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彼の香り

街はずれの海岸沿いに隠れるように建てられた洋館。
そこには小さくギルモア研究所と言う表札が掲げられている。

住まう人種に統一感がなく、時々、銀髪のドイツ人が、テラスからコーヒーを飲みくつろぐ姿や
道路に面した庭先に、滅多にお目にかかれないとおもわれる、立派な大柄のネイティブ・アメリカンがその大きな手のひらに、小さな花の苗を大切そうに抱える様子や、「アイヤ~!」と日本人が想像するステレオタイプな中国人のかけ声やら、フランス語に英語、たまにロシア語なども交えて聞こえてくる。

この極東の島国には似つかわしい、異国情緒あふれる謎の多い屋敷。








常にその屋敷に身を寄せているのは家主であるアイザック・ギルモア、と、その孫?のような存在の赤子、イワン。
養女か、娘?か、フランソワーズ。そして、居候か、養子?のジョー。

この4人である。

この洋館に移り住んで、まだ1年と経っていなかった。

ギルモア博士がヨーロッパで行われた学会から付き添いのアルベルトと、留学中のピュンマと共に帰ってきた。
彼らを迎えに車を走らせたジョー。
フランソワーズは長旅から帰ってくる3人が少しでも早く、疲れが癒せるようにと、お茶とお菓子を用意し、それぞれの部屋を掃除。ベッドのシーツやカバーなどを新しい物に取り替えて、彼らの帰りを待っていた。

フランソワーズは遠くから聞こえてきたジョーの車のエンジン音を聞き、ポットをコンロに置く。

ギルモア邸の玄関の扉が開くの音が聞こえた。

一番初めにリビングに現れたのはギルモア博士。
目に入れても痛くないほどに、愛情を注ぐフランソワーズが満面の笑みで手を広げて博士の帰宅を喜び、「おかえりなさい、博士」と、優しくささやき、頬を寄せ合う。

その姿を見ながら、「久し振り!!」と元気よく声をかけるピュンマ。
それに続いて「元気だったか?」と彼独特な笑みを口元に浮かべるアルベルト。
久し振りの再会に、フランソワーズは「久し振りね、学校にはなれたの?」「ええ、元気よ!お土産なんて気にしなくて良いのに」と、嬉しそうにその腕に仲間の帰宅の喜びを表現する。

そして最後にリビングに姿を現したジョーに「お疲れ様・・・」と声かける。
彼は口元で少し微笑み、彼女に答える。

ジョーとフランソワーズの間でそれ以上の会話はない。









====

「ん?ジョーおまえなんか・・・つけてるのか?」


博士達が戻った翌日の昼。
キッチンですれ違ったジョーから、いつもとは違う「香り」にきづく。
彼は自分の身をあまり構わないせいか、興味がないのか、香水などのたぐいはつけない。
ほとんど無臭だったりする。風呂上がりの時以外。

ジェットは頻繁に香りを替える。
流行に敏感でファッションにうるさいからな!と言う。

アルベルトは、お気に入りがあるらしく、常に同じ。しかしヘビースモーカーのために
いったい何を使っているのか、解りづらい。

ピュンマとジェロニモは定番の固形タイプを愛用している様子。

張大人は、つねに美味しい香辛料の香り。

グレートは演じる役柄などのイメージに合わせて、その日の気分で香りを選ぶ。

博士でさえ、研究に忙しいといいながらも、常用している香りがある。

イワンは常に赤ちゃん独特のミルクの香り。


「・・・?何・・・の話し?」

朝に弱いジョーは、起き抜けの頭では、ジェットの問いが理解できなかった。

「いや、なんかコロンか、香水かつけてんのかなぁ?って思ってよ!けっこう良い香りじゃね、それ?」

コーヒーをカップに注ぎながら、ジョーは首を横に振る。

「そんなの、つけてないし、持ってない」

そっけない返事だったが、確かに彼から・・・今までと違う香りがする。

ジョーはジェットを無視して、そのままコーヒーとともダイニングテーブルにつき、遅い朝食兼昼直を取る。


ナスと鶏肉のマスタードのホットサンドイッチに、トマトとモッツァレラのチーズのオリーブがけ。イチゴのデザート付き。彼は、できたてのそれをもそもそと食べ始めた。


もちろん用意したのはフランソワーズだ。






====

ジェットは一度気になり始めると、それが頭から離れないタイプだ。

ジョーから香る「それ」がいったいどこのメーカーのものなのか、気になる。
色々と試しているジェットだから、大概のものは言い当てることができるが、ジョーの「それ」はまったく検討がつかない。


