RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Day by Day ・19
(19)

フランソワーズは、重い足取りで狭い歩道をなぞるように歩いていた。
どこをどう歩いたのか、ジョーと別れた後、気がつけば滅多に足をむけることない所まで彼女は訪れていた。
海岸沿いを歩く方が、曲がりくねる道に較べて早く邸へたどり着くだろうが、フランソワーズはあえて時間がかかる方法でギルモア邸へむかって歩く。夜の帳に覆われた海岸を歩くのは、できるだけ避けたいと思うフランソワーズ。昼間は心地よくこころを落ち着かせる波音が、フランソワーズを再び闇へと誘う魔物の声に聞こえる。

遠くからフランソワーズの方へ向かって走り来るエンジン音を、彼女の”耳”が捉えた。
彼女は足を止めてやり過ごす。
彼女の歩く車道はカーブが激しく、歩道は頼りない白線が引かれているのみ。フランソワーズは必要ないと思いつつも、”もしもの事故”によってサイボーグである自分が”人”として病院に運ばれるわけにはいかない。
フランソワーズは”眼”を使い、自分と車との距離を測る。
スピードを緩めてカーブを曲がった国産車は、暗い夜道を強いライトで照らし、フランソワーズの姿を浮かび上がらせた。


仕事のために、街外れの海沿いに建つ洋館を見つけ出した男は、”島村ジョー”と言う青年を捜していた。車の中から伺うその邸から、小さく”ギルモア研究所”と書かれた表札を見つける。
男は、背広の内ポケットに入れていた手帳にそれを書き込み、しばしその邸の様子を伺っていたが、誰1人としてその邸から出入りする人は現れない上に、男が予想していたよりも、この邸を見つけること手間取った。すでに日は沈み、都会では見ることが難しい星が瞬き始めていた。軽く溜息を吐いて車の鍵をまわし、エンジンをかけてその場を離れた。

慎重にハンドルを右へ左へと切りながら車を走らせる。
ライトに照らし出されるのは切り立った崖の岩肌と、白いガードレールを挟んだ黒い海。

「芸術家って言うのは、ようわからん・・・ダンサーってのは、”あっちの気”が多いって訊いてるが・・・この”島村ジョー”って男も・・・か?・・・ま、興味ねえがな~」

資料として預かった写真は、古びたセピア色の写真をスキャンしたコピー、そして監視カメラから写真に起こしたものが3枚。
年代を感じさせる写真には、大きな花束とともに満面の微笑みを向ける美少女。そして、カラーの3枚は、ドレスアップした亜麻色の髪を結い上げた、顔の見えない女性と、日本人と言われればそうかもしれないが、どことなく西洋の面差しを持った、スーツに身を包んだ青年。恋人同士にみえるこの2人を、監視カメラが別々に3カ所で映したものだった。男が男の浮気調査か?と、勝手な想像でセピア色の写真に写る少女を、つい忘れてしまい勝ちになってしまう。

「・・・・おっと?」

男は大きく左に曲がるカーブにさしあたり、アクセルを踏む足を緩めた。
車のスピードが落ち、ライトがスローモーションのように岩肌のそばで人影を捉えた。
男はライトに浮かび上がった女性を食い入るように見つめた。話しに訊いていた、資料の女性がそこに・・・。
握りしめたハンドルの動きが止まる。

「?! あ・・・うああああっっっっあああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

女性をよく見ようと意識が運転から逸れた。
白いガードレールがフロントグラスに真横一直線に、男に迫る。

男の体に生まれて初めて受ける強い衝撃が走る。
最後に耳に届いた声は、悲鳴に近い女性の声だった。

####

「大岡美智(おおおか よしとも)職業は、探偵?・・・事務所は○○市。年令34歳」
「・・・よくわかったな、ピュンマ」
「職業が違うビジネスカードに、彼の財布から免許証。内ポケットには依頼主についてと、今回の仕事の内容と彼が調べた情報の一部・・・それと、ジョーが車から持ち出した資料はまあ、読めないことはないけど・・・紙だしね」

