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月の船
33歳、独身。職業・・・お稽古事で暇つぶし。


自慢じゃないれど、家は笑っちゃうほど裕福で、働く必要がないだけなのだ。
年の離れた2人の兄に、年子の姉。
末っ子の私は、親の好きに甘やかされて。


私はそれに甘えて育った。


ふらふらな人生。
ふらふらなダメ人間
ふらふらしていても、お金に不自由がなく・・・もっと最低なダメ女。


親を安心させるために、世間映えするお稽古事と、友人を通してたまに引き受ける寝言のようなエッセイやらなんやら・・・言われるままに書いている。

そんな ふらふら な私が、ふらふら と、男の子を拾ってしまった。
生まれて初めて、人を拾ってしまった。


人生、何が起こるかわからないなあ。



ふらふらと歩いて親が買ってくれた、1人には広すぎる3LDKのマンションに帰る途中に、拾った。

何も考えずに、一緒に帰ろうか?

と、訊ねたら、彼は ふらふら と私のマンションにまで一緒ついてきた。
私以上にふらふらしてるなあ。


いいのかなあ。
だいじょうぶかなあ?


見ず知らずの男の子を、自宅に引っ張り込むなんて・・・。
引っ張り込んでから考えたって仕方がないんだけど。イマサラ出て行けなんていうのも面倒臭い。


・・・まあ、いいか。


彼を見て、悪い人ではない気がした。
女のカンってヤツ?

一生に一度くらい、使いたかったから。
ここでそれを使ってみたのかもしれない。


拾った子は綺麗な綺麗な男の子。


映画のような、三流恋愛小説のような、見飽きたシナリオのドラマのような。
そんな現実離れした出会い。

綺麗な綺麗な男の子は、何が原因なのかわからないけれど、片腕が不自由だった。
役立たずの動かない腕をぶらりと下げて、彼は公演のベンチに座り、大きく、美しく、その存在を主張している月の明かりさえも届かない、この都会で見えない星を探していた。



綺麗な、綺麗な男の子。
名前もない、男の子。



琥珀色の柔らかな髪。
日本人っぽいけど、日本人っぽくない顔立ちが、冷たい街灯に浮かび上がる。
タレ目ぎみだけれど、くっきりとした二重の綺麗なアンバー色の瞳の片方が、前髪に隠れてしまってもったいない。男の子に綺麗って言うのはどうかと思うけれど、通った鼻筋に男らしい眉は下がり気味。への字かな?っと思われる唇に浮かべる微笑は、なんとも言えない色気がある。シミ一つ無い肌は羨ましいぞ?
すらりとした身体。腰の位置が高い。長い手足。




モデルさんですか?


部屋に連れ帰って、訊ねた。
彼をリビングに通して、私は”拾った”彼を明るい部屋の中でまじまじと見つめる。


「名前は?」
「・・・・必要?」
「不便だもの」
「・・・・・・好きに呼んでいい」
「猫か犬を拾ったみたいじゃない?」
「・・・・猫か犬を拾った方がましだったと思う」


自分でいわないでよ。


「好きなだけいたらいいわよ、どうせここには私1人しか住んでないから」
「・・・・・いいの?」
「いいよ。ふらふらしたダメ人間なの、私。変にお金があるから。それに甘えたダメ人間だlから、別に気にしないで」
「・・・だめ人間?・・・俺も」


奇麗な彼は自嘲気味に笑った。


「そうね、ふらふらと女の家に上がり込むなんて、まともな人間じゃないわよね?」
「・・・・・誘ったの、そっち」
「断りなさいよ」
「・・・・・断る理由なかったから」
「あら、ふらふらね?」
「・・・・・・そうだ・・ね」
「なんでも、好きに使っていいわよ。あ、お金はやめてね?一応親の目があるから」
「・・・・・・そんな風に見える?」
「餌代の心配はしなくていいわよ」
「・・・・・・わん」


やだ、可愛い。


「名前、決めなくちゃね・・・」
「・・・・・」
「そうね、・・・・月の綺麗な夜に拾ったから”かぐや”くんでどう?」
「・・・・・かぐやって、かぐや姫の?」
「そう」
「・・・・・好きに呼んでください」
「じゃ、かぐやくん」
「・・・・・はい」
「私の名前は・・・アユミ」
「・・・・・・お世話になります、アユミさん」


私は彼のために、使っていない和室を提供した。
かぐや姫も、きっと彼が求婚していたら月になんて帰らなかっただろうなあ。












####

彼が私の部屋に居座り始めて、なんの違和感もなく日々が過ぎていく。



”かぐや”くんは、犬よりも、猫よりも扱いやすいぞ・・・。
話しかければ、話してくれる。
こちらから声をかけないかぎり、かぐやくんからのアクションはない。


いいな、楽だ。


ただ一日中、外を眺めて終わっていく、かぐやくん。
気がつけば彼は、テラスに出て、ぼうっと街を見下ろしている。

・・・ちなみに私のマンションは、都会からちょいと離れた38階のトップフロアなので・・・見晴らしの良さは自慢の一つ。


小さくなったおもちゃのような街を見て、何を思っているのかしら?


何か探しているの?
誰かを探しているの?



あなたは、どこから来たの?









夜は夜で、彼を拾った公園よりも近くなった空を見上げて一晩を過ごす。
ほんと、かぐや姫みたいだなあ。

和室の窓のカーテンを閉めず、彼は自然と眠りにつくまで外を眺めている。



私は5日間ほど、かぐやくんを放っておいた。
放っておいたら、放っておいたで、放っておかれっぱなしな、彼。


・・・その存在を忘れてしまったぞ、一瞬。
存在感がなさすぎる。


御飯も、声をかけないかぎり食べない。
水、飲んでるのかな?
配達を頼んでいる水のペットボトルが減っている気配がない。



・・・かぐやくん、君は宇宙人ですか?
御飯も水も・・・なくて生きていけるのですか?




####


「ねえ、ちょっと付きあってくださいな?」


私は適当に買ってきたアルコール類の入った袋を見せた。


彼を拾って7日目の夜。
私はちょいと彼に興味がわいて、お酒の力を借りることにした。

ビールにワインに、缶チューハイ。
ウィスキーにウォッカに、大量のおつまみ。

適当に、好きなのやってくんなさい。っとテーブルに広げると、彼はビールを手に取りぷしゅっとプルトップを片手で勢いよく開けた。利き腕じゃなくても平気ってことは、両利きっぽいのかな?


「かぐやくん、君はいくつ?」
「・・・・・いくつに見えますか?」
「う~ん・・・ハタチ前後?」
「・・・・・・それくらい」
「適当ね」
「・・・・・・・・」
「腕は・・・もともと?」
「・・・・・・・壊した、だけ」
「壊した?・・・じゃ治るの?」
「・・・・・・・直せる人のところへ行けば」
「行かないの?」
「・・・・・・・・・・」


病院よねえ?この場合。
病因嫌いなの?・・・でもさ、本当に治るの?


変な子。


「ま、いいわ・・・治るんだったらいいわよ、不便でしょ?利き腕っぽいし」
「・・・・・・慣れた」
「そう?」
「・・・・・・・・うん」


リビングのソファに座らずに、フローリングの床に直接座る。
固い床で疲れちゃうから、私はクッションを彼に勧めた。
彼は素直にそれをうけとって、お尻の下に敷く。


私のお気に入りだぞ?
座り心地がいいでしょ?



