っと鳴る。
店を訪れたのは、香奈恵さんだ。

義姉さんがさっき、店の電話から彼女の携帯に連絡していたのを知っている。
ジョーの乗る飛行機が空港へ着くのは夜の10時。
まだ十分に間に合う時間。

今日のフランソワーズさんはいつもの席には座らなかった。
彼女は自ら、店で一番目立たない奥方の席に座る。
道ばたに咲く名もない花のように。
ただ、座って居る。

彼女の好きなケーキのオーダーも入らず、お気に入りのアップルティもなく、注文されたのはアメリカン。
ミルクも砂糖も入れずにちびちびと黒い液体を、いつもよりピンクがかった形よい唇にあてて、舐めるように飲んでいる。

「いったい、どうしたって言うのよ?」

義姉さんに呼び出された香奈恵さんは、待ち合わせでもしていたかのように、何事もなくフランソワーズさんの真向かいの椅子に座り、携帯を乱暴にテーブルに置いた。

義姉さんが香奈恵さんのためにアイスティを用意している。
ここではオレの出番はない・・・。

けれど、オレはフランソワーズさんが心配で、ちらちらと彼女の様子を盗み見てしまい、今日は仕事が手に着かない。
そんなオレに、いつもなら義姉さんの鉄拳が飛んでくるはずだけど、今日は飛んでこないのが、それは、それで問題だよな・・・。

香奈恵さんのアイスティと、ちゃっかり自分の分のレモネードをトレーに乗せて、フランソワーズさんのテーブルへ向かう、義姉さん。

はいはい。
あとの事は、オレに任せてくれ!
だから、フランソワーズさんのことしっかり頼んだよ!


昨日から降り続く雨のせいで、客足が遠いのが幸いしてか店内は、2、3組のお客様のみ。
こういう日はケーキなんか買って帰る人は滅多にいない。
できれば、オレも彼女たちの席に着きたい。

遠目で様子をうかがう事はできても会話までは聞こえてこない・・・。
まあ、会話してるようにも見えないけどさ。

ずっと、香奈恵さんと義姉さんの口ばかりが動いていて、フランソワーズさんは ぴくり とも、その唇を動かさない。珈琲を飲むとき以外は。
彼女が注文した珈琲は、冷めてしまってアイス珈琲になってるのがわかる。けど、何度オレが新しいものにしようとしても、彼女はただ首をふって断った。

その顔は微笑んでいるけれど、
いつものような・・・
周りに花が咲くような明るさが、その微笑みは持ち合わせていない。

おかしい。

ジョーが帰ってくる日なのに。
あんなに楽しみにしていたのに。



彼の部屋を掃除したの。

彼と一緒にスーパーへ行くの。

イワンを連れてドライブに行くの。

お土産はいらないって言ったのに、お土産だけのために新しいスーツケースを買ったって言うのよ!

彼の好きなご飯を毎日作るの。

彼がソファで昼寝がしたいって言うの。

2週間だけだから、ずうっと家にいればいいのに、けど、彼はどっかに連れて行きたいって言うの。

一緒にチョコレートムースを食べるわ!

・・・だから彼が帰ってくる日に買いにきますね。



すぐに買って、テーブルに着かずに帰ると思ってたのになあ。



「黙ってたら、何もわからないわよっ!」
「フランちゃん・・・島村っちさんと喧嘩でもしたの?」

フランソワーズさんは、力なく首を左右にふった。
いつもより心なしか艶がない・・・風に戯れる事なく重力に従順に従うだけの、亜麻色の髪。

「あんなに、あれするんだ!これもするんだ!って2週間しかないのに、いっぱい予定を考えてた、あんたじゃないの!」
「ねえ、私たちに言えないなにか、なのかしら?」

「・・・・・・・・・」

フランソワーズさんの口が、少しだけ冷たい息を吐いた。

「まあ、空港へは迎えに行かなくてもいいわよ、島村っちのことだから、フランソワーズが夜に一人で空港で待ってるなんて知ったら、機長を殴って自分が飛行機を操縦して、予定時間を繰り上げて空港にくるわっっ」

香奈恵さんのその言葉に、驚く事もなく義姉さんは深く頷いた。


そんなキャラだっけ・・・ジョーって??