地下のメディカル・ルームから”大岡”と言う男を2階のゲスト・ルームへと移動させた後、リビングに集まった00メンバーたちは、フランソワーズが遭遇した事故について検討していた。

「・・・・調べられているのはわかっていたが、予想していたより早くここに辿りついたな」

アルベルトは手を顎に当てて、面白くなさそうに呟いた。

「優秀だよね・・・・ジョーが彼の車に気づいて尾行していたのが幸いだったよ。まさか事故を起こすなんて思ってもなかったけど、お陰でこうやって彼が誰なのかわかったし・・・彼も無事に生きてたしね!」

ピュンマはリビングのテーブルに置いた大岡の所持品を念入りに調べる。

「勝手にヤツがハンドル切り損ねて、ガードレールに突っ込んでドカ~ンっで、海にドボ~~~ン!・・・放っておきゃいいのによぉ」
「そんなことできるわけないじゃない!・・・私を観て、そのせいで・・・・ハンドルを・・・・」

フランソワーズは両手を胸の前で祈るように組み、その手は小刻みに震えていた。彼女の隣に座るジェットは、ちらりとフランソワーズの震える手を観て、小さく舌打ちする。

「・・・彼は大丈夫アルか?」
「うむ・・・今日、明日はぐっすり眠っているじゃろう・・・怪我も大したことはなかった」
「ジョー・・・どうするんだ?」

グレートは紅茶のカップを手に、ジョーを見る。

「・・・できれば、彼と話しをしたい」
「反対だ、必要ないだろう?目を覚ます前にどうにかしたいな」
「彼がB.Gの人間ではないことは、明らかだ・・・雇った”彼”も・・・今のところその線が完全になくなったワケではないけれど・・・。彼がどのようにして雇われたのか、何を調べていたのかをはっきりさせたい」

ジョーはそう言って、2階を見上げるような仕草をする。

「彼はプロだよ・・・依頼者の守秘義務と言うものがあるから・・・全部を話してくれるとは思わない方がいいよ」

ピュンマの忠告に頷きながらも、彼の褐色の瞳は強く自分の意思を通したいと言う姿勢を伝えている。

「いいか、ジョー。相手は胡散臭い、人の秘密を知ることに快感を覚えるような職種の人間だ。関わるな」

アルベルトの強い反対意見に、ジョーはそれ以上何も言わない。
004,アルベルトの言うことは正しい。それは009としてのジョーが考えていることと一致していた。

「ヤツの身元も、調べていたこともだいたいわかってんだ、ジョー、ここは無駄なことは省こうや」

グレートがジョーを諭すように言った。

「・・・・みんなもアルベルトと同じ意見なんだね?」

リビングに集まった全員の顔に視線を送る。

「わかった・・・。イワン、君の力を借りたい」
<ウン、ボクガ偽ノ事故ノ記憶ト、近クノ病院ニ移ス>
「起きたばかりで、申し訳ないけど・・・頼む」

予定よりも早く、昨日の昼過ぎに目を覚ましたイワンは、何も説明しなくても現在起こっていることを把握済みであった。ギルモアに抱かれているイワンは、天井の一点を強く睨んだと思うと、彼の瞳が鋭く光り、抱いていたギルモアはその光の強さにイワンから顔を背けた。

<コレデ 何モ心配ナイ・・・・チョット、疲レタ>

####

2階のゲストルームに大岡がいないことを確認に行ったピュンマが戻ってきたところで、話しはB.Gに送られてきたと言う、フランソワーズの写真の話しに移った。

「これ・・・なんじゃ」

X島からの脱出の際、ギルモアは必要と思われる9人の最低限の資料を3冊のファイルに納めて持ち出した。ほとんどがデータ処理をされていたが、コールドスリーブを施した002,003,004の資料はデータ処理されていない物もあり、それらの中に何枚かの写真が含まれていた。主に戦闘実験時の資料としてB.Gの研究施設内で本人達が知らないうちに撮られたものだったが、一枚だけそれらに不似合いな写真が紛れ込んでいた。

