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動揺を隠せない /ファースト・コンタクト


ただいま。と、一緒の意味で、ジョーは言う。
玄関のドアを開けると同時に。


「フランー・・・・っ」


誰も居ない邸の中に虚しく響く、声。
人の気配が感じられない邸の中で、苦笑い。

「って、呼んでも・・・今はいないんだって」


ーーーうっかり、うっかり。


「・・みんな張々湖飯店なんだから」


ーーーついいつもの癖でさ。



誰もいない邸で、ジョーは自分自身に言い訳をする。


「まいったまいった・・」


呟く声が自分の頭の中に響いていた。
別に誰かに観られていたわけでも、聞かれたわけでもないのに、顔が熱くなる。


「いやー・・」


わざと大きな音を立てて靴を脱いだ。
いつもの定位置におかれている自分用のスリッパに履き替える。
隣には、主人不在のピンクのスリッパが御行儀よく留守番をしているのが見えた。


「まあ、なんていうか。邸に誰もいないなんてさ、久しぶりのことだしね」


ポケットから携帯電話を取り出す。素早く動かした指が並べられた数字を正確に押した。
荷物を投げるようにリビングルームのソファへ置き、ジョーの足は止まることなく進んでいく。
サイボーグ00ナンバーであるがゆえに、設えられている地下へとむかって。

携帯電話で地下室への通路にかけているセキュリティロックを解くために、地下のメインコンピュータへ電話をかけて、コンピュータを遠隔操作で起動させる。
起動したコンピュータに脳波通信で接続し、ロックを解けば、キッチンとひとつづきになっているダイニングルームの一角にある、飾り扉の1つが開く。

邸内にはいくつかの”道”が用意されているが、一番使用度の高い道が、ダイニングルームにある飾りドア。
昔は裏庭へ出られるようにするためのドアだったけれど、改装したときに埋めてしまって今はアンティーク調のドアだけが残った。と、言うことにしてある。
そんな説明を用意されているが、ジョーはまだ一度も口にしたことがないセリフだ。


地下の設備は現在78%ほど完成させているが、まだ細部まできちんと整備されてはいない。
完成させていない部分は現在の00ナンバーの活動に支障を与えるものでないため、そのうちに、そのうちに・・が延びてしまっている状況だった。



「さて、と・・」


張々湖飯店でみんなは夕食をとっている。
今日は張大人の新作メニュー試食会兼夕食だ。
ジョーももちろん参加する予定だったけれど、このチャンスを逃す手はない。

邸で独りになれるチャンスを。






嘘をつくことに抵抗がないわけじゃない。
みんなに、得にフランソワーズに対してチクチクと胸が痛む。


「さっさとやってしまおうかな」


メインコンピュータの隣の部屋、サブルームの一角に設置した009用のデスク。
雑多な部屋から彼専用の改良が加えられたノート型コンピュータを手に取った。

一般人に観られても困るもの・・ではないと思うけれど。

万が一、録画されたりしていたら。
そんな動画が流出してしまい、観られては困る人間に運悪く観られてしまったら。



00ナンバーとして生活をしていく上で、最低限の規則(ルール)を守ることによって今の生活が成り立っていることを忘れてはいけない。

通信経路を知られないようにいくつかのトラップをしかけるための準備に取り掛かった。
メインコンピュータと接続させたノート型コンピュータを使用して、暫く作業に取り掛かる。


『夕食は、バイト先の人たちと先約があって』


と、いうことにしてあるので、今日の夕食はコンビニ惣菜。




作業を終えて立ち上がったジョーは、再び地上の邸宅、リビングルームへと舞い戻り、ソファに置いたカバンの中から2シーズン前に発売されたパソコンを取り出した。
パソコンの下敷きになり、ぺしゃんこになったおにぎりと唐揚げも一緒に救出。

キョロキョロと周りを見回して、リビングルーム内でも見栄えのいい場所を探し始めた。
昼間なら、リビングルームの一面の窓が飾る海と空がいいだろう。
残念ながら、夜の7時を過ぎた今は、カーテンがかけられていない黒い窓にピントのずれたリビングルームとジョーをうつしているだけだ。

いつも座っているソファの位置について、後ろを振り返ってみる。
ソファの後ろには高級感のある飾り棚と本棚が壁にそって置かれ、観葉植物が並ぶ。
その先に誰が使うのか、疑問に思うものが一つ目に飛び込んできた。

