RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Day by Day・16
(16)

霧雨のような雨が降り出した。
春が近づくにつれて、雨が多くなる。
雨が降った後は空気が きりり と冷えたあと、やんわり と空気が軽くなる。
明日はまた暖かくなるだろう。


ジョーとさくらがレストランで遅い昼食を取った後、店を出る。
いつの間にか振り出した雨に、ジョーは空を見上げた。
薄く膜を張る、鈍く光を失ったプラチナのような雲から降り注ぐ雨に、フランソワーズの顔が浮かぶ。一瞬、彼女が泣いているように思えた。だからジョーは、こころの中にいる彼女を優しく抱きしめた。


ーーー  こ こ に い る よ。 


     そ ば に い る か ら。
   
    
     一 緒 に 行 こ う。 明 日 へ。
    

     キ ミ の い る 明 日 へ。
    
     
     だ い じ ょ う ぶ だ よ。


ーーーーキミは強い女性(ひと)。






ぼうっと空を眺めるジョーにさくらは思わず見とれてしまった。
彼は優しく笑っている。

声をかけるのを躊躇わせるほどに、柔らかく、優しく、触れたら溶けてしまいそうに。

「・・・・j・・」

ごくり と唾液を飲み込んで、ジョーに声をかけようとしたとき、携帯が鳴った。
ジョーの携帯だ。

彼はそのまま電話を取る。
さくらに目線で「ごめん」と言ったことがわかる。
彼女は小さく首を振った。

何か、とても貴重な間を、チャンスを逃してしまったかのような後悔の念がさくらの胸に広がった。

「もしもし?」
『よ!オレだよ』
「ああ、どうした?」
『?今誰かと一緒にいるのか?』
「そうだよ」

ジョーはちらりとさくらを見た。
その視線を受けて不思議そうに首を傾げたさくら。

「春だね・・・そろそろ花見の時期かな?」
『一緒にいるのは”さくら”かよぉ?』
「そう」
『ったく!何やってんだよぉ、こんな時に!』
「・・・・こんな時だからだ」

ジェットの後ろから何事かを言うアルベルトの声が聞こえた。
電話に耳を覆いたくなるような、ノイズが走ると、そのアルベルトが電話口に出た。

『ジョー、訊け』
「うん」
『アラン・モルディエは1ヶ月前からヴァケーションで日本を来ている。あの日のスピーチは世話になった関係者への感謝の意を現すためのもので、初めからフランソワーズを追ったものではない』
「そうか」
『偶然だ』
「わかった」
『彼は自分の公演が終わってからも1週間ほど日本に滞在する予定だ。次の公演先のスポンサーも同じ日本らしいから、そのためだ。気になることがある』
「?」
『やつはプロに頼んで、あるチケットの購入者を捜している』
「・・・僕だね?」
『そうだな』
「・・・今から」
『いや、オレとジェットが戻る。やつはこれから4日間は取材や挨拶回りで日本中を飛び回る。003のことはそう、動けないだろう』
「うん」
『そっちをなんとかしろ。当分電話も、訪問も控えさせるんだ、いいな?』
「・・・・わかった」
『じゃあな』

短い電話のやり取りを、聴いてはいけないと思いながらも、耳を傾けていたさくら。
相手が何を言っているのかわからないが、ジョーは電話でも無口なことがわかり、以前、自分が交わした会話の方がよっぽど彼と親しい間柄であることの照明になった、と思った。

「ごめん」
「ううん!・・・お仕事?」
「・・・・」
「ギルモア邸の人?」
「・・・・そう」
「ジョー、戻らないといけないの?」
「・・・・少し早く帰らないといけないかな」
「じゃあ、ドライブは・・・」
「近場でいい?」
「?!」

「2,3時間くらいなら大丈夫だから」
「じゃあ!行きたいところがあるの!」


ジョーの車に乗り込み向かった先は隣町の小さな公園だった。
車を路肩に止めて、さくらの後を追うように歩く。

雨は止んでいた。

「きゃ~~~~~~~~~~!!変わってない!」

町にどこにでもある、ありふれた公園。
真四角の砂場、ブランコ、剥がれたペンキで描かれた像の滑り台に3組の鉄棒。
3つのベンチのとなりに、セメントで作られた無骨な水飲み場。

