RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Little by Little・29
(29)









<・・・フランソワーズ?>


頭の中で声が聞こえる。


「zっ了解っ・・・!」


今のフランソワーズは寝ぼけているせいか、慌てているせいなのか、声をかけてきた主がジョーだったためか。
聞こえるはずのない、声に出して返事をしてしまった。
答えなければ!という意識が強く出てしまったのんか、予想以上に自身でも驚くほどの大きな声を出してしまう。


「口に出したって聞こえねーっつーの。通信だぜ!通信!」


ドア越しに、耳のスイッチを入れずともしっかりと聞こえた、声。
さらに、フランソワーズは驚いた。




<こちら、002!003の分も了解!>


突然の声(音声)に潜っていた湯船のお湯を思いっきり飲み込んだ。ジョーは湯船にたっぷりといれた温泉の素に後悔する。

ピュンマは「うわあ!」と突然大声を出したので、隣にいた海がその声に「ぎゃあ!」と悲鳴を上げた。
同時に、ピュンマと海の2人とリビングルームへと移動して一緒に居たアルベルトが、淹れたてのコーヒーを吹き出し、着ていた綿パンを汚してしまった。
慌ててキッチンへと駆け込んで布巾を手に戻り、着ていた綿のパンツに飛んでしまっていた珈琲のシミに、苛ついた脳波通信を飛ばした。


<おいっ・・・お前・・っ>


グレートは座っていたデスクチェアごと勢い良く倒れ、当麻を驚かせて苦笑い。


<いやあ、参った・・・驚いたぞお。ジェット、大丈夫なのか?・・出てきちまって。ジョーからの報告はなかったんだが・・何かい?吾輩うっかり聞き逃しちまったのかい?>
<ジョーは知らねーよ、だって地下にはいなかったんだからな>


張大人は地下室にあるメンテナンスルームでジェットに会っていた。
通信で受け取る反応をギルモア博士に教えながらニンマリと両者、顔を見合わせて笑っている。そんな2人の居る隣の部屋で、ジェロニモが全身の内部スキャニングを受けていた。


「ジェッ・・と・・?」


残念ながら、イワンはまだ夜の時間のため眠っている。


<ジェッ・・と・・?>


とりあえず、何も着ていないままでいるわけにもいかず、バスルームのドアから覗いていたバスローブを掴み、慌てて身につけたフランソワーズは、恐る恐る自室のドアを開けた。
眼のスイッチを入れて視た相手だったが、信じられないようだ。


「オレ以外に002を名乗る男がいるのか?フランソワーズ」


フランソワーズが開けたドアは、ほんのちょっぴり。細く開けたドアの隙間からジェットを見上げた。
不審者を確かめるようなドアの開け方をしたフランソワーズに、ジェットは自慢の鼻を鳴らすように笑う。


「・・どうしたの?」
「どうしたのって、そっちこそ・・・」


目の前にいるのは確かにジェット。
蒼の双眸が映すのは、フランソワーズが初めて出会ったサイボーグ。

サイボーグ002。


「予定では・・まだ、でしょう?」


ジェット・リンク。


「・・・つーか、フランソワーズ、」


視界の端でフランソワーズは自分と同じような視線をジェットへと投げている人物が見えた。
リビングルームのドアから不満そうな顔をした、アルベルトだ。


「なんて格好してんだよ・・」


ゆっくりとドアを押し開き、ジェットと正面から向きあった。


「ごめんなさい、まだ・・その、・・支度できてなかったの」


シャーベットカラーの、薄いストライプ柄がプリントされたモコモコとしたバスローブ姿で部屋から現れたフランソワーズ。
夏用のためか、太ももが露になったミニ丈なのが、いただけない。
触り心地良さそうな、バスローブの記事もさらに余計な演出をしていることが、いただけない。