「もしも一人で空港へ行くのが心細いのだったら、うちの大地を貸してあげるわよ?」


いや、別にフランソワーズさんと一緒にジョーを迎えに空港へ行くのは、いいけど。
(嬉しかったりするけど、行きしなは!)

オレ、義姉さんの持ち物っぽいんですけど? その発言だと・・・。


「・・・違うの」
「「?」」

「逢いたくないの、ジョーに」

「「「!?」」」


逢いたくない?!
フランソワーズさんが、ジョーに!?


オレの足は彼女たちの席へ自然と足を動かしていた。
テーブルまで近づいて、オレの意思とは関係なく口が動いた!

「逢いたくないって!!フランソワーズさんっっ、そんなのジョーが訊いたらっあいつ、絶対に、絶対に泣くよ!!」

「うん」

・・・・・・あり?

速攻で返事が返ってきて、オレは拍子抜け。

「ちょっと大地!参加するなら立ってないで座んさない!」

義姉さんに腕を引っ張られ、隣のテーブルの椅子を引いてオレは会話に参加することになった。
幸い、今日はバイトが2人も入っているから、店は大丈夫だと判断した上でそう言ったのだろう。
どんなことがあっても、しっかり者の義姉さんだしな。

「・・・で? なんでそうなるのよ・・・逢いたくないなんて、フランソワーズらしくないじゃない!」

オレが座るのを待ってから、香奈恵さんがフランソワーズさんに話すことを促した。

「・・・理由なんかないわ」
「理由なく、フランちゃんが島村っちさんに逢いたくないなんて、信じられないわよ!」

オレは義姉さんの言葉に深く頷いた。

フランソワーズさん、変だよ。
彼女が着ている今日のワンピースは・・・・ジョーに買ってもらったお気に入りなのを、オレは知ってるよ?

彼女にしては珍しい色の、新緑を想い出すはっきりとしたグリーンのツルツルした光沢のある生地で出来た、とてもシンプルなワンピース。女の子の服なんてよくわからないけれど、それはフランソワーズさんのサイズをきっちり採寸されたように、彼女にぴったりだった。ウェストの部分だけをはっきりと絞り込んだそれは、彼女のほっそりとした部分をより強調させている。膝丈のスカートは緩やかに流れて、彼女が歩く度に、彼女の足の形がうっすらと形作る。同じ生地のリボンをいつものカチューシャのようにつけて、レースのカーディガンを羽織っている。
そして、いつもつけている白銀色のとても細いブレスレット。
ジョーも同じ物をつけているのに気がついたのは、いつだったかな?

「逢えないの」
「なんでよ?」
「逢いたくないと、逢えないじゃあ意味が違ってくるわ」

オレは余計な口は挟まない。
こういうときは、男は余計なことをベラベラ話すのはよくない、らしい・・・。

「・・・jy、ジョーを困らせる、から」
「困らせる?」

「そう。困らせて、きっと・・・彼は私のワガママを叶えてくれるの」
「何よ!それ、あんたのこと心配してんのに・・・惚気てどうすんの?!」

香奈恵さんは呆れたように、どかっと机に頬杖をついて、そのちょっと尖った顎を乗せる。

「痛いの」

フランソワーズさんはずっとテーブルの下で、左手首にある、白銀色のそれを大切そうに そうっ と撫でている。ときどきオレの耳に しゃらり っ と、柔らかい音が聞こえた。

「肌寂しいって言葉があるわ・・・それを、通り超してしまって痛い・・・・の・・・」

フランソワーズさんの語尾が、震えた。

「だ~か~らっ!帰ってくるじゃない、今日!いっぱい死ぬほど、触って、抱いてもらえばいいじゃないの!そんなの、フランソワーズが言わなくたって島村っちの方が我慢ができないわよ、5ヶ月よ!5ヶ月もご無沙汰なんでしょ!」

