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Novelization
人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?










初めての出会いに、それを感じる余裕はなく。
ただ、あまりの場違いな美しさに、息を飲むしかなかった。

自分のおかれている状況よりも、なぜ、その美しいひとはそこに立っているのか。
それだけが、不思議と頭の隅っこに居座り続けた。


名もない人。
いや、名を番号で呼び合う間柄の人。




初めて、彼女の名前を知ったとき、その音の柔らかな響きに驚いた。
その名前を名乗るに、ふさわしい人。


何に例えればいいのか、わからないほどに細く、きらり。きらり。と輝く髪は、亜麻色と呼ばれる色だと、知った。
僕の目には、蜂蜜のように、とろりと甘く綺羅めいてみえる、髪色。

小さい頃に川底で見つけた、つるりとした白くて輝く石を、この世で一番の宝石のように大切にしていた、それよりも、純白に輝くような小さくて白い手で、肩先に揺れる一房の髪を払いのけた、その仕草が、スローモーションのように見えて。


髪から放たれた香りに、目眩がした。








いつも下腹部からじわじわとわき上がってくる痺れに、戸惑う。





ボクよりも身長が低い彼女の見上げるてくる視線を、への字にした口で、耐える。
恥ずかしさと、嬉しさと、入り混じった小さなプライドが、憮然とした態度となってしまう。


あまりにも大きな瞳が、小さな作りの彼女の顔からこぼれ落ちそうで、瞬くたびに陰を落とす、長くしっとりと繊細に整われた、睫のささやかな揺れが、空の青とも海の青とも言いがたい、彼女だけの青に、どうしようもなく引き込まれてしまう。


だから、まともに彼女と視線を合わすことができなくて。







長い前髪を幕のようにを引いて、直接的に彼女と視線を合わすことを避けた。






「009は、・・・・・・・・私のこと、嫌いなのよ」
「ちがうな」
「004、どうして?・・・だってみんなとは普通なのに・・」
「少し、時間をやれば、そのうちわかるさ」













人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?




「そんなもん!出会って、よっしゃ!だろ?」

「う~ん。フィーリングじゃないかな?あ、この子だ!って言う感じだと思うよ?」

「ワテのことなんて、参考にならないアルヨ!でも、言わせてもらえば、・・・ときめきネエ」

「誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。と、シェークスピアは言っておるぞ!」

「自然のこころに従う。じぶんのこころに、正直になる。」

<DNAに組ミ込マレタ、子孫繁栄ノタメ ノ ぷろぐらむ>






人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?






「なんじゃ、そんなこと・・・鏡をみてみなさい」
「鏡?ですか?」
「003と話した後に、じゃぞ?」
「?」




戦場から離れたひとときに、触れることができた時間。
ささやかな、間。

閉店処分セールで、ぽつり。と、放りおかれていた薄っぺらい単行本を、なんとなく買ってみた。
古い、古い、その本は、作者があこがれの女性にたいして綴ったものだった。




その女性に出会った瞬間の、胸の高鳴りを書いただけの、話。










読み終わった後、その本をどうしたいいのかわからなくなった。
もっているだけで、気持ちが落ち着かなくて、捨てようと、何度もゴミ箱へ投げるも、捨てることができなくて。
部屋のクローゼットの、奥の、奥の、奥へとしまい込んだ。



はずなのに・・・・それは、いつの間にかリビングルームの珈琲テーブルの上に置かれていた。






「・・・これ」


通りかかった、彼女が言った。


「それ、・・・・この間、町に出たときに閉店処分セールをしていた本屋でみつけたのよ。なんだか・・・」


最後の言葉は音にされることなく、空気にとけ込んでいった。


「なんだか、なに?」
「・・・・」


困惑したように、眉根を寄せて視線を床に落として言い淀む、立ち姿に、苛立よりも、好奇心が勝つ。


「買わずには、いられなかったの」


ボクの手から、奪いさる、古ぼけた単行本。











同じ本が、この邸に存在する。

1冊は、彼女が持ち。
もう一冊は、ボクの部屋のクローゼットの奥の、奥の、奥にしまわれている。








人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?




その本のはじめに書かれていた、言葉を何度も繰り返し思い出す。










どんなときだろうか?











「009、出かけるのでしょう?」


彼女がボクを呼んだ瞬間に、彼女の声がすっと耳に入り込んで、僕の胸でイタズラに機会仕掛けの心臓のポンプを早く打つように細工する。

じんわりと、浮かび上がってくる痺れに耐えきれなくて、ぐっと喉に力をいれると、つい口がへの字に固まってしまい、汗ばんでくる手が気持ちが悪い。


「・・・うん、003。・・・・・・・・・一緒に来る?」


ボクの言葉に、驚く彼女の瞳の色が、綺羅めいて。
少しばかり色づいた頬が心持ち上に上がり、こぼれ落ちそうなほどに大きな、その瞳が細められた。


「一緒に、・・・いいの?」













「鏡をみれば、いいんじゃよ。恋する目をしておるじゃないか。・・・・009はいつも恋に落ちた”瞬間”に生きておるんじゃからな」




ぱちり。と、将棋の盤を打つ音。






















どこへ行こうか?
彼女と一緒に。


早鐘打つ、心臓を胸に。
手に汗をかきながら、喉に力を入れてへの字に固めた口で。

まっすぐに、見ることができない、青の瞳を輝かせるキミの隣を歩くボクは。






恋に落ちた瞬間を生きている。


その先に、何があるのかわからない。
なぜなら、ボクの部屋のクローゼットの、奥の、奥の、奥に、しまわれた、その単行本に、先は書かれていなかったから。

彼女の持つ、単行本にも書かれていない、はず。




ここから先は、きっと。









「003、じゃなくて、さ・・・・・、フランソワーズって呼んでも、いいかな?・・せっかく、教えてもらったから」
「じゃあ、私も、ジョーって呼んでも、いいかしら?」















ボクと彼女が続きを書くんだ。













end.









・あとがき・


加速装置をksk装置と書くらしい。


9は加速装置つき=加速する=周りの時間が止まっている=9(平)ってちょい鈍そう=自分が恋してるの気づかない=恋に落ちる瞬間を何度も繰り返す=やっと気づく=何度も恋に落ちてる?



そういうことで、平ぜろ・ジョーでしょうか?




何を書いているんでしょう、私・・・。
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