「・・・張大人は?・・・お腹が空いたの?」


さらに、部屋を尋ねた理由が「腹が減った」ことが理由と思われてしまっている部分が、いただけない。


「違う、腹は減ってない」


釣り気味の目を見開いてジェットは大げさに顔を斜め上へと反らした。


ーーー人の女って肩書きが追加されただけで前よりも・・・なんだかなあ・・・くそっ。


ジェットは瞬きをするたびに現れるフランソワーズの残像に苦く奥歯を噛み締める。


「・・・腹はいーんだ、腹は、あー・・それよりも・・」


急に声量をなくしたジェットは、言葉を噛み潰しながら特徴のある髪をガシガシと掻いた。


「随分早いじゃないか」


階段を上がってくる足音にジェットは救われる。
いつもの彼のペースよりも早い足運びにもかかわらず、足音は重力1.5倍という感じだ。


「よ。元気だったか?」
「聞いていないぞ」


階段を登りきったアルベルトはフランソワーズをちらっと投げて、そのあとは視線をジェットへと固定した。


「・・・はしたないから、部屋に入れ」


眉間に寄せた深い皺が、年頃の娘を持つ父親のとる態度と酷似していた。


「・・ごめんなさい、すぐに着替えるわ」


一目瞭然でフランソワーズはアルベルトの機嫌が悪いことがわかる。
瞳がアルベルトの綿パンについた珈琲らしき飛沫風のシミのせいだと、機嫌の悪い原因(の一つ)を見つけるが、何も口に出さず逃げるようにフランソワーズは部屋のドアを閉めて戻った。


「・・何もしなかっただろうな?」


フランソワーズの部屋のドアが閉まる音と同時に、アルベルトはジェットの隣に立ち、聞いてみた。


「何ってなんだよ?」
「メンテ後だからな、・・・ちゃんと”機能”しているのか?お前の頭」


ニヤリと左口角をあげて笑ったアルベルトに、ジェットも似たような笑みで返し、拳で軽くアルベルトの肩を小突く。


「人のモンには手を出さねーよ、そこまで飢えてないぜ。なあ!ジョーっ!!」


邸中に響きわたるほどの大声で、彼の名前を呼んだ。
呼ばれたジョーは、濡れぞぼった髪を庇うように、バスタオルを首にかけている。
Tシャツに短パンの普段以上にラフな姿だ。


「お前も寝起きだったのか?」


おせっかいなピュンマがリビングルームから出てくると、彼の首にかかっているバスタオルを奪うように取り、乱暴に彼の髪をワシャワシャと吹き始めた。
力任せにピュンマに髪を拭かれているジョーの頭が左右前後にされるがままに揺らしている。


「・・・・ああ、」


海がリビングルームの入り口から体半分、玄関前の広間の方へ出しいた。
彼はピュンマとジョーのやり取りと、チラチラと階上のジェットとアルベルトに視線を投げながら見守っている。


「びしょ濡れじゃねーかよ?そんな格好で博士のところ(地下)へなんて行けないぜ?」
「わかっている、よ」


ジョーの声は不機嫌だったが、驚きの方が強く出ているらしく、階上にいるジェットを凝視していた。


「ジョー、オレちょっくら出かけるから、今ついでだから言っとくぜ」


ジェットの声は、00メンバーの中で誰よりも大きい。よく通る声だ。反して、ジョーはどちらかと言えば、口元で囁くように話す。
ジョーは静かで耳心地良い音量を心得ていた。
階上にいる人間では聞き取れないと思われる音量でも、彼等だからこそ会話が成り立っていることに、海は不思議そうに2人のやりとりを眺めている。


「そこで、何をしているんだい?」


さらにピュンマがワシャワシャとおせっかいにもジョーの髪をタオルドライしてあげているから、ジョーの声はジェットよりも近い位置にいる海でも聞き取りにくいものであるにもかかわらず。


「なにって・・」


ジョーは素直にジェットがなぜフランソワーズの部屋の前にいるのかを尋ねた。


「・・・・ちいっとばかし、フランソワーズに用があってよ、あ、それに」


お前もな、と、付け足されたアルベルトは重い溜息をついてみせた。










***


「お前もな、」


部屋の中で耳を済ませて外の会話を聞いていた。
手早く着替えを済ませ、バスルーム内の鏡を使い髪に櫛をとおしながら、いつもの場所にあるはずのカチューシャが見当たらないことに気づく。