ストレートです・・・ね・・・香奈恵さん。

「だめよ。・・・だめなの。ジョーに、ジョーにあったら、もう・・・彼に触れたら、彼にふ、触れられ、た、ら・・・もう・・・だ・・・め・・・・・・・・・・もう、も・・・・」


フランソワーズさんは首をうなだれて、その表情は綺麗な亜麻色のカーテンの奥にしまわれた。
彼女の華奢な肩が、冬越えを待つ小鳥のように細かく震える。左手のブレスレットを撫でていた右手が、その細いきらめきを隠すように、手首と一緒に強く握りしめた。

密やかに聞こえる、店の中にいる男女のカップルは明るい声で話している。
静かな店内に響くその声が、古いドラマのエキストラが演じるカップルらしいカップルの会話で、降り続く雨の音と混じって異国語に聞こえた。

「何が、だめなの?フランちゃん・・・?」

「・・・痛い、

痛いの。

寂しくて、

淋しくて、


ジョーが、

恋しくて、

逢いたくて、

逢いたくて、

逢いたくて、

苦しくて、

息ができなくて、

なんで生きているのか、わからなくなるの。


痛くて、

辛くて、

心臓が動いているのが、不思議なの。


彼がいないのに。

彼はいないから。


なぜ、私は笑ってるの?


彼がいなくても笑えるの?


御飯を食べてるの。


彼がいなくてもちゃんと朝が来るの。


彼の声が、

聴きたくて、

電話じゃだめなの。


ちゃんと聴きたいの。


触れたいの。

彼の声に。

彼の。

彼を。

もう、想い出せないの。

たった5ヶ月で。

たった5ヶ月なのに。


彼はどういう風に私に触れてくれていたの?


彼はどういう風に私を抱きしめてくれたの?


彼はどういう風に私を愛してくれたの?


怖いの。

痛いの。

逢ったら想い出すもの。

全部、想い出してしまうわ・・・


きっと


きっと



もう




離れていられない。
もう、離れていたくなくて。

言うの。

私はばかだから。

きっと言ってしまうの

行かないで。

そばにいて。

離れないで。

抱きしめて。

キスをしてって・・・言ってしまう・・・


ジョーが

愛おしくて。愛おしくて。愛おしくて。


ジョーが

愛おしくて。


私はワガママになるのよ・・・


そして、彼はそれを叶えてくれるもの・・・


だから

逢えないの。

逢いたくないの。

私が望んだのよ?


私が、行かないって決めたのに。


いまさら、よ。


彼は何度も、一緒に行こうって言ってくれたのに


今、逢ったら
何もかも捨ててそばにいてって言うわ

そして

彼は

私のために

そばにいるの


彼はそういう人だもん」



彼女は泣なかない。
声は震えて、弱々しく、掠れる声は甘く、切なく、オレの耳を擽った。


ジョー、お前知ってるのか?
彼女はぜんぜん強くないじゃん!

こんなに、お前を求めてるんだぞ!
それをお前は知ってるのか!?


オレはジョーに激しく腹が立った。


何が「強い」だ!
甘えてんなよ!!

お前が可愛くて、泣き虫だからって
「強い人」でいることを、フランソワーズさんに押しつけてるだけじゃんか!


「だからね・・・」

フランソワーズさんはゆっくりと顔をあげる。
さらり っと、亜麻色のカーテンの幕が開く。

彼女は・・・微笑んでいた。
ほんのりと、曇一つなく晴れた空色の瞳を恥ずかしげに潤ませて。

しっかりと頭を上げ、照れ隠しのように愛らしく、ちょっとだけ小鳥のように左に首を傾けてフランソワーズさんは言った。

「まだ、ジョーに逢うこころの準備が足りなかったの・・・でも、なんだか、もう大丈夫・・・こうやって気持ちを訊いてもらえたから、だいじょうぶ・・・」


そんな!
そんな!!
そんなに簡単なわけないじゃん!