「・・・大分、傷んでおるが・・・003の図面と一緒に挟んであったんじゃ。儂も今まで気がつかんかった・・・・あの時見せられた写真はこれじゃと思う」

ギルモアがメンバー全員が見えるように、リビングのテーブルにそれを置いた。
そこには、ふわふわとした透けるような素材のスカートにトウシューズを履き、髪をぴっちりと堅く結い上げてポーズをとりながら、こちらに花が咲きこぼれるように幸せに笑うフランソワーズの姿があった。

「・・・・へええ・・・バレエやってるおめえ、初めてみたぜ」
「トウシューズだろ?これ・・・お人形みたいに可愛いね!」
「・・・・これが・・・・・・そんな・・・・・」
「フランソワーズ?」
「どうした?」
「大丈夫アルか?」

「・・・・・・・これ、アランが・・・撮った写真」


その写真を目にしたとき、フランソワーズはタイムスリップをしたかのような感覚に襲われた。


フランソワーズが通うバレエスクールの代表として、初めてコンクールに出場する権利を得たフランソワーズとアランは、予選を無事に通過し、その日は本選で着る予定の仮縫いされた衣装をつけてのレッスンをすることになっていた。衣装には”見せる”芸術のバレエにとって重要な役割がある。ダンサーの踊りを活かし、さらにその魅力を引き出すように、個人の個性を生かしたものへと仕上げていく。
父親から借りたというカメラを手に、レッスン場に現れたアランは、仮縫い衣装の欠点を客観的にみるためだ。と、いいながら、フランソワーズに色々なポーズを指示してシャッターを切る。
もういい加減にして!と言いながらも、写真を撮られることにフランソワーズは本気で嫌がってはいなかった。まわりの教師たちもそんなやり取りを黙認する。初めてのコンクールを控えた2人が、プレッシャーや緊張から逃れるために、こういうちょっとした”遊び”も必要だと感じていたのかもしれない。

「一番綺麗に撮れたのを、あげるからさ!プロじゃないから、数がいるんだよ!!」
「もう!・・・練習できないじゃない!撮ってくれるなら衣装が出来上がってからにして欲しいわ!!」



「間違いないのか?」

フランソワーズの言葉を聞き、アルベルトは確かめるように訊ねた。
彼女はすぐには答えられなかった。が、この写真をもってアランがフランソワーズのアパルトマンに訪ねてきたことを思い出す。そのときジャンとアランは初めて言葉を交わしたのだ。



「あいつが、ファンションのパートナーで恋人候補か・・・」


アランが帰った後、フランソワーズはテーブルを片づけながら、新しく淹れる直した珈琲をジャンの前に置いた。

「やだ!兄さん・・・パートナーの部分は合ってるけど、恋人候補って・・・」
「ファンションが男を家に呼んだのなんて、アランが初めてじゃないか?スクール以外でも会ってるんだろう?」
「パートナーですもの!一緒に舞台を見て、帰りにお茶して帰ってくるだけよ!」
「・・・それをデートと言うんだよ?」

呆れたように言いながら、熱い珈琲に ふう っと息をかけるが、それを飲む様子はない。
ジャンは猫舌にも関わらず、温目に淹れた珈琲を出すと怒るのだ。

「違います!!」
「まあ、僕としては、可愛いファンションにまだボーイフレンドなんて必要ない!と思いたいんだけど・・・シスコンはそろそろ卒業しろって周りから散々言われてるしなあ」
「私は別にブラコンじゃないわよ!」
「・・・淋しいこというなあ」

