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Little by Little・28
(28)




<・・・了解、した>


009、こと、島村ジョーからの脳波通信を通した返答を受け取ったグレートは、淡々と荷造を進める当麻を、近くにあったデスクチェアに腰を下ろして眺めていた。
手伝おうか?と、声をかけたが断られたのでそうしている。
独りにしておいた方がいいようにも思えたが、今後のことを話し合っておきたい思いから、部屋から出ないでいた。

失恋した、だけのの問題でここ、00メンバーが住む邸をを出ていく。
事は単純そうに思えたが、そうではない。

彼にはここを出ていってしまえば、帰る場所などないのだから。
夏休み明け、9月から始まる高校(寮)生活が始まってしまえば、とも思えたが、当麻はすでに高校3年性。

ここを出ていく、と言った彼の口からはまだ次の行き先を聞けてはいない。





保護者である篠原さえこは、現在篠原グループの70%を仕切っている。
篠原当麻が高校を卒業するまでの間に、さえこ自身が関わったプロジェクと月見里学院以外からは手を引く手続きをしているが、世界の経済状況が傾きつつあり、傾きに引きづられはじめている日本の今の現状では難しいようだった。
彼女が口にしていた予定が狂い始めているのは確かで、プライベート(当麻)のことも手が回らなくなっている。

祖父・篠原秀顕の名前の下で動いていた自由さが叙々に失われていく中、さえこは”篠原”の名前に飲み込まれていた。足掻けば足掻くほどに、砂に足を取られて動けなくなっていっていることを、グレートは感じている。

篠原秀顕がいなくなった穴の大きさを一番感じているのは、さえこと、今グレートの目の前にいる、18歳になる青年だ。
さえこも薄々は予測していたかもしれない。
今の状況を。

だから、敢えて養子縁組を言い出したのだろう。
飲み込まれてしまうことがわかっている自分を、盾にして。


当麻を守るための安全な引き取り手としてあげた、彼の祖父母(実母・小石川美涼の実家)。
その間を取り持っていた弁護士から連絡がいっこうに入ってこない。
当麻と祖父母を引きあわせ、9月の入寮までに養子縁組させる話しは頓挫しているようだ。

どこで頓挫しているのかは把握していない。
「手を出すな」と009に言われているので、グレートは情報を入れないように耳を塞いでいる。


識っていることは、資料として必要最低限の情報のみ。

当麻の養子先となる家、小石川美涼には年が離れた妹が2人いる。
彼女とは異父姉妹になる妹たちは結婚し、家を出ている。それぞれに子どもが居た。
当麻にとって彼女たちは叔母であり、従兄弟たちにあたる。

平凡で幸せな老夫婦といった印象をグレートは資料として得た書類や写真に目を通して感じていた。
今更になって、なくなった娘に子どもがいましたと言われ、それだけならまだしも、養子として引き取って欲しいと願われたら。

当麻のためを思って、さえこが提示した金額は平均的サラリーマンの年収から考えて、宝くじを引き当てたとしか思えない額だ。
金額に問題がないとすれば、感情面だ。
頓挫する理由があるということは、たとえ迎え入れられても当麻が何も問題なく過ごせる保証は少なからず、期待できない。




ーーー本当にこれでいいのだろうか。

00メンバーの手(001)を入れれば養子縁組問題など、簡単に進められるがそれはしないと009が決めた。
どのレベルまで介入するべきか、否か、線引きが難しい。


関われば係るほどに私情が絡み、複雑になる関係図。
一度関わってしまったからには、それ相応の責任がある。






責任/証拠。



009は。
007からみた009は、自然。

普遍的な見方で物事を考える。
彼の生い立ちがそうさせたのか、生まれ持った価値観なのか。

彼の広げられた腕の中は広すぎて、その広大さに・・・凡人は翻弄されてしまう。



「忘れちまうかい?」
「え?」
「いっそ、パーっと・・・全部を忘れて、新しく生まれ変わるっていう手も・・あるんだ」


深くを吸い込み、一気に吐き出した。
その勢いにのってデスクチェアから立ち上がったグレートは、ベッドの上に並べた衣類を畳んでいた当麻の背中をバン!と叩いた。


「これは逃げじゃない。・・・・逃げることになんてならない、篠原当麻であって、いや・・今までの当麻から脱皮するんだ」
「?」
「張大人と我輩は、・・・凡人ゆえに、簡単で単純な、D方式と呼ばれる結末を望むのさ」












####



瞼が重たく感じたことを頭痛のせいだと思った瞬間に、フランソワーズは横たえていた躯を跳ねさせた。
飛び起きたベッドの上は、一人。

飛び起きた拍子で躯を覆っていた掛け布団が落ちる。晒された空気に自分が何も見につけていない状態であることを再認識する。
重たい瞼は上がりきらず、濁った視界で部屋の様子をうかがった。上半身、肌を晒したままで呆然と閉じられている部屋のドアを見つめる。

