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Day by Day・18
(18)

地下にあるギルモアの研究室を出て階段を上がり、キッチン奥の廊下からダイニングへ抜けたジョーは、大声で叫ぶジェットの声を聞き、何もないフローリングの床で躓きそうになった。
声を張り上げてジェットがリビングにいるであろう仲間達に伝えている内容は、ミッションとして今、00メンバー達が調べていることとは一切関係のないジョーのプライベートなことである。ジョー自身、それを彼らに知られたからと言って慌てることもなく、気にもしない。ジェットが今言ったような出来事は、戦いの中で出会った”護らなくてはならない者”の何人かに、同じような告白されたことがあり、ジョーは”それ”について何も口にしなくとも、いつの間にかメンバー全員が知るところとなり、色々と冷やかされてきた。
けれど、今回に限ってジェットの言葉は ざらり と、不愉快な手となりジョーのこころの底にある何かに触れた。


「・・・・誰が誰に?」

ジョーは静かに訊ねた。彼よりも頭1つ分近く背が高いジェットは、上半身を屈めて、頭を項垂れているために見える後頭部が、彼の前に晒されている。
勢いよく跳ね上がる赤毛はこころなしか、湿気を帯びて力無くみえた。


「・・・・さくらが。お前に。」

ジェットは自分の頭上から降るジョーの声に観念したのか、ぼそり と呻くように呟いた。
ふうっジョーの溜息が、ジェットの髪にかかる。

「誰に聴いたのか知らないけど・・・今、それをみんなに報告する必要がある内容だとは、俺は思わないんだけど?」
「う・・あ・・・ああ・・」
「博士がB.Gに送られてきた写真で思い出したことがあるらしいんだ。・・・フランソワーズは?キッチンに居ると思ったんだけど・・・?」
「部屋だ」

ジョーの問いに答えたのは、ジェロニモ。

「・・・そうか」

ジョーはフランソワーズの部屋に向かうために足を進めたが、それを止めたのはアルベルトだった。

「何かフランソワーズに訊きたいことでもあるのか?」
「あ、うん。写真のことと・・・」

そこでジョーは口を噤んだ。
ここに居る彼らには話していない内容について、彼女に確認したいことだったからである。

「それ以外にも、何かあるのか?」
「いや、たいしたことじゃないよ。・・・明日、電話する前に、もう一度彼女に本当にこれでいいのか、確認しておきたかったんだ・・・。プライベートなことに関わってしまうかもしれないからね」
「それなら、今じゃなくていいだろう?・・・色々あって疲れているかもしれんしな」
「・・・・」
「そうだよ、ジョー。夕食後でもいいんじゃないかな?」

アルベルトを援護するような形でピュンマが会話に2人の会話に参加した。
ジョーは2人の顔を交互に見て、頷いた。
どうやら今、自分がフランソワーズに会うことを2人はあまり良く思ってないらしい。

「わかった、写真のことは夕食後のミーティングの時でいいよ。・・・ちょっと下まで出る」

ジョーはジーンズのポケットから四角い箱を取り出して見せた。
リビングを抜け、2階への階段を見上げ・・・そして、風光る海へと向かった。


リビングで、ジョーが邸の玄関の扉を閉める音を耳にしたジェットは、その場に崩れ落ちるように、座り込んだ。

「だああああああああ! ビックリしたぜえ!まったくぅっっ。こんなにタイミング良く現れんなよっっ!」
「・・・ジェット、さくらのメールに書いてあること・・・忘れたの?」
「っんだよ?」
「・・・”誰にも言わないでね?絶対よ!!私との秘密が守れなかったら、超痛い目みるからね!!”って書いてあったの、もう忘れた?」
「・・・・・・・あ」
「流石、トリ頭だな」
「3歩歩いたら、全部忘れるネ・・・」
「むうう・・・だからジェットは飛べるのかもしれね~なあ、だってよ、歩かなくて済むから忘れずにすむってねえ?」
「あ、グレートっそれ、上手い!」
「二度と空から降りてくるなっ」
「歩くのやめる。」
「・・・・ひでぇ」

ジェットは仲間達から浴びせられるキツイ言葉に反発する気力はすでになく、ただ床に座りこんでいた。

「まったく、応援するのか邪魔するのか。どっちかにしろ」

アルベルトは再びテーブルに置いた珈琲を手に取り、座っていたソファに腰を下ろした。

####

ギルモア邸の玄関を出ると、ジョーはそのまま真っ直ぐに道なき道を歩く。切り立った自分の3倍ほど高さの崖から大きくカーブした道路が見下ろせる。その下に、白く太陽に照らされた砂浜が見渡せ、一面の海と空が広がる。