フランソワーズよりも濃い空色の瞳を哀しげに染めて、凛々しく整った眉根を情けなく下げた。

「卒業したかったら、ダニエラとのことをはっきりしたらいいじゃないのっ」
「おい・・・そこで彼女の名前を出すのか?」
「優柔不断な兄さんを心配して言ってるのよ!・・・まったく、あっちフラフラ、こっちフラフラなんかしてたらっ結局一番大切な人を逃がしてしまって後悔するのよ?」
「きついな~・・・一体誰に似たんだ?」
「兄さんではないことは確かね!」

フランソワーズはテーブルに残ったクッキーを ぽいっと口に放り込んだ。

「・・・はああ、僕は心配だよ。きっとファンションの人生の伴侶となる男は大変な思いをするんだろうなあ、絶対に、その彼と僕は仲良くなると思うな!うん。・・・・そう言う意味ではアランはちょっとファンションには合わないかな?」
「そう言う意味って、どういう意味?」
「アランにファンションは・・・・・ま!もったいないって事だ!!」

ニコニコと笑顔でジャンは言い、なかなか自分が飲める熱さにまで冷めない珈琲にまた、息を吹きかけた。
アランが持ってきた写真を、ジャンは自室のライティング・デスクの上に、両親の写真と一緒に飾っていた。




「間違いないわ・・・・・・忘れるわけないもの・・・・」

フランソワーズのその声は小さかったが、はっきりとリビングに集まった全員の耳に届いた。

「・・・明日、予定通りに電話をする。会うのは僕1人。それでいいんだね?」

ジョーは最後の確認とばかりに、フランソワーズに言った。

「・・・・・ええ。009,それでいいわ。でも・・・・彼はいまさら私に会って・・・どうしたいのかしら?・・・・B.Gと関係が’なかったら・・・・何が目的なの?」

独り言のように呟いたフランソワーズの言葉に、誰も応える者はいなかった。
それは、本人に訊かなければわからない。

アランは、何を求めているのか。
40年以上も時を経てしまった今、偶然が偶然を呼び、日本という小さな島国で再び出会ったアランとフランソワーズ。サイボーグとなり年を取らない彼女の姿に、何も疑問を持たずに接触を求める彼の考えと行動に、メンバー達の胸には全員が同じ疑問を抱き続けていた。


B.Gとの関係がないならば、アランはフランソワーズと会い、どうしたいのか。

フランソワーズがサイボーグと知ったら、彼はどうするのだろう?



ジョーに渡したチケットと一緒にあったフランソワーズへの手紙。
そこに書いてあった内容は、とても簡潔なものだった。

ーーーーーー
Ma cherie Francoise

君が僕の愛した人、フランソワーズなら連絡して欲しい。
私は一日たりとも君のことを忘れたことはない。
ずっと信じていた。君が戻ってくることを。
私の気持ちは変わらず君を想い続けている。
会いたい。

話したくないなら、それでもいい。
君の姿をこの瞳に焼き付けたい。
どんな形でもいい、君に会えるのなら・・・


連絡をまつ。

君の永遠のパートナー
アラン

滞在先:・・・ホテル ≠≠≠≠号室
携帯電話;○○○ー○XXXーXXX○

ーーーーーーーーーーーー


翌日の朝。
ジョーは車を走らせて街に出た。

どんな小さな、些細なことであっても全力を尽くす。
それと同じように、注意すべき事には徹底的に警戒する。

近場でプリペイド式の携帯電話を偽名で買い、大通りから外れた道にある人の出入りが激しいファースト・フード・ショップで早めのランチを購入し、ひと目につかない奥まった席を選んで座った。そこでギルモアから渡された物で少し改良を施す。会話がすべてギルモア邸の地下に設置されたコンピューターに通じるようにすることが目的である。
手慣れた手つきでそれをこなし、購入した物を味わうことなく胃に押し込み、珈琲はお湯で薄めたような、溶け出したプラスティックの成分を含んだ味がした。


ジョーは記憶している番号を押す。

耳に当て、向こう側を呼びだすコール音に耳を澄ます。

平日の昼前にも関わらず、まとまりのない人の声が右に左にと波打っている。

ジョーがコール音に集中し出すと、雑多な店内の騒音が ぴたり と止まった。

[Allo?・・・]
[hello?]