美大生がデッサンに使うような、アムールの半身像だ。
男性像であることが一目でわかるシンボルが気に入らない。


「まあ、距離があるし・・・あんなところまでは映らないから大丈夫だね」


いつから飾られているのか、誰が買ってきたのか、ジョーは知らない。
どうせならミロ島のヴィーナスの半身像だったらよかったのに、なんて思ったことは、家族(仲間)の誰にも知られたくない青少年の小さな囁き。

視線をガラス作りのローテーブルに戻して、パソコンを立ち上げる。
立ち上げを待っている間に2階の自室へと戻り、ウェブカメラを手に戻ってきた。
カメラをセットして、地下室のメインコンピュータがホストとなっているネットワークに接続。

ウェブカメラの位置をパソコンウィンドウを見ながら設定。
テーブルが低いので、心持ちカメラのアングルが下からジョーを見上げる角度になってしまう。
ちょっと印象が悪いような気がしたので、ソファから降りて、コットン生地のカーペットの上に腰を下ろした。
後ろの背景が皮のソファ一色に染まる。


「・・・んー・・・これはこれで、なんだか味気ない」


カメラをあっちに向けて、こっちに向けて、ベストな位置を探しているときだった。
インターネット電話サービスからの、コール音が鳴った。


「うわっ・・」


パソコンの音量がMAXだったことに気づいていなかったジョーは、突然のコール音に、ビクっと躯を跳ねさせた。
とにかく、手に持っていたカメラをもう一度ローテーブルに置く。
自分の姿が映っていることだけを確認して、コール音に応答するためにカーソルを合わせた。




『allow』


ブラウザの赤ボタンが緑に点滅して通話中、と表記された。


「あ、アロー・・」


脳内の言語回路をフランス語に切り替える。


『ジョー・・だね?はじめまして』
「h・・あ、はじめまして、ジャン・・・さん」


手に汗握る、ファースト・コンタクト。


『ジャンでいいよ、ジョー。はじめまして、というのも変かな?君とはメール友達、なんだから」


フランソワーズよりも濃い髪色。
彼女の空色の瞳よりも少しグレーがかった、落ち着いた色合いの瞳。
二重の感じが彼女にそっくりだ。
顎のラインがよく似ている。
微笑みを象る唇の感じも、フランソワーズを思い出させた。


『嬉しいよ、・・ジョーと話しができて。・・ありがとう』
「いえ・・」


画面に映る、ジャン・アルヌールはフランソワーズの兄だ。


『感謝しているよ、とても心から感謝している。フランソワーズの恋人がジョーであることに感謝しているよ』


現在フランスで妻のエヴァと娘のフランシーヌと3人で暮らしている。


「え”?・・・・こ・・・ん?こ、今、なんて・・え?」

エヴァがフランシーヌを身ごもったとき、半ば家出をするような形でフランソワーズはギルモア博士の元へと戻ってきた。


『声が聞こえづらいかい?・・・フランソワーズの恋人が、ジョー、君だから嬉しく思っているんだ』


以来、フランソワーズは兄との間に距離を取っていた。


「こっ恋人おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ?!」
『うわっ・・・・・耳がっ」


ジャンはコードレスイヤホンをつけていたらしく、ジョーの絶叫で大きく揺れた鼓膜に飛び上がった。


「こ、こ、い・・・b、ト。ボクがフランの・・・・・」



思考回路はショート寸前。

そんなフレーズを実体験することになったジョーは、ジャンに(フランソワーズとの清く正しい間柄であることを)報告しないといけない!という天使のお小言と、自分がジャンとコンタクトを取っていることはフランソワーズも誰も知らないのだから、このまま”恋人”気分を味わっておけ、という悪魔の囁きの板挟み。






ーーーあれ?・・・


海と時間を超えた島国に住む青年とのインターネット(カメラ付き)電話。
異国の青年は、ウィンドウの中で沸騰したポットように茹だった赤い顔で明らかに動揺していた。


「ジョー、どうかしたかい?」


初めて連絡をもらってから、何度もメールでやりとりをした相手である。
送られてくるメールの内容文から、妹であるフランソワーズへの愛情を感じていた。
1人の男性として、愛していることが読みとれるメール内容に兄であるジャンが心おだやかではなかった時期もあったが、それはほんの数日のことだ。