「ねえ、私は女として魅力ない?」


同じ屋根の下に住むこと1週間。
それなりに、・・・まあ年下だけど、さ。
いい男女が寝食をともにしつつ、何もない寂しさ?っというか。
世間一般の人々が考える妄想に答えるようなことは、これっぽちもなく過ぎる。



ちょっと訊いてみたかったのさ。



かぐやくんは、私の科白に驚くこともなくビールを飲んだ。


「・・・・・・・・そんなことない」
「じゃ、なんで襲わないの?」
「襲って欲しい?」
「そういうのって、男からでしょ?女に言わせないでよ」


ふっと、かぐやくんが目元を緩めて微笑む。



目の保養になるわ・・・可愛いのに色っぽい。



彼は細身に見えるけれど、適当に私が買ってきた、Tシャツやらなんやらを着替えるときに盗み見た身体は、彫刻のように鍛え上げられて・・・思わず生唾を飲んだ。



・・・いいなあ。いい体してるのに、使わないのかしら?



「・・・・・・ごめん」
「あら、使いものにならないの?」
「・・・・・・・ダイレクトすぎ」
「私はこういう人間なんです」
「・・・・・・・前の・・・俺だったら速攻」
「前?じゃ、今は?」
「・・・・・・・そういう気がおこらない」
「ほら、ってことは私に魅力がないんでしょ?」


かぐやくんは困ったように、またビールを一口飲んだ。
ビール缶を手のひら全体でもつのではなく、細くて長い・・・間接が妙に男であることを意識させる指先で持ち上げる。

手の動きをみているだけで、私は、どきり。と心臓をはねさせた。
自分が言った科白が急に恥ずかしくなった。


久しぶりだな、こんな感覚。



「・・・・・アユミさんは、魅力的」
「あっ、あ、ありがと」
「・・・・・・・・それでも、無理」
「なにそれ?」
「・・・・・・・・・抱けない」
「身体的問題?」
「・・・・・・・・・ちがう」
「じゃ、心理的問題?」
「・・・・・・・・・かな?」
「ふうん」
「・・・・・・・・・出て行こうか?」
「失礼ね、別に体目的で拾ったんじゃないから気にしないで。ちょっと女として、淋しかったのよ」
「・・・・・・・・・・・ごめん」


う~ん・・・・ちょっと残念なのは、本心だけど。
黙っておこう。



「お家は平気?・・・・・・誰か心配してくれないの?」
「・・・・・・・・・・・・・今頃、探してるか・・な」
「なんだ、帰る場所あるんだ」
「・・・・」
「帰らなくてもいいけど、心配させるのはよくないわよね。”俺は生きてるぞ!”くらいの連絡入れたら?」
「・・・・・速攻でここの場所がが割れる」
「なにそれ、そんなに簡単にバレるわけないじゃない」
「そういうのが得意なトコロ」
「なに、警察関係?」
「もっと専門的」
「探偵?」
「ちがう。けど、すぐにバレる」
「ほ~・・・ちょっと興味深いですなあ」


テーブルに散らかり始めた空き缶。
ポテチなんて食べたの、何年ぶりかなあ?


かぐやくんは、ちびり ちびり とビールを飲みながら、
カーテンを閉めてないリビングの、テラスに通じるガラス戸を見た。


外は宵色。


ガラスに反射するのは室内の私とかぐやくんと、フローリングの床に置かれたアルコール類。


朝までコースかなあ?
久し振りだなあ。


そんなことを考えて、会話なく飲んでいたら、かぐやくんが ぼそり。と呟いた。


「・・・・・・・・・・アイシテルって言うんだ」
「・・・素敵じゃない」


ありゃ、女がいるの?
やっぱりねえ・・・。


「・・・・・・・・・・・だから逃げてきた」



なんじゃそりゃ?



かぐやくんは、それ以上何も言わずに「ごちそうさま」といって立ち上がり、周りに散らかった空き缶類をまとめて、ゴミとなったスナック類の袋などをゴミ箱へ。

缶類をキッチンへ持っていき・・・シンクから水の流れる音。


もしかして、ちゃんと空き缶を洗ってる?



・・・・彼はナゾだ。








”アイシテルというんだ。だから逃げてきた”



ぐるぐると頭の中にかぐやくんの言葉がまわる。



彼はキッチンで空き缶を洗い、ゴミをちゃんと選別する人。
お布団を、旅館の仲居さんですか?と言いたくなるように、きっちり敷いては、畳むことができる人。


きちん。と、きっちり。


どこで身につけたんだろう?


きちん。と、きっちり。


生活感がない、と言うか、見えない、かぐやくん。





私が適当すぎるんだけど?




きちん。と、きっちり。
私の家に生活に”彼”の”跡”がつかない。

ホテルのように。
旅館のように。

そこに”人”がいた”跡”を残さない。







####

しとしとと降る雨は卯の花の季節。
春の長雨は温かく、色とりどりの傘があっちへこっちへと流れていく。

昔に観た、フランス映画のオープニングを思い出した。
有名な女優さんが出ていて・・・確か、彼女は傘屋さん。
最後はどんなお話だったかなあ?



かぐやくんが家に来て以来、私はお稽古事と日常の所用以外は外に出なくなっていた。



これはちょっとヤバいんでないかい?


友達へのメールの返信も滞っている。



かぐやくんが、家にいる。
誰かが私の帰りを待っていてくれる。
玄関のドアを開けたら、廊下に電気がついている。
リビングに、人の気配。


ちょっぴり恥ずかしくて、くすぐったい気持ち。
不思議だなあ。


かぐやくんといると、心地よい。
楽なんだなあ。
だから、つい必要な用事がない限り、ただなんとなく家に居てしまう。




・・・・私が外に出ない原因が彼なら、彼を連れて外へでましょうか?


「ね、ずっと部屋に居てもおもしろくないでしょ?ビョウキじゃないんだしさ?」
「・・・・」


彼はまるで忠実なわんちゃんのように、私に誘われるまま一緒に散歩へでかけることにした。
見栄えのいい男連れで、街に出る。


なんていうか・・・優越感ってこういうこと?



すれ違う女性たちの視線が、彼を捕らえる。
彼を観てから私に気がつく。
そして、私を羨まし気に、値踏みをするように視線を突きつけてくる。


彼と一緒にいると、そこだけ見えないカプセルのようなものに包まれて、いつもの見慣れた街が、いつもと違う街に見えた。彼の存在感のあるような、ないような・・・不思議な雰囲気は街から浮き出して、同じ街にいるのに、違う時間の流れを感じる。


時間が流れていくのを見る、私の時間は止まっている?



歩いている間、彼はさりげなく私を庇う。
人とぶつかりそうになったら、さっと背を押して相手から守ってくれる。
車道側を歩いていたはずが、いつの間にかそちら側に彼がたっている。
お茶のために入ったカフェで、彼はドアを開けてまってくれる。
イスを引いて、座らせてくる。
何を決めたか訊いてくれて、注文してくれる。



ホストですか?



それとも・・・・



「何者ですか?」


私の質問に、かぐやくんは動揺した。
意外な反応。


・・・意外じゃないか?


「ああ、かぐやくんの素性を訊ねてるんじゃなくって、その・・・レディ・ファストがとっても自然に身に付いてる、若い男の子なんて・・・ホスト経験あり?」


彼は、ぱちぱちっと瞬きをして、私の言葉を理解しようとする。
驚いた表情が、幼く見えた。


「ホスト?・・・・・・・・そういう経験はない、よ・・・」
「でも、女の子のリードの仕方が、ねえ・・・慣れすぎてるわ」
「・・・・・・・・いつもの癖」
「いつも?」
「・・・・・・・・周りが、そうやって接してたから」
「ホストでしょ、やっぱり」


かぐやくんは、苦笑しつつコーヒーを飲んだ。
彼の手の動きに、自然と目がいく。
コーヒーカップの淵に彼のくちびるが、触れる。

長いまつげが彼の頬に陰を作る。



「違う、よ・・・・・日本人が俺1人だったから」
「学校がインターナショナルだったの?」
「・・・・・・・・・そんな感じかな。Fra・・」


かぐやくんは、途中まで言いかけた言葉をコーヒーと一緒に飲み込んでしまった。

外国語?


