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命令違反



「大丈夫、だ、よ」


心配させまいとして言う言葉の裏に隠れた不安を分けて欲しいと願いながらも、それを態度で示すことができない。


「一人でなんとかしようなんて考えないでっいくら最新型でも私たちはたかだか”プロトタイプ”よっ自分の限界を覚えてっ!!」


苦く笑う009の顔を003はひっぱ叩きたくなった。


「ひどいな・・それ。一生懸命なのにさ」



わかってる。
誰よりも、わかってる。

だから、余計に腹立たしい。








「大丈夫だから・・」
「ぜんぜん大丈夫じゃないっ!」


黒煙の幕に覆われた空に赤く広がる、炎。


「僕達は勝った・・。結果オーライ、・・・今度のときは、003が言うように、気をつけるから・・さ・・・」


吹き続く熱風から身を守るために、009を守るために身をかがめる。


「絶対よ・・・約束して、絶対に今みたいな状態にはならないって、約束してっ!」


熱を吸い込んだ砂の上に横たわる彼に負担をかけないように。


「怒鳴るなよ、・・003」
「約束して・・・009」


耳に痛いほど響く爆発音は鳴り止むどころか、その勢いを増していく。
009の頭を膝上に守る003の肩が、爆発音に反応して揺れる。


「・・・・ここも、きっと、すぐに・・・火が・・。キ・・だから、キミは、行って・・。ドルフィンが来るまで、安全が確保できる場所へ行くんだ・・003」
「ここで待っていても同じよ、009」


燃え上がる研究施設からここまで、距離がある。
加速装置の限界を超えて、私をここまで連れてきてくれた。


「命令、するっ・・」


連れて脱出してくれた。


「拒否します」
「・・・・003」


限界を越えた躯は、”壊れた”ように、動かない。


「拒否しますっ」


人形のように、1mmも動かなくなった。


「・・ここから離れて、安全、確保、」


動かすことができなくなって、ただ、横たわる。


「敵はもういないのでしょうっ、勝ったのでしょうっ」
「敵がいなくても、危険だから、だ・・・・。行くんだ」


黄色の布しかなくて、彼の頭部の出血を、顔の煤を、拭う。


「危ないと言うならっ私よりも009でしょうっ」


濁った視界で見上げる003の顔にむかって、思いついた言葉を口にした。


「・・そうだ、003。・・・・今度、・・・・ドライブにさ、連れいって、・・あげるから・・、さ・・・。言う事をきいて、くれ・・」
「!」
「・・嫌?・・じゃあ・・・映画・・は?」
「009っ」
「ど・・ぅ、動物、園?」


遊園地、公園、カフェ、・・・、003が見下ろす009の唇が、今の現状に不似合いな単語を並べ立てた。当り前だけれど、003はまったく009の言葉に乗ってこない。


「・・それなら、・・・命令違反、には、さ、・・ペナルティ・・」


乗ってこないので、009は別の手を言葉にのせた。


「ペナルティ、・・・は・・。僕と、ふたりきりで。・・・デート、だ・・」


頭にノイズが走る。


「そんな顔、するくらいだ・・・・・・」


炎に包まれている基地が発していた電波妨害がなくなったようだ。


「ふたりきり、なんて・・・さ、・・僕と、すごく・・嫌だろう?・・・・・だから・・」


通信回路を押し開こうとする仲間たちのうちの誰かの声が届く前、口元だけを歪ませた009は、薄く笑った。


「ああ、・・・ドルフィン号が来たみたいだ・・・・。・・これで、命令違反が成立・・しちゃった・・ね・・」


009の耳にも、ドルフィン号のエンジン音が捉えられる距離にまで来たようだ。
回復した通信回路から安否確認に急く仲間たちの声が一斉に流れこんでくる。


「003、ペナルティ・・・ひとつ、・・・覚えておいて・・」


頭に響く仲間たちの声に対してただそれだけを報告し、009は意識を手放した。













end.


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