それとなくバスルームへおもむき、置かれている棚を開ける。
そこにはメンバーのプライベートな物が所狭いと並べられている。
個人個人に置き場所が決まっているから、誰が誰の物なのか一目でわかる。
ジョーの場所は・・・ほとんど物がない。そして「それ」らしきものが置かれていないのは一目瞭然なのだった。


「何してるの?」


バスルームの前を通りかかったピュンマは、棚と睨めっこしているジェットに声をかけた。


「なあ、最近ジョーのやつ、なんかつけてね~か?」
「・・つける?」
「コロンか、香水か・・・」
「ああ、君もきづいたの?」
「!!やっぱりそうか! でもあいつよぉ、”つけてないし、持ってない”って言いやがったぞ!」

ピュンマは語尾を荒げた物言いのジェットを、面白そうに観ている。

「もちろんジョーは”つけてないし、持ってない”って言うよ。あ、でも”持ってない”は・・・違うかな?」
「はあ?」

謎かけのようなピュンマの答えに、ジェットは間の抜けた返事を返す。

「持ってるけれども、それは・・・持ってるとは言えないな~・・・」

ニヤニヤと笑いながら、バスルームを出て行こうとするピュンマの後を慌てて追う。

「ジェットってジョー並に鈍いんじゃない?」

そんな言葉を残してさっさと自室へ戻るピュンマに猛烈に腹が立つジェット。


”こうなったら何がなんでも、ジョーの香りがなんなのか突き止めてやる!”


こころの中で叫んだその時、リビングから聴いていたのだろう、新聞紙を片手にアルベルトが「蹴られるぞ?」とジェットの横を通り過ぎるときに呟いたが、そんな言葉はまったくジェットの耳には入っていなかった。









ジェットはその香りにピュンマ以外も気づいているのか知りたくて、仲間全員(ジョーを覗く)に尋ねた。

フランソワーズ以外は全員気がきづいていた。


「あら?そうなの???でも、そんな物を購入しているようには思えないけれど・・・」

細々とした日常に必要な買い物はフランソワーズがする。
ジョーは常に彼女の荷物持ち兼運転手となっているので、彼女が「買ってない」と言えば、ジョーは「買ってない」のは、ほぼ確実なのだ。

洗濯物を畳みながらジェットに唐突に質問されて、首をかしげながら、丁寧に答えるフランソワーズ。

「お前は気づかなかったのかよ?他のやつらは知ってたぜ?」

何を得意になっているのか、自慢げに言い放つジェットにたいしてフランソワーズは、まったく余裕で笑い返す。

「そんなこと言われても・・・ねえ」

最後のタオルを綺麗にたたみ終えたフランソワーズは、「そこをどいてね?」と、たたんだばかりのタオル類を引き出しにしまい、個人の衣類は、部屋へと運ぶために、洗濯室から大きなカゴを手に
出て行こうとした。

「フランソワーズ?香水替えたのか???」

自分の横を通り過ぎた彼女の香りが、いつもの物と違う気がした。

「?・・・いいえ、同じ物よ?変なジェットね、どうしたの?あなたのその立派な鼻は飾りかしら?」

クスクスと笑いながらフランソワーズは去っていった。

「だから、後で蹴られるから止めておけ」

イライラしだしたジェットは、アルベルトの独特な嗤いが彼の気持ちをよけいに苛立たせる。

「・・・まあ、お前もジョー並に鈍いってコトが証明されたようなもんだな」
「うるせ~!オレは鈍くねーよ!」
「・・・ヒントをやろうか?」
「!」
「フランソワーズも普段と同じ香水を使っているのに、新しい物みたいな香りだったんだろ?

ジェットは、食い入るようにアルベルトをみつめる。

「まあ香りって言う物は、同じ物を使っていても、それぞれ個人がもつ”体臭”と混ざって、全く違う香りになるっていうからな、香水を替えてないのなら、その香りが変わる”何か”が加わったんだろ?」
「おいおい、アルベルト。それはヒントじゃなくて答えじゃないか」

2人の会話を聴いていたグレートが呆れたように言った。

「これで解らんのなら、こいつはジョーよりも鈍い」

ニヤリ、と嗤うアルベルト。










イライラとしたまま、気分転換に外へ出ようとした時、買い出しに出かけようとする、ジョーとフランソワーズの姿が眼に飛び込んできた。
慌てて自分の姿を2人から見えない位置へと移動させる。

”なんでオレは隠れてんだよ!”