「途中で止めないでよ、気になるじゃない?」


かぐやくんは、困ったように笑う。
彼はそれ以上、何も話さなくなった。


朝から降り続いた雨が止む。
分厚い雨雲が遠くへと流れていく。
雲と雲の間からかかる陽の光のベールが、新しくなったばかりのアスファルトの道に弾かれた雨水を、キラリと輝かせた。水たまりに映る空。
もう一つの街が逆さまに存在する。


私とかぐやくんが座った席は窓側。
彼は、カフェを出るまで何も話さなかった。



私って意地悪だなあ・・・・。
実は、かぐやくんが言いかけた、その外国語の続きを知ってるんだもん。



かぐやくんは、”Francoise”って言いたかったんでしょ?
知ってるわよ。




毎晩、朝方になると呼んでるんですよ?
偶然に聴いてしまったの・・・ぐ.う.ぜ.ん.

私の寝室と隣の和室の壁は意外と薄いし。
眠りが浅くなった朝方に、涙声の男の子の声を聞けば・・・ねえ?
誰でも心配になって様子を見に行くでしょ?


何度も。
何度も。
何度も。
何度も・・・×100000・・・・


呼ぶの。


”F r a n c o i s e ”



奇麗な名前。


かぐやくんの口からこぼれ落ちた、奇麗な名前。



切なく、呼んでるんだよ?
君は、毎晩。

毎晩。
毎晩。



切なく。

涙にぬれた声で。






帰らないの?
彼女のところへ、帰らないの?
















「帰れない」


ある日の晩。
がくやくんは口を開いた。

都会の天満星(あまみつほし)を見下ろしながら、ぽつり。ぽつり。とつぶやいた。
きっかけは泡のように消えてなくなる、つまらないこと。


私が通うお稽古事の近くに、気になるカフェがあった。
いつも通り過ぎるだけだったけれど、今日は ふらり と入ってみた。ショーケースに並ぶ見るからに美味しそうなケーキたちの、みょうちきりんなケーキの名前に舌を噛む。
愛だの恋だの、囁きだの、キスだの、出会いだの・・・。
こういうのが好きな乙女度100%な女の子じゃない、私にはただの文字。読むのも面倒臭いので、ショーケースを指さして選んだ。

かぐやくんは、何が好き知らないから、適当に4つ選んだ。
ゴテゴテしたのは、私の好みじゃないからシンプルなものばかり。


ケーキを買って帰ったのを知った、かぐやくんは苦笑する。
彼はケーキの箱をのぞいて言った。




「女の子って・・・甘い物が好きなんだ。やっぱり」


なんだ?その”やっぱり”って?

子?



女の・・・・・・・・子?

それ、私のこと?




お湯を沸かして、そこら辺のスーパーで買ったティーパックをマグに放り込む。
ティーバッグをマグに入れっぱなしでリビングに持っていったら、かぐやくんは、ふっと、口元をあげて笑った。


「・・・・・”こういう”紅茶、久しぶり」



普段は水かコーヒーだからなあ。私。
かぐやくんも、コーヒー党だと言うことだけ、知ってる。




かぐやくんが選らんだのは、チーズケーキ。私が選んだのは、イチゴのタルト。
彼は私からチーズケーキが乗ったお皿を受け取った。





「・・・・ありがと、Francoise」





自然に出た、温かく優しい響きの音。
かぐやくんは目を見開いて言葉を失い、固まってしまった。


「別に、おどろきゃしないわよ?・・・毎晩呼んでるじゃない?」


・・・さらに驚かせてしまった。


「ね、"Francoise”って素敵な名前ね?・・・・どんな人?」




かぐやくんの動揺が、その瞳から簡単に読み取れる。
ケーキ皿をテーブルに置いて、彼は私と目を合わせないように。うつむき加減に・・・つぶやいた。





「・・・・・・・・・・・・仲間」
「仲間?」
「・・・・・・・・・・・うん」


仲間ってなにさ?子どものころに見た、再放送の青春ドラマ以来よ、その単語を聞いたの。
・・・・・・・・・・・・若い子ってよくわかんないなあ。
ま、ここは流しておこう。


「仲間の女の子?」
「そう」
「その子がかぐやくんのことを、アイシテルって言うの?」
「・・・・・・・・・・・よく覚えてる、な」


そりゃあね。
その後に”逃げて来た”って聴けば・・・忘れられないわよ。


「その子から逃げて来たんでしょ?・・・・・・嫌いだったの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大切」
「大切?じゃあ、大切な子から逃げてきたの」
「・・・・・・・うん」


なんじゃいな?


「泣いてるわよ?きっと」
「・・・・・・・・・・・泣かない。よ、これくらいじゃ」
「アイシテルって言った相手が逃げちゃって、泣かない子がどこにいるのよ?」
「・・・・・・・・・・・彼女、強いから」


いったいどんな子だ?
アイシテルと伝えた相手が逃げても泣かない、強い子?
女子プロレスラーもビックリよ?


「逃げちゃうなんて失礼だなあ、かぐやくんは・・・・」
「・・・・・・・・・・・ある人は、”ヘタレ”って言う」
「ヘタレ!・・・似合わないわねえ」
「・・・・・・・・・・・・逃げてきたから、当たってる」
「自分で言ってちゃ世話ないわね!」
「・・・・・・・・・・・・アユミさん?」
「なに?」


私は、イチゴタルトをフォークにさした。
固いと思っていたビスケットはしっとり、さっくりと簡単に割れる。
店では食べにくくて、手掴かみで食べたくなるけれど、家だから少々行儀悪くてもいいかなあ?って思って買ったんだけど、ここのはすごい!ちゃんとフォークで食べられた。



「・・・・・・・・・・・・人を好きになったことある?」

「君より長く生きてますからねえ、それなりに経験ございますわ」




イチゴもお子様向けのただ甘いだけでなく、ちゃんと”甘酸っぱい”。





「・・・・・・・・・・・・アイシテルって言われて、どうしたらいい?」
「簡単よ、アイシテルて言われたら、アイシテルって言い返せばいいのよ?もちろん、アイシテルならね」
「・・・・・・・・・・・・それだけ?」
「それだけ」
「・・・・・・・・・・・・・言えなかった」
「じゃ、その子のことアイシテないのよ」
「・・・・・・」


俯いていた、かぐやくんが ばっ! と、勢いよく顔を上げた。



ありゃ?
泣く?ちょっと、泣くの?かぐやくん・・・?
その反応って・・・

その、顔は・・・・?



「・・・・・もしかして、かぐやくんはその子のことが好きなのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スキとか、そういうのじゃなく、特別」



わお。
そうきますか?
今にも泣きそうな、その目元がお姉さんの母性本能を擽らせてるの、わかってますか~?