オレの唇はすっかり乾ききっている。
長く彼女の告白を訊いていたオレの舌は口の中で上顎にひっついしまって動かない。
オレはどうやって口を開けて良いのか忘れたみたいな感覚に、驚いた。


「それ、島村っち知らないでしょ?」

黙ってフランソワーズさんの言葉を受け止めていた香奈恵さんの声が、酷くキツイ物言い聞こえて・・・オレは、2度続けて驚かされた。

「・・・言わないもの、・・・・言えないわ」

フランソワーズさんが「そういうのを知っていた」と、ばかりに、彼女の大きな口が、にっこりと左右に引っ張られる。




「だってさ!島村っち!!しっかり訊いてた?!」



?!



フランソワーズさんのからだが、跳ねた。

オレは香奈恵さんの言葉に3度続けて驚いた。



香奈恵さんの左手に、携帯電話。
液晶画面に「島村っち」と読める文字とスピーカーの・・・マークが点滅している。


香奈恵さんは魅力的な意地悪い微笑みをフランソワーズさんにむけた。
その手にある携帯電話は、彼女の耳に押し当てられている。


「・・・・・か。か。かな・・・え・・・さ・・っん?」


やっと絞り出したフランソワーズさんの声はさっきとは違う震えがおこる。
義姉さんも香奈恵さんと同じようにフランソワーズさんにむかって
にっこり微笑んでいる。

も、も、も、もしかして知ってたの?
その携帯の向こうには・・・ジョーが?!


「フランソワーズは知ってるでしょ?私が今日、空港にバレエ団を代表して、来期にお呼びするゲストダンサーのマネジャーをお送りしたの。その時さ、偶然に会ったのよ島村っちに!
島村っちてば、フランソワーズに早く会いたくて、2便早い飛行機にキャンセルがあるって知って、それに飛び乗って帰ってきたのに、邸に電話しても誰も出なくて、フランソワーズの携帯も電源が入ってなくて、すごく心配してたのよ~!私が彼をみつけて声をかけた時に、萌子っちからちょうど電話がきてさ!その場で全部島村っちは知ることになっちゃったのよ」

香奈恵さんの言葉に、頷く義姉さんは、香奈恵さんの言葉を受け継いだ。

「ごめんなさいね、フランちゃん。でも、島村っちさんに・・・頼まれちゃって・・・。”頑固で絶対に自分の弱さを見せるのが嫌いなフランソワーズは、こうでもしないと、ちゃんとした彼女の気持ちを、彼女の口から訊くことができないから”って言われて・・・」


「・・・・じ、じ、じゃ、ジョーは・・・もう日本で・・
どこに、どこにいるんだよ!?」

オレは興奮して、舌がもつれた。
知りたい!あいつは今、どこにいるんだよ!!

「ここの裏。ここの裏の階段のところに居るわよ、フランソワーズ」


?!



香奈恵さんが、自分の耳に押し当てていた携帯電話を、フランソワーズさんの耳にあてた。

フランソワーズさんは、まっすぐに香奈恵さんを観ている。
その顔は、驚くほどに・・・。


[・・・・フランソワーズ]

ジョーの声。
電話越しの、ジョーの声。

[・・・・フランソワーズ・・・・こ こ に い る・・・・・・]



