RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
ジョーに珈琲をいれる毎日を・・・
*悲しいお別れのお話が苦手な方はご遠慮ください。(93がどうこうなるお話ではありません。)






不意に、フランソワーズがジョーに尋ねた。



「流れてゆく季節に時間に、時代に、ね?」
「・・・?」
「・・・取り残されていく感覚は、もしかして加速装置を使っていたアナタの気持ちに少しだけ近いかしら?」
「取り残される。とは、・・・少し違うかな」


どちらかと言えば・・・。と、心のなかで呟いたジョーは、ふと奥歯にある”スイッチ”に舌先で触れる。
もうどのくらい長い間、このスイッチを押していないだろう。
触れた舌先がそれを”押して”しまわないように、緊張していることに、ふと笑みがこぼれた。


「そう、違うの…」


彼女は少し残念そうに、視線をジョーから外す。


「どうしたのさ?急に」
「・・・同じなら、いっそのこと、加速した時間の中へって思ったの」
「どうして?」
「・・・・・・・・・・・・・・さあ、どうしてかしら?」
「変なことを、言うんだね?」





僕たちが戦っていた時から。
僕たちが戦い終わった時まで。


「変、かしら?」


僕たちが始めた新しい生活から。



「・・・・生きていくことが、辛い?」


今、まで。



「辛い、とは、思わないわ」
「じゃあ、何?」
「寂しい・・から・・」


ダイニングルームの、カウンターテーブル越しに会話していたフランソワーズは、


「寂しい・・か・・・・」
「…ええ」


ジョーは置かれたマグの中にある、いつの時代も変わらない苦みある飲み物を、ふうっと息を吹きかけてよけた湯気へと唇をよせて、一口飲んだ。


「寂しいわ」


その様子をじっと見ていたフランソワーズは甘えるようにジョーの肩にカチューシャで飾った頭を預けた。


「・・・・そうだね。もう誰も僕らの存在(こと)なんて・・さ、しょうがないよ」


ジョーは腕を彼女の背後へとまわしてフランソワーズの肩を抱いた。


「・・・・・素敵なことだわ、とっても素敵なことよ、それは・・本当に素敵なことであるのよ。だって・・ね?私たちは、・・・だって」
「うん」



この世からBGの存在は抹消された・・・とは断言できない。
けれど、戦いのない日々が淡々と積み重なっていく毎日。



「ごめんなさい、ジョー・・変なことを言って」
「・・いや、・・・・変じゃないよ」





戦っている間、誰もが僕たちの力を・・・。
戦い終わった後、誰もが僕たちの力を・・・。


「キミがいれてくれた珈琲があれば,僕は、これからの毎日を・・・寂しいなんて思わないで過ごせるから・・・、僕のためだけに、珈琲をいれて欲しい、・・・キミの寂しさも含めて、僕が飲み込んでしまうから」
「・・・・ジョーがもっともっと辛くなるわ」
「ならないよ・・・、キミの寂しさを受け入れるんだ、僕にとってはそれは一つの幸せな形だよ」


フランソワーズは頭をジョーの肩に頭を預けた状態で、視線だけを上げた。
深みある珈琲の香りに混じってジョーの香りがフランソワーズの鼻孔に送られる。
見つめる青には、彼の凛々しくも少し哀しげな頬が映っていた。


「・・・・あなたに毎日珈琲をいれるわ。明日も、明後日も。・・・・お願いしていいのね?」
「・・・・・うん。・・全部、僕にちょうだい」


フランソワーズは瞳を閉じた。
深く。

深く。

深く、自分がいれた珈琲の香りと、ジョーの香りを胸にゆっくりと吸い込んだ。

彼が珈琲の熱さをなだめるようにすする音をきく。

ちびちびと、半分ほど飲んだ珈琲をテーブルに置き、ジョーは肩に乗せられているフランソワーズの頭に、頬をよせた。



「フラン、・・・ギルモア博士の、・・前で、寂しいなんて言ったら、駄目だよ?・・・そんなことを言ったら、博士はゆっくりお休みになれないんだからさ」
「ええ・・わかってるわ」
「・・・・・約束したんだろ?」
「ええ、約束したわ。・・・泣きませんって・・、笑ってお見送りさせてくださいって・・・」
「博士もフランソワーズの笑った顔をずっとみていたいって、仰ってたじゃないか」
「そうね・・」


ジョーはフランソワーズの頭によせていた頬を話して、今度は唇を押し当てた。


「フランソワーズ、・・・でも、今はいいよ。博士には内緒にしておいてあげるから・・泣いてもいいよ」
「・・・駄目よ、ジョー・・・・博士にきっとバレてしまうわ、だって・・」
「そういうなら、こうやってキミの肩を抱いていることも、見られてるってこと?」
「ふふふ・・・、そうね、・・びっくりなさっていらっしゃるわ、きっと・・」


ギルモア博士の書斎や私室から、交流のあったと思われる人物全員に博士の死を知らせたが、誰1人として、ギルモア博士の葬儀に関してや、その死についてのお悔やみの言葉1つとして、返ってこなかった。










「ジョー、私たちはどうして戦っていたのかしら、ね・・・」
「博士のため、だった・・・養父(とう)さんのために、がんばったんだよ」





end.












*これからの2人が2人で幸せでありますように・・・。
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。