「好きがわからないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スキとは違う気がする」
「どんな子?」
「・・・」
「大切で、特別なのに、その子からアイシテルって言われて逃げて来ちゃったんでしょ?かぐやくん、その子はどんな子?」

「・・・・・・・ヨーロッパの人」


まあ、国際恋愛?
・・・・当たり前よね、名前が名前だもん。
悩みおおそ~・・・、おっと、集中。集中。


「それで?」

「・・・・・・陽の光みたいに温かい色の、美味しそうな蜂蜜色の髪で、こぼれ落ちそうなくらい大きな・・・晴れた空色の瞳で、」


私、かぐやくんがそんなに長い文章を話せるなんて知らなかったわよ?
しかも、なんか・・・


「・・・・仲間の1人が・・・元役者で・・・」


あ、その人の受け売りなのね。


「・・・・・・・よく彼女の肌の色を”波打ち際に打ち上げられた貝のように輝く”とか・・・”南国の熟れた果実よりも甘く、瑞々しい唇”とか、”彼女と居れば咲き誇る薔薇も日陰の花になる”なんて言う」


・・・・・・・どんな美少女ですか?


「・・・・・・・・・いつも、ぱたぱたと、邸中を走り回っていて・・・気がついたら子猫みたいにソファで寝てる・・・・」
「へえ、働き者な感じねえ?」
「・・・・・・・踊ることが大好きで、時間を忘れて夢中になる」
「・・・社交ダンス?」
「・・・・・・・・・・違う、バレエ」
「まあ、洒落た趣味ねえ?流石ヨーロピアン」
「・・・・・・・・・・・・気がつけば、隣にいる」
「忍者?」
「護らなきゃって思う。恐いのを我慢して、震えているのに・・・・絶対にそれを出さない、言わない、泣かない・・・・・」
「お化け屋敷でも、行ったの?」
「・・・・・だから、少しでも彼女が恐い思いを、辛い思いをしないように、護らないと・・・だめなんだ」


それって・・・・。



「なのに・・・・・・強い。すごく」
「バレエ以外に、空手習ってるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・そういう意味でも強い。けど」


・・・・舞踏と武道?
ギャグですかいな?


「こころが強い・・・・・・・俺なんか足下にも及ばない」



・・・・・あちゃ~。
ふらふら人間の、なよなよ女の私には痛い言葉だなあ。
・・・・・かぐやくん、気づいてますか?
あなたは、逃げて来た彼女について”惚気”てるんですよ?



「それで・・・・・かぐやくんは逃げてきちゃった、と?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・怖かった」
「彼女に鉄拳パンチでも食らったの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ、怖い」
「何が恐いの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・自分が怖い」


いつの間に、私はケーキを食べ終わってた。
味なんか、忘れちゃってた・・・。もったいない。



「アイシテルって言われる度に、苦しい・・・・怖くなる・・・・いつか捨てられるんじゃないかって、また捨てられるんじゃないかって・・・」
「また?」

「・・・・・・・・・・・・アユミさんも捨てる?」

「何を?」
「・・・・・・・・・・・・もしも、俺がアユミさんを抱いたら、捨てない?」



かぐやくん?





う~ん・・・こればっかりは抱かれないとわからないわ・・・・。


かぐやくん、その瞳は反則よ。
そんな瞳で見られたら、誰だって「捨てないわ」って言って、あなたに抱かれるために嘘をつくわよ。





・・・・・ある意味、楽よね?
騙されてるのを知りつつ、身を任せるの・・・。
自分に責任なんていらないわよね。

騙した方を責めれば楽だし。



・・・・前は、無理って言ったのに・・・今ならいいのかなあ?



そんな瞳でみないでよ。



「・・・・そうねえ、女としては抱かれたいわね、いい男だし。でも、私の方が捨てられそうだからなあ」
「・・・・・・・アユミさんの方が?」
「だって、呪文のように”Francoice”と言ってるんだもの・・・・転がりこんだ女の家で、あんな風に自分以外の女の名前を呼ぶなんて、ひどくない?」
「・・・・・・・・知らなかった」
「会いたいんでしょ?」


かぐやくんの琥珀色の瞳が大きく揺れた。
彼の瞳が再び雨に濡れる。

濡れただけで・・・・流れない。


唇を噛み締めて、迷う。
彼は、会いたくて、会いたくて、会いたくて、たまらないんだと思う。

でも、それを・・・我慢してる。



不思議な男の子。
変な男の子。

奇麗な男の子。




そんなに好きな子から逃げて来たんだ。
好きな子からアイシテルって言われたのに。


逃げて来たんだ。



怖いんだ。



気持ち、わかるよ。




ちょっとだけだけど。




わかるような気がする。





かぐやくんは立ち上がり、ガラス戸を開けてテラスへ出る。



宵の海に浮かぶ月の船。
・・・・あなたはあの船に乗ってやってきたの?



恋しいのでしょう?
会いたいのでしょう?























逢いたい。

F r a n c o i s e・・・・・


キミが、好きで、好きで・・・・ずっと片思いだと想ってた。


この気持ちを、伝えてはいけないと思っていた。


だから、必死で気持ちを隠してた。


彼女に迷惑がかかると・・・思ったから、一生懸命に否定した。


それでも、キミを想う気持ちはどんどん強くなっていくばかりで


どうしていいか・・・わからなかった。


キミが、好きだと言ってくれた。


キミがアイシテルと伝えてくれた。




嬉しくて、嬉しくて・・・・



同じくらいに苦しかった。




俺は、愛される資格がない・・・から。
母親にさえ、見放された俺・・・だから・・・・。



誰にも愛されたことがないヤツが、どうやってキミを愛することができる?
それ以前に俺は、ちゃんとキミを愛せるのか?



キミを愛せる?