ジョーとフランソワーズがお互いを想い合っているのは、当然、ジェットもしってる。
そこまで好き合っているのなら、さっさとまとまってしまえ!っと常に思っていた彼。

自分が予想していたよりも、コトは順調に進展していたようで・・・。

車庫へ入る入り口で、フランソワーズの体をぴったりとジョーが抱き寄せて、愛おしそうにその髪をなでる。彼にもたれかかるように、その包容を受け止めるフランソワーズは、ジョーを見上げるような仕草。フランソワーズの髪に触れる手が、そっと彼女の頬へと移動したかと思うと、ジョーはフランソワーズの顔へ近づいていく。


「うわあああああああああああああああ!」


突然に眼の前に降ってわいた、ジョーとフランソワーズのラブシーン。

こころの中で叫んだつもりが、実はしっかりと声として出ていたようで・・・。

ジェットの絶叫を聴き、反射的に体を離すジョーとフランソワーズ。
その声は確実にギルモア邸にいる仲間にも聞こえていた。


「蹴られたな」
「ああ、しっかりとな」

グレートとアルベルトのつぶやき。









ジェットは加速装置並の早さでその場から離れていった。

残ったジョーとフランソワーズは、ジェットに見られてしまった恥ずかしさから、その場から動くことができない。

「・・・絶対見られたわよね?」

力無く頷くジョー。

「あんなに驚くなんて、変な人!・・・普段から私たちのこと、ああだ、こうだ、とからかうくせに・・・」

フランソワーズは、ジョーとの淡い恋人同士の時間を邪魔されて少しばかり怒っている。
唇を少しとがらせて、むっとした表情でジェットが先ほどまで居た場所を睨むように見ていた。

「まあ・・・ね。」

そんな怒ったフランソワーズもジョーは可愛く思うらしく、
ジョーはもう一度自分の方へ彼女を抱き寄せ、そっとフランソワーズの耳元で何かを囁いて、彼女の口唇に優しくキスをする。


「ジェットはみんなと違って鈍いから・・・」








答えは簡単なこと。

ジョーの香りはフランソワーズが使っていた香水がうつったのだ。
普段、仲間の目が届かないところでは、彼女と甘いひとときを過ごしているのだろう。
フランソワーズの香水は替わったのではなく、ジョーがもつ「男性」の香りが交じったのだ。
彼の腕の中でその香りは新しいフランソワーズの香りを生み出した。

いつの間にか2人は同じ香りをまとっていた。

本人たちは気づいていない。
常に自分たちの香りに包まれているのだから、お互いにもう判らなくなっているのだろう。


ジェットはその後、2人に対して気まずい様子で、ジョーとフランソワーズを見ないようにしていたが、そんな日は3日も続かず、今では以前よりも(下品?に)2人をからかいはじめた。

昼近くになって起きてきたジョーにたいして

「よ!昨晩も励んでいたのかよ、ジョー!!」
「!?」

お早う(?)の挨拶とばかりに声をかけ、あっという間にジョーに殴られるジェット。



夕方、スーパーへ出かける2人にたいして

「夕食の心配はいらねから、朝帰りでも大丈夫だぞ!大人がいるからな!」と


余計な一言で見送るジェット。

それを聴いたアルベルト、グレート、ピュンマ、ジェロニモ、張大人に思い切り蹴られ続けたのである。


「ジェットにだけは・・・隠しておきたかったのに・・・」

そんなジョーとフランソワーズのつぶやきに、「ヒント」を与えてしまったアルベルトは、こころの中で「スマン」と謝った。
















・あとがき・

2が絡んだ93です。
・・・新ゼロのジェット兄貴よりも、平ゼロのジェッたんの方が扱い安いです(笑)

鈍いのか~・・・(笑)
私の書くジョーは新ゼロが基本(?)なので、
鈍くないです。照れ屋ですが、泣き虫ですが。
鈍くないです!


・・・はい。


読んで下さってありがとうございました!

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