「オレもか?」
「おおよ、ちょっと付き合ってくれ。・・ってことで、ジョー、・・3人で出るからな。行き先は、・・・そうだな、・・一番近くの繁華街くらいか」


どこに置いてしまったのか。
フランソワーズはバスルーム内をひと通り見て、部屋に戻る。


「勝手に人の予定を決めるな」


昨日、お風呂に入る前にはずして。
いつもの場所に、置いたはずなのに?と、見つからないカチューシャに焦る。


「どーせ、新聞呼んで、テレビ見て、珈琲飲んで、散歩して、本読んで、飯食って、ちょっとばかし”仕事”して寝るだけだろよ?」


部屋前には以前として、ジェットとアルベルトが居る。
目を使わなくても、声の音量でわかる。


「・・・大きなお世話だ」
「昼、外で食べようぜ」


ベッドのシーツをはいだ。


「お前とか?」
「おうよ、そんで、フランソワーズもな」
「ジェット。出かけるのはかまわない。博士が了承しているのなら、だけど?」


ジョーの声が2人に比べて遠い。
階下にいるまま、動いていないことがわかる。


「してるしてる、博士がしているから、オレがここにいるんだよ」
「終わったのか?」


ベッドリネン類をすべてフローリングの床に落とした。


「おーよ、説明なんてオレはできねーから、博士に聞いてくれ、な?」
「・・・博士からは、何も連絡をもらっていないよ、僕は」


むき出しになった、マットレス。


「そりゃ、お前が居なかったからだろー、”昨日”から全然来ないからじゃねーか、オレは日付が変わったころからしっかり起きてたぞ。どこほっつき歩いてたんだ?」
「・・・s、」
「ジョーは部屋に戻る体力がなかったらしくてリビングで寝ていんだ。ジョー、今度からはちゃんと自分の部屋で寝ろ、いいな?」


ベッドサイドのテーブルに置いていないことは、確実だ。
何も置いていないのだから。


「あ、ああ。・・・それで、いつまでそこにいるんだい?」
「フランソワーズ待ちなんだよっ」
「・・そうじゃなくて009が怖いんだろ?」


簡素な室内に、赤いカチューシャはよく目立つ。


「そんなわけあるかよっ」
「じゃあ、降りてきてよ・・・今は002からの報告を望んでいるのだけど?」


半分、開けたままの状態になっているクローゼットへと目線を移動させた。


「”彼女”を連れ出すんだから、それは至極当然のことだ」
「なんでだよっ」


そんなところに、しまった記憶などない。


「人の女に手を出さないってことだからだろ?筋を通せ、ジェット」
「筋って・・・フランソワーズだぜ?・・仲間じゃんかよ」


カチューシャに触れた、最後の記憶はやっぱりバスルーム。
昨日、半身浴する前に外したことが最後だ。


「”仲間”の前に、ってことだ。これからは”今まで”とは違うだろ、鈍いヤツだな」


早足にもう一度バスルームへと戻る。
バスタブに溜まったままの温いお湯が、天井の照明を映していた。


「ふざけんなっオレが鈍いわけないだろっ!ここまでくるのにどれだけっどーれーだーけーっやきもきされられて振り回されてたかっ!やっとこさでっかい荷物を下ろすことができてほっとしてるんだぜ?」


よく見れば、バスタブ周りに置いてあった色々な、アメニティ類が倒れていたり、荒れていた。


「・・ほっとしている、か?」


リアルに、昨夜(今朝)のことをフランソワーズに思い出させた。


「一応な・・・これで、オレも、お前も・・・歩き出せるんだぜ」
「妙な言い方だな」
「そうか?・・・そうだろ?・・・フランソワーズの傍にいる理由がなくなった、だろ?」
「理由・・なんてあったか?」
「・・・ジョー、オレは行くぜ」


バスルームの中で立ち尽くすフランソワーズの耳に流れる会話は、まるでかけっぱなしにしているカーラジオのようだ。


「ジェロニモとは現地で合流つーことで、話しはついた。それまでは、自由気ままに過ごしたい。だから」


流れてくる内容は頭に入ってこないけれど、会話の中の単語は無意識に拾っていた。


「今日、オレはココから出ていくぜ」












背後でカシャンっ!と鳴った金属音に、階下にいるジョーを見下ろしていたジェットとアルベルトの2人が振り返る。
少しも降りて来る様子ない2人に、ジョーが自ら階段をあがろうとしたときだった。