「・・・・」

ジョーは車の往来がないかを確認し、弾みをつけて、飛ぶ。
彼の躯が重力に逆らうことなく、下へ落ちていくが、舗装されたアスファルトに右足のみで軽々と着地し、その勢いのまま、もう一度、飛ぶ。

ゆるやかに弧を描き、空に浮く。
視界に広がる風景は、加速装置を使った時によく似ているが、緩やかに波打つ海面を見ることにより時間が動いていることがわかる。

ざんっっと重力の重みを背負ったジョーの躯が砂浜に降り立った。
彼は何事もなかったように飛び散った砂を払ったその手を、そのままジーンズのポケットから箱とライターを取り出し、ライターに親指をかけると かち っと鳴らして火を灯す。白い紙に巻かれた草は楕円の細長い形に整えられた、それをジョーは口に銜えた。肺に吸い込まれた煙は、彼の咥内から広い空へと放たれる。

ジョーは煙草を口に銜えたまま、波打ち際まで歩く。
緩やかな光る春の午後。

ざあああ と、耳心地良く繰り返す波の音に耳を傾けながら煙草を手に持ち、天を仰ぐように ふうううっ と、息を、煙を、吐いた。彼の胸を冒す毒は、濁りなき白のまま音もなく空へと消えていく。
一本目の煙草を携帯用灰皿にねじ込むようにしまう。不意に、どこからか自分を”視る”視線を感じて、首を右に傾けた。
かなり距離があるために、”人の形をした黒い陰”としか確認できない。
ジョーはその人物を見極めようと目を細める。

”人の形をした黒い陰”は波打ち際に座り込み、海を眺めていた様子だったが、ジョーがそちらを向いたことに気がついたのか、立ち上がる様子を見せた、瞬間。
ジョーはその人物の手を掴んでいた。

「!」

加速はしていない。
ジョーにとってその距離は、力強く砂浜を蹴り上げて前に出れば、人が一歩前に踏み出すのと変わらない早さで移動できる距離。

「・・・・部屋にいたんじゃなかった・・・ん・・だね?」
「・・・・」

風にあおられて舞う亜麻色の髪から放たれる光の粒は陽に輝き、大きく見開かれた強いナイルブルーの瞳はジョーを映し出す。
フランソワーズはジョーに捕まれた手をふりほどき、さっと自分の胸前にまで引き寄せる。
明らかに、彼女は動揺していた。

「・・・驚かして、ごめん」
「・・・・・」

フランソワーズは首を横に振る。

「ちょうど、良かった・・・」
「・・・・・?」
「・・・・キミと、話しておきたいことがあったんだ」

フランソワーズは俯いて、足下に視線を落とした。ジョーも彼女につられて視線を落とす。
彼女は靴を脱ぎ、裸足で砂浜に立っていた。すぐ近くに投げ出された靴を見つけることができる。

同じリズムを打つ波の音。
やわらかな風が、2人の間を吹き抜けていく。
フランソワーズの足を埋める砂が さらり と、動いた。

「話し?」
「うん」

少しだけ浮かせたままのフランソワーズの左足が、砂浜を力無く蹴ると、砂は散らずに彼女の足の甲に掬い取られ、さらさら と流れ落ちた。

「・・・・・何の話し?」
「キミは、自分で確かめたくないの?・・・・一体なぜ・・・何が、自分に起こったのか」

フランソワーズは宙に浮かせた足を砂浜にトウで立つように降ろし、つま先が砂に触れた。

「・・・・今更それを知って、確かめて、それでどうなるのかしら?」
「わからない。・・・キミ次第だと思う、けど・・・真実を知りたいと、思わない?」

くるり とジョーに背を向けて、フランソワーズは履いていた靴を拾い上げ、歩き出した。
ジョーは3,4歩距離を開けて、彼女の後ろを歩き出す。

近くの車道から、車のエンジン音が強弱を付けて走り去る。

「・・・・彼は、アランは・・・・兄の行方を知っているのかしら・・・」
「・・・お兄さんの行方?」
「イワンに、訊かれたことがあるわ。兄のことを知りたいか?って」
「・・・キミは、何も知らないの・・?お兄さんが今、どこで何をしているのか・・・」
「・・・・・怖くて、訊けなかった。会いたくなるもの、絶対に。でも・・・会えないわよね」