「ここね!私が公園デビューしたところなの!!
「公園デビュー?」
「そう!小さい頃にここに連れてきてもらって遊んだのよ!近所の人とか、同じ年の子とかに”こんにちは!お友達になりましょ!”って生まれて初めての社交デビューよ!」
「そんなのがあるの?」
「ジョーもしたことあるはずよ!」
「・・・・・そうかな」
「やだ~!すっごく小さくなってる!」
「・・・・」
「あ、小さくなったんじゃなくって、私が大きくなったのよね!」

所々泥濘んだ、水たまりを作った地面も気にせずさくらは、1人で公園を駆け回り、ジョーはベンチの端に座って眺めていた。


帰りの車内でさくらは言った。

「私の本当のお母さんと過ごして以来よ」
「・・・本当の?」
「私の本当のお母さんは、今のお母さんじゃないの。今のお母さんはお父さんの奥さん。私の本当のお母さんは愛人」
「・・・・」
「本当のお母さんと一緒に居たのは4歳までで、今のお母さんとずっと暮らしてきたの・・・本当のお母さんはどこで、何をしているのか知らないわ。訊いたら教えてくれるかなあ?」
「・・・・」
「ここを教えてくれたのは、おじ様。一枚だけもっていた写真を見せたら教えてくれたのよ・・・来る勇気なんかなかったけど。勢いで来ないとこれないと思ったの、ありがとうね!!ジョー・・・今日、ドライブを断られていたら、来なかったと思う・・・一生」
「・・・・」
「あ!勘違いしないでね!!私は今のお母さんも大好きよ!ちょっと子離れできない、変な人だけど、とってもとおおおおおおおおおっても私のことを好きで、いっぱい可愛がってくれてるから!」
「うん、さくらを見ていたら・・・わかるよ」
「・・・え」
「さくらが、とても幸せな家庭で育ったんだって、わかる」
「ほ、ほ、本当に!?」
「うん」
「本当に!!私は、私は幸せに見える?」
「うん、見えるよ」
「・・・・日本に来ることを反対されたんだけど、無理矢理来たの。名乗らなくても、お互いがわからなくても、見せたかったの、どこかの町でどこかの店で、どこかですれ違うかもしれない、私の本当のお母さんに、”私は幸せです!”って」
「うん」
「ジョー、ありがとう」
「うん」
「・・・・ねえ」
「・・・・」
「これ、私の人生のトップシークレット・ベスト3に入るんだからね!」
「・・・そうなんだ」
「そうよ!」
「・・・・」
「だから、ジョーのトップシークレット・ベスト3のうちの一つを教えて!」
「っ?」


「ジョーは誰か好きなの?」



車をコズミ邸前に止めた。
さくらの質問に答えないまま。

「教えてくれないんだ?」
「・・・・」
「・・・それって、私が知ってる人がジョーの好きな人ってことなのかな?」
「ーーーーーい」
「え?・・・ジョー?」
「誰も、いないよ。好きな人はいない」
「?!」
「・・・・うそじゃない?」
「嘘をついても仕方ない」
「いないの?」
「いないよ」
「じゃあ、今から好きになって?」
「?」
「私がジョーの好きな人になりたい」
「・・・・・」
「返事はいらないから!私はそうなると、思ってるわ!!お仕事がんばってね、終わったら連絡ちょうだいね!」

さくらは車から逃げるように飛び降りた。
コズミ邸の門を全速力でくぐり抜け、玄関で靴を脱ぐのももどかしく、階段を駆け上がり部屋に飛び込んだ。



さくらが閉め忘れた助手席のドアを、ジョーは一度車からおりて、閉める。
運転席に戻り、ハンドルを握る。
右手をキィに伸ばし、エンジンをかける。

ジョーの躯に伝わる振動。

アクセルを踏み、ハンドルを切り、来た道を戻る。

ーーー誰も、いないよ。好きな人はいない

好きじゃない。
好きなんて言葉では言い表せない。

だから、好きな人はいない。

好き・・・ではない。

だったら、なんだろう?
この気持ちは、なんと言えばいいのだろう?

好きではない。
好きという気持ちに近い。

とても大切で。
ずっとこの腕の中に閉じこめてしまいたい。
誰にも触れさせずに。
誰にもその存在を知られずに。
自分だけのものにしてしまいたい。

大切すぎて。大切すぎて。大切すぎて。

触れたい。
でも
壊したくない。

抱きしめたい。
でも
傷つけたくない。

矛盾だけが永遠に繰り返すこの気持ちは、好きと言う気持ちなんだろうか?

・・・さくらをみている限り、それはまったく違うものに思う。


好きって・・・・なに?