ジャンは何度もメールを読み返した。
ジョーと重ねるメールのやり取りの中から感じる妹への深い愛情に感謝せずにはいられない。
同時に、フランソワーズはもうジャン・アルヌールの”妹”、だけでは表現できないのだと知った。
サイボーグ003ではなく、ジョーの恋人である、フランソワーズ。



1人の女性としての幸せを手に入れることができたのだ。



「そ、その、あの、ええっとで、すね。なんといいますか、・・は、い・・・う”ーん・と、・・」


・・・と、思っていた。



動揺に揺れて焦点の合わない、アンバーカラーの瞳は何をいわんとしているのか。
あわあわと震える唇は、何を言っているのか聞き取れない。
想像以上に幼い印象を与える青年だったけれど。



デスクの上のパソコンから視線を外した、ジャンの視線が捉えたのは3つ折りになったフォトブック型の写真立てだ。

左端の1枚は妻と娘と3人で最近撮った写真。
真ん中の1枚は、妹を妊娠中だった母と父、幼い頃の自分の4人が写った写真。
右端の、最後の一枚は妻が撮った、兄妹の写真。

自分の傍で笑っている、妹の写真。


ーーー今は、・・・ジョー、・・・君の傍で、フランソワーズはどんな風に笑っているのだろうか。


『ところで、・・フランソワーズは元気にしているのかな?』
「はっ・・はい!とっても、げ、元気ですよ!!」


ほんの、30分ほどの会話だったけれど、フランソワーズのための大きな一歩を踏み出したのだと、ジョーは興奮していた。








end.





*・・月に代わっておしおきよ!・・が20年ぶりにアニメ化するってことで(笑)
一部引用いたしました。

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コメント
こんにちわ!また、のぞきにきちゃいました。
もー、この手の青年ジョー君大好きです。他のことでは冷静なくせに、以前はけっこーなワルで飲む、打つ、買う、吸うは当たり前だったと思われるのに、フランちゃん相手のこの純情さはなんだー!(笑)環境って人を変えるんだなあ。お兄ちゃんも、なんだこいつって思ってますよね。
そういえば、アメコミで009がコミックになるみたいですが、あのジョーはちょっと私的にはありえへん!ジョーって私の中ではあくまでもやさしくて、でも強くて、憂いを秘めた茶色の瞳が女心をくすぐって、恥ずかしがりやですぐに赤くなってetc...あの全身タイツ、鉄パンツのジョーはちょっと無理かも。第2段のチケット発売ですよね。本当に、どんだけ枚数買ったら終わるんだろう。でも、きっとどれかまた買っちゃうんだろうな。
まあ、こんなに009ファンが盛り上がるのであれば、いいかもですけど。そういえば、フランちゃんの3Dマウスパッド、すごいですね。しかも売り切れなんて...。うれしいけど、あんなの使うとこジョー君に見られたら腕へし折られそうな気がする。??
2012/07/20 Fri| URL | ogityarina [ edit ]
こんにちは。
いらっしゃいませv
いざ恋愛になるとカラッキシな根っこは純朴な青年ジョーさんですが、手をまわせるところへはさっさと・・(笑)な、009使用のジョーです(笑)
お兄ちゃん、ちょっと不思議そうに眺めていたかもしれませんね。
メールで受けていた印象と多少の・・ズレは感じたかもです(笑)

アメコミ化しますねー。
私はジョーよりもお嬢さんにガックシです。
アメコミ女性は”可愛い”の存在はなく女性=セクシーですから・・戦々恐々の思いでみています。
男性陣の心配よりもお嬢さんの心配・・・。
3Dマウスパッドなお嬢さん以上の衝撃を受けているのであります(苦笑)

第二弾のチケットが発売になりますね。
あと3ヶ月ほどなので、第三弾もあるかもしれない?と眺めています。
遠くから・・・。

009が盛り上がるのは私もとっても嬉しいですv
最近サイトを持っていた方がぼちぼち再熱・・なんて文字をチラホラ見かけましてv
そのまま復活いかがですか〜?と心の中で声かけを・・(笑)しております。


3Dマウスパッド。
・・ジョーがギルモア財団の資産を使って権利ごとマルっと買取りそう・・。
市販された分も、彼が全て回収とか・・・(ΦωΦ)フフフ…
REのギルモア財団はなんかすごいっていう噂なので、いかがでしょう?
あ、でも・・記憶がなくなっている間の販売だとどうしようもないですねorz

コメントをありがとうございましたv
2012/07/22 Sun| URL | ACHIKO [ edit ]
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