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最後のsand bore
初夏から初秋にかけてが旬の魚をたくさんいただいた。
…いったい誰が調理するんだろう。
いや、そこはナンバー006の中華の達人である、張大人が、だろう。と、いう声がどこからか聞こえてきそうだけれど、残念ながら006は今、ここにはいない。

今、コズミ博士の家には「留守番」役を引き受けた、僕と彼女だけなのだから。

「ジョー・・・」

狭い台所のキッチンテーブルを占拠する、一種類しかない大量の魚たちを目の前にしてうろたえる、彼女。

「・・・2人じゃ無理だよね」

ほほえむことで、彼女の困惑を受け止めた、僕。

「研究所へ持っていってくれる?」
「ここ(コズミ邸)を空けるわけにはいかないよ、・・・博士から頼まれたんだから」
「もちろんよ。だから、あなたが届けてくれている間は私が留守を預かるわ」
「キミをひとりきりになんて、僕ができるわけないだろ?」

キュッと、彼女の可愛らしい唇に力が入った。

上目遣いに僕をみる。


「独りでも平気よ、003だもの」

3歩半。

「やだよ、・・・003を独りにするなんて、リーダーである僕が、僕を、許さない」

僕と彼女が離れていた距離を縮めて。

「甘やかさないで」

彼女を背中から覆いかぶさるように、抱きしめた。

「甘えてよ」

左耳に、やさしく願う。

「じゃあ、このお魚を、ね。美味しく料理できるのかしら?全部よ?」

くすぐったそうに、肩をすくめた彼女から甘い香り・・・。に、混ざる魚臭さに僕の鼻柱に皺がよる。

「ん~・・・天ぷらくらいしか、・・思いつかないんだけど」
「天ぷら?美味しそうね!」
「まあ・・・キスの天ぷらは有名だし、僕でもなんとか作れると思うよ」
「キス?」
「そう、キス」
「キス・・・って言うの?」
「うん、この魚は日本名で”キス”って言うんだよ」


フランソワーズは、僕の腕の中でくるっと躯を反転させた。
零れ落ちそうなほどに大きな空色の瞳に映り込む僕を、僕が見つめる。


「この、キス?・・・から?」

縁取られたレースのような長いまつげに、空色の中にいた僕が消えた。
きゅっと背伸びした彼女が近づいて、チュッと、・・・音が鳴ったから。

「・・・このキス、から名前がきたかどうかは知らないな、あ、でも」

今度は、僕が。


空色の中にうつる僕から視線をはずした。・・・次に柔らかく、甘い、・・・朝ごはんにフランソワーズが食べたメロンパンを思い出す、味を楽しんだ。

「・・・漢字ではね、魚という漢字の隣に「喜」ぶと書いて、”鱚”(キス)と読むんだ」
「喜ぶ?」
「うん、・・・キミとキスできること・・・喜んでますよ、僕は」

チュッと、音を立てて、彼女の頬にひとつ。

「ジョー、お願いしていい?・・・お料理を、その・・」

チュッ、チュッと・・おでこと、丸く程よく整った鼻先に。

「キスの?」
「・・・キスの、を、・・・」
「いっぱい?」
「・・・・・」
「・・・どこがいい?」
「・・・・・」
「フランソワーズが言わないなら・・・そうだなあ、美味しそうな、ここをもう一度」



僕は、ゆっくりと、長く、彼女の唇に、自分の唇を重ねた。



「・・・ジョー、」
「キスだけじゃ足りないよね。食いしん坊だから、・・キミは」
「・・・」
「美味しくなるように、僕の腕を、さ。・・信じて、・・・部屋、戻ろうか?」
「でも、・・おさk・・・」
「黙って・・・集中して。僕をみて、僕の」


あまりにもフランソワーズが”僕の腕”に酔いしれて美味しそうにいっぱい、愉しんでくれたから、キッチンのテーブルを占拠したまま、放っておかれた大量の鱚がその後、・・・想像を絶する物体と化してしまった。














その後、「キスのおはか」という文字を割り箸に書かされた僕は、コズミ博士の庭のすみっこに作られた砂山が誕生した日以来、コズミ邸ではキスさせてもらえていない。



end.




http://www.jf-net.ne.jp/jf-net/syun/sakana/kisu/kisu_top.html
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