波の音と風の音。

「知っているか、確かめて欲しい?・・・彼に・・・」
「兄がいたらって、何度も思ったわ・・・ジャンは今の私を見たら・・・なんて言うかしら?」
「・・・」
「きっとね。こう言うわ・・・”ボクのハッピーポイントは全部 Fanchon にあげる”」

砂浜を踏みしめる、2つの足音。

「F・・・ふぁ?んしょん?」
「・・・Fanchon・・・Francoiceのニックネームなの。兄だけが・・・そう呼んだわ」
「ファンション?」
「Fanchon・・・・・」

揺れる亜麻色の髪。

「フランソワーズが・・・ファンションになるの?」

見つめる、褐色の瞳。

「そうなの・・・日本だと、私の名前はどんなニックネームになるのかしら?」
「・・・・フランソワーズは長いから、短くなる、と思う」
「どんな風に?」
「・・・・フラン?かな?」
「フラン?・・・・御菓子みたいなニックネームになるのね?」
「・・・もっと他にもあると思うけど、今はそれぐらいしか・・・俺は思いつかない」
「・・・・・呼んでもらってもいいかしら?」
「・・・」

フランソワーズは足を止めて振り返り、まっすぐにジョーを見て、微笑んだ。

「お願い・・・・・今だけ、呼んでみてくれないかしら?・・・Fanchon・って・・・・・」
「・・・・・・・Fanchon?」

フランソワーズは頷いた。
彼女の希望通りに、ジョーはフランソワーズのニックネームを、こころを込めて音にする。

「 Fanchon 」

彼女は微笑んだまま、ナイルブルーの瞳から溢れた涙を隠すように目蓋を閉じて、ふっくらとした形良い下唇を震わせながら、噛んだ。

「 Fanchon 」

もう一度、こころを込めて。
そして、先ほどよりも大きな声でジョーは、フランソワーズが愛する兄だけに呼ばれていたニックネームを風に乗せて彼女へと贈る。

ゆっくりと一歩ずつフランソワーズに近づいて行き、彼女の耳元へ顔を近づけて言った。

「Fanchon・・・」

フランソワーズの目蓋が開き、ナイルブルーの瞳がその色を濃く輝かせる。
ジョーがフランソワーズの肩へと手を伸したとき、とんっ!と、白い小さな手がジョーの胸を押して彼と距離を取った。
彼女の瞳から涙が陽に照らされて、光りの玉となってきらきらと幾筋も流れ出す。

「・・・か・・神様・・は、みんなに、平等に・・・幸せをくれるの・・・それを。それをジャンは・・”ハッピーポイント”って言って・・・・私がもっと、もっと、もっと、幸せ・・・になる、ために・・ジャンは、自分の。自分の分の幸せを・・・私に。くれるって・・・・いつも、言ってくれていたの・・・よ・・・」

フランソワーズはその手をジョーの胸に伸ばしたまま、一歩。彼から遠ざかる。

「・・・・・使い切ってしまったのかしら?・・・もしかして・・私。・・・自分の分も、ジャンの・・・ジャンの分の幸せも・・・・全部・・・私が。私が使い切って・・しまったのかしら?」

また一歩、フランソワーズはジョーから離れ、彼女の手がジョーの胸から離れる。

「・・・・ダメよ。気を付けて、ジョー・・・好きでもなんでもない女の子に、気軽に優しくしたら・・・。仲間でも・・・。優しくし過ぎるのは、よくない。と、思うの。・・・せっかく・・・せっかく。さくらさんが・・・ジョーのことを好きになって・・・・。好きと言って・・・。彼女に誤解されたら困るでしょ?・・・ね?」

一歩。また一歩と、フランソワーズはジョーから離れていく。

「フランソワーズ?・・・・・誤解?・・困る?」
「・・・好きな人が・・・他の女の子に・・優しくするなんて、イヤでしょう?・・・・さくらさん。が。可哀相よ・・・」
「・・・え?」

ジョーが一歩、フランソワーズに近づく。
彼女は二歩、ジョーから離れる。

「・・・・1人で考えたい、の。・・・ちゃんと。ちゃんと・・・彼のことは、後悔しないようにするわ・・・だから・・・」

フランソワーズは一歩、一歩、確実にジョーから離れていく。
ジョーから離れていきながら彼女は俯いた。それ以上、ジョーに泣き顔を見せないようにする。ぽたり。ぽたり。と 砂浜に降るフランソワーズの涙。