「・・今、なんか聞こえたよな?」
「・・・フランソワーズ・・・か?」


ジェットと顔を合わせたアルベルトが、フランソワーズの部屋のドアをノックした。
階段を駆け上がってくるジョーの足音と絡む。


「どうした?」
「いや・・今なんか・・音が・・さ」
「?」


ジョーの耳には届いていなかったらしい。
2人に駆け寄ったジョーは、珍しく前髪をあげた状態でフランソワーズの部屋のドアをまっすぐに見つめた。


「フランソワーズ?」


2回。


「フランソワーズ・・・?」


4回。


6回。



ノックの回数が無駄に増えるだけで、フランソワーズからの応答がない。
ジェットから向けられた視線に無言で答え、アルベルトは立っていた場所をジョーへと譲った。

ジョーがフランソワーズの部屋のドア前に立つ。

彼は声をかけることなく、そっと部屋のドアノブを回した。ドアノブはいつものようにはまわらず、小さな抵抗をみせる。
カチっと音を立てて、ジョーの手から逃げるように元の位置へと戻った。
わかっていたことだけれど、掌に感じた感触がフランソワーズの本来の気持ちをあらわしているようにみえた。


今の状況かでは、ジェットにたいして。
本当に、そうだろうか・・・。






フランソワーズは、ジェットだけに、・・・だろうか。






「鍵・・が、かかっているな」


確認するように、アルベルトが口に出した。
邸に住んでいるのは、フランソワーズ以外全員が男である。
まかり間違って問題になるような事は考えられなかったが、一応形だけでも、と「必要ないわ」というフランソワーズの意見は隣に置いて設えられたロック。
実際に、昨夜ジョーがフランソワーズの部屋に訪れたときにも部屋に鍵はかけられていなかった。


しかし、今は違う。


「なんでだ?」


わけがわからない、と頭に大きなクエッションマークを掲げたジェット。


「・・・ジェットを行かせないために、かな?」


アルベルトは、珍しく目を見開いて驚いた。
まさか、と信じられないようだ。
ジェットは小さなため息をつき、自慢の鼻先をコリコリと掻いた。


「おーい、フランソワーズ!ちゃんと話してやるからよっ!オレ(&アルベルト)と昼飯食いに行かないか?おごってやるから!」


ドン!と、乱暴にドアを叩いたジェットに、ジョーが抗議の視線をぶつけた。


「・・・ワリイ」


ジョーよりもアルベルトの視線の方が痛かった。
フェミニストな彼はどんな状況下でも女性(フランソワーズ)にたいしては紳士的である。イギリスきってのフェミニストだと言うグレートも見習うほどにだ。


「・・鍵、くらいじゃ・・意味がないことはわかっているとは思うけど・・・」
「・・ジョー・・」
「そりゃ当然・・わかってるだろうよ」


女性の部屋前で団子状態になっている様を、階下から眺めているピュンマと海。
会話は海には聞こえていないが、ピュンマはしっかり聞こえている。


「一難去って・・また一難ってこと?」
「ピュンマ、ごめん・・・・いったいなにが去ったっていうの?」


サイボーグ戦士たちの、今までの詳細な(関係)経緯を何も知らない海でも、”用事”があって出ていたはずのジェットが突然どこからか現れて、階上でフランソワーズの部屋の前に何やら困っている様子の大の男3人を見あげれば雰囲気だけでわかる。


「本当だね~・・・問題ばっかが積まれてばかりで・・・」


濡れたタオルを手に、ピュンマはため息をついた。


「僕らってさ、・・・まるでご長寿ドラマみたく次から次へと問題が出てきてさ、・・ほんと、絵にかいたようなドラマティックな人生だよね・・」
「脚本家は・・ハシダ先生かな・・」
「5人娘じゃなくって、・・8人の息子と1人娘で放送中だよ、今、そこでまた、何か始まろうとしてる」


ピュンマは力なく指さしたところは、ゲストルームのドアがある方角だった。












===30へ続く





*ちゃららちゃらららら~らら~♪(テーマソング・・・)
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。