ジョーは電話相手に英語で話しかけた。
事前に、アランは長くアメリカで生活していたことを知っていたので、彼が話せないことはない。と、わかった上でのことである。フランス語でも構わなかったが、グレートが作った設定によると、ジョーと”マリー(フランソワーズ)”は、都心から離れたところにあるインターナショナル・スクールで出会い、日常会話はほとんど英語か日本語となっていた。”マリー”はもちろんフランス語を話すが、それほど上手くない。と、グレートは言った。

[yes?]
[・・・覚えていらっしゃるかどうか、わかりませんが・・・僕は島村ジョーと言います。○日の○XXホールで上演れたバレエ公演で、あなたからチケットを頂いた者です]
[!!!!]

電話口から、彼の驚きと動揺が手に取るようにわかった。

[いただいておきながら、失礼かと思ったのですが・・・このチケットをお返ししたく・・・チケットに添えてあった手紙が個人宛でしたし、彼女は”フランソワーズ”ではありません。どなたかと勘違いなさっていらっしゃるようなので、お知らせしようと、失礼ながら手紙に書かれていた、この番号に電話しました]
[フランソワーズ・・・じゃ・・・ない?]
[彼女の名前は”マリー・トトゥ” あなたと同じフランス人ですが・・・フランソワーズという名前ではありませんし、彼女はモルディエ氏の事を1人のバレエファンとして知っていましたが、あなたとは面識がないと言ってます]
[・・・・・やっぱり、違うのか・・・嘘は言ってない、よね?]
[嘘を言って、僕に意味があるんですか?]
[彼女を、彼女を私に会わせないため・・・とかじゃないか?]
[何を根拠に・・・そんなことを仰るんですか?]
[これは、運命なんだ!私に与えられた、最後のチャンスかもしれないんだ!!]
[・・・・]

アランはすがるように叫んだ。

[僕には・・・あなたとフランソワーズと言う女性が、どんな関係であったか知りませんが・・・彼女は無関係です]
[待っていたんだ!彼女が私の所へ戻ってくることを!!信じていた!!ずっと、ずっと、彼女が私の目の前から消えた日からっっ彼女を捜し続けたんだっ!君にわかるかっっっっ もうっ40年以上も私は彼女を愛し続けているんだぞ!]

アランは感情をむき出しにしてジョーに怒鳴るように訴え始めた。
彼が興奮すればするほど、ジョーは冷ややかに対応し始める。

[40年以上も前の話しをされても困ります。マリーはまだ生まれてませんしね]

ジョーは”マリー”という名前を強調した。

[違う!彼女は”私のフランソワーズ”だっっ!!]
[・・・冷静に考えてみて下さい。40年以上も昔の人が、彼女のような若い容姿なはずないじゃないですか?]
[・・・・フランソワーズは、ある組織に誘拐されたんだっ!警察も国も相手にできないほど、正体不明のっ巨大な組織に!!]
[!?]
[調べたさ!! 時間をかけて、金をかけて!フランソワーズを連れ去ったあいつらを!!]
[・・・・組織ってなんですか?あいつら?]
[名前しかわからなかった・・・奴らがフランソワーズを何の目的で連れて行ったか知らんっっ!だけどっ生きていると信じていたんだっ!これは私の奇跡なんだっ、頼む!!彼女がフランソワーズじゃないなら、会わせてくれ!フランソワーズじゃないと言うのなら、会ってもいいだろう!!!!]
[・・・・彼女と会ってどうするつもりですか?]
[会いたいんだ!会って話したいっっっ!]
[彼女は”フランソワーズ”じゃありません]
[頼むっっ!!会わせてくれ!フランソワーズかどうかは自分で確かめる!!!]
[変なことを言わないで下さい・・・。あなたの話しこそ嘘じゃないですか?]
[嘘じゃないっっっっ!フランソワーズはっフランソワーズは!私の目の前で攫われたんだぞっっこの目で見たんだ!!ジャンだってっっっっ見ていたんだっ!]
[ジャン・・・]
[そうだ、ジャンだ!彼女の唯一の血を分けた兄だっっ!違うと言うならっ会わせてくれ!!彼女がフランソワーズならっジャンにだって会いたいだろ?!]
[・・・マリーは”フランソワーズ”ではありませんし。今のような状態のあなたでは・・・会わせるのはお断りしたい。彼女は・・・・・・・・・大切な人です。嫌な思いはさせたくありません]
[会わせてくれっ!君と一緒で構わない!]
[・・・彼女に訊いてみないことには、わかりません]
[頼む!!!会わせてくれ!!フランソワーズにっ!!会ってくれるようにお願いしてくれないかっ]
「・・・・何度も言いますが、彼女は”フランソワーズ”ではありません。”マリー”です]