キミが俺を愛していると言う以上に



キミを愛したい。







俺は、生まれてくること自体が間違っていたのに。


愛したい


存在価値のない、人間が・・・キミを愛していいはずない。



愛したい




それでも、キミは俺を好きだと言ってくれた。
アイシテルと言って、抱きしめてくれた。



ずっと、ずっと、ずっと抱きしめてくれた。




手に入れた。




俺は、手に入れたんだ。





俺が生きる理由。
俺が存在する理由。





手に入れたんだ・・・彼女を。
Francoiseを手に入れた・・・。




手に入れたのに





前よりも強く、キミを想う。

前よりも強く、キミが欲しい。

前よりも強く、キミを・・・・・求めてしまう。





誰にも触れさせたくなくて、彼女を世界中から隠したくて・・・・。



この腕に、永遠に引き留めておきたくて。

抱き続けた。



抱いて、抱いて、抱いて・・・・

それでも俺の気持ちは収まらない。



抱いて、抱いて、抱いて・・・・・・




それでも足りない・・・。
満足できない。






満足できなくて

そんな自分が怖くて

キミを信じているのに

いつもこころにあるのは、キミがいつか・・・


アイシテルって言われる度に
いつか捨てられるんじゃないか、また捨てられるんじゃないかと言う不安と・・・







こころの奥底にいる、ボク。


ーーー信じたらだめだよ。彼女もそうだよ。いつかきっと捨てるんだよ。ジョー、ボクを・・・。


捨 て る ん だ









愛したい、キミが俺を思う以上に愛したい・・・・。
腕はあのときのまま・・・・動かない。









怖い。















####


花冷えする、冬が舞い戻って来たような寒い日。
その人は、見上げていた。


人の眼では確認することができない高さのマンションのテラスに立つ人を。


見つめるその瞳は、夜空を映しとって瑠璃色に染まり、街灯に照らされて きらり と光る。
寂しげに揺れる肩先に、亜麻色の髪がかかる。


白く透き通るような肌は輝きが強すぎて、その輪郭をはっきりととらえることができない。



「Francoise・・・・」



私の口からこぼれ落ちた、かぐやくんの愛しい人の名前。



その人は、驚いたように私を見た。
こぼれ落ちそうなくらい大きな瞳で、しっとりとした長いまつげを切な気に揺らし・・・瞬きをする。




彼女は細い眉毛を歪ませ、愛らしい唇を強く噛み締めて くるり と私に背を向けた。


「待って!!!ねぇっっ!!あなたでしょっ!あなたが”Francoice”でしょっ」


走り去ろうとする彼女の背に向かって、私は叫んだ。
彼女は足を止めて、・・・・恐る恐る振り返った。



なんて 美しい 人





大げさなんかじゃなかった。

かぐやくんの仲間の1人が言ったという通りの人。



「あなたでしょ?」


彼女は返事をするのを迷っていたけれど、数秒ほど間をおいて頷いた。



「迎えに来たの?彼を・・・・」



彼女は首を左右に振った。



「・・・・・お願いします」




涼やかな、耳に心地よい声が悲しみを含んで私に言った。


「私がここを知っていることを、ここにいたことを・・・・彼に言わないで」
「どうして?」


私が1歩、彼女に近づくと、彼女は1歩、後ろにさがる。


「まだ、ダメ」
「まだ?」


「・・・・まだなの」
「?」


「 彼 は ま だ 本 気 で 私 を 求 め て な い も の 」


え?


「・・・逃げたのよ?」



私は彼女の言ってる意味がわからない。



「あなたにアイシテルって言われて、逃げたのよ?彼・・・」




「だ か ら  ま だ      だ め。

 逃 げ ら る う ち は、  だ め。   な の 」



どういうこと?





私が彼女の言葉に囚われている一瞬に、彼女は走り出した。


「あ!!」





幻?






もう、そこには誰もいなかった。







狐に撮まれるってこういうことをいうんじゃないかなぁ?


私は、止まったままの頭でマンションへ帰った。
迎えてくれたのは、いつもより遅くなったことを心配していた、かぐやくん。



どうしよう。

あなたの愛しい人に会ってしまったんだけど・・・・
あれは、本当に・・・?


あれ?



よく・・・わかんない。



「・・・・・アユミさん?」


玄関で、靴も脱がずに立ち尽くしてる私を怪訝に思い、かぐやくんが声をかけてくる。




言わないでって言われたけど。
お願いされたけど。



悪いけど”うん”って返事してないよ?




幻だと思うし。






「かぐやくん」
「・・・・・・・・・・・はい」
「会った」
「・・・」
「私、”Francoise”に会った・・・・・・・・・・・・・・・・と、思う」



「どこでっっ!!!!!!」




かぐやくんの声の大きさに、その勢いに、私は身を竦めた。

どうしたの!?
どうしたの?!

怖い・・・っっ



彼の瞳が狂・驚・喜・気に燃える・・・・!!



ーーーかぐや、くん?




それはほんの一瞬のことで・・・・
彼はすぐに冷静を取り戻して私に謝った。












####


その日から、彼は熱を出した。
微熱が続く。


熱自体はたいしたことじゃない。
計っても、37度ほどの微熱。


解熱剤もなにも、薬らしい薬を勧めても彼はそれを拒んだ。




駄々っ子か?





何度も薬を飲むことを勧めては拒まれて・・・思わず吐いた、私のため息にかぐやくんは言った。



「・・・・・・そういうの飲めない躯、ちょっと人と違うから」


その動かない片腕と関係があるの?




「病院行かない?」
「病院へ行けない躯」
「・・・・・ふうん」




かぐやくんの微熱は続く。
ちょっとダルそうなだけで、さほど以前と変わりない。
あの日以来、彼女はどこにも姿を現さない。



やっぱり、幻?










 








####

F r a n c o i s e


熱に侵された かぐやくん は彼女を呼ぶ。


F r a n c o i s e
F r a n c o i s e


寝ている間に、前にもまして強く彼女の名前を呼ぶようになった。


F r a n c o i s e
F r a n c o i s e
F r a n c o i s e
F r a n c o i s e


毎晩、魘されるように呼ぶ声に、私の胸は張り裂けそうになる。


F r a n c o i s e

F r a n c o i s e


F r a n c o i s e




F r a n c o i s e




F r a n c o i s e




F r a n c o i s e を・・・・・


憎んだ。

妬んだ。


彼が彼女の名前を呼ぶたびに、私は彼女を呪う。





こんなにあなたは、想われてるじゃない?
こんなにあなたは、愛されてるじゃない?





ここを知っているくせにっ!
ここにいることを知っているくせにっ!






彼が苦しんでいるのをっ知ってるんでしょう?!






私はベッドから飛び降りて、和室に向かう。







苦し気に、愛し気に、切な気に、呼ぶ名前は




” F  r  a  n  c  o  i  s  e  ”




なんで?!






「もういいよっ!!あんな子っ!」
「・・・・・・・・・ア・・・・ユ、ミ、さん?」

私の声にかぐやくんは目を覚ます。



「忘れちゃいなよっ!」
「・・・・・」


私は強く、かぐやくんを抱きしめた。


熱で熱くなった、少し汗ばんだ彼を。


抱きしめた。


夢中で抱きしめた。




私は泣いた。




彼の代わりに、泣いた。





私は捨てない!
あなたを見捨てたりしないっ!!


ここにいたらいいよっ



ずっとここにいなよっ!






「一緒に・・・・ずっと一緒にいようよ!!」



かぐやくんは、私の背を撫でた。


私が彼を抱きしめていたはずなのに・・・
いつの間にか、私が彼に抱きしめられていた。






・・・小さい頃、兄たちや姉ばっかりが愛されてる気がして、もっと自分を見てほしくて我が侭を言った。
両親は兄たちの進学や、姉のヴァイオリンに一生懸命で、何もない私を見てくれなかった。
頭の良い兄たちは、両親が望む名門校でトップを飾る。小さい頃から習っていたヴァイオリンで、姉は名のある教授の元へと通い詰める。家に飾られる、賞状とトロフィーのどれにも・・・・私の名前はない。


私はただ甘やかされた。

かわいい、かわいい、と。

ただ、それだけ。

誰も、私の名前を呼ばない。

そこに、私の名前はない。







愛されたい。

見て?

私はここにいるの。


私の名前を読んで?

アユミはここよ?




「・・・私を愛して」
「・・・・」
「私を愛してよっ!あんな子なんて忘れてっ愛してっ」



泣き咽せる私を、かぐやくんは優しく、優しく、髪を撫でて背中を撫でてくれる。




一緒にいよう。




寂しい。
淋しい。





だから


一緒にいようよ






「・・・・・・・愛したい」
「・・・・愛して?」

「・・・・間違った方法で愛した結果が、この腕」
「・・・・」

「愛されたいって想って、強く願って、求めて、強請って・・・・・・抱き続けて・・・・躯で彼女を・・・この腕で、彼女を独占し続けた・・・・彼女はこころから愛してると言い続けてくれる、こころで抱きしめられ続けていた・・・・彼女が俺を愛してくれている以上に、俺は彼女を愛したくて。彼女のように、こころで・・・・愛したかった・・・・でも、怖かったんだ」