「ジョー・・・も。ジョーも・・・ちゃんと考えて、あげて、ね?・・・さくらさんの気持ち」
「・・・・」
「・・・・夕食の準備までには、邸に帰ります・・・009」

フランソワーズはジョーに背を向けて走り出した。
ジョーは走り去るフランソワーズを追いかけない。
遠ざかる彼女の後ろ姿を見つめながら、溜息を吐き、一言。彼は言い捨てた。

「・・・・・トリ頭っ」

乱暴に煙草を取り出して、ライターをカチカチと鳴らす。
潮風に邪魔されながらも、火を灯したそれを胸一杯に吸い込む。
ジョーの想いを乗せて、彼の咥内から吐き出された煙は、天に昇ることなく風にかき消されていく。

####

「フランソワーズが部屋にいないアルよ?」

そろそろ夕食の準備を。と、フランソワーズを手伝うためにキッチンに足を向けた張大人だが、そこに彼女の姿を見つけることができず、彼女の部屋を訪れる。
何度かドアをノックし、フランソワーズの名前を呼ぶが反応がなかった。
張大人はキッチンへ戻る前に玄関に行き、フランソワーズの靴があるか確認する。靴箱にしまわれずに出されているはずの、彼女の靴が見あたらない。リビングに戻り、ソファに座っているメンバーに報告した。

「いないのか?」
「いつもの靴もないネ」
「外か・・・?」

アルベルトは立ち上がり、壁に掛けられた時計を見た。7時を過ぎている。

「少し・・・遅いな。今日はフランソワーズが作るんだろう?」
「そうネ・・・」
「オレ、ちょっとそのヘン見てくるぜ?」

博士ように購入した安楽椅子に座っていたジェットが、握っていたTVコントローラーを投げ出して立ち上がる。

「ボクも行くよ」

ジェットが立ち上がったと同時にピュンマは足早にリビングのドアに向かって歩き出した。
リビングを出て行く2人。
玄関先でピュンマが靴ひもを結び終わるのを待って、ジェットが観音開きの扉を開けたとき。

<誰か!!!!!!!!>

飛び込んできたのはフランソワーズが00メンバー全員に向けて送った脳波通信。
ジェットとピュンマは一瞬にして002、008になり、その身とこころを切り替えた。

<どうした!003っ>
<誰でもいいっ来て!!>
<どこにいるんだい?!003っ>
<002!008!ギルモア邸から2.14キロメートル離れた登りの車道よっ車が・・・私の力じゃ、助けられない!!>
<すぐに行くぜっ!>
<002っ008っ僕だっ・・・ギルモア博士に連絡を>
<<009!!>>
<お前っ!・・・・もう003と合流したのかよっ>
<男を1人そっちへ。002、来てくれ>
<009,無関係の人間を邸に連れ込むのか?>
<004、彼は無関係とは言えない・・・>

002ことジェットは玄関を飛び出し、地面を蹴りジャンプする。彼の足裏から勢いよく燃え上がる炎は彼を空へと押し上げた。
008は002を見送り、ギルモア邸から少し先にある岬に走る。そこからなら003から連絡があった場所を遠目ではあるが視ることができる。岬にたどり着く前に、彼の眼に飛び込んできたのはオイルが燃える禍々しい勢いのある黒い煙。距離的にも003が言った方向からそれは立ち昇る。

<事故?!>
<いったい何アルネ!>
<・・・車が・・・炎上してる?>

<博士に伝えた。けが人がいるのか?>
<005、博士にメディカル・ルームで待っていてもらってくれ>
<了解>
<002が先に男を連れて戻る、006,007頼む>
<了解(ネ!)っ>
<004,005,008・・・事故現場を処理したい。人が集まる前にだ>
<わかったっ!>
<うむ>
<・・・了解>

008は004、005と邸前で落ち合い、009の指示のあった場所へと急いだ。
彼らの足を使えば、1分とかからない距離である。
3人と入れ違いに002はぐったりと意識を失った男を抱えて空から邸に戻ると、玄関先で待機していた006と007により、男は地下のメディカル・ルームへと運ばれる。

<009,男は無事にメディカル・ルームだっ>
<了解・・・そのまま待機していてくれ>
<そっちに戻るぜ!>
<いや、こっちはもう十分だ・・・>
<っち!オレはただの運び屋かよ!!>

外へ出ていたメンバーがギルモア邸に戻ったとき、男はギルモアの手により手当を受け、あとは彼の意識の回復を待つのみだった。



=====19 へ 続 く

・ちょっと呟く・

迷いが出てしまって書き辛かったです。今回!
これからドンドン進みむ予定。
あくまでも予定。
気分な予定。
でも、ちゃ~んとゴールは決まってるのさ!
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