車を走らせる。
ジョーの瞳はまっすぐに先を見据えている。
彼の瞳に見えないものはない。
ただ走ること。
走り続けること。

後ろから迫り来る闇に追いつかれないように、走り抜かなければならない。

全身の筋肉が痛む。
心臓が絶叫する。
動かない躯。
けれども走り続けないと、闇が来る。

もう走れない。
走れ!

もう走れない。
逃げろ!

「ジョー、大丈夫よ!あなたなら・・・信じてるわ」
「?!」

背後から声が聞こえた。
白い小さな手が、紅い服に包まれた腕に添えられる。

何度も爆風にさらされ泥だらけになった顔で、彼女は言った。
その海よりも深く、天よりも高い瞳を強く、強く、光らせて。


「大丈夫よ、落ち着いて!!あなたなら出来るわ」
「ぜ・・・」

「行きましょう!!」

行こう!

まだ、大丈夫だ。
俺は走ることができる。

キミの言葉があれば。
キミがそばにいてくれれば。


「・・・・・フランソワーズ!」




####

ギルモア邸のリビングのドアを開けたジョーはすぐにソファに座る、フランソワーズに目を奪われた。昨日の彼女の様子から、ひどく疲れているかもしれない。と、ジョーは勝手に思いこんでいた彼の思考は見事に裏切られた。
ドアの音・・・いや、車庫に車を、このギルモア邸に近づいてきたエンジン音ですでに、自分が帰ってくることを知っていただろう、フランソワーズに声を掛けようとしたら、彼女の方が一寸早くジョーに声をかけた。

「ジョー。おかえりなさい」
「あ・・・・・・うん」

フランソワーズがスッキリとした表情でジョーの前で微笑んだ。

「まだお夕飯には少し早いの・・・今日は帳大人が作ってくれるんですって・・・何か飲む?」

フランソワーズはソファから立ち上がりキッチンへ向かおうとして、ジョーに振り返った。

「珈琲よりも紅茶の方が良さそうね?」

くすくす っと笑ってキッチンへ再び歩き出した。
そんなフランソワーズの後ろ姿を見送り、ジョーは全身でため息を吐き、呟いた。

「・・・やっぱりキミは強いんだね」


「立ってないで座っていて?あ、その前にちゃんと手を洗ってきてください!」

ポットに火をかけている途中、ひょっこりと顔をダイニングルームへと続くドアから顔を出した。ジョーは「わかった」とばかりに苦笑しながら手を挙げてバスルームへ向かう。

ーーー迷い込んだ黒い森から、キミはちゃんと自分で抜け出したんだね?


キッチンでフランソワーズは、今にも胸の人工皮膚を打ち破いて心臓が飛び出してしまうんではないか?と、思うほどにその胸は強く激しく早鐘を打つ。
ジョーの乗る車のエンジンを聴いた時から、彼がリビングへ来るまでの間、何度も、何度も同じ言葉を、舞台前の新人役者のように唱えた。

今日、ジョーに会うことが、こんなに緊張することだとは思っていなかった。
できるなら、ジョーが戻ってこないうちに自室へ戻ってしまいたい衝動に駆られたが、ギルモアから渡された封筒について中身がなんであったかを、ジョーに話さなければならない。自分のプライベートのことから、みんなの平和を乱してしまった後悔の念に晒されながらも、003として、もしもアランが・・・なんらかの形でB.Gと関わっているのなら、003として立ち向かわなければならない。フランソワーズには、もうすでにその覚悟が出来ている。

バスルームからジョーが戻ってきたときに、ちょうどフランソワーズがお茶の用意を乗せたトレーを手にリビングへ入ってきた。
L字型のソファに少し距離を開けて並びあって座る。
フランソワーズは、ティーカップに紅茶を注ぎ、ジョーの前に薄卵色のお月様のような丸い形のクッキーをデザート皿にレースのペーパーの上に乗せて、紅茶と一緒に置いた。
それを見て思わずジョーは笑ってしまう。

「今日も作ったの?」

クッキーを摘んで言った。

「毎日は無理よ・・・だから、作るときはその日の分とは別に作り置き用の生地を作って、冷凍してあるの。自然解凍をして、柔らかくなってから、好きな形に切って焼けばいいようにしてあるわ」
「・・・大変じゃない?」
「とっても楽しいわ」