「・・・」

「愛してしまったから・・・・俺はどうなる?彼女は?・・・・・彼女を失ったら?彼女が俺を捨てたら?」


怖い。


自分が怖い。




本気 で こころ で 愛すること が 怖い。



躯で繋ぎ止める、愛しか知らなかったから。
誰も、それ以外を教えてくれなかった。




悲しみも、苦しみも、辛さも、孤独も、肌と肌を合わせる温もりだけが・・・
一晩だけの関係が、俺が知る唯一の愛だったから。




Francoiseは・・・言う。



彼女が魂を、その命をかけて言う”アイシテル”の言葉に応える勇気がなくて
彼女のように魂で、命をかけて”アイシテル”の言葉を言う勇気がなくて



間違っていた愛し方に。

気づかなかった自分に。


それしかできない・・・自分から

自分から
彼女から



愛から





逃げた






「・・・楽に生きようよ・・・・・もっと楽に・・・・いいじゃない逃げて。逃げようよ一緒に」



かぐやくんはゆっくりと躯を離して、私の涙を温かな手で拭ってくれた。




「・・・・・ありがとう」

「・・・・・・・・・かぐや、く。ん?」

「・・・・・俺とアユミさんはとても似てる」

「・・・・」

「だから心地良かった」

「・・・・・一緒にいたらいいよ? 似た者同士、一緒にいようよ」

「似てるから、同じように愛に飢えた人間だから・・・・・・一緒にいたらいけない」

「違う!同じ淋しさを知ってるからっ!一緒にいるのっ 愛し合えるのっ!」

「・・・・それは、間違ってる」

「間違ってなんかない!!」

「・・・・・彼女が教えてくれたんだ」

「あんな子っかぐやくんが捨てたらいい!!」

「・・・・彼女は愛を教えてくれた人。ずっと俺を待っていてくれる強さに、甘えて逃げた」

「淋しいからっ知ってるでしょ?私の淋しさをっ!だから一緒にいて?」

「知ってるから。惹き合った・・・でも。それ以上はない、よ」

「・・・・いや・・」




「・・・・ありがとう、アユミさん。俺、アユミさんに拾われてよかった。

・・・・・アイシタイんだ。

アイサレルことばかりに必死になって、気を取られて、自分しか見えてなくて・・・

逃げれば、逃げるほど、彼女を近くに感じる・・・彼女じゃないとダメなんだ。

アイシテルんだ。俺。彼女を、Francoiseを。

・・・アイシテルって伝えることが・・・こんなに難しいなんて・・・・・

与えられることばかり望んでいた人間だから、俺。






与える、伝える側になるなんて・・・・夢にも思わなかった」








「私を愛してよっ」




「・・・・アイサレテ、アイシタイんだ・・・Francoiseに、Francoiseを」







かぐやくんは奇麗に、奇麗に、笑った。








私を愛してくれた、”彼”は言った。


”もう、疲れた。

与えてばかりで・・・お前からは何もかえってこない。

愛していても、本当にそれが通じているのか、わからないよ・・・アユミ。

オレをちゃんと見てくれよ、オレがお前を愛してるように、愛してくれないと・・・

オレだって不安なんだ。”




”彼”はFeancoiseのようには、待っていてくれなかった。
私が逃げているのを、追いかけてもくれなかった。



与えられることを望んだ。
伝えることを拒んだ。



愛してくれたのに・・・・
好きだったけど、愛されていたかったから。

彼はわからなかったんだよね?
私が彼を愛していたことを。

ちゃんと愛せていなかったの・・・・・よ,ね?

・・・・・どれだけ、彼は不安だったんだろう。




愛されたいから。
愛されない苦しみを、不安を、悲しさを、孤独を、私が一番よく知っていたのに、ね?




愛を伝えるってなんて、大変なんだろう。
愛を伝えるってなんて、難しいんだろう。
愛を伝えるってなんて、つらいんだろう。
愛を伝えるってなんて、苦しいんだろう。
愛を伝えるってなんて、切ないんだろう。


愛を伝えるってなんて・・・・・・怖くて、勇気がいることなんだろう。




私、そんなに強くないよ。











「・・・・・強いのね」
「・・・・」
「Francoiseは、強いのね」



かぐやくんは嬉しそうに、無邪気に笑った。




「・・・・・・言ったよ、俺。彼女は強いって」





愛 し て る ん だ ね、Francoise を。









かぐやくん、君は愛してたんだね。
ずっと、ずっと、ずっと、ずう~っと前から、その魂で、命で、こころで、愛してたのよ。


Francoiseの愛が気持ちよくて、心地よくて、温かくて、甘くて、嬉しくて、幸せで・・・そればっかりを欲しがってしまって、でしょ?



甘えん坊ね?

私もそう。


・・・・与えられることばかり望んでいただけ、よね?






捨てられるって
見捨てられるって思うのは


あなたの愛が、彼女と対等でありたいと思う


我 が 侭 で し ょ う ?





我が侭が言えるなんて、いいな。
我が侭を受け止めてくれるんだ、彼女は。





待っていてくれてる。









あなたのFrancoiseは、あなたを信じてる。







彼女のように








アイシテルと言える、強さを








いつか












私も手に入れることができる?



























その日の夜。
私はもう一組の布団を和室に敷いて、かぐやくんの隣で眠った。
カーテンを引かないで眠る、かぐやくん。

その彼が見つめる空を私もみつめて眠る。




月が明るくて、まぶしかった。




こんなに大きかったかなあ・・・お月様って。






かぐやくん、あなたは還るのね?


あなたを迎えにくるのは、月の船。


女神(Francoise)があなたを待っているんでしょ?




月の光を浴びた亜麻色の髪を輝かせて、大きな瞳を星のように煌めかせて、

愛らしいあの唇が、あなたの本当の名前を呼ぶ。




大丈夫。



かぐやくん、あなたは強いよ。




Francoiseにアイサレテルから、強い。













####



「・・・・アイシテル」

俺は、あの公園へ戻った。
白いだけの街灯が、小さなブランコに揺られる亜麻色の髪の美しい人を照らし出す。


揺れるブランコを俺は止めた。


彼女は俯いたままで、俺を見てくれない。
あの、空色の瞳で・・・俺を見てくれない。



その小さくて、細くて、華奢な躯のどこに・・・?



彼女は強い。




ただ”強い”だけじゃない。





彼女は・・・・愛を、無限の愛を持っているから、強い。




彼女は・・・・愛を、信じているから、強い。





彼女の強さに、俺は生まれて初めて・・・・愛を知った。











彼女の強さに、俺は誓う。 







「フランソワーズ、愛してる」




抱きしめた。
この腕に、抱きしめた。



片腕は動かない。





俺は、間違った愛で彼女を縛りつけた。


わからなかった。


気が狂うほどに、キミを抱き続けて。
世界中からキミを隠した。

誰も知らない、部屋に・・・。



「ジョーっっ!!違うっっ!!!!!!違うのっちゃんとっ!ちゃんと私を求めてっ!違うっ!ジョーっ! そんなのっ私を愛してるっていわないっ!! ジョーっ愛してるの・・・・あなたを、あなただけを・・・アイシテルの・・・だからっ・・・・・ちゃんと私を求めて・・・・・」



わからなかった。


あんなに愛してると、言ってくれた彼女が
強く、温かく、優しく、抱きしめてくれたキミは・・・俺に抱かれないように、この腕を壊した。


そして俺は、逃げた。
キミから逃げた。


アイシテルと、言うキミから逃げた。
壊れた腕は、俺を責める。






気がつかなかったんだ。
知らなかったんだ。
俺は何をやっているか。



躯を使うことで、キミを繋ぎ止めたることしか!
それだけが、俺ができること・・・・だと、思っていたから。


どうやって、キミへの気持ちを伝えたらいいのか・・・・
そんなことを、誰も教えてくれなかったんだ。



誰も。


俺に。


愛し方を。


教えてはくれなかった、から。



キミに愛されていながら・・・わからなかった。









俺の腕は壊れた。
壊れた腕と一緒に、狂っていた俺のこころも壊れた。







「愛してる、フランソワーズ・・・・キミを愛したい・・・・」




片腕だけで、彼女の背にまわす。
彼女は、俺の胸にすべてを預けてくれた。


彼女の体温が、香りが・・・・どれほど俺は彼女に愛されていたかを、求めていたかを、

感じる。


こころ で 命 で 魂 で


彼 女 の す べ て に よっ て



手に入れた、愛しい人。
キミのために、キミのためだけに生きる。


キミを愛したい。


ア イ サ レ テ    ア イ シ タ イ









「 愛 し て 


こころ で あなたの魂 で 求めて!!