眼の焦点を合せる感覚。
人差し指を鼻筋に合わせて一本立てて、寄り目を作るような意識をすれば、見えてくる。

ドア向うに立つ、人の姿。









####




<・・・了解、した>





リビングで寝てしまっていたジョーは、促されてバスルームへむかった。
部屋から着替えをもってきてくれた張大人へドア越しに礼を言う。


「それから・・・」


張大人の気配を脱衣所と風呂場を仕切る、スライド式曇りガラスのドア越しに感じながら、グレートからの通信内容を手短に伝えた。


「篠原当麻が近日中に、・・ここを出ていく。新学期までとのさえこさんとの約束だったけれど、本人の意思を尊重したいと思う」


タイルを叩く水音にまじり、風呂場の独特な反響にジョーの声が滲む。


「アイアイ。了解したアルよ・・・。ジョー」
「・・・なんだい?」


ドア側に背を向けていたジョーが振り返った。
目に映るのは、張大人らしき人の影。


「・・・本当に消さないアルか?」


シャワーの音に流されてしまいそうな、小さな声にジョーは耳をすませた。


「話しあったことアルが・・、まだ納得しきれていないトコロあるね」


右肩で浴びていた湯を移動させて頭のてっぺんから浴びる。
湯に濡れた髪が顔を多い、耳を塞ぐ。


「知ってるよ」


それでも、しっかりと張大人の声はジョーの耳に届いている。


「・・、もう一度、話し合いたいネ」


一文字に結んでいた、ジョーの口の端がゆっくりと上がった。


「大人」


一般家庭の平均サイズよりもずっと広い、日本式の風呂場。
自慢はジェロニモが足を伸ばしてゆったりと肩まで使っても余裕のある湯船。
太もも中央あたりにある銀の取っ手をひねり、シャワーの湯を止める。ジョーをつつむ湯けむりが、ゆったりと移動した。


「何度話し合っても、僕の結論は変わらない。・・・話し合うのは、かまわないけれど、・・・・」


湯張りされた湯船の温度は42度。
腰をかがめて、ゆっくりと左足から湯船に入り、身を沈めた。
湯張りが面倒だと言い出したのは、誰だったかジョーは覚えていない。いつの間にか24時間湯張り状態を維持するための循環機能がつけられていた。


「僕の出した結論を覆すだけの、みんなが賛同できる内容を提示できるなら、・・・あと一度、ミーティングを開いてもかまわない」


一度、邸の温水機器が壊れたことがある。
朝にシャワーを浴びることを日課にしていたフランソワーズの、その日の不機嫌さを思い出す。


「・・・」


ドア向うに立っていた張大人の姿が消えていた。


<みんなに報告がある。>


顎先まで浸ったのち、勢いよく湯に潜り込んだ。










####

瞼が重たく感じたことを頭痛のせいだと思った瞬間に、フランソワーズは横たえていた躯を跳ねさせた。
飛び起きたベッドの上は、一人。


<みんなに報告がある。>


飛び起きた拍子で躯を覆っていた掛け布団が落ちた。晒された空気に自分が何も見につけていない状態であることを再認識する。
重たい瞼は上がりきらず、濁った視界で部屋の様子をうかがった。上半身、肌を晒したままで呆然と閉じられている部屋のドアを見つめた。


<・・・007から、篠原当麻が近日中にここを出ていくとの報告があった。彼の意思を尊重し、許可した。彼にたいしての記憶改竄は話し合ったとおり、おこなわない。日程は未定。篠原さえこへの連絡や、その他のことは007に一任する。007、篠原当麻の警護と行動をサポートし、報告すること。以上>



眼の焦点を合せる感覚。
人差し指を鼻筋に合わせて一本立てて、寄り目を作るような意識をすれば、見えてくる。


<008、了解。彼が出ていくことに異論はないよ。・・・・一応はね>


オープンチャンネルの会話が脳に響く。


<007。ぼっちゃんの後のことは、・・・・任せてくれや>


ドア向うに立つ、人の姿。
耳に届いた、ドアをノックする音と、その動き。


<006アル。・・・了解、ね。>
<004、了解した。>


004の後に、間が空いた。
001,は夜の時間。002と005は地下でメンテナンス中。脳波通信回線がOFF状態でいるはずだ。


<003、>


残るは、フランソワーズの返事。




<・・・フランソワーズ?>


頭の中で声が聞こえる。


「zっ了解・・・」


当たり前のことだ、脳波通信を使っているのだから。
しかし、今のフランソワーズは寝ぼけているせいなのか、慌てているせいなのか、声に出して返事をした。


「口に出したって聞こえねーっつーの」


ドア越しに、誂うような声が響いた。



<こちら、002!003の分も了解!>











===29へと続く。



















2さんメンテルームから脱走?!
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