ジョーはクッキーを口に放り込む。さくっと口の中で小気味良い音を立てる。彼がちゃんと美味しく食べられる甘さの、クッキーだ。

「・・・俺には美味しいけど、キミには物足りないんじゃない?」
「そんなことないわよ?」
「そう?」
「まあ!私は別にいつもベタベタに甘い物ばかりが好きってわけじゃないのよ・・・!ちゃんと甘さの善し悪しがわかって、ジョーや他の人より少しだけ甘さの許容範囲が広いだけなの!」
「すごく広そうだね、その許容範囲・・・俺がこのクッキーくらいの大きさだとしたら、キミはギルモア邸くらい?」
「!!」
「あ、ごめん。もっと広い?」
「まあ!ひどいわっ」

ジョーは穏やかに笑う。
フランソワーズも怒っているようで、楽しそうにその瞳は笑っている。

####

「あれ?・・・リビングに入らないの?」

2階から降りてきたピュンマはリビングのドア前に立つ、ジェット、アルベルト、そしてグレートにジェロニモが立っていた。

「・・・入りずれえんだよ!」

いつもの口調だが、その声色は空気に紛れて消えてしまいそうなほどに小さい。
アルベルトが顎でリビングのドアを指す。
中を覗くことが出来ないが、聞き覚えのある2人の声が聞こえる。ドア越しなので何を話しているのかは聞こえないが、その声はとても楽しそうだった。
仲間達の方へ振り返り囁いた。

「あれ、ジョーとフランソワーズ?」

ジェロニモが深く頷く。

「・・・別に入ってもいいんじゃない?」
「お前、蹴られたいのかよ!」

ヒソヒソと話すピュンマとジェット。

「蹴られたくないよ!・・・でも、ちょっと気になることが出てきたし、さ。ボクだって邪魔したくないけどさ!」
「ピュンマ、何か解ったのか?」
「解ったと言うほどのことじゃあ、ないけど・・・まあ、大体」


その時、突然リビングのドアが開いた。
何の前触れもなく開いたために00メンバーであろう彼らが、飛び上がらんばかりに驚いた。ドア向こうから覗く顔は、眉間に皺を寄せたジョーだった。

「・・・そこで何してるんだい?」
「話しをしてたんだよ?」

ピュンマがしれっと答えた。

「・・・報告するならリビングでしてくれ」
「うん。ごめんよ、ジョー。君たちが楽しそうだったから、無粋なミッションの話しで邪魔したくなったんだ」
「・・・・ミッションの方が最重要事項だ」
「今度から気を付けるよ!」

にっこりと笑い、ピュンマはジョーを押しのけるようにしてリビングに入った。

「あ、フランソワーズ、夕飯って何時頃になる?」

ピュンマはテーブルを片づけるフランソワーズに話しかける。
グレート、アルベルトもピュンマに続いてリビングに入っていく。
ジェットはニヤニヤとした意地悪い嗤いでジョーの横を通り過ぎた。

「なにか言えば?言いたいんだろ?」
「日本人が大人しくってシャイで、奥手だって聴いてたけどマジそうなんだなあ!」
「・・・・」
「オレならとっくに・・・おっと!!お子様には耳の毒かぁ?」
「とっくになんだよ?」
「まあ、チューくらいは軽く、なあ!おめえは挨拶のチューも出来ないんだし!」
「・・・くだらない」
「っっんだと!」

ジョーは ふっ と右の口角を上げて嗤った。

「?!」
「想像に任せるよ」
「お、お、おま、お前!まさ、ま、ま。まさか!!」
「アルベルト、調べてくれたスケジュールは見ることが出来るかな?」

ジェットを無視してリビングへ踵を返し、アルベルトに話しかける。

「ジェット。いい加減にしろ。からかうな」

頭上から降ってきたジェロニモの低い声。
彼はその大きな躰にも関わらず、存在していなかったようだが、しっかりとジョーとジェットの傍らで2人の会話を聴いていたのだ。

「ジェロニモ!だってあいつ」
「ジョーも男だ。決める時は決めなければならない。」
「ああ?!」

ジェロニモはこれ以上何も言わないとばかりに、リビングへ入っていった。
ジェットは面白くなさそうに、一度 っち! と舌打ちをし、横柄な態度でリビングへ入った。

まもなく、張大人の用意した夕食が始まる。

======17 へ 続 く

・ちょっと呟く・

黒幕はイワンか~~~!
君たちの防護服はもしや青仕立ての赤マフラーな
進化したサイボーグか~~~~~!

・・・超能力サイボーグ3と9でございます。
さくらちゃんの告白はいずこへ?

修行不足なACHIKOでございました。
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。