私が 満たされる まで ・ ・ ・ ・




私の こころが あの月 の ように 満ちる まで 愛し続けて 」




その空色の瞳に映る、月に恋をする。
俺だけに存在する、月 / F r a n c o i s e



キミの強さに誓う。




「 愛 し て る 」

「 愛 し て る わ 」















逃げてるうちは、ダメなの。
逃げていても、あなたは何も得られない。
私の”愛”は、あなたが私とむかいあって・・・自分とむかいあって
初めてひとつになるの。



1人ではだめなの。
あなたがいないと、ダメなの。



あなたが求めて。
私が与えて。
私が求めて。




あなたが、与えてくれる。




満たして、満たされて・・・永遠に。













キミだけを。
あなただけを。









俺は・・・
キミの強さに愛を誓う。







####

カフェ「Audrey」は・・・・

今日もドアのベルがちりりんっと鳴る。
心地よいベルが、お得意様のご来店を告げた。


オレはレジ前で清算をすませたお客様に、
”ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております”と、言う
とっても舌を噛んでしまいそうな、台詞を調子良く言った。

初めはケツがむずむずっとして、恥ずかしかったけど!


ドアのベルを鳴らしたのは、あいつ。
シーズン開幕したってのにっ!なんで日本にいるんだよっ!


「なんでここにいるかって?・・・・決まってるだろ?」

オレの顔色を読んで得意げに言ってのけた。





ーーーうそ・・・・



「満月の夜だから、還って来た」



・・・まじで?


満月っておい!








清算を済ませた女性客が、ヤツに驚いて足を止めた。
あ・・・気がついたのかな?


もしかしてF1のファンですか?



ヤツも少し驚いている・・・男にしては、くりっとしたはっきり二重の瞳を、その長い睫毛を揺らして瞬いた。そして、優しい笑顔で女性に微笑んだ。




営業用か?!

・・・・その笑顔はサービスし過ぎでは?



「・・・・・・久しぶり」
「・・・・・・か....」



・・・・知り合い?








「おいっ愛弓!!時間がないぞっ」


愛弓と呼ばれた女性はドア近くに立っている、卸したてのスーツであろう、糊のきすぎたスーツを着こなしきれない男性に呼ばれた。
声を出した男に視線が集中し、彼は恥ずかしげに俯いてしまった。






「・・・・彼を愛してる、の」
「・・・・愛し続けてる、よ」





空気の振動に重なりあう声と声。


2人はそれ以上何も言わずにすれ違った。



男性と、その愛弓と言う名の女性は微笑み合って、幸せそうに店を去る。
彼らとすれ違うようにして、こぼれ落ちそうに大きな空色の瞳を持つ、ヤツが日本に”半日だけ”還ってきた理由の女性が、店に入って来た。




・・・愛弓は、Francoiseの愛らしいくちびるから呼ばれた名前を一生、忘れない。





「ジョー!!!」









ドアのベルがちりりんっと鳴る。
愛弓さんから、自宅で行うためのウェディング・ケーキの注文が入った。
今日からちょうど6ヶ月と21日後の未来の話し。



フランソワーズさんが義姉さんと話している隙に、ジョーの隣に立った。

「な、さっきの美人っお前の知り合いっ?」

小さな声で、フランソワーズさんに聞こえないように細心の注意を払って、オレはジョーに訊いた。

「・・・・・気になる?」
「あったりめえだろっっ!! 浮気なんかしやがったらっオレが許さねぇ!!フランソワーズさんほどの素晴らし~~~~!女性を彼女にしときながらっ」
「・・・・・・前に彼女に拾われたことがある、だけだ」




はい?



拾われた?




お前は犬かっ!!


「・・・・・・拾われて?」
「拾ってもらって養ってもらった。1ヶ月くらい?」
「マジで?」
「・・・・嘘をついても仕方ないだろ?」

ジョーの顔は真剣だった。



ジョー・・・これ以上、オレに謎を増やすな。
謎が謎を呼び、謎を深めて・・・・お前はいったい何者?



「それ、フランソワーズさんに言うなよ・・・」
「?」
「女に拾われて、養われて・・・・そんなの知ったら、あの純粋な汚れを知らないフランソワーズさんがっ!!」
「知ってるわよ?だって、その頃にはもう、ジョーとおつきあいしていたんですもの」


ひいいいいいっ!!
フランソワーズさん?!

い、い、い、いつの間に!!

地獄耳っすね?!


いつの間にかオレの後ろにたっていたフランソワーズさんは、不思議そうに空色の瞳を数度、目蓋に隠しながら、花が咲きこぼれるように、春色の柔らかさ舞う微笑みでオレを見た。


つきあってた?!
つきあってる間にジョーは、さっきの美人に拾われて養われて、1ヶ月!?



それって・・・・

フランソワーズさんっ!?




「忘れないわ・・・・”初めて”ジョーが私を”愛してる”って言ってくれた・・・」



風に舞い散る桜の花びらのように、可憐にその白い頬を染めてフランソワーズさんは言い、ジョーはそんな彼女の手を取り、自分の胸に引き寄せた。

亜麻色の髪にくちびるを寄せて、彼女の香りを楽しむ。



「・・・・愛してる」



ジョーはフランソワーズさんの頬に手を添える。
空色の瞳を覗き込むように顔を近づけて、形よい唇を愛しげに自分の唇に重ねた。
フランソワーズさんは少しだけ背伸びをして、ジョーの唇に熱を送る。

彼はそれを受け止めて、彼女の耳元へとくちびるを寄せてささやく。



「Je t'aime pour toujours.」




フ、フ、フランス語!?




「誓う?」





フランソワーズさんが日本語で答えんの?!


「Oui」



「Embrasse-moi !」



何を言ってるのか、俺にはさ~~~っぱり!!わからない・・・・。
けれど、フランソワーズさんが、何を言ったかはなんとなく・・・わかった気がする。


だってさ・・・・
結局、やってることはいつも通りっっっ


営業妨害だ!!!
んなとこでっ大人チュ~はやめてくれえええぇぇぇ!!





「素敵よね・・・いつみても」


うっとりと2人の”大人チュ~”に魅入られる義姉さん。




か、か、か、か、香奈恵さんはどこっすかあああ!?




(好きなだけチューしてらいいさっ・・・・もう・・知らねぇ)
それよりもっ!

チューしてる場合じゃないっすよっ!
フランソワーズさんっ!
犬みたいにひょいひょい他の(美人な)女性に拾われるジョーに何も思わないんすか?!


オレの視線に気がついて、フランソワーズさんはジョーの唇から離れた。ジョーは軽くオレを睨む、その瞳が”邪魔するな”と訴えているが・・・・お前、営業妨害だっつうの!