フランソワーズさんは勢いよく立ち上がり倒してしまったイスも気にせずに、走り出す。
彼女はレジ奥の通路から厨房へと走る。

厨房に居た兄貴も、高田さんも驚かない。

彼女のために壁際により、ジョーへと繋がる扉の道をあける、

彼女のために。


勢いよく開けられた、扉。
そこにあるのは、非常階段か?と、思えないほど、優雅に螺旋を描いた、花々に飾られた階段。

そこは。

ジョーとフランソワーズさんが将来を誓った場所。


彼は、戻ってきた。

彼女のために。

彼女は走る。

彼のために。



「ジョー! ジョー! ジョー!!!!!!!」

フランソワーズさんは叫ぶ。


愛おしい。愛おしい。愛おしい。
彼の名前を。




ジョーは両手を広げて、彼女を待つ。



愛おしい。愛おしい。愛おしい。
彼女をその腕に抱くために。


フランソワーズさんは、その背に光る羽を大きく広げて
彼の腕の中へと舞い降りる。


彼は天上から訪れた、亜麻色に輝く天使の輪を持つ彼女を
その腕に閉じこめた。



「ただいま・・・」


愛おしい。愛おしい。愛おしい人。


愛おしい。愛おしい。狂うほどに愛おしい人。


その頬に自分の頬をする寄せて。

「俺も・・・痛かった・・・・・。

でも、それよりも・・・

キミが、俺に・・・

そばに居てくれって言ってくれないことが・・・

キミは、

俺がいなくても、

平気なのか・・って。

淋しくないのか?

俺がいなくて、寂しくないのか?

恋しく想い、その胸を痛めて、

息もできないほどに、苦しんでいるのは、俺だけなのか?

不安だった。

怖かった。

もう、キミをこの腕に抱くことが叶わないのかと・・・

もう、キミは俺を求めてくれないのかと・・・


離れていた間。

キミの声を電話越しに聴いてる間。

キミのメールを読んでいる間。

キミを夢に見た日の朝。

キミが好きな花をみつけた時に。

キミと同じ髪色の人をみかけた時に。

キミが

愛おしくて。

愛おしくて。

愛おしくて。

フランソワーズが


愛おしくて。


壊れてしまう・・・


俺はキミに求められていないと、壊れてしまう・・・」



フランソワーズさんは

彼の額にキスをひとつ。

瞼にキスをひとつ。

両頬にキスをひとつずつ。



「そばにいて。何もかも捨ててそばにいて。抱きしめて。キスをして。愛して」
「そばにいる。何もかも捨ててそばにいる。抱きしめる。キスをする。愛してる」



ーーーーー2週間後。

ジョーは再びイギリスへ。
フランソワーズさんは・・・・。


ドアのチャイムが ちりりんっと鳴った。
今日もオレはカフェでバイトに励む・・・給料上げて欲しいこの頃。

「こんにちは!」

耳に心地よい春風が届く。



「・・・一緒に行かなくて良かったんですか?」
「・・・心配してくれて、ありがとう。大地さん」

彼女は微笑む。
明るく色とりどりの花々が咲くような、輝く笑顔。

「・・・離れて・・・あんなに、あんなに辛い気持ちだったのに?」

俺の言葉に、彼女は恥ずかしそうに少し視線を下げた。
大きな青空色の瞳を縁取る、長い睫が彼女の目元に陰を作る。

「んふふ。とっても、とっても辛くて死んじゃいそうだったわ!」

彼女は ぱっ と顔を上げて、オレにウィンクをひとつ。

「?!」

「でも、ジョーはちゃんと受け止めてくれたもの。
私の辛くて死んじゃいそうなくらい痛い想いを、全部。

いっぱい愛してくれたの。

前よりも、もっと もっと もっと

彼が


愛おしくて。愛おしくて。愛おしくて。


一緒に居たら

私の愛で

彼のこころが

いっぱいになっちゃって

再起不能なまでに

壊れちゃったら困るもの!!」




愛し、愛される、彼女は最高に強いと思う。



ジョー、お前・・・大変だな・・・・。









彼が 愛おしくて。愛おしくて。愛おしくて。
私は壊れてしまう・・・。












end.



・あとがき・

初心に戻る・・・(笑)
本編の続きって言うか、その後。
と、言っていいかもしれませんね。

ジョーが海外でF1レーサーとして暮らし始めたばかりの、
初めての帰国ってことで。

久し振り?にフランちゃんメインにお話がすすんだな~・・・。

は!!!(3月9日!)
39の日ではないですか?!

これ・・・39記念にしちゃいましょ!
(そんなのでいいのか?!)

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