必死なアランの声が涙交じりにジョーの耳に響く。
ジョーの胸は、冷え切っていた。彼の声を聴くことも、話すことも億劫になってきていたが、009としてなんとかそんな気持ちを抑えながら話を進めていくが、アランはもう自分の訴えのみを唱えることに必死で、ジョーの話しはまったく頭に入っていないように思えた。

{・・・・後日、改めて電話します、彼女が嫌がれば連絡するつもりはありません]
{頼む・・会いたいんだ・・・ひと目でいい!!会わせてくれ、会わせてくれ・・・]
[失礼します]
[あ!待ってくれ!まっ]

ジョーはアランの訴えを無視して、電話を切った。


「・・・・こいつ、自分のことしか考えてねえっ」

ジョーの声とは思えないほど、009の時とは違う・・・怒気の籠もった声で唸るように言い放った。
ジョーが電話をテーブルに置いたのを確認してから、彼が座る席から離れた場所に座っていたピュンマは立ち上がって、手に持っていた携帯電話につけていたイヤフォンを外しながらジョーの席へと移動した。

「ジョー、お疲れ様」
「・・・ああ」
「すごいねっ、アラン・モルディエって。フランス人は情熱的って言うけど、まさにそれを地でいく人だったねっ!やっぱり芸術家として成功する人だからかな?・・・・激しいね、ちょっと怖いな」
「・・・・・」
「どうするの?009」
「関わっていた、と思うが・・・僕たちが予想した関係ではないな」
「・・・ジョーはどうするの?」
「・・・・・」
「009じゃなくて、ジョーはどうするつもりだい?」
「会わせたくないっあんなヤツにっっ」
「うん。ボクも同じ意見だよ・・・・それで?」
「・・・・・」
「009とアランの会話はギルモア邸のみんなが聴いていたからね。今の内容じゃあ、みんなもジョーと同じ意見だよ、絶対にね」

ピュンマは前髪に隠れたジョーの顔を、下からのぞき込むようにして訊いた。

「みんなと同じ”仲間”や”家族”としての意見じゃなくて、男として君の意見がききたかったんだけど?」
「訊いて・・・どうすんだよ?」
「どうもしないさっ!ただ、知っておきたいんだよ、ボクにとって彼女は大事な、大事な妹だからね」
「・・・・・・」
「それで?」

「                         」

ジョーがぼそりと呟いた言葉は、店内の雑踏に紛れ込んだが、ピュンマはそれを聞き逃すことなく、しっかりと彼の胸に刻み、にんまりと笑った。

「いいね~!それ!!でも、実際にしちゃダメだよ?・・・出来てしまうから怖いなぁ・・・本当にダメだからね、009!」


=====20 へ 続 く


・ちょっと呟く・

ジョー、キレる
ピュンマ、良い子
ジェット、鳥


グレート、暇人?


「                       」の中の科白は、まあお好きに(笑)・・・>(°口°;) !!
あとで書きますけどね・・・。
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。