そんなジョーを潤んだ熱の籠もる空色の瞳で、愛おしそうに見つめ、彼の頬にキスをする。


「大地さん、心配してくれてありがとう。私から離れる前後のジョーは・・・とっても綺麗で、素敵に私のためだけに、悩んで、苦しんでくれたの・・・・あの時、ジョーには必要だったの。私に甘えてしまって自分から目を背けてしまったジョーには、ちょっとだけ”お仕置き”が必要だったのよ?・・・・女性の家で生活を始めたときは、ビックリしたけど・・・でも、ジョーだから仕方ないの・・・・女なら、彼をそばに置いておきたいのが、普通だもの・・・・ 」


フランソワーズさんが
ジョーに
お仕置き?

それで
ジョーは
綺麗で、素敵に、悩んで、苦しんだ???

先に・・・さっきの美人に拾われて、養われて?
ジョーなら仕方がない?





謎っすよ!?

・・・・謎じゃないか?
っで!・・・ジョーをそばに置いておきたいって思うのが、普通?!



義姉さんは、うん。うん。と、深く頷いた。
納得してる!?


・・・義姉さん、兄貴じゃダメなのか???




オレはまじまじと、ジョーをみた。
ジョーはフランソワーズさんの腰に手をまわし、自分の躯に ぴたり と、くっつけたたまま彼女の頭に自分の顎を乗せるように、頬を寄せるようにして、オレに視線を投げかけた。


ジョーは腕の中にいる、フランソワーズさんに満足し、安心している。
琥珀色の瞳は、午後のゆるやかな空気に解けてしまいそうなほど淡い。


愛おしそうに、亜麻色の髪にときおりくちづけては彼女に酔う表情は・・・・・



うわあぁぁぁ・・・・・。






カメラっ!!
カメラっはどこだっ!!!


こんなヤツの姿をどっかの週刊誌に送ったらっ
オレの学費を払ってもおつりがくる!!!


義姉さん?!
義姉さんっ・・・・仕事中の携帯の使用は禁止って言っておいて・・・
・・・・・・あとで、オレの携帯に送ってくれ、それ!




「・・・・も!ジョーったらひどいのよ?ちゃんとまだ”何も”言ってもらってないのに・・・・邸のみんなにも私たちが付き合い始めたっていうのは、まだ秘密だったのに!!・・・部屋を取ったって言うし、1日くらいならって・・・”お仕事”の後だったから、2人でゆっくりできるわ!って思ったら、2週間以上も監禁されてっ・・・・、」



監禁?!


週間!?



オレはさっきまでの興奮(?!)が、フランソワーズさんの言葉に一気に冷めた。


「・・・・・あのとき、キミが他の男に・・・」
「挨拶よ?」
「・・・・・・・・あんなの、挨拶とはいわない」
「そお?」
「そう」


思い出したのか、ジョーがむっとした。
その表情が、彼を幼い少年のように見せた。


「島村っちさんのヤキモチは、激しいわねぇ?」


義姉さん・・・監禁は犯罪ですっっ!
盗撮も?
激しいヤキモチなんかでっ簡単に終わらせないでくださいっ!!


「・・・・・イヤだった?」
「?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あの時、イヤだった?」


ジョーの呟いた言葉にフランソワーズさんが、旬のイチゴよりも紅く染まる。
オレや義姉さんの方に、ちらり と視線を走らせ、ジョーの耳もとに、愛らしく潤ったくちびるを ぴたり と寄せて、その白魚のように白い、小さな手で覆う。

ジョーは、少しだけ躯を折って、彼女の方へ耳を傾ける。




・・・・・イヤなはず、ないじゃない・・・・ジョーとだし・・・その・・・・ね?だって、そういうの、は、ジョーとしか・・・ね?・・・・邸だと・・・・・ね?・・・でも、私は・・・ちゃんと愛されたかったの・・・・ね? 言わなくても、わかるでしょ?



何を言ってるのか、オレと義姉さんには聞こえない。が、ジョーの顔が嬉しそうに微笑んだことから、彼が嬉しく微笑むほどの言葉を、フランソワーズさんがジョーに言ったこと”だけ”がわかる。



「Je suis tout(e) pour toi.」



フランソワーズさん。
フランス語、わかりませんって・・・オレ。

聞かれたくない?
今更、何を聞いても驚きませんっっすよ!

わからない方が気になるっすよ~~~~!!!




ジョーの耳元から離れて、今日の青空よりも眩しいフランソワーズさんの笑顔と、彼女が彼に贈った言葉。
それを受け取ったジョーは甘く囁いた。




「・・・・・・そのために、還ってきた」




ジョーはフランソワーズさんの目蓋にキスをひとつ。








私から離れれば、離れるほどに




あなたは私に狂うの。

あなたは私を知るの。



ジョー、あなたは私に愛されてる。


愛され続けるの、あなたは。
愛し続けるの、私を。




ゆらゆらと揺れる想いは月の船。
私の宙(そら)に浮かぶ船。


私の躯の中をかける月の船。
あなた意外に誰も・・・その船を操ることはできないわ。



























秋学期はフランス語を取るぞ!!オレはっ。



























####


「ねえ、言って?」

「アイシテル」

「もう一回・・・・」

「愛してる、よ」

「ジョー、もっと言って・・・」


「愛してる、愛してる、・・・・フランソワーズ、愛してる・・・・」




「もっと・・・・言って?」





「俺ばっかり?」






「私はずっと言ってきたもの!・・・・ジョーは今までの分を取り返さないと!・・・・ね?」







「フランソワーズ、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる・・・愛してる・・・・・」
「あ!今の3つ目は、ちゃんと”私を求めてる” 愛してるじゃないわ!」




「・・・・・俺が、キミを求めてないはずない、だろ?」



「だめよ! さぼっちゃ!」


「・・・・はい」




「ね? もう一回やり直し」





「愛してる、キミを愛している・・・・・」






「愛してるわ、ジョー」

「愛してる、よ フランソワーズ」











満ちて、満たされて


アイシテ、アイサレテ。







「 愛  し て る 」








end.

☆Je t'aime pour toujours. = 永遠に君を愛する
  Embrasse-moi ! = キスして!!
Je suis tout(e) pour toi.= (〃_ 〃)ゞ ポリポリ



・言い訳・

「1003」番のキリリクを踏んでいただきました「・~☆」さま へ 描かせて頂いたお話です。

いただいたリクエストは『大地くん・シリーズ』
「闇全快の島村っち」で。
フランソワーズの気持ちが本物だと信じれるようになったけれども
何かがきっかけでフランソワーズが信じられなくなり、
精神的に傷ついて、心も体も壊れて傷ついた9を3の愛が助ける・・みたいなのを!

しょっぱなに、9は一般女性のところに転がり込むというのが、
私なりの・・・闇?(汗)

こんなん書いてしまいました・・・。
ジョーの闇・全開モードは、本当に深くて、難しくて・・・。

今回のこのお話に行き着くまでに、5つくらい話しを作りました。
・・・途中でかけなくなってしまって、大混乱(笑)で、
また新しいプロットを作って、書いては・・・また途中からかけなくなって、大混乱(笑)x5回!


闇・ジョー・・・あなたは本当に困った人ですよ!!!
ボツになった文章で、新しいのが2,3作書けそうです・・・(切り貼りでね)

と、とにかくっ!
今回の9は3を監禁するし・・・。

ヤキモチで・・・?!
挨拶?!
腹いせに、投げやりモードで女の家に転がり込んだ?!

・・・・このお話の前の”3監禁事件”は書きたくても、無理です。
ご想像にお任せ致しますデス。

ええっと・・・
お嬢さんの愛はすごかった。
結局9は3の手のひらの上だったと言うことです。

以上です。


・~☆さま・・・・こんなの満足できな~い!!と言う場合はご連絡ください・・・
リベンジさせていただきます、ので・・・m(ToT)
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